「がんのセルフ・コントロール」を読む
本書は、治療不可能と宣告された末期がん患者を対象に心身医学的側面からの治療を行い、驚異的な効果を上げたサイモントン療法についての開発者自身の手になる解説書である。
中味は、二部構成となっており、第一部が理論篇、第二部が実践篇であり、豊富な実例を各所に折り込み、著述が平板に流れないように良く工夫されている。
著者(サイモントン夫妻)たちが、四年間にわたり、159名の末期がん患者(生存可能期間平均12ヶ月)をサイモントン療法で治療した結果、志望した患者の平均寿命は20.3ヶ月と対照群の1.5以上生き長らえ、1978年1月現在の生存者63名中、がんが消滅したもの14名22.2%、退縮したもの12名19.1%と目ざましい成果を上げている。
「がんのセルフ・コントロール」カール・サイモントン他、創元社、1982
第一部の柱になっている理論は,“生体フィードバック理論”。「これを簡単に言えば、精神と感情と体は一つの統一された組織であって、互いに影響をし合っているということ、つまり自分が意識的に影響を与えることが可能な組織になっているというこたなのです」。
要は、精神的ストレス(精神面・感情面)が要因で病気が起きたのなら、そのプロセスを逆に活用し、精神の力(信念・目標等)によって病気が治せるという理論。
第二部は、実践篇で、健康回復への自己参画(信念と自覚など)、将来の目標設定、リラクゼーションとイメージ療法など実際のサイモントン療法を具体的に分かりやすく説明している。
*独断と偏見
心身二元論にもとずく近代西洋医学の根っこは、デカルト、ニュウトンに代表される還元主義の哲学ならびに方法論にある。したがって、西洋近代主義と同じ陥穽にはまらざるをえない。
サイモントン療法とは何かといえば、心身一元論にもとずく全人的アプローチの医学、それの末期がん患者への具体的適用であると言えよう。
正しい人間観にもとずく医学が、誤った人間観にもとずく西洋医学を大きく超える成果を生み出すのは必然なのだ。
*独り言
極楽トンボの生き様(=人・世間がどう言おうと思おうと、自分の大事だと思うこと、関心のあることに
マイ・ペースで集中する)は、ストレス・ゼロで健康にもベストであることを確認させてくれた本であった。