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2010年03月04日

2010年読書目録

1.「知の編集工学」松岡正剛、朝日新聞、1月1日   **             (36)
 :私たちは、誰もが一人づつのラディカル・ヒストリーであり、一人づつのラディカル・エンジンなのである
2.「フラジャイル」松岡正剛、筑摩書房、1月3日     *              (5)
 :情報の「つなぎは、情報の強さによってではなく、情報の弱さによって成立する」
3.「アンチ・エコノミクス」ジャック・アタリ、マルク・ギョーム、法政大学、1月5日  * 
 :欲望・技術進歩・物の更新という進歩のサイクルの行き止まりからの脱出路としての自主管理ユート  ピア
4.「反ユートピアー新しいユートピアとしての博愛」ジャック・アタリ、彩流社、1月6日 ** (9)
 :不滅・自由・平等というユートピア概念の行き詰まりを乗り越える唯一の可能性を秘めた博愛主義

5.「ヨーロッパ未来の選択」ジャック・アタリ、原書房、1月6日
 :「複数のヨーロッパ」としての「全ヨーロッパ連合」をめざして
6.「千夜千冊」5、松岡正剛、求龍堂、1月14日     **             (5)
 :日本のイデオロギーの森の幅広い探索
7.「千夜千冊」2、松岡正剛、求龍堂、1月17日      *              (2)
 :猫と量子が見ている
8.「千夜千冊」3、松岡正剛、求龍堂、1月19日      **            (29)
 :脳と心の編集学校
9.「辺界の悪所」広末保、平凡社、1月20日
 :郭と芝居の世界からみた悪所考
10.「千夜千冊」4、松岡正剛、求龍堂、1月21日     **            (20)
 :神の戦争・仏法の鬼
11.「日本辺境論』内田樹、新潮選書、1月22日                     (6)
 :とことん「学びの先駆性」を生かす
12.「千夜千冊」6、松岡正剛、求龍堂、1月23日     *              (2)
 :
13.『千夜千冊」7、松岡正剛、求龍堂、1月24日
 :男と女の資本主義
14.「千夜千冊」解説・索引・年表、松岡正剛、求龍堂、1月26日   *
 :書物たちの記憶
15.「神聖喜劇」1~5、大西巨人、文春文庫、1月27日        **
 :日本陸軍の体質を「順法闘争」が可能な非合理的組織としてユーモラスに描く
16.「万葉集」一・二巻、岩波古典文学大系、1月29日         *
 :雑歌・相聞歌・挽歌ー 清き・直き・明き心で歌う和歌の道
17.「日本神話の起源」大林太良、角川選書、1月29日         *
 :日本神話の起源を四つの源流の重なり合いとして見る
18.「神代の風儀」鳥居礼、たま出版、1圧30日             *        (4)
 :日本の古代からの真の伝統は何かに的を絞った「ホツマ」解説
19.「ホツマツタエ入門」鳥居礼、東興書院、1月31日          **      (2)
 :日本の古代史がいかに捻じ曲げられているかに焦点を当てつつホツマ紹介。
20.「改定 ほつまつたえ」鏑邦男訳注、渓声社、2月1日        **
 :「ホツマツタヱ」原文と現代語訳併記。
21.「万葉集」第三、四巻、岩波、2月3日                  *
22.「ホツマツタヱ」新人物往来社、2月3日
 :全篇ホツマ文字で書かれた「ホツマツタヱ」
23.「復刻版 ホツマツタヱ」小笠原長弘筆録、日本翻訳センター、2月3日
 :全篇ホツマ文字で書かれた「ホツマツタヱ」
24.「ホツマ 古代日本人の知恵」松本善之助、渓声社、2月4日    *       (3)
25.「正法眼蔵随聞記」懐奨、岩波文庫、2月6日             **
 :我欲名利・身心を捨て仏道に専念する道元の言動を活写。
26.「縄文人の世界」梅原猛編、角川書店、2月7日            **     (8)
 :縄文人の世界観、美術、生活、自然環境から生きている縄文人に迫る。
27.「万葉集の精神」保田與重郎、新学社文庫、2月8日         *       (4)
 :皇神の道義と言霊の風雅をしたう草莽の精神の書としての万葉集。 
28.「日本人の心の歴史」上・下、唐木順三、筑摩書房、2月10日    **
 :「季節美感の変遷を中心に」みた「日本人の心の歴史」=日本精神史
29.「「ホツマツタヱ」が明かす超古代の秘密」鳥居礼、日本文芸社、2月10日
30.「千夜千冊」松岡正剛、求龍堂、2月11日                **
 :遠くから届く声
31.「山水思想」松岡正剛、ちくま学芸文庫、2月12日           *       (4)
 :雪舟・等伯の水墨の世界を柱に山水思想とは何かを幅広く問う。
32.「縄文文明の発見」梅原猛著編、PHP,2月13日
 :分かったこと、分からないことを地道にまとめた好著。
33.「日本数寄」松岡正剛、春秋社、2月13日                *       (2)
 :肩の力が抜けた好著ではあるが、古代日本(特に縄文時代)の理解不足が気になり違和感大。(日   本語、日本文化の基底にあるもの)
34.「日本流」松岡正剛、朝日新聞、2月13日                *       (4)
 :大野晋の日本語論に同調しているようではNG.
35.「ミカサフミ フトマニ」松本善之助監修、展望社、2月13日
 :日本人の心に響くホツマとの一貫性。
36.「世界史のなかの縄文文化」安田喜憲、雄山閣、2月14日      *       (1)
 :世界史のなかで縄文文化を位置付けようとする好著。
37.「龍の文明太陽の文明」安田喜憲、PHP新書、2月14日                (2)
 :論理構成が雑。
38.「秘められた日本古代史 続ホツマツタヱ」松本善之助、毎日新聞2月15日  * (1)
 :日本古代の心「天の道」を説く「ホツマツタヱ」の記紀と比較しての正当性を主張
39.「古代食の謎」山根昭彦、健友館、2月16日                       (26)
 :「古史古伝」特に「竹内文書」からみた日本の成立。
40.「日本文明の主張」西尾幹二、中西輝政、PHP,2月17日      **      (14)
 :大局的・正統的歴史観に立脚し日本の歴史を明らかにし、さらに進むべき方向を指し示す。
41.「日本多神教の風土」久保田展弘、PHP新書、2月18日
 :柔和な風土がもたらした自然観・生命観・宗教観が一体となった神仏習合の世界としての日本。
42.「日本文化の形成」上・中・下、宮本常一、ちくま学術文庫、2月21日 *      (7)
 :広いフィールドワーク・調査から現代のではなく古代の日本人の目で提起される大胆で説得力のある
  仮説
43.「EMI WADA WORKS]ワダエミ、本楽舎、2月21日        *
 :ワダエミの舞台・映画衣裳の世界、特に「利休」の秀吉と利休の衣裳は圧巻
44.「文明の構図」山崎正和、文春、2月23日                 *      (4)
 :やや切れ味を欠く、「信用と社交社会」小共同体の構造化という未来社会のイメージは同感
45.「日本の歴史を読みなおす」網野善彦、筑摩書房、2月24日      *      (3)
46.「私の縄文美術鑑賞」宗左近、新潮選書、2月24日           *      (15)
 :「こころ」で読みとく縄文人の<天空への螺旋上昇吊り上げ運動>が生み出した縄文土器
47.「続・日本の歴史を読みなおす」網野善彦、筑摩書房、2月28日    *      (2)
 :常識のウソ「百姓=農民」から説き起こす中世・近世の日本社会の見方
48.「中世の文学」唐木順三、筑摩書房、3月1日               *
 :すき・すさび・さびーー芭蕉における禅との結びつきによる中世への回帰
49.[無用者の系譜」唐木順三、筑摩書房、3月1日
 :重複多し
50.「日本社会の歴史」上・中・下、網野善彦、岩波新書、3月2日     **     (3)
 :従来の日本の歴史観を一変する社会史観の提唱、市場・貨幣経済の浸透(重商主義VS農本主義)
51.「闇の日本史」沢史生、彩流社、3月2日
 :河童鎮魂ーー河童から天狗への変容
52.「「日本」とは何か」網野善彦、講談社、3月3日              **
 :日本の歴史の通説を打ち砕く網野学の集大成ーー網野善彦を一冊読むならこれ
53.「ホツマ入門」松本善之助、ホツマツタヱ研究会、3月4日
 :「ホツマツタヱ」発見記
54.「無常」唐木順三、筑摩書房、3月5日                    *      (3)
 :「はかなし」という王朝的心理が、王朝末から中世にかけて「常ならぬ世」を経験し「無常」に傾斜
55.「日本文化私観」坂口安吾、近代文学館、3月5日
 :「僕は日本文化についてほとんど知識をもっていない」という書き出しで、ヌケヌケと安吾流日本文化   論を展開
56.「世界史の誕生」岡田英弘、ちくまライブラリー、3月6日          *      (6)
 :「西洋史」「東洋史」「国史」の三つの歴史がバラバラになり、混乱をきわめる日本歴史学からの脱却   を模索
57.「日本を開く歴史学的想像力」湯浅赳夫、新評論,3月7日         *      (8)
 :日本を亜周辺(VS中心・周辺)海洋(VS大陸)国家として捉え、その歴史的分析とともにそこに日本  の活路を見る
58.「絶望の精神史」金子光晴、講談社文庫、3月7日
59.「カンバセイション・ピース」保坂和志、新潮社、3月8日           *
 :昔家族と猫と住んでいた家でツマと姪と友人と猫と暮らす作家の生活を通じて人間が生きることは何  か、別に大きな出来事がなくても充実して生きられるというのだということを描く。
60.「大鏡」角川文庫、3月8日
 :思いのほか情報量少なし。
61.「犬身」松浦理英子、朝日新聞、3月10日                   *
 :「種同一性障害」を感じ「犬化」を夢見た主人公が犬に変心不思議な犬生を送るという物語。
62.「日本史の誕生」岡田英弘、ちくま文庫、3月11日              *      (5)
 :日本文明は中国文明の一部として始まったという歴史観、縄文文化に全く触れられていない、漢字伝  来以前には文字無しなど疑問多し。
63.「異形の王権」網野善彦、平凡社、3月12日                  *     (2)
 :異形の風景・力・王権
64.「室町の王権」今谷明、中公新書、3月13日                  *     (6)
 :義満の王権奪取の動きを中心に、その時代背景と天皇側の応戦を分析
65.「無境界家族」森巣博、集英社、3月14日                    *
 :日本人・日本文化・日本文明などといわれるものは存在しない(すべて混合・日々変化)と主張する
66.「夢酔独言」勝小吉、PHP,3月14日
 :喧嘩、商売(刀剣)、吉原通いと揉め事の仲介屋に明け暮れる勝海舟の父親の御家人生活
67.「邪馬台国」大林太良、中公新書、3月14日
 :倭国・倭人をその南方的要素、北方的要素から分析、結論を無理やり引き出さないのが良い
68.「神道とは何か」鎌田東二、PHP新書、3月15日                *     (7)
69.「世界樹木神話」J・ブロス、八坂書房、3月16日
 :かって自然の中では、全てのものが何かのしるしであり、意味を持ち、人間はそれを感じていた。それ  を見失い自然の破壊者となるのです
70.「トナカイ月」上・下、エリザベス・M・トーマス、草思社、3月17日       **
 :氷河期マンモスの時代に生きた三家族と霊の物語
71.「倭国の時代」岡田英弘、文春、3月18日                     *    (3)
 :「古事記」偽書、大和朝廷は無かった、日本の大王は仁徳から、「日本書紀」は持統天皇の主張
72.「中世神話」山本ひろ子、岩波新書、3月18日
 :中世神話としての中世神道にスポットライトを当て、神道界に生成した神話を考察
73.「柳田邦男対談集」ちくま学芸文庫、3月18日
 :圧巻は「民俗学から民族学へ」の柳田邦男、折口信夫、石田英一郎の対談
74.「無境界の人」森巣博、小学館、3月19日                     *
 :賭博体験の合間に「日本人論」など存在するわけがないと力説
75.「存在の耐えられない軽さ」ミラン・クンデラ、集英社、3月20日         **   (1)
 :人間が生きるとは、幸福とは、愛、性、仕事、生き方へのこだわり
76.「死者の書 身毒丸」折口信夫、中公文庫、3月20日
 :当麻寺に伝わる曼荼羅縁起の説話をベースに、藤原南家の郎女主人公に二上山に葬られた大津皇  子をしのぶ
77.「センス・オブ・ワンダー」レイチェル・カーソン、佑学社、3月20日
 :「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要でない。生まれつき人間にそなわっている「センス・オブ・ワン  ダー」を新鮮に保ち続けることの大切さ
78.「縄文人の世界」小林達雄、朝日選書、3月21日                       (2)
 :縄文姿勢方針により定住化を勧めた縄文生活を支えた縄文土器(煮炊き・貯蔵+精神性)
79.「古代研究」第一巻、折口信夫、中公、3月22日                        (1)
 :国文学編:日本文学の発生点を呪言の叙事詩化、物語の分化にみる
80.「地球の長い午後」ブライアン・W・オールティス、早川、3月23日
 :退化という観点で見た人間・地球の未来
81.「グレート・ギャッピー」スコット・フィッツジェラルド、村上春樹訳、中公、3月23日   **
 :村上春樹がこれまでの人生で出会った最も重要な本とし、60歳になったら翻訳に取り組もうと思って   いたが、56歳で訳したもの
82.「古代大和朝廷」宮崎市定、筑摩書房、3月25日            *          (16)
 :目からウロコでスッキリ:「七支刀銘文試釈」「幕末の攘夷論と開国論」
83.「熊を殺すと雨が降る」遠藤ケイ、山と渓谷社、3月25日        *
 :山の仕事・猟・漁法・食事・禁忌、今はなくなったものも含めて、山に生きる人々の自然への畏れ・知  恵・勇気
84.「産霊山秘録」半村良、早川、3月28日                  **
 :400年の時間をまたがる産霊山と「ヒ」の物語
85.「変成譜」山本ひろ子、春秋社、3月28日                 *
 :擬死・再生(成仏)のメカニズムを表す熊野詣、大神楽、中世神仏習合の世界
86.「大荒人頌」山本ひろ子、岩波、3月29日
 :熊野詣、花祭りを通じて中世より伝わる神仏習合の伝統
87.「発情装置」上野千鶴子、筑摩、3月29日
 :「エロスとは発情のための文化的装置(シナリオ)である」と定義し、「性の二重基準」という近代パラ   ダイムが生み出した男女の非対称性を暴く
88.「日本人の心」相良亨、東大出版、3月30日               **      (12)
 :清き明けき心、至誠を尊び古代・中世・近代・現代の西田・和辻まで引き継がれた「日本人の心」
89.「石器時代の日本」芹沢長介,築地書館、3月31日
 :西日本・東日本・北海道の地域特性を区分して石器時代を考える視点に好感がもてる
90.「縄文時代」小山修三、中公新書、3月31日
 :縄文時代の人間の生活を種々の角度から浮かび上がらせようとする努力
91.「東洋的無」久松真一、講談社学術文庫、4月2日                     (4)
 :禅は「聖的」な仏を人間の裏に奪還して「無聖的」なる人間仏を建立せんとするものである
92.「日本遠古之文化」山内清男、築地書館、4月2日
 :昭和14年に「文化は西から」という先入主を排して縄文・弥生・古墳文化を分析
93.「仁斎・徂徠・宣長」吉川幸次郎、岩波、4月3日             **      (14)
 :1)宋儒への反発、2)古典の解釈をその言語から出発させる方法で共通する仁斎・徂徠・宣長の学を  分析する力作
94.「縄文式階層化社会」渡辺仁,六興出版、4月4日             *
 :二つの考古学の定説への反論:1)縄文は階層化社会、2)農業を始めたのは退役狩猟者群
95.「日本史誕生」佐々木高明、集英社、4月5日               **      (2)
 :<日本文化の形成><日本人の成立>をアジア的視野で旧石器・縄文・弥生時代にかけて解き明   かす好著
96.「日本人の誕生」大系日本の歴史1、佐原眞、小学館、4月6日    **
 :旧石器・縄文・弥生文化の成立とその内容を伝統の渡来、固有が織り成したものとして分析する、複  数説も紹介しバランス良し
97.「民俗学の旅」宮本常一、日本図書センター、4月6日          *
 :民俗学について語りながら、人間の生き様についても語る宮本常一自伝
98.「続・照葉樹林文化」中尾・佐々木・上山、中公新書、4月7日     *        (4)
 :「東亜半月弧」(照葉樹林文化センター)と「根菜農耕文化を照葉樹林文化の南方展開型と見る」仮説
99.「照葉樹林文化への道」佐々木高明、NHKブックス、4月7日     *        (2)
100.「照葉樹林文化と日本」佐々木高明、中尾佐助、くもん出版、4月7日
 :ブータン、ネパール、チベットの文化を比較し共通するものとして照葉樹林文化をあげる
101.「言霊」石牟田道子、多田富雄、藤原書店、4月7日          *
 :態度価値の追求しか許されないような環境下でも創造価値を追求する多田富雄の人格の迫力
102.「日本とはどういう国か」鷲田小弥太、五月書房、4月8日       *        (4)
 :過去の歴史を振り返りつつ、そこに現れた事実からも、国と個人の自立についての未来への明るい展  望をみる
103.「日本旧石器時代」芹沢長介、岩波新書、4月8日
 :日本に旧石器時代は無かったという当時の常識の中で、旧石器を発掘する興奮とそれを認知させる
  苦労を描く
104.「弥生時代の始まり」春成秀爾、東大、4月8日
 :弥生文化の始まりには、朝鮮半島からの渡来者のかかわりとそれを受け入れる基盤を用意した縄文  文化があった
105.「縄文文化と日本人」佐々木高明、小学館、4月8日          **       (3)
 :東日本のナラ林文化と西日本の照葉樹林文化が合わさった縄文文化とその伝統、と大陸からの新規  伝来文化の合成
106.「縄文の生活史」日本の歴史02改訂版、岡村道雄、4月9日      *        (2)
 :縄文時代の中での時代区分・地域による違い、縄文人の暮らしぶりにも目を向けた好著
107.「古墳の時代」大系日本の歴史2、和田、小学館、4月9日
 :歴史を書くスタンスと論拠が明確でなく、勝手に自分の気に入った説をその時々に述べる。読むのは
  時間の無駄
108.「古代国家の歩み」大系日本の歴史3、吉田孝、小学館、4月10日
 :教科書の延長線上の突っ込んだ分析の無い著作
109.「王権誕生」日本の歴史02、寺沢薫、講談社、4月11日
 :繰り返しが多く多く(情報のグルグル回り)最初の大風呂敷(著作の意図)とアンマッチ
110.「日本史を読む」丸谷才一、山崎正和、中公、4月12日         *        (2)
 :日本史を世界史の仲で読もうとする:関係の存在よりも関係の不在がより多く日本を作った
111.「王朝の社会」大系日本の歴史4、棚橋光男、小学館、4月12日
112.「稲を選んだ日本人」坪井洋文、未来社、4月13日                     (2)
 :日本民俗文化は単一的な稲作民的農耕文化ではなく、畑作文化との複合
113.「大王から天皇へ」日本の歴史03、講談社、4月13日
 :主たる論点では異説を紹介し、その上で著者の見解を述べるという好感の持てる執筆態度
114.「平安京と木簡の世紀」日本の歴史04、渡辺晃宏、講談社、4月13日
115.「律令国家の転換と「日本」」日本の歴史05、坂上康俊、講談社、4月14日
116.「道長と宮廷社会」日本の歴史06、大津透、講談社、4月14日
117.「東と西の語る日本の歴史」網野善彦、ソシエテ、4月14日       **
 :進んだ西が遅れた東に影響を及ぼし単一民族・文化国日本が誕生したという通説に疑問を投げかけ  る
118.「縄文時代の知識」渡辺誠、東京美術、4月14日
 :従来の土器を中心とした縄文時代論から脱却し、生活全般にわたる記述を目指した好著
119.「武士の成長と院政」日本の歴史07、下向井龍彦、講談社、4月16日          (3)
 :「公地公民」から「荘園公領制」へ、兵制の変化に伴う武士の勃興、院政登場の背景と意識など、良く  掘り下げた好著
120.「古代天皇制を考える」日本の歴史08、大津透他、講談社、4月17日
 :切り口は「神権」と「王権(地上)」。これが天皇制、摂関制、院政でどのように変化したか。しかし、そ  のいずれも不明確にしか描けていない駄作
121.「頼朝の天下草創」日本の歴史09、山本幸司、講談社、4月17日   *
 :頼朝に焦点を当て、京都の朝廷から政権を鎌倉幕府に移した新しいシステムを創造した天才
122.「蒙古襲来と徳政令」日本の歴史10、筧雅博、講談社、4月18日
123、「太平記の時代」日本の歴史11、新田一郎、講談社、4月18日    *
 :後醍醐と義満という日本史の中で異才を放つ二人が登場する時代を描く
124.「沈黙の春」レイチェル・カーソン、新潮文庫、4月17日
 :1962年出版、化学薬品(殺虫剤、農薬)の乱用により<ものみな死に絶えし春>が到来したことを告  げる環境問題の草分けの書
125.「侍賢門院あき子の生涯」角田文衛、朝日、4月19日           *
 :白河法皇の養女・愛人でかつ鳥羽天皇の中宮となったあき子の数奇な生涯をたどる
126.「恋と女の日本文学」丸谷才一、講談社、4月19日            **
 :中国に無くて日本にあるもの、女人文学と女人成仏だとする日本文学論
127.「新しい国家をつくるために」榊原英資、中公、4月20日          **     (19)
 :ムード的構造改革ではなく、具体的な制度改革の必要を説く:経済と政治の二重構造解消、外交・教  育・地方制度、農業、医療改革の必要とその方向を示す
128.「日本経済生か死かの選択」リチャード・クー、徳間、4月21日      **     (6)
 :バランスシート不況への対応は財政出動で、同時に雇用を増やす政策を重点に、不良債権処理は時 間をかけて急ぎ過ぎないことが重要
129.「鎌倉と京」大系日本の歴史5、五味文彦、小学館、4月21日
 :大局的な躍動感の感じられない著述
130.「内乱と民衆の世紀」大系日本の歴史6、長原慶二、小学館、4月22日
 :大規模で連続する内乱の時代であるとともに、猿楽・連歌(能・狂言・茶・花)など日本的芸能文化の  誕生(統合)
131.「周縁から見た中世日本」日本の歴史14、大石直正他、講談社、4月23日
 :日本の周辺部にも中世に活発な動きがあった、それとともに特記すべき境界人の動き
132.「室町人の精神」日本の歴史12、桜井英治、講談社、4月23日  *         (1)
 :徳政一揆について、初めて行き届いた納得の出来る説明に出会えた
133.「たけくらべ」樋口一葉、筑摩、4月22日                *
 :評判どうりの読むに値する一冊
134.「高野聖」泉鏡花、筑摩、4月22日
 :ちょっと期待はずれ
135.「一揆と戦国大名」日本の歴史,久留島典子、講談社、4月23日
 :「戦国大名」と「一揆」をキーワードとする戦国時代
136.「戦国大名」大系日本の歴史7、脇田晴子、小学館、4月24日
137.「天下一統」大系日本の歴史8、朝尾直弘、小学館、4月24日
138.「士農工商の世」大系日本の歴史9、深谷克己、小学館、4月24日
139.「織豊政権と江戸幕府」日本の歴史15、池上裕子、講談社、4月25日
140.「天下泰平」日本の歴史16、横田冬彦、講談社、4月25日
141.「えどと大坂」大系日本の歴史10、竹内誠、小学館、4月25日
142.「近代の予兆」大系日本の歴史11、青木美智男、小学館、4月25日
143、「開国と維新」大系日本の歴史12、石井寛治、小学館、4月26日
144.「美酒について」吉行淳之介、開高健、サントリー、4月26日
145.「縄文発信日本発見」宗左近編、エピック、4月26日
146.「食卓の向こう側ー食育その力ー」西日本新聞、4月26日       *
 :具体例を多く取り上げて「食育」の重要性を説く。」「弁当の日」の実践例は「生きる力」などという頭で  っかちの言葉を超える迫力でせまる
147.「成熟する江戸」日本の歴史17、吉田伸之、講談社、4月28日
148.「開国と幕末変革」日本の歴史18、井上勝生、講談社、4月28日
149.「文明としての江戸システム」日本の歴史19、鬼頭宏、講談社、4月28日
150.「良い財政赤字悪い財政赤字」リチャード・クー、PHP,5月4日    *
151.「日本経済を襲う二つの波」リチャード・クー、徳間、5月4日       *        (2)
152.「維新の構想と展開」日本の歴史20、鈴木淳、講談社、5月5日    *        (3)
153.「近代日本の出発」大系日本の歴史13、坂野潤治、小学館、5月5日
154.「明治人の力量」日本の歴史21、佐々木隆、講談社、5月6日
155.「政党政治と天皇」日本の歴史22、佐藤之雄、講談社、5月6日
156.「二つの大戦」大系日本の歴史14、江口圭一、小学館、5月7日
157.「世界の中の日本」大系日本の歴史15、藤原彰、小学館、5月7日
158.「帝国の昭和」日本の歴史23、有馬学、講談社、5月7日
159.「戦後と高度成長の終焉」日本の歴史24、講談社、5月7日
160.「日本はどこへ行くのか」日本の歴史25、C・グラック、他、講談社、5月7日   *
 :「日本はどこへ行くのか」を次々と登場する著者が、様々な切り口で分析するが、後で考えるとなるほ  どというものが何も残らない分析
161.「消費社会から格差社会へ」上野千鶴子、三浦展、河出、5月7日
 :「下流」意識の増大の背景と心理に、ジェンダー論を加えてのテンポのいい対談
162.「国民の歴史」西尾幹二、産経新聞、5月9日     **           (18)
 :自虐史観をはじめとする従来の歴史学の数々の通説の異常さを、世界史の中で古代から西ヨーロッ   パと日本の先進性を説く
163.「外法と愛法の中世」田中貴子、砂子屋書房、5月10日
 :<原始>の理想を求めて、理念としての<自然>を人工的に作り上げようとしたのが南北朝<王権>  の一特質であった
164.「太平記<よみ>の可能性」兵頭裕己、講談社,5月11日  *        (4)
 :室町幕府の草創を語る正史として編修された「太平記」に歴史物としての物語を見る
165.「横浜富貴楼お倉」鳥居民、草思社、5月11日
 :明治の元勲・経済界の重鎮が通いつめてた横浜富貴楼の女将お倉の一生
166.「院政期社会の研究」五味文彦、山川出版、5月14日
 :日本の中世の始まりは保元の乱後の院政時代にあると主張する
167.「町衆」林屋辰三郎、中公文庫、5月14日
 :平安京時代から説き起こし、京都の生い立ちとそれと不可分の「町衆」とは何かを描く
168.「日本とヨーロッパの同時勃興」地球日本史1、西尾幹二編、産経新聞、5月14日
169.「鎖国は本当にあったのか」地球日本史2.西尾幹二編、産経新聞、5月14日
170.「江戸時代が可能にした明治維新」地球日本史3、西尾幹二編、産経新聞、5月15日
 :平成9~10年にかけて産経新聞に長期連載された「始めて書かれる地球日本史」を三冊の単行本と  してして刊行
171.「日本人のルーツがわかる本」、「逆転の日本史」編集部、洋泉社、5月15日   *
 :形態人類学・遺伝学・考古学・民族学・病理学・免疫学・比較言語学の最先端の研究から日本人の   ルーツに迫る
172.「アジア稲作文化と日本」諏訪春雄、川村湊、雄山閣、5月16日
 :稲作の起源を雲南・アッサムに求めた従来説から最新の研究成果を踏まえ、長江流域起源説を採る
173.「<悪女>論」田中貴子、紀伊国屋書店、5月16日
 :<悪女>はあるが<悪男>は無い。それは社会を支配してきたのは男性であり、思考や言語まで男  性のものを用いざるを得なかったから
174.「弥生文化の成立」金関、角川選書、5月17日         *
 :弥生文化を弥生土器・水田稲作の技術をもつ渡来人により始められたという従来説のパラダイムを大  きく変更し、大変革の主体は縄文人だったと主張する
175.「神話学の知と現代」吉田敦彦、河出書房、5月17日     **        (8)
 :人間は不条理で不合理な存在であり、合理的な解答を出せない問題に、一つの答えを出しているの  が「神話」である
176.「日本語の誕生」安本美典、本田正久、大修館、5月18日             (1)
 :日本語に系統説を当てはめるのは無理であり、日本語・朝鮮語・アイヌ語は「古極東アジア諸言語」   である
177.「縄文語の発見」小泉保、青土社、5月18日                     (2)
 :日本語は一万年前に列島で形成されたが、二千年前に渡来人の勢力下で変形され弥生語になった  と、恐るべき杜撰さで主張する
178.「からごころ」長谷川三千子、中公叢書、5月19日        *        (4)
 :「日本人であること」につながる五つの小論。圧巻は欧米を中心とする「国際社会」は「国際化」せよと  の主張
179.「律令国家と古代の社会」吉田孝、岩波、5月19日       *
 :日本の「古代国家」は律令国家として成立したが、中国との比較、律令制(構想)とその実施(実態)  とのギャップとその変遷を丁寧に追いながら日本の律令制の特徴に迫る力作
180.「世界の神話をどう読むか」大林太良、吉田敦彦、青土社、5月21日
 :神話の解釈は、予断をもたず、色々な道具の入った道具箱から状況にあった道具を取り出して行うこ  とが大事だと説く
181.「図説日本の漢字」小林芳規、大修館、5月21日
 :中国から日本への漢字の伝来以来、カタカナ・仮名の発生とその変遷を幅広い観点で分析、日本の  漢字の全体像に迫る
182.「王権のコスモロジー」水林彪、金子修一、渡辺節夫、5月21日
 :日本・中国・ヨーロッパの比較の中で、王権のコスモロジーのあり方を紹介
183.「クビライの挑戦」杉山正明、朝日選書、5月22日        **      (6)
 :「草原の兵力」「中華の経済力」「ムスリムの商業力」を結びつけたクビライの国家構想は史上初めて  ユーラシア東西を陸上と海上でつないだ
184.「遊牧民から見た世界史」杉山正明、日経、5月23日      *
 :西洋中心の世界史、中国中心の東洋史を乗り越えて、遊牧民の立場見た世界史=真実の世界史に  迫る力作
185.「世界の歴史5 西域とイスラム」岩村忍、中公文庫、5月24日 **
 :西アジアの遊牧民を中心に据えて東西交流の歴史を、行き届いた考察で描く、1975年発行とは思え  ない古典的労作
186.「最後の遊牧帝国」宮脇淳子、講談社選書、5月24日
 :最後の遊牧帝国ジュガールの興亡を描くことにより、従来の歴史観の歪み・誤りをつく
187.「モンゴル帝国の興亡」上・下、杉山正明、講談社現代新書、5月25日   **
 :ユーラシア大陸の東西にまたがる世界帝国モンゴルの興亡を描く、従来のヨーロッパと中国中心の歴  史観を否定し新しい世界史を詳細にわたって提唱
188.「海から見た戦国日本」村井章介、ちくま新書、5月26日
 :「列島史から世界史へ」という著者の意図は、モンゴルのユーラシア大陸の統一・世界システムの構  築という歴史の本流を理解していないため、あちこちから集めてきた材料を切り貼りしたパッチワーク  に終わっている
189.「日本文化史」川瀬一馬、講談社学術文庫、5月26日
 :良かったのは第一講、序説(総論)で文化とは何か、その本質に迫る方法とはについての持論を展開 した部分
190、「「日帝」だけでは歴史は語れない」呉善花、三交社、5月27日
 :韓国の反日の源泉を一千年以上に渡る「華夷思想」にもとづく「夷荻」としての日本蔑視の裏返しとみ  る
191.「未開の顔文明の顔」中根千枝、角川文庫、5月27日     *
 :タイトルから受ける印象とは異なり、「未開」アジア「文明」は欧米という通念を否定し、遅れているよう  に見えるのはそこに異質なものがあるからだと説く
192.「歪められた朝鮮総督府」黄文雄、光文社、5月27日      *
 :日本の植民地台湾で育った著者が自分の実体験との比較をふくめ「日帝36年」史観の歪みを突く
193.「北の十字軍」山内進、講談社、5月28日             *       (2)
 :三世紀に及ぶゲルマンとスラブの相克、アメリカ大陸アジアへのヨーロッパの拡大のキッカケを作った  「北の十字軍」の思想と歴史
194.「二十世紀をどう見るか」野田宣雄、文春新書、5月28日    *       (4)
 :二十世紀第二次大戦までで旧帝国は全て解体した。その後のソビエト崩壊をへて、グローバル化が  進行するなかで「文明の衝突」を回避する道を探る
195.「シンポジウム 自然科学の哲学」村上陽一郎他、学生社、5月29日 *   (2)
 :村上陽一郎の「科学は没価値的でも価値ニュートラルでもなく、非常に強い価値をもっている」との提  起をうけての討議
196.「歴史哲学の地平」加藤尚武、河出書房、5月30日       **      (4)
 :歴史哲学をヘーゲルの学問を中心に、学問的にも歴史的・社会的にも幅広く鋭く討議
197.「日本人の本能」渡部昇一、PHP,5月30日
 :歴史の刷り込みについてという副題が示すように、日本人の民族的刷り込み、日本人の品格、ゆが   んだ戦後論を展開
198.「アジア主義」現代日本思想体系9、竹内好編、筑摩、5月31日  *
 :「アジア主義」という定義不可能なテーマをアジア主義を唱えた有力者の代表著作のハイライトを集   約・編集・提示することにより理解させる
199.「庶民の発見」宮本常一著作集21、未来社、5月31日       *
 :庶民の暮らしを農・漁・山村に求め、古くは記紀の昔から昭和の現代まで、豊富な知識と体験を交え  二本の庶民の姿を描く
200.「塩の道」宮本常一、講談社学術文庫、5月31日
 :人間にとって無くてはならぬ塩だが、意外とその研究は未着手だった。太古の縄文時代からさかのぼ  り、塩の生産方法の変遷にともなう流通ルート・方法・暮らしの変化を多角的・立体的に分析
201.「人間の思想の歩み」山崎正一、6月1日               *
 :文明の発生から現代までの「人間の思想の歩み」を大きな流れに整理して、的確に捉えた良く出来た  入門書
202.「日韓二千年の真実」名越二荒之助、国際出版、6月2日      **     (2)
 :韓国の「反日」を乗り越え「日韓共鳴史」を構築するために日韓二千年の交流史をたどりながら、韓国  から見た日本の姿を十分に描くと同時に、共通の土俵つくりにつながる数々の事例を掘り起こす
203.「脱亜論」福沢諭吉選集第七巻、岩波、6月2日
 :僅か5ページの短文であるため、中韓の自主独立が中韓にとっても日本にとってもベストであるという  福沢諭吉の真意が伝わりにくいのが残念
204.「文明論之概略」福沢諭吉、岩波、6月2日               *
 :自国独立の四字を掲げ、内外の別を明らかにし衆意の由るべき道を示す。「国の独立はすなわち文   明なり」
205。「オリエンタリズム」エドワード・W・サイード、平凡社、6月3日    *
 :オリエンタリズムとは、オリエントが西洋より弱かったために、オリエントの上に押し付けられた、本質  的に政治的な教義であり、それはオリエントのもつ異質性をその弱さに付けこんで無視しようとするも  のである
206.「現代哲学の最前線」第二回「哲学奨励賞」記念シンポジウム、広松渉他、河出書房、6月4日
                                          *        (2)
 :「主観ー客観」「意識作用ー意識内容ー意識対象」という自我の二元論を乗り越えて、認識・存在・実  践哲学の新しい地平構築へのチャレンジ
207.「学問のすすめ」福沢諭吉、慶應大学、6月4日          *
 :「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」「一身独立して一国独立する」などの福沢諭吉の名  語録をふくめて、17の切り口で「学問のすすめ」をおこなう
208.「民話を生む人々」山代巴、径書房、6月5日
 :広島の婦人会活動、生活記録活動にかかわる中で、「現代の民話」創造により農村女性が連帯し女  性の地位向上を模索する道筋を模索する
209.「石見日原村聞書」大庭良美、未来社、6月5日         *
 :中国山地の石見という農山村の名も無い人々が明治の初めから大正にかけて精一杯生きてきた記   録
210.「大英帝国衰亡史」中西輝政、PHP,6月6日           *        (4)
 :大英帝国衰亡の原因を、第一次大戦がもたらした、1)イギリス人の「身心喪失」、2)新しい世界秩   序、3)領土拡大による「関心」の散乱に見る
211.「学力崩壊」和田秀樹、PHP文庫、6月7日            *        
 :「ゆとり教育」が学力崩壊をもたらした。「受験勉強」は子供のメンタルヘルスにも知的発達のためにも  良いと主張する   
212.「脱亜入洋のすすめ」山崎正和対談集、TBSブリタニカ、6月7日 *      (4)
 :通説に反し過去に「過去にアジア文明」はなかったといい、この100年のアジア太平洋諸国の近代化  成功の共通経験をベースにアジア=太平洋文明が生み出されつつあると分析  
213.「ナショナリティの脱構築」酒井直樹他、柏書房、6月8日
 :普通、ナショナリティを論じる場合、切り口を決めるとその決められた狭い視点内でのみ検討が行われるが、この本の特色は、切り口そのものが幅広く学際的である所
214.「日本は世界のモデルになりうるか」、山崎正和他、文芸春秋、6月10日 **   (13)
 :日本の特質をパラドキシカルな無常観にあると捉え、「道」ならびに現代における「わび」の具現化に   脱工業化社会の行き詰まりからの突破口を期待する
215.「ロハス夢工房」藤原直哉、あ・うん、6月11日
 :LOHAS(Lifestyle Of Health And Sustenability)とは何かを、具体的な事例を数多く紹介しながら、
  21世紀を豊かに生きることを提案
216.「家族に何が起きているのか」ステファニー・クランツ、筑摩書房、6月12日
 :私たちが抱えている問題を伝統的家庭の崩壊のせいにする風潮では問題解決につながらないとし、  歴史学的・社会学的なアプローチの必要性を説く
217.「マッド・マネー」スーザン・ストレンジ、岩波、6月13日                  (2)
 :富の創造を最大化する選考がマッド・マネー跳躍の源泉であり、公平性と安定性を選考するように変  化しなければ、政治が新しい政治・経済・社会構造を作り上げることはできない
218.「大停滞脱却の経済学」原田泰、PHP,6月13日       *            (5)
 :日本の空白の十年もアメリカの大恐慌も必要なマネーを的確に供給しなかった金融政策の失敗にあ  リ財政出動の効果は全くないとするガチガチのマネタリストの主張。リチャード・クーのバランスシート  不況説が最も説得力があると思えるが、一言も触れない不思議
219.「資源物理学入門」槌田敦、NHKブックス、6月14日     **          (4)
 :人間が生活すれば汚染が発生するが、土はその汚染を分解し再び農作物とした。石油文明は土の   分解能力を超えて汚染を生み出すので、持続可能ではない。土の汚染分解能力範囲内の生活に人  類は戻るべきと説く
220.「愛国の作法」ハン・カンジュン、朝日新聞、6月14日
 :『愛国論」を靖国問題を中心にして組み立てた所にこの本の『愛国論」としての失敗の原因がある
221.「歓待について」ジャック・デリダ、産業図書、6月14日
222.「世界同時バランスシート不況」リチャード・クー、村山昇作、徳間書店、6月15日 *   (3)
 :リーマンショック以降の世界同時不況はバランスシート不況であり、唯一有効な対策は財政出動であ  ると主張
223.「三韓昔がたり」金素雲、講談社学術文庫、6月15日
 :新羅、高句麗、百済の三国の興亡の歴史を朝鮮が日本の植民地だった昭和16年に未来を背負う日本の若者にも理解して欲しいとの著者の思いでまとめられた
224.「源氏物語」上・中・下、紫式部、与謝野晶子訳、河出書房、6月20日       ***
 :とにもかくにも読み応えあり、日本人必読の書。平安時代の社会・貴族の生活が良くわかると同時に  現代にまで繋がる日本人の人生観・美的感覚等に多大の影響を与えた書であることが体感できる
225.「身体の現象学」市川浩ほか、河出書房、6月21日           *        (5)
 :市川浩『精神としての身体」に集約された身心論を中心に討議
226.「仮面の時代」坂部恵ほか、河出書房、6月22日            *
 :非常にリジットな体系家というカントを新しいイメージで分析。大和言葉でどこまで哲学が可能かを
  追求
227.「21世紀の歴史」ジャック・アタリ、作品社、6月23日          *        (6)
 :世界は2050年ごろまでには、市場は<超帝国>を形成し、これを押しとどめようと<超紛争>が発   生、人類の滅亡を食い止めるため<超民主主義>が実現する
228.「鈴木大拙の世界」鈴木大拙、燈影舎、6月23日            *        (4)
 :東洋的なるものは、西洋的なるものと反対に『知と行と一なるところ」からその源を発している
229.「日本文明と近代西洋」川勝平太、NHKブックス、6月25日      *        (2)
 :日本は維新開国によりイギリスの木綿工業との競合に直面したという通説を「物産複合」の観点で
  具体的に木っ端微塵に粉砕
230.「革命について」ハンナ・アレント、中央公論、6月27日         **       (14)
 :主としてフランス革命とアメリカ革命の比較分析を通して革命の本質に迫る。アメリカ革命においても革命の精神「公的領域への参画」がまもなく忘れられ、「公的空間の創設する」永続革命の必要を説く
231.「日本の名著」近代の思想、桑原武夫編、中公新書、6月29日    *        (1)
 :明治維新から太平洋戦争の終わりまでの日本人の精神的苦闘の跡、近代の思想遺産50冊の名著   を紹介
232.「和魂洋才の系譜」平川祐弘、河出書房、6月29日           *
 :「和魂洋才」「洋魂洋才」「和魂和才」また平安の「和魂唐才」さらにドイツ・フランスの事例等もあげな  がら古今東西にわたる切り口で語る
233.「ニッポン日記」マーク・ゲイン、ちくま学芸文庫、6月30日       **       (1)
 :終戦直後に日本に駐在したアメリカ人新聞記者の綴る占領政策、日本側の対応、日本人の暮らし。アメリカ人ジャーナリストであるが故に知りえ、書きえた日本のヴィヴィドな戦後史
234.「倫敦!倫敦?」長谷川如是関、岩波、7月2日
 :明治末期にロンドンを訪れた筆者の「何でも見てやろう」精神に脱帽。好奇心の塊であらゆる角度から  ロンドンを描きつくす
235.「福沢諭吉」西部邁、文芸春秋、7月2日                  *        (4)
 :昭和の末期、体制派からも反体制派からも自分らの教義の始祖と持ち上げられた福沢諭吉を「境界   人」と定義しその実像に迫る
236.「表裏源内蛙合戦」井上ひさし、新潮社、7月3日             **
 :芝居とコントと歌と踊り、駄洒落、語呂合わせ何でもありの奇想天外・抱腹絶倒の井上劇場代表作
237.「無文字社会の歴史」川田順造、岩波、7月3日                       (2)
 :「文字社会」と「無文字社会」を二つの相互に断絶した社会とみなすことの非を訴える
238.「語りつぐ戦後史」上・下、鶴見俊輔対談編、講談社文庫、7月4日   *       (3)
 :鶴見俊輔が日本を代表する34人の思想家と対談、それぞれの人間にとって戦争とは何だったのか、  また戦後に何を求め、それはその通リ実現されたのかを語りつぐ
239.「受容と創造の軌跡」日本文明史1日本文明史の構想、上山春平、角川、7月5日 *  (10)
 :ヨーロッパ中心史観、人類学史観の文明・文化の定義の再構築から始め、日本史にそれを適用し、   新しい歴史時代区分を提案
240.「島国の原像」日本文明史2文明の土壌、水野正好、角川、7月6日
 :史書+考古学+「想念」で描く古代国家論、縄文を「広場」弥生を「溝」というキーワードで読みとく
241.「源氏物語」1~5、谷崎潤一郎(新新)訳、中公文庫、7月10日    ***      (1)
 :谷崎潤一郎は三回現代語訳を行っており、この本は最新訳、晶子訳に比べて原文の味わいを伝え、  かつ訳がこなれているので読みやすい
242.「源氏物語」別巻、谷崎潤一郎訳、角川、7月10日
 :隆能源氏物語絵巻、年立図表,人物略説など
243.「宮都の風光」日本文明史3唐文明の導入、平田稔、角川、7月11日           (2)
 :唐文明の受容としての藤原京にはじまる宮都つくりに発揮された日本の独自性「遷都という政治目標  があって宮都の造営がはじまる」
244.「みやびの深層」日本文明史4日本文明の創造、山折哲雄、角川、7月12日  *    (4)
 :日本文明の特徴である「みやび」は、一千年前後に「色ごのみ」「もののあはれ」などをその中核とし   て形成されてきた
245.「乱世の創造」日本文明史5文明の展開、村井康彦、角川、7月12日           (2)
246.「太平の構図」日本文明史6文明の成熟、野口武彦、角川、7月13日
 :徳川260年の世界市上類のない太平をもたらした要因ならびにそれを崩壊させた要因は何かに焦点を当てて徳川時代の本質に迫る
247.「地球文明の場は」日本文明史7新しい旅立ち、加藤祐三、角川、7月13日       (8)
248.「太白山脈」金達寿、筑摩、7月15日           ***               (1)
 :太平洋戦争の終結した8月15日で植民地から独立国になると信じた朝鮮の人々のアメリカの委任統  治下での独立を目指す闘いを描く                
249.「東山時代に於ける一しん紳の生活」原勝郎、筑摩叢書、7月16日   *        (2)
 :足利時代の公家三条西実隆の60年にわたる日記を通して浮き彫りにされる宮廷・公家の仕事・収    入・暮らしぶり
250.「王朝のみやび」目崎徳衛、吉川弘文館、7月17日                      (4)
 :「みやび」とは、国政の場である大内裏にたいする天皇の生活の場である内裏の優越であり、政治に  たいする文化の優越である
251.「平安文化史論」目崎徳衛,桜風社、7月17日
252.「紀貫之」目崎徳衛、吉川弘文館、7月18日        *
 :「古今集」の編纂者、『土佐日記」の作者としての紀貫之に焦点を当てて、時代背景・生い立ち・官    職・交友関係などを明らかにする
253.「日本文化史研究」内藤虎次郎、創元文庫,7月19日   *          (6)
 :日本文化は中国文化の模倣ではなく、神道、歌道、物語、書道などに独自色を持つ文化である
254.「平家物語」上・下、岩波古典文学大系、7月20日     *
 :「闘い」「仏教」『平安朝の恋愛談・風流談」を主題とする琵琶法師が語る流れるような文体の国民文   学
255.「日本文明77の鍵」梅棹忠夫編、創元社、7月21日」   *
 :「伝統文化が現代にも生き続ける」「世界の最先端工業国」という日本の持つ相反すると思われる二   つの顔を結びつける77のキーワード
256.「保元物語」、7月21日
 :為朝賛歌
257.「平治物語」7月21日
 :平家(清盛)の打倒源氏(義朝)と頼朝・九郎判官の助命、そして源氏の平家打倒に至る物語
258.「伊勢物語」、7月23日                     *
 :209首の和歌を含み「古今集」「源氏物語」とともに早くから歌人の必読の教養書としての名声を確立
259.「大和物語」上・下、講談社学術文庫、7月24日       *
 :173段からなる、国風文化勃興期の「あはれ」の情感が漂う歌物語集
260.「紫式部日記」上・下、講談社学術文庫、7月25日     **
 :藤原道長家繁栄賛美の女房日記に私的憂苦の念を織り込んで形成された自己表出。自己と他人/社会を冷静に見つめ、それに対処する成熟した人間の到達した人生観に共感を覚える
261.「大空のサムライ」上・下、坂井三郎、講談社α文庫、7月26日  *
 :「大空のサムライ」零戦の撃墜王といわれた坂井三郎の太平洋戦争記
262.「枕草子」上・中・下、清少納言、講談社学術文庫、7月28日    *
 :一条天皇の中宮定子の宮廷文化賛美を和歌形式を突き破る新しい表現方式で描く
263.「方丈記」鴨長明、小学館、7月29日
 :方丈(約三メートル四方)の庵で和歌・管弦(琴)・仏典を友とし、閑居で人生を見つめた書
264.「徒然草」吉田兼好、小学館、7月30日                 *
 :王朝以来の精神伝統を掬い取ると同時に世の迷妄を論理的な鋭い筆致で描く
265.「歎異抄」小学館、7月30日                        *         (1)
 :阿弥陀仏の本願を核とする親鸞の信心を正しく伝えたいという願いと異説への反論の書
266.「土佐日記」紀貫之、小学館、7月30日
267.「蜻蛉日記」道綱母、小学館、7月30日
268.「とはずかたり」後深草院二条、小学館、7月30日           *
269.「古今和歌集全評釈」上・中・下、片岡洋一、講談社、8月1日    *
 :執筆依頼以来0年、古今集の異本、諸解釈、評論等膨大な資料を踏まえ,鑑賞と評論を含め約三千ペ  ージに及ぶ力作
270.「栄華物語」上・中・下、日本古典全集刊行会、8月4日        *
 :古くより「世継物語」すなわち「歴史小説」といわれ、正編30巻、続編10巻よりなる。源氏物語の手法  で書かれた時の天皇・関白摂政家の歴史
271.「大反転する世界」ミシェル・ボー、藤原書店,8月4日          **        (16)
 :アクラシーがもたらした地球と人間と資本の再生の危機を乗り越えるための九つの提案
272.「アジア史概説」宮崎市定、中公文庫、8月5日             **
 :日本史・東洋史・世界史をそれぞれ独立した別個のものとして捉える従来の歴史学の因習を打ち破   る。歴史をそれぞれの地域の交流とそれがもたらす相互影響と同時にそれぞれの独自性を全体とし  て描く。歴史学に新しいパラダイムをもたらした力作
273.「アングロサクソン・モデルの本質」渡部亮、ダイヤモンド、8月6日  *          (10)
 :大陸ヨーロッパ・日本とは異質な「アングロサクソン・モデル」の本質と功罪を説きながら、グローバル・  スタンダードとなりつつある「アングロサクソン・モデル」を日本が受け入れられるかを問う
274.「経営理論 偽りの系譜」ジェイムス・フーブス、東洋経済新報、8月7日
 :アメリカでマネージメント理論の大家と歴史的に見なされてきた人々の理論とその功罪を分析
275.「リアルオプションと企業経営」山口浩、エコノミスト、8月8日
276.「暴力とグローバリゼーション」ジャン・ボードリヤール、NTT出版、8月8日
 :2003年ボードリヤール来日時の三つの講演「グローバリズムと暴力」「出来事とヴァーチャル性」「イメ  ージの暴力・イメージに対する想像力」をまとめたもの
277.「変貌する民主主義」森政稔、ちくま新書、8月8日
 :「自由主義」と「民主主義」という切り口で変貌する民主主義を問題点を中心に分析。しかし、著者も   「終わりに」で書いているように今後の民主主義をどうすればいいのか分からないという尻切れトンボ  の書
278.「経済は感情で動く」マッテオ・モッテルリーニ、紀伊国屋、8月12日     *      (3)
 :ホモ・エコノミクス、合理的判断を行う人間によって経済は動くという経済学の前提に異論を唱え、経   済は感情で動くと豊富な事例を挙げて主張
279.「リスク社会を見る眼」酒井泰弘、岩波、8月16日
 :「リスクはクスリ、クスリはリスク」という著者の信念を豊富な実例を挙げながら述べる。リスクの「プラ  ス面」と「マイナス面」両方に目を向ける
280.「太平記」角川、8月19日                              *
 :「平家物語」と並ぶ軍記物の傑作。後醍醐天皇の即位から、鎌倉幕府の滅亡、建武中興と崩壊、足   利幕府の成立に及ぶ
281.「塵塚物語」教育社新書、8月19日                        *
 :室町末期に同時代を「さかしまの世」とみた作者の時代を超えて生きた名君、名師の生き様への共感  の書
282.「連環記」幸田露伴、岩波文庫、8月20日                    *
 :寂心上人(慶滋保胤)と上賀上人、寂照と玉環が連なり、結びつき合った一つの幻想的な総体を作り  上げる
283.「愚管抄」慈円、岩波、8月20日 
 :一切ノ法ハタダ道理ト云二文字ガモツナリ。其外ニワナニモナキ也」という史論を十三世紀初頭という  早い時期に展開
284.「新ネットワーク思考」アルバート=ラズロ・バラバシ、NHK,8月21日   *      (9)
 :インターネットのようなスケールフリー・ネットワークには、ハブとベキ法則が現れ、「金持ちはより金持  ちに」現象が出現する。生命現象も同様な仕組みで営まれている
285.「環境と文明の世界史」石弘之・安田喜憲・湯沢赳男、洋泉社、8月22日 **     (10)
 :小麦と肉食の「動物文明」からコメと魚の「植物文明」への移行に、環境破壊による人類滅亡の危機   からの脱出の希望がかかっている
286.「琴碁書画」青木正児、春秋社、8月23日
 :中国文化人のたしなみとしての「琴碁書画」を始めとして知識人の生活についてに随筆集
287.「華国風味」青木正児、岩波文庫、8月23日
 :中国の食をめぐる12のエッセー
288.「日本は俳句の国か」加藤郁ヤ、角川、8月24日                *
 :俳句の本質は何かを、幅広くかつ深く問い詰めた力作。滑稽(諧謔)と禅味。伝統・歴史をふまえなが  ら、いかに新風を付け加えていくか
289.「俳人 風狂列伝」石川桂郎、角川選書、8月24日
 :11人の俳人を取り上げ、あくまでおのれの詩境を守った、その風狂ぶり・奇人ぶりが筆者の暖かい観  察眼で描かれている
290.「中国飲酒詩選」青木正児、平凡社東洋文庫、8月25日            *
 :飲酒についての中国詩を陶淵明・李白・白楽天の三人の作品を中心に編集
291.「記憶の茂み」斉藤史歌集、三輪書店、8月25日                *
 :斉藤史歌集をジェームス・カーカップ・玉城周が英訳した和英対訳本。斉藤史のほぼ一生の生き様・   感性が伝わってくる
292.「中国意外史」岡田英弘、新書館、8月27日                   *     (2)
 :中国(人)の特徴を恋愛・秘密結社・笑・漢字・死などを取り上げて分析。特に印象に残ったのは表意  文字としての機能しかもたない漢字を使っての意思疎通の難しさ
293.「ハ宗綱要」上・下、平川彰、大蔵出版、8月28日                *     (27)
 :鎌倉時代に凝然が書いた「八宗綱要」(倶舎・成実・律・法相・三論・天台・華厳・真言の八宗教の要   約)。手際よく、簡潔に八宗教の特徴をまとめている
294.「空の論理」中村元選集代22巻、春秋社、8月30日              **    (20)
 :仏教とくに大乗仏教の中核をなす「空の論理」をナーガールジュナの「中観」を中心に説明。それは
 、虚無説ではなく、実践的に一切の執着やこだわりから脱することを目指す
295.「定住革命」西田正規、新耀社、9月1日
 :人類500万年の歴史の中で定住期は1%以下であり、遊動生活が破綻した結果誕生したものであ   り、それを成り立たせる前提条件が必要である
296.「増補 農業革命論」飯沼二郎、未来社、9月1日                *     (8)
 :産業革命期に農業革命はヨーロッパだけでなく日本でも起こっていたと主張、共通点は中耕農業
297.「気候変化と人間」鈴木秀夫、大明堂、9月2日                        (2)
 :過去一万年の気候変動の歴史を地域ごとに千年単位で、直近千年は百年単位で分析、纏めたもの
298.「脱牛肉文明への挑戦」ジェレミー・ラスキン、ダイヤモンド、9月2日
 :牛を初めとする家畜の飼育に穀物の約3分の1が使われ、かつ深刻な環境破壊(熱帯雨林減少、土  地汚染、水資源枯渇など)と健康被害(肥満、心臓病など)などを考えると牛肉文明からの脱却が必須
299.「文明の多系史観」村上泰亮、中公叢書、9月2日               *      (8)
 :単系的発展史観、トインビーの親子文明論、梅棹の日本とヨーロッパの第一地域のみが正統な発展  を遂げたとするいずれの見解も「単系的発展史観」として退ける
300.「日本風景論」志賀重昴、大修館、9月2日                   *
 :日本の風景の洵美さが日本人の審美心を過去・現在・未来にわたって涵養する原動力であるとして   明治人のナショナリズムを鼓舞した書
301.「クチコミはこうしてつくられる」エマニュエル・ローゼン、日経、9月3日
 :ネットワーク理論を基本的にはベースとして、ネットワークを活用してクチコミ(バズ)をいかにして広げ  るかを説く
302.「目に見えないもの」湯川秀樹、講談社学術文庫、9月3日         *
 :終戦の翌年に出版された本とはおもえない。素粒子論の入門書として、今でもそのまま使える。人間  性に対する自覚と信頼を離れては、哲学・科学はその存在意義を失うと主張
303.「日本の橋」保田與重郎選集第二巻、講談社、9月5日           *
 :ローマの石橋と比べるとみすぼらしい日本の橋ではあるが、万葉の時代以来数々の歌枕として日本  人の心にその美しい姿をとどめている
304.「絶対平和論」保田與重郎選集第二十五巻、講談社、9月6日       **     (14)
 :近代の戦争は、物質文明の繁栄追及と不可分であり、物質文明を否定し、精神文明(道義・美)の追  求を第一義とする日本(アジア)の伝統的生活を守り、広げていくことにより、絶対平和が実現できる  とする
305.「日本開化小史」田口卯吉、講談社学術文庫、9月7日           **
 :田口史観に基づき、神武の建国から徳川幕府の倒壊までを描く骨太の歴史書。独自の史観が明確  で軸が全くぶれていないため、スッキリと頭に入る
306.「明治維新とアジアの革命」保田與重郎選集第二十五巻、9月9日    **
 :西欧の植民地であったアジアにとって、自国の独立は思いも及ばぬことだったが、日露戦争の日本  の勝利はそれが可能であることを実感せしめた。そして日露戦争の勝利をもたらしたものこそ明治維新 であった
307.「行動経済学」依田高典、中公新書、9月10日                         (2)
 :長い間経済学が前提としてきたホモエコノミクス(超合理的人間)を、感情などにより非合理的に行動  もとる生きた人間の行動原理に迫る
308.「華厳の思想」鎌田茂雄、講談社、9月10日                 **       (19)
 :すべての生きとし生けるものの救済可能性を説いた大乗仏教のなかで、「一即多、多即一」「融通無  碍」としての仏の世界を描く華厳経
309.「唯識十章」田川俊英、春秋社、9月12日                   *        (20)
 :人間の心の構造・はたらきに透徹した考察を加えて確立された八識理論=前五識+第六・意識+未   那識(自我への執着心)+阿頼耶識(人間の心の基底となる無意識)
310.「私のアラブ・私の日本」U・D・カーン・ユズフザイ、CBSソニー、9月13日
 :日本人もアラブ人もお互いを良く知らないで、間違ったイメージを持っている、その一因は西欧人の目  で見た日本人像・アラブ人像に頼っていることにある
311.「法華経の行者日蓮」姉崎正治、講談社学術文庫、9月14日        *        (8)
 :1916年(大正5)に出版された日蓮の一代記。何が真の仏教かを窮めるためあらゆる仏教(十宗)を比 較,仏陀の教えは法華経に集約されているとの革新に達し、自説を説き、鎌倉幕府、他宗派と鋭く対立 し、数々の迫害に会いながら屈せず、法華経解釈を深めつつ自らの信ずるところを実践・闘い続けたそ の一生。いまだに日蓮研究の最高峰である力作
312.「天皇の原理」小室直樹、文芸春秋、9月15日                *         (2)
 :ユダヤ教、キリスト教、儒教との比較で日本教との比較で日本教との異同を明らかにし、天皇制復活  の原理を説き明かす
313.「国家改造案原理大綱」北一輝全集Ⅱ、みすず書房、9月15日
 :大正八年(1919年)第一次大戦直後に、困難な国際情勢の下で、日本の進むべき方向を示す
314.「大川周明」大塚健洋、中公新書、9月15日                  *         (6)
 :西洋列強の侵略から逃れるため、日本主義・統制経済・アジア主義を唱えた復古革新主義者の一生
315.「世紀末・戦争の構造」小室直樹、徳間文庫、9月17日                      (1)
 :戦争・国際法の基礎となったキリスト教本質とは何か、それとの対比でイスラムの本質を分析,湾岸戦
  争で戦争の本質が変わったと主張
316.「日本とアジア」竹内好、ちくま学芸文庫、9月17日              **       (4)
 :終戦から1965年までに書かれたアジアをめぐる論文を集めた本。「近代の超克」「日本とアジア」「戦  争責任論について」が秀逸
317.「凡夫が凡夫に呼びかける唯識」大田久紀、大法輪閣、9月18日      ***     (30)
 :唯識とは何かを凡夫にも分かるように、凡夫の生活に引き付けて、しかも理論のレベルを落とさずに   説明することを成し遂げている稀有な入門書
318.「唯識とは何か」横山紘一、春秋社、9月19日                 **       (17)
 :本書は鎌倉時代の僧良遍が実母のために法相唯識の教理を平易にまとめて「法相二巻抄」としたも  のの評釈書、唯識とは何かを全体的に網羅する格好の入門書
319.「評釈夜船閑話」陸川堆雲、山喜房仏書林、9月21日
 :白隠が26歳のとき、京都白川の山中に白幽真人を訪ねて内観の秘訣を聞く
320.「摂大乗論釈」世親釈、玄奘訳,大蔵出版,9月22日               *
 :龍樹「中論」とならぶ大乗仏教の論書である無著「摂大乗論」を世親釈、玄奘訳でまとめたもの
321.「倶舎論」世親、桜部建、大蔵出版、9月22日                           (10)
 :仏教の教義を学ぶとき最も長くかつ幅広い人々が使ってきたのが倶舎論
322.「西行」高橋英夫、岩波新書、9月23日
 :西行以前には「心」言語の底に埋没していた。「心」をあらわに意識した始めての人西行
323.「多元的知能の世界」ハワード・ガードナー、日本文教出版、9月24日             (6)
 :従来のIQ偏重(=言語能力・論理数学的能力)は、人間の正しい能力評価に繋がらない。空間・身体 運動・音楽・人間関係・内省的能力をふくめて多元的能力を人間は有しており、それらの多元的能力を 育てる教育・評価が重要と主張
324.「真皇正統記」畠山親房、岩佐正校注、岩波、9月25日             *       (4)
 :南北朝時代、南朝の正統性を主張する。何故武家の世になったかを冷静に分析
325.「読史余論」新井白石、岩波、9月28日                       *       (4)
 :本朝天下の大勢九変して武家の世になり、武家の代さらに五変して当代に及ぶ。清和天皇から徳川 までの歴史の変遷を描く
326.「日本外史」頼山陽、岩波文庫、9月29日                      **      (4)
 :従来の歴史書との違いは「勤皇」「尊王」が武士にとって至上の義務としているところ。生き生きと登  場人物を描く筆力
327.「荻生徂徠」上・中・下、野口武彦、中公新書、9月29日              **     (4)
 :朱子学・仁斎学を超えた徂徠の思考の発展に肉薄。「道」という語の意義の二重把握、メタ言語の発 見にあるとする
328.「成唯識論」護法著、玄奘訳、第一書房、10月1日                 *       (4)
 :5~6世紀に世親著を護法が解説したものを玄奘が漢訳した大乗仏教の最も有名な解説書
329.「訳注大乗起信論」古賀英彦、思文閣、10月2日                  *       (3)
 :馬鳴著大乗仏教の基本教説をまとめたもの、衆生も「如来蔵」(如来を入れる蔵)を有しているので仏 になれると考える
330.「華厳五教条」鎌田茂雄、大蔵出版、10月3日                    *     (24)
 :法蔵著「空観」龍樹「中論」の理論を取り入れつつ独自の論に発展させ「華厳」が最高位の仏教であ  ると主張
331.「靖献遺言」浅見洵斎、岩波文庫、10月4日                            (1)
 :八人の中国の忠臣烈士の遺文を採録、忠臣の道とは何かを説く
332.「印度六派哲学」木村泰賢、丙午出版、10月5日                  **    (12)
 :大正四年に発行され、いまだに印度六派哲学の解説書としての揺るぎない地位を誇る
333.「江戸商売図絵」三谷一馬、立風書房、10月7日
 :江戸時代の江戸を中心とした商売の様子を当時の絵に解説を加えて庶民の暮らし振りを伝える
334.「和泉式部日記」角川ソフィア文庫、10月7日
 :和泉式部が敦道親王との恋の成り立ちの10ヶ月をやり取りした和歌を交えて綴った日記
335.「出定後語」富永仲基、中央公論、10月7日                     *      (4)
 :仏教の諸学派を分析し、後に出来たものほど既存の学説に加上していると結論。儒・仏・道いずれの  宗教も善を行うことを説いており、善を行うことが重要
336.「とはずがたり」後深草院二条、岩波、10月8日                   *
 :回想自伝日記文学作品、後深草院の寵幸をえ、さらに「雪の曙」「有明の月」との契りむすび、その後
 の出家生活までを描く
337.「アジア的身体」梁石日、青峰社、10月8日
 :梁石日の評論集、在日二世という生い立ちを踏まえ、差別問題、身体性を切り口に日本人とは何か  に迫る
338.「「いき」の構造」九鬼周造、岩波文庫、10月9日                 *      (6)
 :運命によって「諦め」を得た「媚態」が「意気地」の自由に生きるのが「いき」
339.「雨月物語」上田秋成、角川文庫、10月10日
 :(死)霊が登場する九つの物語で構成
340.「子供の無意識」フランソワーズ・ドルト、青土社、10月11日           *     (1)
 :精神分析が機能する前提は、患者の分析を受けたいという意志、分析者との信頼関係、そして言葉  で明確に真実を語ること
341.「三十三年の夢」宮崎トウ天、平凡社東洋文庫、10月11日           *
 :自叙伝。生まれついての「自由民権の士」を辞任する著者が、人民にパンを与えることが最優先事項 との認識に達し、そのためには革命が最も有効との信念のもとに隣国中国の革命のために奔走、孫文 との交流を含めた歴史秘話も紹介
342.「二千五百年史」上・下、武越与三郎、講談社学術文庫、10月12日      **    (8)
 :明治29年に出版された本書は、登場人物が現在を生きるがごとく描かれており、国体史観によらず、 ヒューマニズム史観で統一されており、随所に独自の歴史解釈が披瀝される
343.「維摩経」中村元訳、岩波、10月13日                        *
 :大乗仏教の精神を日強生活の中に生かすということを主眼に、「維摩居士」という世俗の資産家を主  人公に描いた経
344.「法華経」紀野一義訳、岩波、10月13日                       *
 :大乗経典の代表といえ、「経王」tpも呼ばれ、天台宗・日蓮宗の所依の経典であり、日本の古典文芸 にも最も大きな影響を与えた
345.「勝髷経」高崎直道訳。10月15日                           *
 :勝髷婦人が大乗仏教の奥義を宣説するという形式の経典、「正法接受」(正法を受け入れて自分のも のにする)、「一乗」「如来蔵」などを説く
346.「華厳経」玉城康四郎訳、岩波、10月15日                      *
 :大乗経典の中でも重要なものの一つ、仏陀の悟りをそのまま表したものであると言われている
347.「大無量寿経」早島鏡正、岩波、10月15日                      *
 :「無量寿」とは<限りなき命あるもの>の意で阿弥陀仏のこと、阿弥陀仏が過去にたてた48の誓い、 現世における浄土観の実践
348.「般若波羅蜜経」平河静、岩波、10月16日
 :「般若経」という経典は沢山あるが、これはその代表的なもの。般若波羅蜜の意義、仏塔礼拝、舎利 供養
349.「茶の本」岡倉覚三、岩波文庫、10月16日                      *     (2)
 :天心が西洋人の「文明の遅れた野蛮な国」との日本観に反論すべく、英語で書いたのが本書。審美 的宗教すなわち茶道の文明度・洗練度の高さを説く
350.「さび」復本一郎、塙新書、10月16日                         *    (4)
 :「さび」は俊成により発見され西行・心敬・宗祇・利休などにより受けつがれてきたもので、芭蕉にのみ 固有のものでないとする
351.「一茶」藤沢周平、文春、10月17日                           *
 :一茶の心のあるがままの吐露とも言える独特の句風が生み出された経緯を、当時の俳句会の大勢、 貧困にさいなまれた俳諧師暮らし、家族との財産争いなどを交え生き生きと描く
352.「一茶随想」荻原井泉水、講談社文庫、10月18日                  *    (2)
 :一茶の句風を一茶・芭蕉・子規との比較で分析、風雅を追い形式美を追求した芭蕉に対し、ありのま まの現実を歌う一茶の句風に子規との共通性を認める
353.「一茶俳句集」丸山一彦校注、岩波文庫、10月18日
 :一茶27~65歳までの全句2万句から2千句を選び、作成年代順に編んだのが本書。一茶の句風が 生まれてくる流れが感じ取れる
354.「幕末の天皇」藤田覚、講談社選書、10月19日                         (4)
 :幕末の光格・孝明天皇の二代で、天皇・朝廷が幕府からも反幕府勢力からも依存される高度な政治 的権威をいつ・いかにして身につけたのかを描く
355.「日本精神分析」柄谷行人、講談社学術文庫、10月20日              *    (10)
 :タイトルを含む四本の論文からなる。日本の特色は、何もかも受け入れるというある種の排除の形成 により、自己が形成されず重層的な雑居性を有しているところにある
356.「いのちとかたち」山本健吉、新潮社、10月20日                   *    (6)
 :「もののあはれ」「いろごのみ」「やまとだましひ」の三つの言葉がほとんど重なり合っていると考える  所以を語る
357.「「挫折」の昭和史」山口昌男、岩波、10月21日
 :甘粕正彦、石原莞爾という二人の軍人文化の担い手が、それぞれの形で挫折していく過程を描く。
358.「「敗者」の精神史」山口昌男、岩波、10月21日
 :「敗者」の視点で、近代日本を見つめてきた登場人物の生き方の中から、今日われわれが学ぶべき  知的ラディカリズムの原点を描く
359.「ワダエミの衣裳」ワダエミ、求龍堂、10月21日                    ***
 :ワダエミデザインの3万着以上の衣裳の中から100着が、安土桃山時代から伝えられた技術を持つ職 人たちによって制作されている。写真が中心の大型本で、デザインならびに制作にあたってのワダエミ の哲学を簡潔に述べた文章もよく、出色のできばえ
360.「ゴッホ」ウィリアム・フィーバー、岩波、10月21日
 :ゴッホの一生ならびにその主要作品を載せた写真主体の本
361.「井上井月伝説」江宮隆之、河出書房、10月22日                   **
 :幕末から明治にかけて、武士を捨て、芭蕉の唱えた俳諧の大道を求めて、伊那谷を放浪、俳句・書・ 酒に一生を捧げた風流人の壮絶な生き様を伝える
362.「俳句と宇宙物理」寺田寅彦、角川、10月22日                         (2)
 :寺田寅彦の随筆・俳句集。随筆の約半分が俳句・連句に題材を求めたもの
363.「新井白石 折りたく柴の記」上・下、宮崎道生、NHK,10月23日          **
 :本書は、白石の自伝・正徳の治・家族への遺訓からなる。詩人・学者・経世家(第六代将軍家宣との 交流を含め)としての姿が生き生きと描かれている
364.「日本の庭園」田中正大、鹿島出版、10月24日                         (2)
 :「自然に従う」寝殿造りの庭、利休の路地、「自然を造形する」織部・遠州の路地と庭を対照しつつ日  本の庭園造りについて語る
365.「与謝蕪村」荻原朔太郎、岩波文庫、10月24日                     *   (2)
 :蕪村の一般的評価、「技巧的」「主知的」「印象的」「絵画的」を否定はしないものの、その本質はその 反対に、「ポヱジイ」にあるとする詩人朔太郎の主張
366.「蕪村七部集」伊藤松宇校訂、岩波文庫、10月25日
367.「古今和歌集」佐伯梅友校注、岩波文庫、                        *
 :万葉集に次ぐ勅撰和歌集、20巻、1111首を収める。作風は万葉集に比較し、理知的・内政的で技  巧に富み、後世に絶大な影響を及ぼした
368.「千利休」桑田忠親、中公新書、10月26日                       *    (2)
 :人間平等観に基ずく「侘び茶」を確立した名人利休を描く。名人とは、目利き・茶湯上手・胸の覚悟・  作分・手柄も整い、唐物も所持し、茶道に志の深い者のことを言う
369.「水滸伝」宮崎市定、中公新書、10月26日                       *
 :博覧強記の著者が子供のころより愛読した「水滸伝」の時代背景・主要登場人物などを実際の史実と 比較しながら解説、見事な「紀伝体」が完成している
370.「水滸伝」上・中・下、中国古典文学大系、駒田信二訳、平凡社、10月30日    *
 :70回までは宗江頭とする烈士の棟梁108人が梁山泊に終結するまでのいきさつ、それ以降は勅許に より罪を許された烈士が国のために侵入軍、反乱軍に勝利・平定する物語
371.「わんぱくたちの三日天下」C・B・ミハルコフ、旺文社、10月28日
 :子供たちがあまりにも大人たちの言うことを聞かないので、大人たちが相談して子供たちを残して町を 出て行く。子供たちは初めは全くの自由を喜んでいたが、すぐにその自由の苦しさを感じ始め大人たち が戻ってくることを願うようになる
372.「源氏物語 湖月抄」北村季吟、講談社学術文庫、11月3日             **
 :「源氏物語」その後の日本人の美意識の伝統を形成する上で大きな影響を与えた。本書は発行され た江戸時代から現代に至るまで、「源氏」味読のための最良の評釈書との評価を得ている。
373.「新編 井月俳句総覧」矢島井声編、日本文学館、11月3日             **
 :新発見の句を含む井上井月前駆1815句よりなる最新の全句集
374.「ケンペルと徳川綱吉」、中公新書、11月4日
 :「日本誌」を書き、当時の日本の情報を詳細に西欧世界に紹介したオランダ商館医師ケンペルの綱吉 との会見をふくむ伝記 
375.「好色一代男」西鶴、岩波、11月6日                           *
 :俳諧師として名をなしていた西鶴の小説処女作。主人公世之介の7~60歳までの色道に生きた一  生を、一歳一章で描く
376.「好色五人女」西鶴、岩波、11月7日
 :五人の女主人公の登場する五編の小説よりなる。五編とも実在の事件を材料として、西鶴が脚色し  て小説に仕立て上げたもの
377.「好色一代女」西鶴、岩波、11月7日                            *
 :一女性の好色の一生を描いたもの。この物語は若い全盛期から年を加えるに伴い、一歩一歩暗い生 活に落ち込んでいく姿をたんたんと記す
378.「日本永代蔵」西鶴、岩波、11月7日                            *
 :商人物の第一作。金銀こそ二親の外に命の親」と力説する商人の才覚・知恵・度胸の数々を描く
379.「世間胸算用」西鶴、岩波、11月8日                            *
 :大晦日の24時間を枠として、掛け取りの駆け引き、借り手のやりくりの苦労を描いたもの
380.「西鶴織留」西鶴、岩波、11月8日
 :永代蔵の続編として「人の人たる人」すなわち「町人の鑑」というべき人々の仁あり義あり礼ある話を 網羅した甚忍記
381.「西鶴 諸国ばなし」西鶴、岩波、11月8日                         *
 :今目の前に生きている人間の面白さ・意外さ、「人はばけもの、世にないものはなし」を描く
382.「本朝二十不孝」西鶴、岩波、11月8日
 :20人の親不孝者の演ずる様々な人間喜劇を描く
383.「武道伝来記」西鶴、岩波、11月9日
 :武家物の第一作であると同時に代表作。「諸国敵討」という副題があるように「敵討」を素材とし、武家 の心情・行為のあり方を描く
384.「西鶴置土産」西鶴、岩波、11月10日                            *
 :好色物から出発、武家物、町人物へと作風を展開してきた西鶴の魔性のテーマ「「色」と「金」につい  て総括した晩年の遺作
385.「西鶴名残の友」西鶴、岩波、11月10日
 :西鶴の没後6年に出版された最後の遺稿集。27話全て笑い話集的にまとめた、当時の俳諧のあり  方に対する西鶴の憤懣
386.「南総里見八犬伝」1~12、曲亭馬琴、新潮社、11月11日               *
 :馬琴が30年の年月をかけて、和漢のあらゆる知識を生かし、様々な工夫・アイデイアを加えながら構 築した独自の一代怪奇巨編世界
387.「古史通」新井白石、中央公論、11月11日
 :わが国の上古のことを記した書物を読む際には、そこに書かれていることの意味を言葉の間に求め、 書かれている文字(漢字)にこだわるべきではない
388.「古史通或問」新井白石、中央公論、11月11日
 :問答形式で古代史を語る。「日本紀」を資料として重く見る理由、朝鮮の風習との関係、日本の国名  のいわれなどにふれる
389.「人びとは国境を越えて未来を創る」武者小路公秀監修、第三書館、11月11日  *  (2)
 :1989年8月に横浜で行われた「ピープルズ・プラン21世紀」のキャンペーンの一環として企画された 「アジアと共に生きる」シンポジウムの全記録
390.「ベストエッセイ2010 この星の時間」日本文芸家協会編、光村図書、11月12日    (1)
 :毎年発行されているベストエッセイ集。特に記憶に残ったのは2008年のアメリカ大統領選挙に敢え て出馬したラルフ・ネーダーとのインタヴューを伝える「選択肢の存在」と「ぬか床のごきげん」
391.「八犬伝の世界」高田衛、中公新書、11月13日                   *
 :「八犬伝」が持つ世界を馬琴が示した3典拠里見戦記・はん狐説話・水滸伝に止まらず、広汎な切り  口で分析、馬琴の該博な知識と発揮した創造性を解き明かし、馬琴独特の幻想的怪奇世界の構造と 魅力を描き出す
392.「夜明け前」1~4、島崎藤村、岩波文庫、11月16日                **
 :馬籠の本陣庄屋半蔵の一生を尊皇攘夷・「王政復古」・明治維新という示談背景と重ねて描く。藤村 が7年の年月をかけて完結させた力作。現代にも通じる人間の生き様が語られている
393.「都鳥郭白波ー忍ぶの惣太」河竹黙阿弥、東京創元社、11月16日
 :黙阿弥・小団次の組み合わせの初演作。小団次の注文により、黙阿弥が脚本を書き直し大当たりを 取った白波狂言の原点
394.「ひらがな盛衰記 逆櫓」日本芸術文化振興会、11月16日
 :「源平盛衰記」を平仮名に平明化したという題名。義経の義仲討伐から一の谷合戦までを背景とし、  樋口次郎の忠死、梶原景季、畠山重忠などのやりとりを描く
395.「翁問答」中江藤樹、岩波文庫、11月16日                      *
 :藤樹が106の問いに答えるという形で儒教の真髄を説く。藤樹の朱子学から陽明学への移行期に書 かれた
396.「キムチとお新香」金両基、中公文庫、11月17日                   *
 :同じ白菜を用いてもキムチとお新香ができるように、伝統・文化・民族性の違いは、それぞれの独自  性を生みだす。柳宗悦の韓国白磁論を批判。宗悦は白を「悲哀」の色と考えたが、韓国人にとって白は 太陽を表し、明るい希望の色を意味すると主張
397.「能面のような日本人」金両基、TBSブリタニカ、11月18日
 :日本で生まれ育った韓国人の観点で「日本とは」「韓国とは」を問うエッセイ。和・日本的コミュニケー ション・圧縮型文化・残虐性と美意識・能面的思考などを取り上げて分析
398.「重源」伊藤ていじ、新潮社、11月18日                         *
 :治承の乱で消失した東大寺を「大勧進」という職名だけを与えられ、本来国家がなすべき巨大な事業 を61歳からの25年間で成し遂げた重源の一代記
399.「枯山水」重森三玲、中央公論、11月19日                       *  (12)
 :枯山水を「作庭記」による前期と室町以降の後期、前庭に白砂と石組で海島の幽玄美を追求する、空 の具現化
400.「日本流」松岡正剛、朝日新聞、11月19日                       ** (2)
 :従来の「日本流」の議論は視点の単一化の傾向が強く「日本異質・特殊」になりがちだった。いかに  多様に柔らかにを追求するのが日本流
401.「民法風土記」中川善之助、日本評論社、11月21日                  *
 :日本各地の訪問記をその土地の地理・風土に加え「法律問題」の観点からも語る。宮本常一の本と  共通した味わいが楽しめる
402.「曽根崎心中」近松門左衛門、岩波、11月21日
 :近松世話物の初作で世話物の地位を確立した画期的な作品
403.「冥土の飛脚」近松門左衛門、岩波、11月21日
 :世話物14曲目で近松世話物中の傑作との評価が高く、人口に膾炙した名文句が多い
404.「心中天の網島」近松門左衛門、岩波、11月21日                    *
 :世話物22曲目。近松世話物中の最高傑作。筋の運び、登場人物一人一人の個性、情感あふれる描  写
405.「女殺油地獄」近松門左衛門、岩波、11月21日                     *
 :世話物23曲目。放蕩無頼の若者を主人公とし、殺しの場面の凄惨さなど近松として型破り。上演当 時から好評ではなかったが、明治以降好評を博している
406.「国姓爺合戦」近松門左衛門、岩波、11月22日                     *
 :時代物、三年越し十七ヶ月の間興行を続けた近松作中第一の当り作。実在の鄭成功、清に倒された 明の再興のために戦う英雄の活躍を描く
407.「品性論」サミュエル・スマイルズ、三笠書房、11月22日
 :「自助論」と並ぶスマイルズの名著。世界を自分のものにする人たちの性格は、明るく朗らか、毎日の 生活の中に喜びを見出し、楽しむ事が出来る
408.「無名抄」鴨長明、岩波、11月22日
 :長明の歌論書。歌の歴史的変遷を説くと共に、幽玄を歌の中心においている
409.「毎月抄」藤原定家、岩波、11月22日
 :定家卿消息、和歌庭訓ともいう。有心体が最も重要であるとし、秀逸体・心と詞の関係・稽古・本歌取 り・題詠・百首家など歌論の中心を説明する
410.「後鳥羽院御口傳」岩波、11月22日
 :壮美と優美との歌の二類型をあげ、「うるはしくたけある姿」を重んじ、歌の作法七ヶ条、後半は当代  の主な歌人の批評を行う
411.「正徹物語」正徹、岩波、11月22日   
 :正徹の最も重要な歌論書。定家の歌論を余情艶麗と認め(曲解し)根本に幽玄を立て定家を尊崇した
412.「風姿花伝」世阿弥、岩波、11月22日                    **
 :世阿弥第一期「盛りの極め」の能楽論。父観阿弥の教えを中心にまとめたもの。有名な「秘すれば   花、秘せずば花なるべからず」が説かれている
413.「花鏡」世阿弥、岩波、11月22日                       **
 :第二期の能楽論。「風姿花伝」の発展であり、大成であり、そこには世阿弥の体験・自覚に貫かれた 深い統一体系、さびの境地がある
414.「却来華」世阿弥、岩波、11月22日
 :第三期晩年の能楽論。「風姿花伝」から「花鏡」へ深化し「却来華」へと根本化し、観世父子の芸術論 を大成している
415.「人間万事金世中」河竹黙阿弥、岩波、11月23日
 :リットン「金(マネー)」から人物・筋立を借りながら、黙阿弥の独自の工夫を加え金・色恋・親孝行をめ ぐる完全に日本的な歌舞伎に仕立て上げている
416.「破戒」島崎藤村、筑摩書房、11月23日                   *
 :「自分がエタ(新平民)の出身であることを絶対に人に言ってはならない」という父の「戒」を破ってしま う教師丑松の葛藤を描く藤村の力作
417.「千利休」唐木順三、筑摩書房、11月24日                  *      (6)
 :利休の茶は、侘数寄と書院式とが激烈にたぎるものによって結び付けられたものだったが、その世界 は「わび」の世界であり、空観にもとづく世阿弥の「さび」の世界とは異なる
418.「日本論の視座」網野善彦、小学館、11月25日               *      (2)
 :日本単一民族国家論の前提とされている1)「島国国家論」、2)「水田稲作一元論」を批判、「日本」と いう国号問題とうを含め多元的な日本の真実に迫る
419.「南方録」熊倉功夫、中央公論、11月26日                          (6)
 :千利休の「わび茶」を伝える「聖典」か「偽書」か、その評価が真っ二つに分かれる「南方録」。著者の 見解は、利休没後百年に「利休回帰」を目指した立花実上の編集したもの
420.「旅する巨人 宮本常一」読売西武本社みずのわ出版、11月26日
 :宮本常一が昭和を撮った写真を手がかりに「この人たちを探そう」という企画で2005年にまとめられ た50編の記事を編集したもの
421.「日本朱子学と朝鮮」阿部吉雄、東大出版会、11月26日          *      (10)」
 :日本の朱子学に与えた李退渓の大きさを藤原惺窩、林羅山、山崎闇斎の学風を分析する中で明らか にする
422.「狂言記」岩波、11月28日                                   (7)
 :「狂言記」50曲、「狂言記外50番」「続狂言記」50曲、合計200曲を収録。
423.「夢ノ代」山片ばん桃、岩波、11月28日
 :豪商升屋の名番頭として主家を救ったばん桃のライフワーク。地動説、無神論者、合理主義者に徹し た儒教主義者の渾身の力を込めた百科全書。
424.「開国」伊部英男、ミネルヴァ書房、11月29日                 *     (4)
 :幕末の「開国」ならびに太平洋戦争開戦前の日米交渉を振り返り、日米の交渉態度の普遍性を指   摘、日本にその反省を生かして将来への進路のとり方を提言  
425.「紅と紺と」上・下、林屋辰三郎編、朝日選書、11月30日          *
 :古代から明治維新までの日本女性史を民俗・芸術の領域の具体的な例を挙げながら描いており、同 時にそれぞれの時代の代表著作の紹介にもなっている。6人の著者が朝日大坂本社版で207回にわ たって連載したものの書籍化
426.「悲しみは憶良に聞け」中西進、光文社、12月1日               *     (1)
 :憶良にとって「悲しみ」は「愛しみ」である。都会人・インテリ・ノンキャリア・貧乏・病気・老い・望郷・愛 と死を歌った歌人であった
427.「遊行の博物学」松岡正剛、春秋社、12月1日                 **
 :本書は著者が書いてきた日本文化に関するエッセイのいくつかを整理・加筆したものを並びなおした  もの。主人と客の席(位置)をその状況に応じて変えるところに日本文化の特質を見る
428.「遊女記」大江匡房、岩波、12月2日
 :平安末期の遊女の有様を知るための数少ない根本資料
429.「傀儡子記」大江匡房、、岩波、12月2日
 :狩猟を元来の生業としながら、男は剣術使い、人形使い、奇術師、女は唱歌、売春などを行いながら 漂白した集団の数少ない記録
430.「梁塵秘抄」後白河院編、岩波、12月2日
 :今様の来歴、故事、歌い方などを記した口伝集10巻と歌詞集10巻、計20巻よりなる
431.「庭訓往来」平凡社東洋文庫、12月2日                      *
 :十二ヶ月にわたる手紙の往来という形で、生活文化総合教科書として室町末期から約500年にわた り、武士の子弟、寺小屋で商人・農民の子供と日本中で学ばれ、全国レベルでの教育水準の平準化  に貢献
432.「間の本」松岡正剛、レオ・レオーニ、工作舎、12月2日
 :「平行植物」の著者レオー二と松岡正剛の対談集、「イメージはどこから発生するのか」。解答「間とい うものからではあるまいか」
433.「万葉集の比較文学的研究」上・下、中西進、講談社、12月3日              *    (6)
 :作家論・作品論・主題論の切り口で「万葉集」への中国文明の影響をふくめた比較文学的研究
434.「源氏物語と白楽天」中西進、岩波、12月4日                   **   (4)
 :白楽天の詩を自家薬籠中のものとし、その詩と協奏する「源氏物語」の作者が描いたのは、宣長の理 解とは異なり、生死の境を超えて愛の因果に仕組まれた非情さを主題とするものであったと主張する
435.「日本の国号」岩崎小弥太、吉川弘文館、12月5日                      (1)
 :有史以来数多くの国号を有した中で、何故・いつ・どのようにして日本に絞り込まれたのかを、古代か ら現代に至る主たる見解を紹介しながら分析
436.「キリストと大国主」中西進、文芸春秋、12月5日
 :国造り神話をはじめ数々の日本と世界各国の民話を紹介しながら、文明の普遍性・人間の世界共通 性を示す
437.「金融危機後の世界」ジャック・アタリ、作品社、12月6日             **   (13)
 :危機の根源は1)所得格差の拡大と新金融商品の開発、2)金融機関による情報と利潤の独占にあ  ると喝破する。緊急プログラムとして、国内ならびに国際的な施策として、投機的な金融手法の禁止、 銀行の自己資本の増強など、さらに国際的な金融規制・金融システムの構築を行うための国際組織  化を提案。そして、これらのシステムを正しく機能させるために、「いかなる種類の仕事であれ、労働(  利他主義に根ざした労働)だけが、富を得ることを正当化できる」をふくむ四つの真理の確認が必要で あることを示唆する
438.「日本のナショナリズム」松本健一、ちくま新書、12月6日             *    (3)
 :「ナショナリズム」が持ちがちな負の側面・他国との敵対をいかに乗り越えるか。具体的に「アジア・コ モン・ハウス」の設立を提案。他国との対立を招かない形でのナショナル・アイデンティティ確立の重要 性、資源の共通利用アプローチによる対立の回避などの未来志向のナショナリズムのあり方を模索
439.「自然真営道」安藤昌益、農山漁村文化協会、12月7日                   (4)
 :昌益によれば、「自然」とは根源的物質である「真」の「進退」する矛盾の自己運動の総体であるとし
、これは不可分なものであり、「陰陽二元論」を批判
440.「書物合戦」樋口覚、集英社、12月8日                        **  (1)
 :本書はスウィフトの「書物合戦」を手始めに、様々な書物を登場させ、古今東西の書物・作者について 論じ、そこで起こった格闘・新旧論争を交えた書物論
441.「日本人の法意識」川島武宣、岩波新書、12月8日                 *
 :明治の法体系のみならず、新憲法後の法体系においても、その精神と国民の実際の意識行動の上  には、縮小傾向は見られるとはいえ大きなギャップがみられる
442.「開国のかたち」松本健一、岩波現代文庫、12月10日               *    (3)
 :「開国」とは、日本が自己と全く異質な他者(=ヨーロッパ)に直面させられ、他者の「文明」のほうに  みずからを開き変革してゆこうとした経験である
443.「わたしが国家について語るなら」松本健一、12月10日              *
 :子ども向けに書かれた「国家論」。内容のレベルを一切落とすことなく、国家論の本質を網羅。従来の
 「国民国家論」をのり越え「他に誇りうるものを持った日本をいかに作り上げるか」が重要と投げかける
444.「先哲の学問」内藤湖南、筑摩叢書、12月11日                  **    (7)
 :講演の著作化であるが、山崎闇斎、富永仲基、山片ばん桃、山梨稲川などを取り上げ、その独創的・ 画期的なな業績を紹介し、埋もれていた奇才を世に送り出した名著
445.「短歌博物誌」樋口覚、文春新書、12月12日
 :本書は柴田宵曲の「俳諧博物誌」の方法と考え方にならい、まとめた「短歌博物誌」。およそ動物100 種短歌560首を収める
446.「和俗童子訓」貝原益軒、岩波文庫、12月13日                  *    (4)
 :教育思想が体系的に組み立てられ、わが国最初のまとまった教育論書。「教女子法」の部分は後に 「女大学」として編集され、近世・近代の日本の女子教育に甚大な影響を与えた
447.「養生訓」貝原益軒、岩波文庫、12月13日                     *    (4)
 :「体」と「心」の二つを一つに結び付けて「人間」の養生を説いた。「君のために身をば思わず」が当たり 前の時代に、「天下四海にかえがたきもの」として人間の尊厳を説いた益軒の先見性
448.「江戸の風流人」、449.「続・江戸の風流人」加藤郁ア、小沢書店、12月14日
 :粋に生き、遊蕩に徹した江戸の俳人・画人・粋人。風流を巡り、遊びの裏に隠れた生への姿勢と精神 を問い、江戸の文芸の詩と真実に触れる長編エッセイ
450.「人間の器量」福田和也、新潮新書、12月14日                  **
 :人間の見方が薄っぺらになっていることを指摘。能力の有無、感じの良さ悪さ、いい人かどうかなど、 が評価基準なっているが、器量とは、全人格的魅力、迫力、魅力によって測るもの。人材とは器量を備 えた人間のことであり、器量人を育てることをして来なかった戦後日本では、人材が枯渇している
451.「誤解の王国」樋口覚、人文書院、12月15日
 :本書はタイトルとなった「俘虜記 」論の大岡昇平の「二重の誤解」をはじめとする評論集。「伊藤整と 三島由紀夫」が出色、人物とその作品よく書けている
452.「俳諧志」加藤郁や、潮出版、12月18日                         *
 :江戸時代までの俳人75人を取り上げ、主要作品を紹介しながらその句風・人となり・交友関係などを 描く。特に一茶に力が入っており、読み応えアリ
453.「俳林随筆 市井風流」加藤郁や、岩波、12月19日                 *
 :市井の学者や町方の風流家のなかには羨むべき粋・無用の人があって、学芸の趣味化・余技化が  すすんでいる。吉井勇、宗祇が印象深い
454.「国是三論」横井小楠、講談社学術文庫、12月16日                 **  (5)
 :「国是三論」は(天)「富国」(地)「強兵」(人)「士道」の三論よりなり、越前福井藩改革の基本方針と して採用され、大きな成果をあげた。小楠はこの方針は日本国全体の改革にも適用できると考えた
455.「沼山対話」井上毅、講談社学術文庫、12月16日                   *
 :井上毅が沼山津に閉居中の小楠を訪ね、いろいろな問題について小楠の考えを聞きだし、まとめたも の
456.「沼山閑話」元田永さね、講談社学術文庫、12月16日
 :小楠を師と仰ぐ元田が、小楠の述べたところを整理し、まとめたもの
457.「省けん録」佐久間象山、講談社学術文庫、12月16日                *   (4)
 :佐久間象山の思想全体を簡潔にまとめたもの。君子の楽しみ、「敏」の重要性、海防論、儒学者のあ り方(実際の仕事で役立つこと)などを説く
458.「海防八策」佐久間象山、講談社学術文庫、12月16日
 :ペリー来航以前に日本の海防策の不備を指摘し、なすべき事を八項目にまとめ提示した先見の明を 示す
459.「国を興すは教育にあり」松本健一、11月20日                    *    (3)
 :小林虎三郎の「米百俵」=「教育興国論」ならびにその師佐久間象山とその門下生で「二虎」のもう一 人吉田松陰(寅次郎)の思想と人となりを描く
460.「紫文要領」本居宣長、筑摩書房、12月20日                     *    (4)
 :従来の注釈書は、源氏物語は、「勧善懲悪」を説くとするものが多かったが、これを全面的に否定、  「物のあはれ」=歌道を表すものであることを、全体の約八割を占めろ「大意」の中で細かく例証する
461.「源氏物語 玉の小櫛」本居宣長、筑摩書房、11月20日
 :三巻までは「紫文要領」「源氏物語年紀考」をベースとし、四巻は「湖月抄」の訂正、五巻以降は旧注 の正すべきところを示し、新解釈を述べる
462.「大勢三転考」伊達千広、岩波、12月21日                            (3)
 :古代より徳川幕府の成立に至るまでの日本歴史を三つの時期に区分、「骨の代」(上代)「職の代」(684年~)「名の代」(1185年~)、その変化の理由を述べる
463.「氷川清話」勝海舟、講談社、12月22日                        *** (2)
 :勝海舟の談話集。その多くは人物論の形をとる中で、幕末・維新・新政府の時代背景・人物評価・海 舟の価値観と生き様を生き生きと語る
464.「出定笑語」平田篤胤、名著刊行会、12月23日                    *    (2)
 :本書は篤胤が富永仲基の「出定後語」に刺激を受け、書いた仏教排撃の書。その筋は、仏教は人間 の本性に反することをすべきだ説いているところに無理がある
465.「英将秘訣』筑摩書房、12月23日                            *
 :幕末版「悪徳のすすめ」、簒奪者の思想。坂本龍馬の語録と伝えられてきたが、平田派国学者グル  ープの作との新説がでている
466.「近世奇跡考」山東京伝、吉川弘文館、12月23日
 :「骨董集」とともに、江戸風俗史研究の好資料をなしている。戯作者としてだけではなく、浮世絵・狂  歌・近世風俗史研究と幅広く活躍した京田の才人ぶりの一端を示す
467.「講孟余話」吉田松陰、筑摩書房、12月23日                      *  
 :松陰の思想を最も良く知ることが出来るのは本書。野山獄に閉じ込められたときに、同囚の人々に講  義をはじめ、出獄後も継続したものをまとめたもの。
468.「客者評判記」桃栗山人柿八斎、中央公論、12月24日
 :女郎を買う客の諸種と岡場所の各地を洒落でまとめたもの、やや無理やり感あり
469.「春色梅児誉美」為永春水、岩波、12月24日                      *
 :「田舎源氏」に次ぐ大ヒット作品となり、この成功により、「人情本」のジャンルが確立した。
470.「梅園日記」北静ロ、吉川弘文館、12月25日
 :5巻173条よりなる考証随筆で、その対象は和漢儒釈百般にわたり、静ロの博覧強記ぶりがうかが   える
471.「後は昔物語」手柄岡持、吉川弘文館、12月25日
 :著者の寛保から宝暦までの少年期の見聞を記して、柳川候のお留守居役西原に贈ったもの
472.「料理通」八百善、臨川書店、12月25日
 :江戸の料理屋として名を上げた八百善の主人が四季折々のメニュー、料理の秘訣を著したもの。第   四巻は、長崎で修行した卓袱料理編
473.「しみのすみか物語」石川雅望、12月25日                        *
 :江戸の狂歌師石川雅望が従来に笑話を「宇治拾遺物語」に似せて擬古的に描いた作品
474.「江戸名所図会」12月26日                                 *
 :本書は神田の名主であった斎藤幸雄、幸孝、幸成の親子三代30年にわたって7巻30冊でまとめた江 戸の地理風物史。失われつつあった旧江戸のたたずまいをふくめ多くの押絵で当時の生活が垣間見  えるのが人気の秘密
475.「日本人の笑」森銑三、柴田宵曲、池田孝次郎、講談社学術文庫、12月27日   *
 :日本人は神代以来、明るい快活な国民性を有しており、それが滑稽となって歴代文学に現れている  模様を、歴史をたどりながら、主要文学作品から具体例を上げながら描く