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2011年読書目録

1.「玄語」三浦梅園、岩波、1月4日              *           (11)
 : 内藤湖南が近世において、富永仲基「後定出語」山崎ばん桃「夢の代」三浦梅園「玄語」三書のみ  が真に独創的と評価。「気」をもって「西欧天文学」を解釈するという全く創造的な自然哲学の書。
2.「田舎源氏」柳亭種彦、1月5日               *  
 : 江戸時代に爆発的人気を博す。「源氏物語」をパロディー化。主人公を足利将軍義正の子、光正
と し、時代を約400年江戸時代に近付け、宮廷になじみのない庶民が武家の風俗にはなじみやす
いところに成功の要因の一部がある
3.「新古今和歌集」岩波、1月7日               **
 : 新古今和歌集は八大集の最後を飾る勅撰和歌集。後鳥羽院の強い意志を反映、1978首をおさ   め、1205年に完成、以後切り継も度々行われた。「幽玄」+「有心」という新古今風を確立し、その   後の和歌界に大きな影響を与えた

かたち4.「日本書紀」上・下、日本古典文学大系67・68、岩波、1月7日  **
 : 天武天皇勅命による日本で最初の公的歴史書(未だに通説は最初の公的史書は「古事記」712年  だが、実際にはその約百年後に作成されたとの説に説得力あり)。完成までに約40年をかけ720年  に完成した。帝紀・旧辞など先行して存在したものを用いながら独自の編集を行っている。天武・持統  天皇の記述に圧倒的なページ数をさいており、その記述の流れを実際に読んでみると、本書が日本  最古・最大の政治的プロパガンダの書といわれる理由が良く理解できる。
5.「江戸名所図会」5・6、岩波文庫、1月8日
6.「今昔物語」1~5、日本古典文学大系、岩波、1月11日       *
 : 天竺(インド)、震旦(中国)、本朝(日本)の仏教説話、また日本については後半は一般民話を集録  する
7.「武江年表」斎藤月きん、平凡社東洋文庫、1月11日
 : 江戸300年の詳細な年表。政治向きの記述ではなく、江戸城下の市井にかかわりを持った生きた  年表。幅広い記事の正確さで他を圧倒
8.「希望のつくり方」玄田有史、岩波新書、1月12日           *      (6)
 : 筆者が取り組んでいる「希望学」の若者向け集大成の書。希望は「気持ち」「何か」「実現」「行動」   の四つの柱からなり、同時に「共有」が重要であると説く
9.「連帯のあたらしいかたち」中村哲・大澤真幸対談、左右社、1月12日
 : 中村哲をリーダーとするペシャワール会の医療・井戸掘り・用水路作りなどが国連や他のNPOの活  動より大きな成果を挙げ、アフガン人の信頼を勝ちえているのは、その現場主義・アフガンの技術(シ  ーズ)尊重・上から目線で指導するのではなく同じ立場で働くという新しい連帯の作り方にある
10.「遊仙窟」張文成、岩波文庫、1月13日                *          (1)
 : わが国最古の物語「竹取翁物語」より約180年以前から日本でも読まれ、わが国の文学の源流の  一つであり、国語学上も重要
11.「新続犬筑波集」北村季吟、ベネッセ、1月14日
 : 北村季吟が万チ年に編したもので総句数5426句20巻という大部の句集
12.「山中問答」北枝、集英社、1月14日                  *
 : 「おくのほそ道」旅行中の芭蕉を、金沢に迎えた北枝が、その折の芭蕉の俳諧談を書きとめたもの
13.「雑談集」基角、集英社、1月14日
 : 元禄5年出版の俳諧雑談集
14.「葛の公原」支考、集英社、1月14日                  *
 : 蕉門最初のしかも芭蕉在世中に公刊された唯一の俳論書として意義深い
15.「二十五箇条」集英社、1月14日                    *
 : 支考が芭蕉に仮托してして製作した。偽書説が強いが、蕉門の作法書・俳諧書として大方不都合   な点はない
16.「俳諧問答」去来、去六、集英社、1月14日
 : 元禄10~11年にかけて芭蕉俳諧の重要問題について去来と去六の間で応酬された論戦
17.「去来抄」去来、集英社、1月14日                    *
 : 「先師評」「同門評」「故実」「修行」の四部からなり、句評を中心に芭蕉ないし蕉門の俳論を集成し   たもの
18.「三冊子」土芳、集英社、1月14日
 : 「白さうし」「赤冊子」「黒左宇志」の三冊からなり、諸書を漁って  芭蕉俳諧を体系化しようと試み、  成功した。「去来抄」と双璧をなす蕉門俳論の代表作
19.「鶉衣」也有、集英社、1月14日
 : 大田南畝らの尽力により作者の死後世に出た俳文集。中興期を代表する俳文として質・量ともに群  れを抜く
20.「四方のあか」大田南畝、岩波、1月15日
 : 四方赤良の狂文集。俳文、雅文、その他様々な様式の文体から吸収しつつ独特の狂文を創出し   た。軽快さと歯切れの良さが特徴
21.「四方の留粕」大田南畝、岩波、1月15日
 : 四方歌垣真顔が師大田南畝のために編集した狂文集で、「四方のあか」に30年遅れて出版された
22.「甲子夜話」1~6、松浦静山、平凡社東洋文庫、1月18日    *         (1)
 : 平戸藩主松浦静山が隠居後、親友の大学頭林述斎の求めに応じて書き始め、足掛け7年100冊   にまとめたものを6巻で発行。この6巻が正編で、続編、三編と続く
23.「近世奇人伝」正・続、伴高渓、平凡社東洋文庫、1月19日    *
 : 正編は1790年続編は1798年刊行。奇人を二種に定義、1)荘子にあるごとく「人ニ奇ニシテ、而
シテ天ニカナフ」、2)「世人に比し行うところ奇、道を尽くしたという点で奇」。武士・僧・医師・学者俳
諧狂歌師・農夫・町人などあらゆる階層の男女をとりあげる。 
24.「あめりか物語」永井荷風、岩波、1月20日             *
 : 1908年から4年弱のアメリカ滞在に材を取った短編集。アメリカ各地を背景に、種種の日本人の生  き様を多様な切り口で描く。初めての海外で旺盛な好奇心が働き、ハッピー・エンドに終わらない話   でも暖かな読後感が残る
25.「ふらんす物語」永井荷風、岩波、1月20日             *
 : アメリカからフランスに渡った約一年間の滞在に材を取った短編集。憧れのフランスのリヨン・パリを  背景に日本人の生きる姿が描かれているが、話の結末いかんにかかわらず、読後には「苦いアンニ  ュイ感」が残る。
26.「墨東綺譚」永井荷風、角川文庫、1月21日            *
 : 向島寺島町にある遊里の見聞記。みずから「為永春水とモーパッサンの奇妙な合いの子」といい   「悪徳の谷底には美しい人情の花と果実がかえって沢   山摘み集められる」とする美学が生んだ  小説
27.「断腸亭日乗」1~7、永井荷風、東都書房、1月23日      **
 : 大正6年9月10日(39歳)から昭和23年(70歳)までの足掛け32年にわたる永井荷風の日記    集。淡々と記した日々の出来事の中から浮かび上がる世相・暮らしの移り変わり、永井荷風において  変わらないもの・替わるもの。
28.「1Q84」1~3、村上春樹、新潮社、1月25日                **
 : 話題の大ベストセラー。読後感は二つに分かれるのだろう。1)村上春樹の集大成といえる傑作。春  樹の全てが高い完成度で表現されている。ストーリー性・ロマンス・文学・料理・酒・音楽・ファッショ   ン・セックス。2)それが何なの、どんな意味があるの?
   ということで、「ティピカル春樹ワールド」なのです。
29.「耳袋」1・2、根岸鎮衛、平凡社東洋文庫、1月28日            *
 : 著者が佐渡奉行の時から死の前年まで書き続けた「ちょっと面白い・ためになる話」。「甲子夜話」と  共通の雰囲気を持っているが、やや肩の力が抜け、砕けている。
30.「鍵」谷崎潤一郎、新潮文庫、1月28日                    *
 : 昭和30年の発表。大胆な性描写で一大センセーションを巻き起こした。しかし、読後感は「旧い」。
  時代の進み方はこの領域(性描写)では速かったということか。最後の部分の補足説明も今の時代   ではむしろ邪魔
31.「ふうてん老人日記」谷崎潤一郎、1月29日                 *
 : 昭和36~37年に発表。77歳の老人が主人公。性的不能に陥っていながら、観念的にはいよいよ  好色の度をつのらせ、好色を発揮する人間の本性を描く。こちらは全く旧さを感じさせない。
32.「卍」谷崎潤一郎、新潮文庫、1月30日  
 : 昭和3年発表。女性同士の恋愛感情に男性としての性的能力を持たない登場人物を絡ませた小   説。女性の関西弁の持つ独特の雰囲気をうまく描いているという意味では成功しているが、今読むと  ストーリー的にくどさが気になる
33.「春琴抄」谷崎潤一郎、新潮文庫、1月31日
 : 昭和6年発表。大坂の大店の美貌の「糸さん」が盲目になり、三弦・琴の師匠として身を立てていく  のを支えた佐助。春琴と佐助の主人対奉公人、師匠対弟子、公的な婚姻関係にはないが実質夫    婦、自分で針で眼をつき盲目になるなど入り組んだ二人の関係を描く。
34.「JUSTICE」MICHAEL・J・SANDEL,PENGUIN,2月5日       ***    (19)
 :ハーバード大学で爆発的人気を博すサンデル教授の政治哲学講座「正義」のテキスト。アリストテレ  ス以来西洋哲学の正義論の主流を占めた哲学者の主張に豊富な事例を加えて紹介、哲学を本質論で 簡潔にかつ分かりやすく整理、哲学を身近なものにすることに成功している稀有な哲学書
35.「世界観としての建築」植松祐二、相模書房、2月6日      ***    (36)
 : ルドルフ・シュタイナーの認識論・世界観・人間観(二元論の否定・有機的一元論)から生み出され   る建築理論とその実践としてのゲーテアヌム、近代建築論の主流からは無視され、しかし燦然とした  輝きを放つシュタイナー建築を描ききる力作  
36.「建築の世紀末」鈴木博之、晶文社、2月7日            *       (9)
 : 「私が過去を見るのは<私>の源泉をたどり、その水源を過去の泉に求めるためである。」という視  点で旅人(先人)の見た夢の足跡をたどるというのが本書の趣旨 
37.「建築家たちのヴィクトリア朝」鈴木博之、平凡社、2月8日
 : 産業革命を背景に世界をリードし英国の経済力を反映し最も歴史的建造物が建てられたヴィクトリア 朝に活躍した15人の建築家を取り上げ、時代に共通する特色とそれぞれの個性を描く
38.「現代建築の見かた」鈴木博之、王国社、2月8日         **      (8)
 : 建築を装飾・機能・機械・歴史・構造・建築家・自然・モラル・アート・空間・地図・場所の12の要素に  分けて現代建築とは何かを語る
39.「人類と建築の歴史」藤森照信、ちくまプリマー新書、2月9日
 : 建築の歴史を人類の発生、石器時代から説き起こす。その狙いは建築はその起源をたどると人類   共通のニーズ・その時代の技術レベルなどにより同じようなものであったこと、また宗教心などの人間  の精神のあり方と密接に関わっていたことなどを確認し、現代建築が向かうべき方向の指針にしよう  ということなのだろう
40.「都市のかなしみ」鈴木博之、中央公論、2月11日
 : 中央公論に連載された「建築百年のかたち」に都市に関するエッセイを加え、「街から」「風景のなか  で」「前衛のすがた」「復元から見えるもの」「建築家の世界」というサブタイトルのもとにまとめる
41.「建築の遺伝子」鈴木博之、王国社、2月12日
 : 近代化が伝統文化の再確認を促し、その新しい表現の模索を生み出してきたナショナル・アイデン   ティの確認のプロセスを描く
42.「建築の七つの力」鈴木博之、鹿島出版会、2月13日      **      (10)
 : ラスキンの「建築の七燈」(犠牲・真実・力・美・生命・記憶・従順)にならい、「建築の七つの力」とし  て「連想の力」「数の力」「ゴシックの力」「細部の力」「模倣の力」「地霊の力」「過去の力」をあげ、その  内容を解説する力作
43.「人間のための街路」B・ルドルフスキー、鹿島出版会、2月14日   **
 : どこの国の国民も自分に相応しい都市をもつものだという観点で、いろいろな国の魅力的な街路の  世界に読者を誘う
44.「キモノマインド」B・ルドルフスキー、鹿島出版会、2月14日
 : 1955年から2年間日本に滞在した著者が1965年に出版した本を訳したもの。「日本へのラブレター」  であると同時に、「アメリカ人の生活様式への批判」となっている
45.「建築家なしの建築」B・ルドルフスキー、鹿島出版会、2月15日   *
 : 「無名の工匠たちの哲学と知識が産業社会の人間に建築的霊感の豊かで未知の源泉を与える」と  いう信念で切りとった「建築家なしの建築」の写真集
46.「建築は兵士ではない」鈴木博之、鹿島出版会、2月15日
 : 1974~80年に発表された評論・批評をまとめたもの。建築は、兵士のようにすぐに補充が利くもの  ではなく、人間の想像力をふくめた広い基盤の上に立って考えられべきであり、建築物と都市とを一  体として把握すべきだと説く
47.「都市へ」鈴木博之、中央公論、2月16日                  *
 : 江戸時代から明治・大正・昭和に至る日本の都市の成り立ちを建築・都市計画・生活文化を絡めて  解き明かす
48.「日本の<地霊>」鈴木博之、講談社現代新書、2月16日            (2)
 : 日本の建築のもつもっとも深い存在基盤はなにかといえば、それは場所にたいする感覚なのだ。場  所の性格と可能性、すなわち地霊(ゲニウス・ロキ)の発見という態度である
49.「大伽藍」J・K・ユイスマン、光風社、2月17日                *
 : フランス「シャルトル大聖堂」を舞台とするゴシック建築論・彫刻論・ステンドグラス論・絵画論であり  キリスト教論でもある長編小説
50.「夢のすむ家」鈴木博之、平凡社、2月17日
 : サブタイトルが「20世紀をひらいた住宅」、英国、アメリカ、日本、ドイツ、フランス、スペイン、オランダ  の12件の住宅をとり上げ、ひとつひとつの住宅に込められた住まいの夢をよみがえらせる
51.「建築における「日本的なもの」」磯崎新、新潮社、2月18日    *      (8)
 : 「建築における「日本的なもの」」は1930年から話題になり、1960年メタボリズム(新陳代謝)宣言に  より一時期を画するが、その限界をも明らかにした。著者は「日本的なもの」は独自の空間感覚にあ   るのではないかと、「ち」と「ひ」、桂離宮、伊勢神宮などの例を上げて主張する
52.「歴史と記憶」ジャック・ル・ゴフ、法大出版、2月19日      **     (12)
 : ブローデルの後を受け継ぎアナール派のリーダーとなったゴフの歴史論。ギリシャから現代に至る   歴史学の主流をフォローしながら「歴史の歴史学」の構築にむけた構想を語る
53.「ダイナミックな脳ーカオス的解釈」津田一郎、岩波書店、2月20日
 : 脳の働きを理解するためには、因果論・現象学的アプローチではNG。複雑系科学・システム理論・  ニューラルネットワーキング・解釈学的アプローチが必要と説く
54.「テレヴィジオン」ジャック・ラカン、青土社、2月20日
 : 本書はラカンがテレビで「精神分析」とは何かを一般視聴者に語りかけたものに、その分かりにくさ   を補うためにジャック・アラン・ミレールがラカンの言わんとするところを解説したものを加えたもの
55.「複雑系のカオス的シナリオ」金子邦彦・津田一郎、朝倉書店、2月21日  **    (16)
 : 単純な還元論的思考の限界を踏まえ、人間の脳の働きを分析すると、脳は外の刺激に直接反応す  るのではなく、自ら作ったイメージやシンボルに反応する。また心臓の拍動リズムなどの生命現象も   カオス状態を安定に保つ仕組みを獲得したものだと主張する
56.「東京の地霊」鈴木博之、ちくま学芸文庫、2月22日
 : 本書はサマーソン「ジョージアン・ロンドン」に触発され、同じ視点で東京について書かれたもの。13  の地点を取り上げ、地霊の働きの強弱をふくめてその場所の歴史的変遷を解き明かす
57.「場所に聞く、世界の中の記憶」鈴木博之、王国社、2月22日
 : 国木田独歩「武蔵野」の「座して、四顧し、傾聴する」という手法で、世界の24の場所を取り上げて  その場所の個性を描く。行ったことがあったのは9箇所のみ
58.「日本美の再発見」ブルーノ・タウト、岩波新書、2月22日        *
 : 本書の中心をなすのは、1935年に東京で行われた講演をまとめた「日本建築の基礎」。桂離宮・伊  勢神宮に代表される日本建築の美を機能的・合目的的で世界に通じる基準をクリヤーし、かつ、日常  生活での使いよさ・尊貴の表現・哲学的精神の表出を達成していると評価する。日本人が日本建築   の良さをキッカケを創った歴史的名著
59.「幻想の感染」スラヴォイ・ジジェク、青土社、2月23日               (8)
 : 幻想の七つのベールとして、1)「超越論的図式論、」2)「相互主幹性」、3)「拮抗の物語的閉塞」、  4)「堕落、5)「ありえない視線」、6)「内在的な逸脱」、7)「空虚な身振り」を挙げる
60.「都市の貌」米沢慧、冬樹社、2月23日
 : 住居を大衆の<家族の>表現とみなす視点はユニークである。また本書は「望郷論」でもあり、「住  宅公団批判論」でもある
61.「インターナショナル・スタイル」H・R・ヒッチコック、P・ジョンソン、鹿島出版会、2月24日 (2)
 : 「インターナショナル・スタイル」に共通する特徴を、1)「ヴォリュームとしての建築」、2)「規則性の   重視」。3)「装飾の禁止」をあげる。20年後にこれを見直し3)を「構造の分節」に変更している
62.「モダンデザインの展開」ニコラス・ぺヴァスナー、みすず、2月26日              (1)
 : 近代運動は1)ウイリアム・モリスとアート&クラフト運動、2)アールヌーヴォー、3)鉄とコンクリート   に代表される工学技術から生じた
63.「伊勢ー日本建築の原形ー」丹下健三・川添登・渡辺義雄,朝日新聞、2月26日 **
 : 丹下健三・川添登の文章と渡辺義雄の写真がマッチし、日本の建築美見直しに一石を投じた
64.「桂離宮ー空間と形」石元泰博、磯崎新、岩波、2月26日             *
 : 石元泰博のシャープな写真を主体として、磯崎新が解説を加えた大型本
65.「伊勢神宮」石元泰博、磯崎新、岩波、2月26日                  *
 : 同上
66.「共感覚者の驚くべき日常」リチャード・E・シトーウィック、草思社、2月28日  * (5)
 : 味を形で感じたり、音を色で感じたりする共感覚者は、例外者ではなく、きわめて基本的な哺乳類   の属性であるが、その働きが意識にのぼる人は一部に過ぎない
67.「カオス農学入門」酒井憲司、朝倉書店、2月28日
 : 雑草群落、農用機械振動、子豚価格変動、耕地のフラクタルなどを取り上げ、農業とカオスを説明
68.「陰翳礼讃」谷崎潤一郎、中公文庫、3月1日                   *
 : 6篇のエッセイからなる。出色は「陰翳礼讃」。日本文化がいかに闇と結びついて発達してきたか   を、障子・土壁・行燈・漆・床の間と掛け軸・金襖・金屏風・金襴の袈裟・能衣裳などの例を挙げて説   明
69.「カオス的脳観」津田一郎、サイエンス社、3月1日        **      (8)
 : 動的脳観として「<脳は決まった機能をもつパーツが集合することによって成り立った>ものではな  く、全体として機能することにより成り立っている」と説く。解釈学的方法により脳の働きを捉える
70.「生物情報システム論」鈴木良次、朝倉書店、3月2日      *       (2)
 : 本書は工学部学生や技術者が生物の情報処理システムを直接専門書で学ぶ前に、必要なコンセ  プトを理解できることを目指して書かれた。センシングとコントロールに焦点を当てている
71.「複雑系の進化的シナリオ」金子邦彦・池上高志、朝倉書店、3月2日 *  (13)
 : 「相互作用と共生」「自己の規定と自己言及性」「メタレベルへの上昇と創発」「多様性と複雑性」「概  帰性」「新奇性のダイナミクスとしてのオープンカオス」をキーワードに生命の発展様式を説明する
72.「建築の解体」磯崎新、美術出版社、3月3日          **      (4)
 : 近代建築が疑うべくもない主題に設定した「テクノロジー」がその絶対性を維持できなくなったとき   に、建築を解体して再編成するにはどうしたらいいかを模索する
73.「ホリスティック医療のすすめ」岸原千雅子、3月4日      *       (4)
 : 西洋医学の限界に目を向け、「患者」のまなざしで「いのちの営み」全体に目を向けて、その一部と  して病気を捉え,「自分らしく生きる」ことが「ホリスティック医療」だという
74.「迷宮としての世界」グスタフ・ルネ・ホッケ、美術出版社、3月4日  *   (4)
 : 「古典様式とアニ工リスム」絶対の二つの現象形態、永遠の分離状態であるかのように見えるが、   ひとつの美的神秘のなかで相互に関連付けられていると説く
75.「ペニスの文化史」マルク・ボナール、ミッチェル・シューマン、作品社、3月4日
 : その働きのすこやかなる時、すこやかならざる時、サイズにまつわる歴史、その装飾品などペニスに  まつわる文化史を古今東西わたり語りつくす
76.「愚行の世界史」バーバラ・W・タックマン、朝日新聞、3月5日           (2)
 : 四種類の悪政の一つ「愚行」、すなわち「自国または選挙民の利益に反する政策の追求」の歴史   を、トロイアの滅亡(木馬の城内引き入れ)、法王庁の堕落(プロテスタントの離脱),大英帝国の虚栄  (植民地アメリカの独立)、ヴェトナム戦争(アメリカの敗北)を例に引き詳述
77.「意識の進化と神秘主義」セオドア・ローザク、紀伊国屋、3月6日 **    (22)
 : 原書の題名の直訳は「未完の動物 ー みずがめ座のフロンテイアと意識の進化」。「不思議と福祉  に満ちたみずがめ座の時代」が、化石化する産業文明の中から、富のかわりに自立性を手に入れ、  現れてくる
78.「桃源の夢想」大室幹雄、三省堂、3月7日              *      (3)
 : サブタイトルは「古代中国の反劇場都市」。「賢者は村に住む」。老子や荘子の反都市の哲学が都   市の栄光のなかから生み出されてきたように、隠遁は都市の文化であり、都市の文化に属していた
79.「正名と狂言」大室幹雄、セリカ書房、3月7日            *      (21)
 : サブタイトルは「古代中国知識人の言語世界」。人間と禽獣が共棲を楽しんでいた古代中国から時代が下り、戦国時代に突入していた老子・荘子の時代には、神話そのものは消滅していた。荘子は集合的無意識の中にわだかまる原初的イメージを注視し、現代人の意識にとってはきわめて晦渋かつ放胆とみえる遊戯的イメージ群として、黄金時代の神話的祖型を再現している
80.「情報学の基礎」米山優、大村書店、3月8日            *      (27)
 : サブタイトルは「諸科学を再統合する学としての哲学」。諸科学の生き詰まりは還元論とそれがもた  らした専門領域への蛸壺閉じこもりから生じており、この状況を打破するために「諸科学を統合する学  としての哲学」の再構築、すなわち「情報学」の創造的確立が必要だとする。前半の論旨は、福井    純、まとめは松岡正剛にほぼ依拠しており、一見したところどこにも著者の創造性は見当たらない    が、編集こそが創造であると主張したいのかもしれない
81.「ウイトルーウィウス建築書」森田慶一訳註、東海大出版会、3月8日      (4)
 : 世界最古の建築書でユリウス・カエサルに捧げられた。10巻のうち7巻は建築について、8巻目は   水、9巻目は日時計、10巻目は機械について書かれており、その広汎・高度な知識に驚かされる
82.「幻想の中世」ユルジス・バルトル・シャイテイス、リプロポート、3月8日
 : 中世ゴシックは西欧的なものに向かって進化しただけでなく、超自然的基調をも有していた。本書は  それを方向付けた異国の寄与、ヘレニズム的古代、イスラム、それに続く東アジアの介入を中心に描  く
83.「がんを癒す家族」ステファニー・T・M・サイモントン、創元社、3月9日
 : 「がんに対処していく最善の方法は、健康に向かってあらゆる手を尽くし、人生を肯定し、希望を持つ  ことだ」「治療の大半は、患者ががん体験から何らかの利点をみつけて、前向きな方向に成長し変化  する方法を見つけ出すことに当てられています」
84.「タッチング」A・モンタギュー、平凡社、3月9日
 : 新生児や子どもがさまざまな形で受け取る皮膚刺激は、彼らの身体や行動の健康な発達にとって
  最も重要なものだ
85.「がん患者学」柳原和子、晶文社、3月9日              *      (2)
 : がんの告知「5年生存率20%」を受けてから、長期生存者18人にインタビューし、あらゆる代替療   法、漢方薬、自然食品、玄米菜食、丸山ワクチン、鍼灸、気功、山登りなどを行い、三年生存時点で  まとめられたのが本書
86.「がん生還者たち」柳原和子、中央公論、3月10日         *
 : 「がん患者学」と共通の基本テーマ、「生」と「健康」にのみ価値を置き、「死」を敗北とみなす医者・   病院側と「病気」「死」におびえながらも「病気」とともに生きるしかない患者の間の埋まらない溝を浮   き彫りにし、それを埋める道を模索するの追求
87.「劇場国家」大室幹雄、ちくま学芸文庫、3月11日          *      (15)
 : 世界の中心首都長安を始め帝国の主要な大都市を劇場として、世界編成の雑技団を引き連れて巡  回する巨大な興行師としての武帝を描く
88.「ルドルフ・シュタイナー 遺された黒板絵」ワタリウム美術館、筑摩書房、3月11日 *
 : シュターナーが講義の時に書いた黒板絵約1000枚の中から、代表的なものを選んで何の説明に  用いたかの解説を加えたもの
89.「21世紀建築魂」藤森照信、INAX出版、3月12日         **     (4)
 : 近代建築・機能主義・透明性・純粋幾何学などを超えて21世紀建築を模索する6つの対談で構成さ  れている。自然・身体・「一住宅一家族」から「地域共同体」などをキーワードに21世紀建築の方向を  探る
90.「隠喩としての病い」スーザン・ソンタグ、みすず書房、3月12日         (2)
 : われわれが眼に背負わせた隠喩が、現代文化の大きな欠陥とか、現代人の死にたいする浅はか   な態度、歴史が暴力的な未知を歩みはじめたなどを憂慮する書
91.「空間へ」磯崎新、美術出版、3月12日
 : 本書は1960年から1970年にかけて発表された論文をまとめたもの。テーマが多すぎて、一冊の本  を読んだ後に残る印象が稀薄
92.「<弱さ>のちから」鷲田清一、講談社、3月13日                 (1)
 : 今にも倒れかけている人がいると、それを眼にした人は思わず手を差し出している。<弱さ>は人   の関心を引き出す。そういう力を引き出されたことで、介助する人が介助される人にケアされるという  逆転がおこっている
93.「ホメオパシー医学への招待」松本丈二、フレグナンスジャーナル、3月15日  *** (32)
 : 現代西洋医学は「病気(症状)を治療する」のにたいし、ホメオパシー医学は「病気を治療するので   はなく人を治療する医学体系である」。「ホメオパシーとは、健康な人がその病気の症状を示す薬を非  情に少量与えるという方法論に基づいた、病気を治療する一つの方法である」。西洋医学の問題点を  指摘、ホメオパシー医学の優位性を説く
94.「オートポイエーシス」H・R・マトゥラーナ、F・J・ヴァレラ、国文社、3月16日 ** (19)
 : 本書はオートポエーシス=自立的・自己言及的・自己構成的な閉鎖系システムが生命の有機的構  成を特徴づけるのに必要かつ十分であるという
95.「無意識的身体像」フランソワーズ・ドルト、言叢社、3月16日
 : サブタイトルは「子どもの心の発達と病気」。胎児期・乳児期・小児期それぞれの時期には母子間の  二者関係のバランスを保つことが子どもの将来の築く重要な要素であり、それがうまくいかないと自   閉症・分裂症などを引き起こす
96.「自由の哲学」ルドルフ・シュタイナー、人智学出版社、3月18日     ** (50)
 : 人間は自分の倫理的想像力によって与えられた自分独自の目的を追求する。理念が行動になるこ  とを、人間はそうなる前にまず欲しなければならない。このような意志の働きは、人間自身にのみそ   の根拠をもつのである。その場合は人間が彼の行動を究極的に規定する者として自由なのである
97.「癒しのことば」ラリー・ドッシー、春秋社、3月19日           *   (17)
 : 「祈りは癒しになりうるか」を論理的・科学的に検証。1)非局在的性質、2)病む、癒される、{x xに  なりますように」即物的・目的限定でなくなるほうが効果が大きいことを実証。
98.「人智学・心智学・霊智学」ルドルフ・シュタイナー、ちくま学芸文庫、3月20日 ** (34)
 : 「神智学」と「人智学・心智学・霊智学」の関係を説明する。自立しようとする意志と衝動をもった魂た  ちが出会い、そして自分の内的に独立した感情をますます大きく育てて行く行く時、私たちの共同体  は進化を発揮できるようになるという
99.「現代の教育はどうあるべきか」ルドルフ・シュタイナー、人智学出版社、3月21日 *** (31)
 : ギリシャ時代から現代に至る教育の重点の変遷をたどり、ギリシャ時代には「魂」の教育に焦点をあ  て、それは体を鍛えることを通じて行われてきたとするという。近代以降の教育は「魂」と同時に「身   体」も置き去りにし、「知識」偏重になったところに問題がある。そして、人間は、7年を区切りとする幼  児期・少年期・青年期・成人期という異なった成長期をもつという人間観を提示し、その各々の時期に  見合った教育内容を提案する
100.「アフォーダンス」佐々木正人、岩波、3月21日     *     
 : 知覚の伝統理論の前提「特定の感覚刺激は常に特定の知覚を引き起こす」を否定する。ギブソンの  提唱する生態学的認識論は、情報は人間の内部にではなく、人間の周囲にあると考え、私たちが認  識のためにするのは自身を包囲している環境に情報を「 (14)探索する」ことなのであるとする。アフ  ォーダンスとは「動物にとっての環境の性質」であり、環境の中に実在する、知覚者にとって価値のあ  る情報である
101.「オートポイエーシス2001」河本英夫、新曜社、3月23日
 : マトゥラーナとヴァレナが提唱した「オートポイエーシス」の定義の変更を提案。
102.「ガン代替療法のすべて」リチャード・ウォルターズ、三一書房、3月23日 ** (46)
 : 「ガン代替療法」=現代の主流である「西洋医学」以外で行われている治療法。現代医療のガン治  療の三大柱「外科手術・化学療法(抗癌剤)・放射線治療」によりガン治癒率はここ数十年改善してい  ないという事実を指摘、「全てのガン代替療法」を取り上げ、その有効性を臨床事例・理論双方から検  証、合わせて問題点の指摘をする。この結果、「ガン代替療法」の有効性を証明し、さらに何故それら   の両方が禁止されたり、無視されているかを分析、「医療業界、製薬会社、政府関係当局」が一体  となり既得権益への脅威をなんとしても食い止めようとする、なりふり構わぬ攻勢を浮き彫りにする
103.「不思議なダンス」リン・マーグリス、青土社、3月23日
 : 「性行動の生物学」:アメーバから両棲類、類人猿、人間に至る性の歴史の細部に分け入る。性的   に進化する原始の恋人、無意識、・心・体の原理
104.「デザイナーは喧嘩師であれ」川崎和男、アスキー出版、3月24日   *  (2)
 : 本書は月刊「マックパワー」連載された「デザイン・トーク」の1995年11月号から二年半分を単行本   化したもの。その時々のデザインに関わるテーマについてのエッセイが、真に創造的な仕事をしようと  思ったら「喧嘩師」にならざるを得ないという持論の具体例として展開されている、シリーズ第三巻
105.「文様の博物誌」吉田光邦、同朋社、3月25日                  (10)
 : 文様は人間が最初に発見した情報手段であったかもしれない。そうした信号系は、やがてものに美  しさを与えるという思いと結びついて発展してきた
106.「インテリアと日本人」内田繁、3月25日         *       (21)
 : 西欧社会と日本社会の空間意識の違いは「座る文化」「靴を脱ぐ」文化の違いから生じている。微細  なものに目を向ける感覚、この原点は利休の「侘び茶」遠州の「編集茶」にあるとする
107.「園林都市」大室幹雄、三省堂、3月26日        *       (14)
 : 「桃源の夢想」の姉妹編。建康(現在の南京)は長江下流に置かれた中国では異例の首都であっ   た。歴史的に中国の首都は宇宙論的な中心の象徴であり、堅固な城郭で囲まれていたが、建康は   中国の中心とはいいがたく、城郭も持たなかった。三国時代から東晋にいたる四世紀に渡り首都で   あったが、自然を愛して開かれた都市であり、園林に囲まれた都市であった
108.「かたち誕生」杉浦康平、NHK出版、3月27日      *       (4)
 : 「かたち」とは「かた」=型と「ち」=「いのち」「ちから」の「ち」からなり、「ち」の働きが加わって、「か  た」生きた「かたち」へとその姿をかえてゆく。霊の力を秘めた、煌き燦めき、輝くものになってゆく。
109.「形の合成に関するノート」クリストファー・アレグサンダー、鹿島出版会、3月27日 (8)
 : 本書のテーマは、問題の型とその問題を解決した物理的な形をデザインするプロセスとの間には、深くそして重要な下敷きとなっている構造的な対応関係があることを示すことであった。われわれは問題を形にする以前に問題の構造の明白な図面をつくることを必要とする。したがってそのためには、そのような図面のための概念的な枠組みを最初に発明することが必要でもある
110.「空間・時間・建築」S・ギーディオン、丸善、3月28日  **      (26)
 : 本書の原書は1941年に初版が出され、それまでの建築論にはなかった「空間」概念を提起し、空間  形成こそが建築の核心であるという視点を確立した。また文明史的観点から、産業革命が作り出した  思考と感情の方法が分裂した人間に再び統合をもたらすには、ギリシャ以来の人類の文化遺産を受  け継ぎながら、内的な変化にたいする強固なる意志と先見的な準備によるわれわれの覚醒が必要だ  と説く
111.「がんになったときに真っ先に読む本」帯津良一、草思社、3月28日  *
 : 著者は日本でも主流である現代西洋医学は「病気」にしか眼をむけていないという意味で十分では  なく「人間」に眼を向ける「ホリスティック(全人的)」医学の優位性を説く。その基本的アプローチは、   「病気を克服する家」として、土台(基礎)に「心」、一階は自然治癒力を高めるという観点で「食事」   「気功」の二部屋、そして二階は医療で「西洋医学」「東洋医学」「代替医学」で、患者の病状・考えに  合ったものを医者が幅広く提供すべきだという
112.「希望のいる町」ジョーン・バウアー、作品社、3月29日          *
 : 原題は「Hope was here」。ホープという女子高生の主人公が、一緒に暮らす叔母で名コックのアディ  とレストランで働きながら、お客とのやりとり、また町長選挙に巻き込まれながら明るく成長していく様  子を描いた小説。大人が読んでも読み応えのある力作
113.「ゴシック美術形式論」ウィルヘルム・ヴォーリンガー、岩崎美術、3月30日 * (28)
 : ゴシック建築は、ギリシャ・ローマなどの地中海人とは異なった北方のゲルマン人の神秘主義的な
  心性に源流に、材料の石の重量を否定し、どこまでも高くそれを積み上げることに没入し、心の開放   を味わうことにより成立した
114.「20世紀建築研究」編集委員会、INAX出版、4月1日   *     (2)
 : 「20世紀建築の始まりと終わりを横断する21の系」というサブタイトルが示すように、20世紀の建築  の全体を時代順に描くのではなく、テーマ別、絡み合う複数の系で構成、系のブレークダウンを各2ペ  ージで説明するという編集で膨大な情報を提供
115.「アジアの宇宙観」岩田慶治、杉浦康平、講談社、4月1日 *    (1)
 : 古代からアジアの各地で須弥山を中心に据えた宇宙像が描出されてきた。須弥山は巨大な蓮華の  花冠を模し、蓮華は宇宙を胎生し、仏を生む母胎でもある
116.「DESIGN ANTHOLOGY OF Kazuo Kawasaki」川崎和男、アスキー出版、4月2日 *
 : 川崎和男の作品集。自分の作品の解説を加えて、「かたち」と「きもち」が「いのち」を真に物語り、   「美」であって欲しいという願いが作品に込められているという
117.「ルドルフ・シュタイナーの社会変革構想」ラインハルト・ギーゼ編、人智学出版4月2日**(29)
 : シュタイナーの社会変革構想「社会機構の三層化」、すなわち文化・精神領域には自由を、政治領  域には平等・民主主義を、経済領域には連帯・友愛の原則適用をいかにして実現するかに焦点を当  てる。最も体系的かつ具体的なのは「緑の党」の綱領
118.「魂の再発見」ラリー・ドッシー、4月3日    *     (18)
 : 西洋は心を局在化し、時間と空間の中に位置付けるという誤りを犯しており、「魂」は普遍的で偏在  的であり、自分も「一つの心」の一部であることを認識するにより、「魂」を回復し、われわれの神聖な  「自己」に目覚めることを選べば、われわれは新しい夜明けを迎えることができる
119.「デジタルなパサージュ」川崎和男、アスキー出版、4月3日
 : 本書は「マックパワー」誌に1990年9月1993年4月号に連載された「デザイン・トーク」を一部加筆修  正したもの。Mac(マッキントッシュ・コンピューター)論が半分以上、情報社会論、デザイン論について  熱く語る,シリーズ第一巻
120.「プラトンのオルゴール」川崎和男、アスキー出版、4月3日    ** (12)
 : 「デザイントーク」1993年5月~1995年10月号の単行本化、シリーズ第二巻。最初の部分は心臓発  作で入院中に口述筆記されたもの。シリーズで最も迫力があり、筆者の原点・考え方が良く理解でき  る
121.「デザインは言語道断」川崎和男、アスキー出版、4月4日
 : 「デザイントーク」1998年5月~2001年1月号の単行本化、シリーズ第四巻。「言語道断」は道元の言  葉で、「言葉の表現できない世界」を意味している。これは「言語道断なる美」をデザインによって創出  していきたいという筆者の意志を表す意味で使用している。
122.「デザインの極道論」川崎和男、アスキー出版、4月5日
 : 「デザイントーク」2001年2月~2003年7月号の単行本化、シリーズ第五巻。「感性の道を極める論   考」感激・感動・感謝という感情の回路を洗練し、浄化し、創生していく道を極めるという意味でのタイ  トル
123.「デザインという先手」川崎和男、アスキー出版、4月5日
 : 「デザイントーク」2003年8月~2006年3月号の単行本化、シリーズ第六巻。大学論、教育論のウエ  イトが高い
124.「ガンを治す大辞典」帯津良一編著、二見書房、4月5日
 : 現代医学の主流である西洋医学のガン治療法をガンの種類、進度別に解説しその効果と限界につ  いても述べる。その上で、西洋医学を補完する「自己免疫力強化」を狙いとする各種代替療法の論   理・療法・実施機関を紹介する
125.「日本列島の将来像」丹下健三、大進社、4月5日
 : 「東京計画」(1960年)、「都市の将来」(1962年)、「大都市開発のヴィジョン」(1964年)、「日本列   島の将来像ー東海道メガロポリスの形成ー」(1965年)をまとめたもの
126.「一本の鉛筆から」丹下健三、日本経済新聞、4月5日
 : 日経「私の履歴書」をベースに、新聞には書けなかったエピソードや建築論、設計図、模型、建築写  真を加えて編集したもの
127.「丹下健三」1・2・3、丹下健三、鹿島出版、4月6日
 : SDの特別号として出版された丹下健三の作品集に丹下健三が解説を加えたもの。大型本で写真も  綺麗で見やすく、主要作品が網羅されている。英文併記
128.「生態学的視覚論」J・J・ギブソン、サイエンス社、4月6日  **  (25)
 : サブタイトルは「ヒトの知覚世界を探る」。一般に流布している視覚のイメージは、カメラのシャッター  によって取られたスナップショット、刺激による感覚入力による網膜像であるが、筆者はこれは誤りで  あるとして、新しい視覚論を提示する。人間は環境の認識を、光束から不変項を抽出ことに基礎を置  いて行っているという。これは、風景を見回すときの視覚である環境視、歩いている時にえられる移動  視であり、それを生態学的視覚と呼ぶ。本書は「アフォーダンス」という新しい概念を提案していること  でも有名
129.「建築を語る」安藤忠雄、東大出版、4月7日     (2)
 : 「私は建築においても自分自身の思想や美学を現実の問題と妥協させることなく、自らの「表現」を  社会的、客観的な視点に基づく思想とともに昇華した一つの建築世界として成立させるべく戦う姿勢  が1重だと考えています、それには、夢を捨てず、あらゆる可能性を求めて、現実の諸条件を克服する  知恵、勇気と決断力が不可欠です」と安藤はいう
130.「ドイツ緑の党とは何か」ハンス・ベルナー・リットケ、人智学出版、4月7日  (33)
 : ドイツ緑の党のザールブリュッケン連邦党綱領は、社会性・底辺民主主義・エコロジー・非暴力を基  本に緑の経済政策・自然と景観保護などで構成されている
131.「シュタイナー世直し問答」ルドルフ・シュタイナー、4月8日、風濤社、4月8日
 : シュタイナーが講演の聴衆からの社会問題に関する質問を受け、それに答える形で「世直し」の方  向、すなわち三層化社会の構築の必要性を説く 
132.「緑の党」仲井たけし、岩波、4月8日   *
133.「新しい社会運動と緑の党」坪郷實、九大出版会、4月8日、4月8日 *
 : 緑の党発足の背景からはじめ、環境運動としてスタートし、政党へと活動を広げていく歴史を、手際  よく、分かりやすくまとめた好著
134.「ラディカル・エコロジー」トーマス・エバーマン、社会評論社、4月9日
 : サブタイトルは「ドイツ緑の党原理派の主張」。本書は1984年に出版され、著者二人は1990年緑の  党を原理派の主張で再生することは不可能と判断して脱党、「ラディカル左翼」を結成
135.「グローバルな正義を求めて」ユルゲン・トリッテン、緑風出版、4月9日 * (16)
 : 筆者はドイツ緑の党のリーダー格として1998年連立政権連邦環境大臣に就任。原子力発電事業の  廃止決定や代替で風力を筆頭とする再生エネルギーの導入を矢継ぎ早に実施
136.「緑の政策事典」フランス緑の党、緑風出版、4月9日      (2)
 : 本書は1994年に出版された「緑の本」の第二巻にあたり、1999年に出版された。第一巻が緑の党  の思想を初めて総合的にまとめたのに対し、本書は幅広い領域における政策提言をまとめている
137.「緑の政策宣言」フランス緑の党、緑風出版、4月9日      (12)
 : 原題は「緑と左翼の希望を再建するーエコロジー・平等・市民権」。「自律・連帯・平等・責任・男女平  等・自然と環境の尊重・ローカルとグローバルの連続性」を説く
138.「見えかくれする都市」槇文彦ほか、鹿島出版会、4月10日
 : 欧米と日本の都市を比較して、日本の都市の特徴を「奥の思想」にあるという。奥という概念を設置することによって比較的狭小の場所空間をも深化させることを可能にしてきたという
139.「記憶の形象」槇文彦、筑摩書房、4月11日   *   (31)
 : 本書は1960年代から1990年代の間に書きとめられたものの中から40に近い文章を選んで構成され  ている。この本に著者が託したのは、一建築家の自己史として、姿ともいうべきものが、それなりに立  ち現われえたか否か之検証の手がかりにすることであったという。もしこの本の内容を貫く大テーマ   が一つあるとすればそれは「都市」にほかならないという
140.「日本のかたちアジアのカタチ」杉浦康平、三省堂、4月11日  *
 : 28の主題に共通するのは、宇宙論的・神話的な主題とカタチのかかわりあい、生命記憶を喚起さ   せる懐かしいカタチとの出会い
141.「神秘学概論」ルドルフ・シュタイナー、人智学出版、4月12日  *   (29)
 : 近代科学は、科学的であるということは直接目に見え・触れられるものを対象にすることだとすること  により、狭い唯物的世界に人間を閉じ込めてしまい、人間の特徴である精神世界を拒否した。シュタ  イナーは、人間世界は物質・エーテル体(生命体)・アストラル体・自我・霊我・生命霊・麗人より攻勢  されるとする
142.「いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか」ルドルフ・シュタイナー、イザラ書房、
   4月12日    (4)
 : 「超感覚的な認識を獲得する」ための修行のあり方を説いた神秘修行の実践書。
143.「社会問題の核心」ルドルフ・シュタイナー、人智学出版社、7月13日  **  (33)
 : 現代の社会問題はすべて経済生活に発するという考えが主流となっているが、真の社会問題は、   労働の場で「精神性}が無視され精神生活の健全性が失われていることにあると主張する。その解   決策として「社会の三階層化」を提案する
144.「槇文彦」1・2、槇文彦、鹿島出版会、4月13日   *  (2)
 : 槇文彦は、自分の建築を「私の場合、アプリオリにある方法が先行することなく、むしろ与えられた   条件の中で、建築を発酵させようとすることになる。そのためには、建築家は状況に不満を持つとか、  肯定するとかいうこと以前に、与えられた条件とか環境に対して、建築家のSENSIBILITYをどう対応さ  せるかが問題になる。」という
145.「永遠まで」高橋睦郎、思潮社、4月14日
 : 高橋睦郎の詩集。1995年から2007年に発表されたものの単行本化
146.「間の極意」太鼓持あらい、角川書店、4月14日
 : 東京・京都ではなく福井を拠点とする一匹狼の太鼓持ち。現代は人付き合いに悩む人が多く、人の  気持ちを和ませ、人間関係を円滑にするためにどうしたらいいかのノウハウが求められている。その   工夫・気配りを30のポイントにまとめて伝授
147.「型の日本文化」保田武、朝日選書、4月15日
 : 日本文化の特質・性格を一口でいうと、「型」の文化である。それを伊勢型紙・染織、日本舞踊、漆   器、清元、相撲、歌舞伎、落語などの例を挙げて詳述する
148.「家相の科学」清家清、光文社、4月15日
 : 昔から言い伝えられた家相の言葉(「家相秘伝集」「家相極秘伝」など)を手がかりに、住みよい家   の条件とは何かを建築学的に考える
149.「語らざる者をして語らしめよ」高橋睦郎、思潮社、4月15日
 : 高橋睦郎詩集。2002年4月から2005年1月まで「現代詩手帖」に掲載されたものの単行本化
150.「建築をめざして」ル・コルビュジェ、鹿島出版会、4月16日  *
 : 住宅は「住むための機械」であり、かつ「宮殿」になりうると1921年に発表、現代建築の旗手となっ   たコルビュジェの歴史的著作。20世紀の建築界に最も大きな影響を与えた書。立体(ヴォリューム)・  面・平面(プラン)・「指揮線」感覚で建築をとらえることを提唱
151.「建築の多様性と対立性」R・ヴェンチェーリ、鹿島出版会、4月16日  ** (19)
 : おそらくこの本は「建築をめざして」以来最も重要な本である(1966年発表)。コルビュジェと正反対   の立場で書かれているが、コルビュジェを補完するものとしては最初のもの。論理が明快・理にかな   ったものであり、その論理の裏付けとして350点の豊富な資料(写真・デッサン・図面)を提示
152.「イメージの歴史」若桑みどり、放送大学、4月17日  *
 : 「新しい美術史」の放送大学教科書。従来の「美術史」との違いとして、1)広汎な対象(大衆文化な  どをふくむ)、2)超域的な方法(関連があるあらゆる領域の学問の成果を活用する)、3)ポストコロニ  アルな見かた(西欧中心の価値観・歴史観からの脱却)、4)ジェンダーの観点の導入(男性中心・女  性蔑視の否定)をあげ、それを理論編と具体例に分けて説く
153.「象徴としての建築」川添登、筑摩書房、4月17日   *    (12)
 : 都市は文明の実態であると言えるが、都市を文明の実態とするものこそ建築にほかならず、それゆ  え建築は、歴史の中で、ながらく文明の象徴であり続け、またその時々の時代精神の象徴ともなって  きた。ピラミッドに始まり、現代に至るまでの、そうした建築の歴史を語る
154.「景観の構造」樋口忠彦、技報堂、4月17日      *     (4)
 : 景観をデザインすると言う観点から、景観とはどういうもので、どのよおうに捉えて言ったらいいかを、  地形の構成する景観であるランドスケープを対象として考察し、その尺度を提案する
155.「建築造形原理の展開」パウル・フランクル、鹿島出版会、4月18日  *  (35)
 : 建築造形論の古典ともいわれている。四つのカテゴリー、空間形態・物体形態・可視形態・目的意   図を、四つの歴史的段階に分けて近世建築の造形論を分析する
156.「文学における原風景」奥野健男、集英社、4月18日
 : 今に自然の全くない自己形成空間に生まれ育ち、それを生活空間とする世代が生まれてくるだろ   う。そのとき文学、芸術は可能か,存続しているか?ぼくは存続するだろうと楽観している。人工はそ   れほど完璧でなく、その割れ目には、いつも新しい”原っぱ”や”隅っこ”があるから、という
157.「道の文化」山田睦男ほか、講談社、4月18日
 : 「人間の歩いたあとが道になる」。「絹の道ー明治のシルクロード」「道の民俗・旅の道」「庶民の道」  「塩の道」「稲の道」「仏の道」「海の道」について述べる
158.「都市の風景学」川本三郎、駿駿堂、4月19日
 : 川本三郎の7人の相手との対談集。都市と子どもと死(病い)が等価の数年来の大きなテーマだと   いう。それらの共通性はいずれは消えていくもの。「死」の予感がとらえる都市論。圧巻は、村上春樹  とのチャンドラーのフィリップ・マーロー論とロスアンジェルス論
159.「環境と文化」石毛直道編、NHK,4月19日   *     (12)
 : 人類学の目で環境と人間のかかわりを、2点を中心テーマとして考察。1)異なる文化・風土間にお  いて形成された環境観を比較研究する、2)人類史における環境観の進化についての一般論として   の考察を試みること
160.「無縁社会」NHK,文芸春秋、4月20日
 : 「行旅死亡人」=行き倒れで亡くなった身元不明の人たちの追跡に始まり、「無縁社会」を切り口    に、NHKで27本放送された情報に、テレビでは触れなかった情報も加え「無縁死」(遺体の引き取り   手のない死)年間3万2千人の実態に迫る
161.「10人の環境パイオニア」今泉みね子、白水社、4月20日  *
 : 10人のユニークな環境パイオニアたちを中心において、ドイツの環境政策を豊富な事例を上げなが   ら紹介
162.「都市のイメージ」ヶヴィン・リンチ、岩波、4月20日      *    (15)
 : 「都市の姿は、そこで暮す人々にとってどんな意味があるのだろうか。都市のイメージを、住民にとっ  てもっと生き生きとしたものにするために都市計画家たちに何ができるのだろうか。筆者はこの問いに  答えるために、イメージアビリティという新しい基準を提案し、これがとしをつくることとつくり直すことの  ために、いかに役に立つかを示そうとしている
163.「うるしの話」松田権六、岩波新書、4月22日         *
 : 縄文時代から伝わる伝統工芸を「人間国宝」の筆者が語る。造詣を傾けた「うるし」諸義全般、原    液、塗り方、蒔絵の技法など実際に製作に携わるものの知識・経験が滲み出ている部分が圧巻
164.「陸と海と」カール・シュミット、福村出版、4月22日
 : 「陸と海」の対立抗争の視覚からする世界史考察。陸で土地の占取(植民地化)、海でイギリスによ  る全地球的占有による新空間秩序が打ち立てられるに至った
165.「書物合戦」スイフト、原題思潮社、4月22日
 : スイフトのパトロンのテンプル卿がフランスで進行中の古代・近代優劣論争のイギリス版のきっかけ  になったから、近代派代表の蜘蛛と古代派代表の蜜蜂争いの端を発し図書館の書物が二派に分か  れて争うという擬叙事詩風のアレゴリー
166.「鯨の腹のなかで」ジョージ・オーウェル、平凡社、4月23日  *
 : オーウェル評論集第三巻。鯨の腹のなかの作家ヘンリー・ミラー、真昼の暗黒のなかのケストラー、  <人間らしさ>を護り7かつ<人間らしさ>を呪うディケンズ、、<すぐれた通俗詩人>キプリング、四  人の作家論
167.「北回帰線」ヘンリー・ミラー、新潮文庫、4月24日  *
 : 小説・エッセイ・自叙伝・ファンタジー物語?文学のジャンルについての伝統的約束は見事にぶち壊  され、ストーリー・劇的緊張は見当たらず、かって存在したことのなかった文体・過激な性描写で破天  荒な衝撃を与えたヘンリー・ミラーの出世作
168.「南回帰線」ヘンリー・ミラー、新潮文庫、4月24日  *
 : 1939年出版。「北回帰線」より完成度が高い。ミラーとの純粋な合体により名前を失った女「マー    ラ」、この女と共に外的・日常的・自然的秩序の代わりに内的秩序を打ち立てようとする態度、「自分  自身に帰れ」すなわち、愛し・憎み・苦しみ・死にそしてよみがえる 
169.「男おひとりさま道」上野千鶴子、法研、4月25日
 : ベストセラー「おひとりさまの老後」発売後「男おひとりさまの老後を続きで書いて欲しい」という多く   の要望に応えたのが本書。「せいぜい女に愛されようかわいげのある男になることね」というのが、   「男おひとりさまの老後」をうまくやるアドバイス
170.「花はさくら木」辻原登、朝日新聞、4月25日
 : 「花はさくら木、人は武士」。京・大坂で陰に陽に激しくしのぎをけずる三つの勢力、二条城(徳川幕  府)・御所・大坂北浜(商人)。武士、田沼意次・青井三保を主人公に展開する時代小説
171.「住宅論」篠原一男、鹿島出版会、4月25日
 : 機能主義、狭小な住宅スペースという時代背景にもかかわらず、「すまいは広ければ広いほどよい」  「無駄な空間」の有効性の強調、一つの家族が生きることの象徴であるような空間(=住宅のコア)、  すなわち、トータルな空間の重要性を説く
172.「日本の風景・西欧の景観」オギュスタン・ベルク、講談社現代新書、4月26日 * (14)
 : 筆者は最後に次のような仮説を提起する。新しい風景は、西欧で近代の風景の危機から生まれた  ポスト・二元論と、世界が知るようになったもう一つの大きな風景の伝統つまり東アジアの伝統におい  て前提とされる非二元論、この両者の総合から形を取ることになるなるだろうということである
173.「住まいと文化」ラポポート、大明堂、4月26日  *  (9)
 : 現代は住宅形態に与える自然の制約が小さくなった時代であるが、風土建築には大きな教訓が含  まれている、人間の変わらない面と変わりやすい面とのからみあいを表現することのできる普遍的で  「自由な」枠組みを確立するために、さまざまな制約条件を検討することが重要だということ
174.「民藝四十年」柳宗悦、岩波文庫、4月27日   **
 : 圧巻は「利休と私」。「柳さんは昭和の利休ともいうべき人」との評価にたいし「大いに不服」と言い   切る。利休は権門を利用して「茶」を栄えしめたが、それは「茶」の原点である「貧の茶」ではない。ま  た時代の恵みによって、民藝館の品々のほうが色々な点で、利休の収集品より豊富である。利休を  利休として認めてもよいが、利休程度の仕事に、自分の仕事を止めるわけにはゆかぬ、と断言する
175.「民主主義の展望」W・ホイイトマン、講談社学術文庫、4月27日  *  (6)
 : 本書は民主主義の理論を説いた書物ではなく、アメリカ国家・政治への批判の書であり、全ての国  家・国民に対するメッセージとして、「魂を動かす者のみが自己を救済することができる」という。また、  民主主義とは、1)平等主義、2)人格主義の二つからなるとする
176.「寛斎漫筆」永井荷風、岩波、4月27日
 : 荷風の随筆集。明治・江戸の文人をとりあげる。読書論に始まり、後半は大田南畝論
177.「人類とその環境」今西錦司ほか、講談社、4月28日          (1)
 : 本書は「人類・環境研究会」の8人のメンバーが、月一度二年間にわたる報告・討論・提言をまとめ  て単行本化したもの
178.「眼の哲学・利休伝ノート」青山二郎、講談社文芸文庫、4月29日
 : 小林秀雄をして「僕たちは秀才だが、あいつだけは天才だ」といわせた青山二郎の評論集。出色は  「梅原龍三郎」「富岡鉄斎」「利休伝ノート」
179.「イコノロジー研究」エルヴィン・バノフスキー、美術出版社、4月29日
 : イコノグラフィーは美術史の一部門であり、美術作品の形に対置される主題・意味を取り扱うもので  ある。そして「主題・意味における三層」に区別しなければならない、すなわち、美術上のモティーフの  世界を構成している「第一段階的・自然的主題」、「イメージ・物語・寓意」の世界を構成している「第   二段階的・伝習的主題」、「象徴的価値」の世界を構成している「内的意味・内容」の三層である
180.「地図の歴史」織田武雄、講談社、4月29日
 : 人間の歴史はつねに大地を舞台として営まれてきた。したがって古地図は大地に刻まれた人間の  歴史の記録であるとともに、それぞれの時代の人間がどのように世界をとらえたかという世界観の反  映でもある
181.「盆栽の社会学」池井望、世界思想社、4月30日  *   (14)
 : 盆栽家たちの熱心な主張「盆栽は芸術である」を著者は否定する。その根拠として、人間の手を加  え続けないかぎり、盆栽は盆栽でありえず、自然に戻ってしまうことを指摘する。それと同時に、望ま  しい秩序が、不断の「人」の努力によって、かろうじて保たれている盆栽の姿に、世界に例のない「日  本文化」の特質を見る
182.「夢中問答集」夢窓国師、川瀬一馬訳註、講談社学術文庫、5月1日 ***
 : 足利直義の質問に夢窓国師が答える問答集。天台・真言をはじめとする諸教(ハ宗)と禅(五宗)と  の違い、小乗と大乗の違いなどを分かりやすい豊富な喩えを交えながら説明。この問答集が出色な  のはその説明の分かりやすさのみにあるのではなく、夢窓国師の宗教家としての学よりも行に重きを  置き、常に輪廻からの解脱という人生の大目的に立ち返り仏道を説く一貫した姿勢にある
183.「ディヴィッド・コパフィールド」1・2・3、ディケンズ、新潮社、5月3日  **
 : 自伝的要素の多く盛り込まれた小説。ディケンズが自分の作品の中で最も好きだという。イギリス   の下層・中流社会の有様がありありと描かれている。
184.「草の葉」ホイットマン、岩波文庫、5月3日
 : 有名なホイットマンの詩集
185.「戦時下日本の建築家」井上正一、朝日選書、5月3日
186.「戦争とラジオ」ジョージ・オーウェル、晶文社、5月4日  *
 : 「The War Broadcast」と「The War Commentaries」の原書では二冊の本を一冊にまとめたもの。イ  ギリスの植民地インド向けのナチス・ドイツのラジオ放送に対抗して始められたBBCの放送に参画し   たオーウェルの二年間の記録。個人的にはインドの独立を主張しながら、反ファシズムの立場で放送  に参画した知識人としての誠実さが良く伝わってくる力作
187.「象を撃つ」オーウェル、平凡社、5月4日  *
 : オーウェル評論集第一巻。最も印象に残ったのはタイトルにもなっている「象を撃つ」。ビルマで警察  官をしていたオーウェルが象が暴れているとの知らせにより現場に急行、静かになっていた象をみた  瞬間は「撃たないで様子を見よう」と考えたが、集まった大群衆の期待を肌に感じ、撃たなかった場合  の自分の威信の失墜を懸念し、結果的に毅然たる態度を示すために発砲した自分を冷静に描く
188.「水晶の精神」ジョージ・オーウェル、平凡社、5月5日
 : オーウェル評論集第二巻。印象に残ったのは、「ナショナリズム覚え書」「リア王・トルストイ・道化」、  書評ウインストン・チャーチル著「最良の時」
189.「ドイツ国民に告ぐ」フィヒテ、多摩川大学、5月7日  *  (12)
 : 1807~8年フランス占領下のベルリンのアカデミーで行われた14回の講演の単行本化。ドイツ国  民の士気を大いに高めた。国家の独立の基礎を祖国愛に求め、そのための最重要手段を教育に置く
190.「歴史哲学」ヴォルテール、法大、5月7日
 : サブタイトルは「諸国民の風俗と精神についての序論」。カトリック教会を破壊しようと勤める宣伝、   活動家のためのハンドブック。「恥知らずをやっつける」。「旧約聖書」の粉砕、ユダヤ人の野蛮性の強  調を狙う「理神論」の書
191.「人はなぜ治るのか」アンドルー・ワイル、日本教文社、5月8日 * (2)
 : 20世紀の主流医学は19世紀末の科学の弱点を継承しており、健康・病気の定義を曖昧のままに  放置し、治療効果を大きく左右する重要因子としての意識や心の問題を無視し、身体メカニズムの物  理的側面に研究・努力を集中している
192.「日本文化探検」川喜田二郎、講談社、5月8日   *
 : 日本論は山ほどあるが、木を見て森を見ないものが多い。日本人でありながら、日本人でないよう   な心境になって、日本を眺め回すというスタンスから生まれた日本文化論
193.「風景との対話」東山魁夷、新潮選書、5月8日   *
 : 一つ一つの作品の成り立ちを通して、美を求める心の過程を描いたエッセイ集
194.「住居空間の人類学」石毛直道、鹿島出版会、5月8日
 : 二つのパートからなる。1)オセアニアとアフリカの八つの社会の住居に関するモノグラフ集、2)住居  空間のデザイン原理に関する一般論の展開
195.「生活文化と土地柄」佐藤甚次郎、大明堂、5月9日
196.「空間の原型」上田篤・多田道太郎編、筑摩書房、5月9日    (3)
 : 住居をはじめとする人間の空間の発達を支えたものは、「避難」と「威嚇」の構造化にあるという
197.「風土に生きる建築」若山滋、鹿島出版会、5月9日
 : 建築構法からの比較文化論を、各種材料・構法研究・全体を通して浮かび上がってくるものは、建   築とともに風土である
198.「10宅論」隈研吾、ちくま文庫、5月9日  **
 : テーマは「場所」の問題。日本型の象徴作用=場所中心の象徴作用。「モノ」の置かれた場所、「モ  ノ」がどの場所から運ばれてきてこの「場所」に置かれたのか、その二つの「場所」の関係によって、   「モノ」が何を意味し、何を象徴するかが決定される
199.「住まいの原型」Ⅰ、泉晴一編、鹿島出版会、5月10日
 : 雑誌「都市住宅」の「文化人類学の眼」の1968年5月~1970年11月号までの単行本化。泉晴   一の問題意識「人類にとって住まうこととはなにか」に基づき、世界の国々の住まいの原型を報告
200.「地理の思想」京大地理学教室編、地人書房、5月10日  *  (1)
 : 「世界像はバロル(話し言葉)によって規定される」というムーナンの考えに従うと、「景観」や「地域」  「空間」についての科学を厳密に体系化するためには、地理と言葉の対応をみつめる必要がある。本  書はこうした考え方延長線上にある
201.「輝く都市」ル・コルビュジェ、鹿島出版、5月11日  **   (6)
 : 本書はコルビュジェの「輝く都市」理論の解説でありまた要約決定版である。「輝く都市」理論は、今  世紀の機械文明がもたらした技術革命による成果を基礎とした建築と都市計画との緊密な関係の上  に作り出される新しい三次元の都市計画であって、これによって、ながい間混迷の中に苦しんだ都   市、農村の人達、あらゆる人間に「物質的にも精神的にも申し分のない最上の生活条件」を見出さし  めようとするものである
202.「外套」ゴーリキ、岩波文庫、5月11日
203.「遊びと日本人」多田道太郎、筑摩叢書、5月12日
 : 「遊び」を通して日本文化の特徴に迫る。「遊」と「義」との分析からはじめ、周作人中国との違いの   指摘、「神人和融の状態の現出」、日本の「はやし・憑依」の遊びのかたち
204.「不合理ゆえに吾信ず」埴谷雄高、現代思潮社、5月12日
 : 初出は1939年のアフォリズム集。サルトルが「嘔吐」を発表したのが1938年。この2冊に通定す  るのは時代の変化についての感受性とそれへの対応の模索
205.「犬」中勘介、岩波文庫、5月12日   *
206.「フリーエージェント社会の到来」ダニエル・ピンク、ダイヤモンド社、5月13日 * (8)
 : アメリカにおける「組織人間(オーガニゼーションマン)時代の終わり」と「フリーエージェント社会の到  来」を描く。「会社などの組織に雇われない生き方」がすでにアメリカでは3300万人に達し、働き方   の主流になっている実態を報告、その背景・メリット・課題等にふれる
207.「和紙千年」高田広、東京書籍、5月13日
 : 良質の手漉き和紙は、千年以上たっても劣化することがない。森の豊かな自然の恵み(楮、水)と   優れた技術があって和紙ができる
208.「中国書画話」長生雨山、筑摩叢書、5月13日  *
 : 同時代の一流の中国人と同等以上の中国文化・芸術にたいする教養で深い交流を持った著者なら  ではの解説。「支那南画」「書法」「碑帖」「文房(紙筆硯墨)」の四部構成
209.「日本画の精神」坂崎坦、ぺりかん社、5月14日  **  (7)
 : 著者は「画論の発展経路をみると、日本の画家は終始一貫支那から学んだ六法その他の画論を基  礎としてここに純乎たる日本画を樹立したことが分かる。殊に六法の第一に位する気韻生動を絵画の  最も重大な要素としたということが断定できるのである」と結論する
210.「家庭のない家族の時代」小此木啓吾、ABC出版、5月14日  *
 : 1983年の出版であるが、この時点で著者は、戦後の核家族化がすでに崩壊の危機に瀕してお   り、「家庭のない家族の時代」が到来すると予測する。そして失われた家族の絆に代わる社会的ネッ  トワークの組織化の必要を説く
211.「歌舞伎以前」林屋辰三郎、岩波新書、5月14日
 : 歌舞伎は封建社会の大転換期である江戸幕府成立期に誕生した。様々な芸能に関連して、民衆   の歴史と生活を考えてみようとしたのが本書の目的
212.「未来の記憶」エレナ・ガーロ、現代企画室、5月15日
213.「香水」パトリック・ジュースキント、文芸春秋、5月15日
 : 鼻が主役の奇想天外な物語
214.「カリカチャアの歴史」トーマス・ライト、新評論、5月15日
 : サブタイトルは「文学と美術に現れたユーモアとグロテスク」。執筆の意図は「文学の多様性を社会  との関係においてたどり、社会が文学に与える影響や変革期の社会の動きを描出する」という壮大な  もの
215.「鷹の井戸」イエーツ、角川文庫、5月16日
 : イエーツ作の能台本
216.「表象の帝国」ロラン・バルト、ちくま学芸文庫、5月16日
 : バルトの考えている表現体とは、表徴されるものをもたない表徴、無化されている表徴がつくる表現  体にほかならない。そうした表現体こそ純粋な表現体なのであり、それを彼は、日本のなかにおいて  のみ発見したのである
217.「木の文化」小原二郎、鹿島出版会、5月16日  **  (2)
 : 木の感触を重んじる日本文化の特質を、飛鳥時代から鎌倉時代にかけて製作された仏像の材料と  して使われた木の変遷を通して分析する。「木の文化」日本は、ヒノキを代表とする白木の針葉樹、   「石の文化」である西洋は、オーク(ナラ)に代表される照葉樹の厚塗りを好む
218.「火山列島の思想」益田勝美、筑摩書房、5月17日  *
 : 11の小編からなる。印象に残ったのは、「日知りの裳の物語ー源氏物語の発端の構想ー」、「偽悪  の伝統」、「飢えたる戦士ー現実と文学的把握ー」
219.「番と衆」福田アジオ、吉川弘文館、5月17日
 : サブタイトル「日本社会の東と西」。東西文化の比較論
220.「花鳥の使」尼ヶ崎彬、剄草書房、5月18日  ***  (39)
 : 「ただの詞」は日々の「ことわり」を記述・論ずることはできるが、「いふにいはれぬ」「あはれ」を伝え  ることはできない。「あはれ」を表現するものが「あや」ある言葉、すなわち歌である、との宣長の考え  をベースに、それに俊成の「古来風体抄」の<歌の道>は「摩珂止観」に描かれた<仏の道>に、通  じるとする。定家・心敬を含めて歌論の発展と歌の本質をこれほど高いレベルで、分かりやすく、説い  た本はない。空前絶後
221.「千利休」唐木順三、筑摩書房、5月19日  *
 : 千利休というわかりにくい人間を、世阿弥と芭蕉との中間として利休のわびを捉えるというのが著者  の見解。芭蕉のさびは無を根底としているのに対し、わびは有と有との対比の観念であり、利休がさ  びにまで行けなかったのは、信長・秀吉との対比において、はじめてそのわびが生まれるからである  という
222.「兵法家伝書」柳生宗矩、岩波文庫、5月19日
223.「五輪書」宮本武蔵、ちくま学芸文庫、5月19日  *
 : 武蔵の兵法書で五巻よりなる。第一巻、地:二元一流(二刀流)の兵法の道のおおよそ、二巻、水:  太刀の使い方、三巻、火:戦いに勝の利、四巻、風:他流、五巻、空:兵法の究極は空である
224.「日本文化の表情」梅棹忠夫、多田道太郎、5月20日  *  (6)
225.「がん治療総決算」近藤誠、5月20日  *
 : 社会の一般的な見方、「がんはあっという間に増大、転移するのですぐ治療・手術すべき」「抗がん   剤は、副作用はあるが、寿命を延ばす」にたいし、その誤りを体系的に糺す。「患者はがんと戦うな」   で話題をよんだ著者のがん総決算の書
226.「しぐさの日本文化」多田道太郎、筑摩書房、5月21日
227.「日本文化を語る」周作人、筑摩書房、5月21日   *
 : 日本が中国を侵略していた当時、中国では、日本文化は、昔は中国今は西洋の模倣をしているだ   けとして軽蔑する風潮が一般的だったが、著者はあたかもローマ文明がギリシャ文明から出て一家を  成したごとく、日本に見るべき固有文明があると主張する知日家。中国侵略を正当化しようとする日   本の主張のおかしさを、敵対国中国の立場からではなく、日本国内の建前論・筋論・良識派の論理   で鋭く指摘
228.「南方録」立花実山、中央公論、5月21日
 : この本の評価は、極端に二分化している。一方は茶の湯の「聖典」とし、他方は「偽書」とする。利休  の死後百年黒田藩士立花実山が纏めた
229.「崩壊概論」E・M・シオラン、国文社、5月22日
230.「支那絵画史」内藤湖南、ちくま学芸文庫、5月22日  *  (6)
231.「東洋文化史研究」内藤湖南、筑摩書房、5月22日
232.「嬉遊笑覧」1~5、北村いん庭、岩波文庫、5月23日 *
 : 江戸末期に纏められた風俗の百科事典。和漢の古今の資料を縦横に活用し、「居処」「容儀」「服   飾」「器用」「書画」「詩歌」「武事」「雑伎」「宴会」「歌舞」「音曲」「翫弄」「行遊」「祭会」「慶賀」「方術」  「娼伎」「言語」「飲食」「火燭」「商賣」「包士」「禽虫」「草木」を計十二巻で叙述
233.「建築・室内・人間工学」小原二郎ほか、鹿島出版、5月24日
 : 建築に人間工学の手法を導入すべく、その体系化を目指したチャレンジの書
234.「日本のインテリア」神代雄一郎、井上書院、5月24日
 : 現代建築は各種技術の進歩を取り入れ大きな変化を生み出してきたが、その一方で日本の伝統の  良さが見失われ創造性の乏しい平板なデザインが一般化しているという状況を憂え、インテリアの領  域で、日本の伝統と何かを改めて見つめ、それを踏まえつつ、新しいものを創造していく必要を模索   する
235.「住まいの原型」Ⅱ、吉阪隆正ほか、鹿島出版会、5月25日
 : 世界各地に残る原始的住まいを訪ねる「住まいの原型」シリーズ第二巻
236.「ことばと身体」尼ヶ崎彬、剄草書房、5月26日  ***  (37)
 : 言葉の意味に関しての二つの立場、言葉の意味は言語大系という制度の一部として決定済みであ  るとする言語制度説と言葉の意味は使用のつど主体が与えるものであるとする言語過程説のしょう   かいからはじめ、頭で理解することと、「腑に落ちる」納得することの違いは何かへと論をすすめ、「ら   しさ」をもとめ「なぞり」を身心一体で暗黙知の次元でのコミュニケーションにまで及ぶ
237.「メディアの現在」尼ヶ崎彬編、ぺりかん社、5月27日  **
 : 1990年学習院女子短大総合講義前期分をまとめたもの。作品(美術)、音、舞踏、劇場、建築、商  品(雑誌)について六人の講師が語る「メディアの現在」。メディアは、もはや意味を伝達するための道  具ではなく、意味が生起するための仕掛けである。受け手の身体は、提出されたメデイアを通じて、   環境を再定義し、自己を再定義してゆく。人が自分の身体を回復し、自分の生活をつくり直してゆくた  めのメディアが語れている
238.「縁の美学」尼ヶ崎彬、剄草書房、5月28日  *   (10)
 : サブタイトル「歌の道の詩学Ⅱ」とあるように「花鳥の使」の十年後の続編
239.「ダンス・クリティーク」尼ヶ崎彬、剄草書房、5月28日  *  (7)
240.「日本人の法意識」川島武宣、岩波新書、5月28日  *
241.「日本文化の焦点と盲点」中村雄二郎、河出書房、5月29日
 : 1962年2月~11月に「論争」誌上に連載された「対話とエッセエー日本文化・思想の焦点と盲点」  の単行本化。中村雄二郎の若さが感じられ、その後のキレが見えない
242.「好奇心と日本人」鶴見和子、講談社現代新書、5月29日
243.「日本文化の構造」梅棹忠夫、多田道太郎編、5月30日    (8)
 : 「論集・日本文化」全三巻中の第一巻。第一部「日本文化の枠組み」、日本文化のフレーム・ワーク  について考察
244.「サルになった男」間直之助、雷鳥社、5月30日
 : 昭和29年から約20年にわたり嵐山・比叡山での日本サルの餌付け通してのサルとの交流記。自  然との共存共栄、自然にかえることにより人間は幸福になれる
245.「外法と愛法の中世」田中貴子、砂子屋書房、5月30日
246.「日本のレトリック」尼ヶ崎彬、ちくまライブラリー、5月30日
247.「日本人へ - リーダー編」塩野七生、文春新書、5月31日  *
248.「日本人へ - 国家と歴史編」塩野七生、文春新書、5月31日 *
249.「日本文化と世界」梅棹忠夫・多田道太郎、講談社現代新書、5月31日
 : 「論集・日本文化」第二巻。「世界文化の中においた日本文化」を論じる
250.「環境先進国江戸」鬼頭宏、PHP新書、6月1日
251.「エコノミーとエコロジー」玉野井芳郎、みすづ書房、6月1日  **  (19)
 : 現代経済学は土地と労働力(人間)という有機体を無機物と区別できず、それにより自然破壊など   の環境問題を引き起こしている。土地・人間は有機体すなわち生命を持っていることを認識した経済   学、「生命系の経済学」の確立の必要を説く
252.「新・抗がん剤の副作用がわかる本」近藤誠、三省堂、6月2日
253.「抗がん剤のやめ方始め方」近藤誠、三省堂、6月2日
254.「日本文化研究」1~9、新潮社、6月4日   *
255.「結び」額田巌、法大出版、6月4日      *
256.「生活学ことはじめ」川添登・高取正男編、6月5日
257.「伝統と断絶」武智鉄二、風塵社、6月5日
258.「レトリックと人生」G・W・コフ、M・ジョンソン、大修館、6月5日  **  (12)
259.「個人と社会」オルテガ、白水社、6月6日  *  (22)
260.「推論と理解」佐伯編、東大出版会、6月7日
 : 1982年出版。戦後の行動主義全盛時代に「理解」「推論」などに迫る認知心理学を発展させてき   た過程の証言の書
261.「三教色」唐来参和、中央公論、6月7日
 : 天照大神・孔子・釈迦という神・儒・仏の始祖が揃って吉原に女郎買いに出かけるという物語
262.「拾遺枕草子花街抄」春曙軒蔵、中央公論、6月7日   *
 : 「枕草子」の題・文体を借りて花街事情を描くパロデイ
263.「生態学からみた自然」吉良竜夫、河出書房、6月7日
264.「知覚と身体の現象学」湯浅慎一、太陽出版、6月7日
 : 心理学に対する哲学としての現象学的心理学方法論的独自性の探求と弁護、身体論の方法論の  適用
265.「利休の茶」堀口捨己、鹿島出版会、6月9日  **  (10)
 : 利休論は何冊読んでも、モヤモヤ感が残りスッキリしなかったが、この本を読んで初めて腑に落ち   た。利休が先人(珠光、詔鴎)から何を受け継ぎ、何を独創として生み出したかかが具体的に余すと   ころなく描かれている力作
266.「からだ・認識の原点」佐々木真人、東大出版会、6月9日  *  (3)
 : 現代の認識研究は「静止パラダイム」のからだしか見なかった。著者は「認識の原点」としての「から  だ」の姿を「動き」「可塑的な媒体」「場」そして「対話」という四つのキーワードでとらえる
267.「アダム・スミス」水田洋、講談社学術文庫、6月9日    (9)
 : アダム・スミスの伝記・思想の全体をスケッチすることを目指す。天文学史・文体論・言語起源論・法  学・芸術論など広汎なスミスの学問の世界の一部に経済学が位置することを指摘。人間認識として   同感(sympathy)をベースに、富と地位への野心(弱みと欺瞞)、幸福=平静と享楽(enjoyment)にあ  るという
268.「アダム・スミス」堂目卓生、中公新書、6月10日  *  (12)
 : 一般的なスミスのイメージ「自由放任主義者」に疑問符を付ける。「道徳感情論」「国富論」を社会の  秩序と反映に関する、論理一貫した一つの思想体系であると主張
269.「アジア的身体」梁石日、平凡社ライブラリー、6月10日
270.「血と骨」梁石日、幻冬舎、6月11日    *
 : 戦前から戦後にわたる在日朝鮮人の主人公の壮絶な人生を描いた小説
271.「クラクラ日記」坂口三千代、三一書房、6月11日
 : 坂口安吾との十年間の生活をリアルにそしてユーモラスにに描く
272.「非常民の性民俗」赤松啓介、明石書店、6月11日
 : 柳田の民族学は「常民」を対象とし、性・差別などに触れることを避けた。筆者は、そこに正面から取  り組むことが民族学の重要な役割だとし、農村における「若衆組」「娘組」「夜這い」などに加え非常民  の性風俗を描く
273.「正義の経済哲学」後藤玲子、東洋経済新報、6月12日  **  (38)
 : ロールズの「正義論」とその批判者(主としてセン)たちの主張点を相違点だけではなく共通点も整   理し、ロールズの弱点を補強して、「正義論」の再構築を目指す意欲的な力作。
274.「見仏記」いとうせいこう・みうらじゅん、角川文庫、6月14日    (2)
 : 仏像を信仰の対象としてではなく、美術品として見て歩くという趣旨で「見仏記」となずける。「お互   いの見方をその仏像に捧げる」「同行二人というより同見二人」ということで、四国の遍路寺巡りで    は、自分たちを「オッヘンローラー」と呼ぶというノリで全編一貫するというかってない破格の仏像論
275.「四運動の理論」フーリエ、現代思潮社、6月15日  *  (12)
 : フーリエは「社会的・動物的・有機的・物質的」という四運動の理論こそは理性の企てるべき唯一の研究であるという。そして夫婦制度・商業制度の害悪を説く。そしてあらゆる経済の基礎となる大規模組合の結成、全ての商業資本を農耕と製造の場に返すことを提案する
276.「性愛の日本中世」田中貴子、洋泉社、6月15日
277.「視覚の冒険」下條信輔、産業図書,6月15日   **
 : 伝統的な視覚論「カメラのレンズと同じような働き」を否定、それに代わる理論として、1)推論説、   2)「アフォーダンス」と直接知覚説、3)計算論的アプローチ、4)「手っ取り早いトリック」説、5)PDP   あるいは並列ネットワークによるアプローチをあげる
278.「海神丸」野上弥生子、岩波、6月15日
 : 嵐で難破した船上での飢餓からくる食人の物語
279.「母親の通信」野上弥生子、岩波、6月15日
280.「江戸っ子芸者一代記」中村喜春、草思社、6月16日  *
 : 新橋の売れっ子芸者の一代記。その人間としての器量・気配り・努力が明るく描かれている。圧巻  は朝は学校、夜はお座敷で英語をものにするエピソード
281.「江戸っ子芸者一代記」戦後篇、中村喜春、6月16日
282.「江戸っ子芸者一代記」アメリカ篇、中村喜春、6月16日
283.「秀吉と利休」野上弥生子、岩波、6月17日  **
 : お互いにその卓越した力を認め合うと同時に反発を感じざるをえない秀吉と利休の関係を腑に落ち  るように描ききっている。その成功の鍵の一つは、小説という形式をうまく使ったこと。利休切腹の理   由として、一般説に加えて「唐御陣は明智討ちのようにはまいらぬ」という利休の発言をあげている
284.「迷路」上・中・下、野上弥生子、角川文庫、6月18日  *
 : 戦前に執筆を開始し、途中約十年の空白をふくみ、二十年がかりで戦後に完成した大河小説。登   場人物の個性を尊重し、安易に戦争中の時局に妥協させることを嫌い、中断を決断、戦後の自由の  もとでそれぞれの個性を発揮させている 
285.「感じる脳」アントニオ・R・ダマシオ、ダイヤモンド社、6月18日  * (25)
 : 身心二元論を否定。身体が感じたものを脳が情動としてさらにそれを感情として把握するという。脳  のそうした働きは人間の生命を護る目的があると主張
286.「笑いの経済学」木村政男、集英社新書、6月18日
 : 吉本興業の生い立ちをふくみ、その活動を経済=お金に焦点を当てて説明
287.「会社はこれからどうなるか」岩井克人、平凡社、6月19日  *  (14)
 : 「会社はだれのものか」という問いに対し「株主のもの」というアメリカの答えと「共同体のもの」という  答えがあるとし、エンロン事件でアメリカの誤りが証明されたとする。脱工業化社会の到来により会社  はその存在意義を問われている。会社が生き延びるためには、生き残りの鍵となる「創造力」を発揮  できる企業文化を形成・維持し、人材に「黄金の手錠」をかけることだという
288.「資本主義のハビトゥス」ピエール・プルデュー、藤原書店、6月19日
289.「ニューウエーブ・マネージメント」金井嘉宏、創元社、6月19日
290.「反少女の灰皿」矢川澄子、新潮社、6月19日  *
 : 約二十年前栗本真一郎がこの本のことを書いているのを読んで以来読んでみたいと思っていた本。  作者の独特の感性が面白い。十年前に買ってあったトルーキン「指環物語」を読む気にさせられた
291.「女は世界を救えるか」上野千鶴子、剄草書房、6月20日  (11)
 : イリイチの「ジェンダー論」が日本ではフェミニストにも反フェミニストにも広く受け入れられていること   から、第一にイリイチの議論の誤りを指摘し、第二に、日本でのイリイチ受容の特殊性とズレを指摘、  第三に、「女性原理」派フェミニズムに批判を加えることで、女性解放の理論的課題を一歩先に進め   る
292.「差異の政治学」上野千鶴子、岩波、6月20日
293.「女性状無意識」小谷真理、剄草書房、6月20日  *  (3)
 : 「SF読めれば幸せ」という青春時代を送り、社会へでて「サイバーパンクSF]はさっぱり分からない  を経験。フェミニズムがこれを読みとく絶好の方法論を提供するという
294.「荷風随筆集」上・下、永井荷風、6月21日
 : 上に17篇下に19編合計36編の随筆をおさめる。代表的作としては「日和下駄」「妾宅」
295.「百姓の一筆」田中佳宏、社会思想社、6月21日      (3)
 : 埼玉新聞に週一回連載されたコラムの単行本化。都会の肥大に対応するため近代農法が導入さ   れ、その結果土が病み自然が破壊された。農業保護は実は、農家保護ではなく、消費者=都会の   住民保護であるという
296.「波止場日記」エリック・ホッファー、みすず、6月22日
 : 沖中氏の哲学者エリック・ホッファーの1958~1959年の日記。「知識人」「変化」「創造」について  の考察メモとなっている
297.「思想の落とし穴」鶴見俊輔、岩波、6月23日  *  (1)
 : 前半の知識人についての考察が秀逸。「知識人とは大衆である」とオルテガは何十年も前に看破し  ていたが、鶴見の仕事は、それを日本の実情に照らし具体的に描いたこと。多くの知識人が時代に   流されていった中で、自分の頭で考えて自分の原則を確立し流されることなく次代を生き抜いていっ  た少数の知識人を拾い上げる
298.「ふれあう回路」鶴見俊輔、平凡社、6月23日
 : 鶴見俊輔と野村雅一の対談集。第一章「やりとりの文化」、第二章「身ぶりの思想」、第三章「もうひ  とつの回路」
299.「インターネット資本論」スタン・デイビス、クリストファー・マイヤー、富士通、6月23日 (13)
300.「失敗学のすすめ」畑村洋太郎、講談社、6月23日
 : 創造に向けての近道は「失敗」の経験・知識の蓄積であると主張
301.「雑木林の経済学」室田武、樹心社、6月23日
302.「土と日本人」山下惣一、NHKブックス、6月23日
303.「持続可能な発展の経済学」ハーマン・E・デイリー、みすず、6月24日 ** (31)
 : 新古典派をはじめとする現代の経済学は持続可能な発展を実現できないとする。そこで、まず成長  =量的な拡大と発展=質的な改善を区別することの重要性を説く。そして持続可能な発展を行う「定  常状態の経済」への移行を目指すべきだと主張。自然資源の利用を成長に入れるべきではないし、  環境汚染の修復費用現在国民所得に計上されているがこれは誤りであり、環境汚染は逆に国民所  得 から差し引かねばならない。また自然の涵養力の範囲内に人工を抑制することが重要だという
304.「水土の経済学」室田武、福武文庫、6月24日   (4)
 : 「風土」ではなく「水土」にこだわる。水土の概念は、特に熊沢蕃山によって、治山・治水の実践に結  び付けて主張された。農業破壊は棄民・亡国への最も早い近道だという
305.「都市を滅ぼせ」中嶋正、舞字社、6月24日     (8)
 : 破壊と汚染の元凶「都市を滅ぼせ」とは、都市に死滅させられようとしている人々を救い、大自然の  懐に帰ることである
306.「待ちの子育て」山田桂子、農山漁村文化協会、6月24日  *
 : 文字は教えず、習い事はさせず、けんかは大いに奨励し、焦らず、叱らず、無理強いせず、ゆったり  とのんびりと、日がな一日、水遊び、泥んこ遊び、畑仕事、六年間よく遊び、よく食べ、よく眠り、わん  ぱくとおてんばが巣立つのをまつ保育園についての報告
307.「ことばを豊かにする教育」鶴見俊輔・森毅編著、明治図書、6月27日  *
 : 「ことばを豊かにする教育」について12人がエッセイと対談で語る。それぞれなるほどと思わせる内  容を有しており、レベルが高い。印象に残ったのは、「子どもの目茶苦茶語を見れば分かるように、子  どもは10歳くらいまで言葉と付き合う力が大きい」、教育がその力を奪わず伸ばすことが必要との提  言
308.「THE LORD OF THE RINGS」1~6、TOLKIEN,COLLINS,7月5日  **
 : 碩学トルーキンの大作。壮大・緻密・ロマンあふれる14~15世紀を舞台とした小説
309.「キャリア・ダイナミクス」エドガー・H・シャイン、白桃書房、7月5日
 : 組織は個人の職務遂行に依存し、個人は、仕事およびキャリアの機会を提供する組織に依存して   いる。「キャリアとは、生涯を通じての人間の生き方・表現である」との認識のもと、「組織と人がどの  ようにして、共に利益をうるように、それぞれの要求を調和させうるか」を追及
310.「<面白さ>の哲学」福田定良、平凡社、7月5日
 : ヘーゲル・ディツィオナーリ・福田の三者が<面白さ>について議論するという仕掛け「哲学とは何   か」の入門書?「いい加減」も「私」の働きを取り戻すのに役立つし、「いい加減」という世間的実感を   「面白い」という実感に変えるには、話し合いが必要になるし、これは「考えることの面白さを味あう話  し合い」でもある。哲学の「とっつきにくさ」を克服し「素人の哲学」の開拓を目指す
311.「仕事の哲学」福田定良、中公文庫、7月5日
 : 「<面白さ>の哲学」の方法で「仕事」について、素人的にアプローチしたもの。社会の通念として、  集団の仕事が先にあって、「私」がその一部分を分担する、だが、世間で仕事と思われているものを   仕事たらしめるのは、「私」があって、「私」を離れて「集団の仕事」があるわけではない。これが仕事  の哲学の出発点
312.「イギリスの工場・日本の工場」ロナルド・P・ドーア、筑摩書房、7月6日   (2)
 : 一般に受け入れられている収斂理論を否定。1)発展の方向:社会的平等を要求、2)市場指向型   労組ではなく共生組織指向型、3)後発効果:先発追い越しという新しい収斂理論を日本の分析から  提案
313.「女の哲学」福田定良、法大出版、7月6日
 : 二人の女、順子(幽霊)と妻との対話という形式で「女」の哲学を展開する。ドラマ・喜劇を対話として  活用するところに、生きた哲学を論ずることが可能となる
314.「せいてはならん」富士正晴、朝日新聞、7月6日
 : 朝日新聞(大阪)に「老人問題」にyすいてのコラムを半年連載したものに書下ろしを加えて単行本   化。「ごく最近、女が突然きれいに見えるようになった」と老いの効用を説く
315.「ア・グッド・エイジ」A・カムフォート、小学館、7月6日
 : 老化に対する心構えについて書かれた。老化は生物学的・肉体的変化ではなく、あなたに加えられ  る政治的変化と政治的方法と心構えを変えるものだという
316.「対談 変貌する日本人」鶴見俊輔、多田道太郎、三省堂、7月7日  *
 : 戦後40年で日本は急激な変化を遂げてきた。その変化を観念的にではなく、出来るだけ具体的に  生活のレベルで捉えようとする好著
317.「教育再定義への試み」鶴見俊輔、岩波現代文庫、7月8日  ** (4)
 : 教育論は、ハウ・ツーを中心に論じたものが多いが、これを教育の「本質論」に焦点を絞ったもの。教  育の定義は「それぞれの文化の中で生き方をつたえるこころみである」という。そのためには「全体(t  otal)」ではなく「まるごと(whole)」を教えること、「まなびほぐす(unlearn)」が大事だと説く。
318.「対論 異色昭和史」鶴見俊輔・上坂冬子、PHP選書、7月8日 *  (2)
319.「組織心理学」シェイン、岩波、7月8日  *
 : 1965年初版、1979年第3版(大改訂)を訳したもの。初版では「<新しい分野>で固まっていな   い」と述べていたものが、第3版では「組織心理学の爆発」というまでに発展
320.「戦後思想三話」鶴見俊輔、ミネルバ書房、7月8日  *
 : 1980年秋、戦後思想史セミナーでの講義録。第一話、「<鎖国>をめぐって」、第二話、「転向の   遺産」、第三話、「時代と時代との対話」
321.「不逞老人」鶴見俊輔、河出書房、7月9日   *
 : 一回二時間X四回のインタビューを、NHK教育テレビの放送(2009年4月12日、89分)、と併行   して編集単行本化。「不良少年」ぶりを尊重、数え年で米寿を迎え「不逞老人」のタイトルに
322.「思想の科学五十年 源流から未来へ」鶴見俊輔編、思想の科学社、7月9日 *
 : 思想の科学の五十年の歴史を振り返り、その発足の狙い・背景とその成果、および未来につなが   るものを種々の角度から検討
323.「手放せない記憶」鶴見俊輔・小田実、編集グループ、7月9日
 : ベ平連を立ち上げた二人の対談。
324.「言い残しておくこと」鶴見俊輔、作品社、7月10日
325.「もうろくの春」鶴見俊輔、SURE工房、7月10日
 : 鶴見俊輔の詩集
326.「アメリカ哲学」鶴見俊輔、こぶし書房、7月10日  *
 : アメリカ哲学=プラグマティズム。実験とかけ離れた抽象的文句ばかりを使って思索する形而上学   的精神をあきたりないと思っていたメンバーが始めたプラグマティズム、バース、ジェームズ、ホウム   ズ、ミード、オットーの人と思想
327.「本と私」鶴見俊輔編、岩波新書、7月10日  *
 : 「本と私」というテーマでの作品募集に応募した818篇の中から19篇を選び単行本化。それぞれの  作品が自分と本との独特のなくてはならない関係を描く
328.「まごころ」鶴見俊輔、岡部伊都子,藤原書店、7月11日
 : 半世紀にわたる二人のつきあいを踏まえての対談集。「自己内対話」を行った人間のみが自己を確  立でき、見るべきものを持っている
329.「建築について」上・下、フランク・ロイド・ライト、鹿島出版会、7月12日
 : 「国際様式」は、機械が人間を使って作ったものであるから、決して民主主義的なものにはなりえな  い。「形態は機能に従う」というより、「形態と機能が一つのものである」という有機的建築を目指す
330.「装置としての都市」月尾嘉男、鹿島出版会、7月12日
 : 都市と計画と技術の積集合に関心を示す。「都市活動」「都市空間」「都市施設」を「通信技術」「エ  ネルギー技術」「交通技術」で作り上げる
331.「見えない都市」イタロ・カルヴィーノ、河出書房、7月12日
 : マルコ・ポーロの「東方見聞録」のパロデイ。マルコ・ポーロがフビライ汗に語る、使臣としての旅の   見聞の報告。物語ることの意味の追求
332.「日本建築史」藤田勝也編、昭和堂、7月13日
 : 日本の建築についての通史。豊富な写真・イラストなどで見て分かりやすい
333.「対談集 未来におきたいものは」鶴見俊輔、晶文社、7月14日
334.「歴史の話」鶴見俊輔、網野善彦、朝日新聞、7月14日  *
 : 「烏合の衆」「生活」「いつから日本人という意識を持ったのか」「いま崩れようとしている百姓は農民  という謝った認識」
335.「回想の人びと」鶴見俊輔、潮出版、7月15日  *
336.「読んだ本はどこへいったか」鶴見俊輔、潮出版、7月15日  *
 : これまで読んできた本が「老い」というフィルターで濾過されて、自分の中に残っているかを探った本
337.「日本語の新しい方向へ」鶴見俊輔他、熊本子どもの本、7月15日
 : 熊本子どもの本の研究会・教師・親も生徒と共に育つ。0歳から70歳80歳まで一緒に育つ
338.「わたしの一冊」鶴見俊輔編、熊本子どもの本、7月16日  *
 : 熊本子どもの本の研究会の会報の巻頭言200以上から106編を選び単行本化
339.「歴史の進歩とは何か」市井三郎、岩波新書、7月16日  **  (20)
340.「めだかの列島」今井美沙子、清流出版、7月16日  **
 : 五島列島に生きた人々の記録。著者の母の「五島に生きた人々の生活を書き残して欲しい」という  強い思いに応えて出来た本
341.「イシ」シオドーラ・クローバー、岩波同時代ライブラリー、7月17日  *
 : 北米最後の野生のインディアン「イシ」の記録。石器時代人、現代人の「二つの世界」のイシ
342.「山びこ学校」無着成恭編、百合出版、7月17日  **
 : 「勉強とははて?と考えることであって、覚えることではない。そして正しいことを正しいといい、ごま  かしをごまかしであるという目と、耳と、いや身体全体をつくることである。そして、実行できる、つよい  たましいを作ることである」という無着先生の教えどうりに生き・成長した生徒たちの作文集
343.「日本のサブカルチャー」イアン・ビュルマ、TBSブリタニカ、7月18日
 : サイデンステッカーは「ビュルマは日本文化の汚い、感傷的な、そして愚かな面を組織的に扱った最  初の人である」と評している
344.「住まいの家族学」外山知徳、丸善、7月18日
 : 登校拒否・引きこもりは、個室を与えたかどうかには関係がない。子どもの発達段階、テリトリー形   成能力や家族関係の作り方の影響が大
345.「日本事物誌」1・2、チェンバレン、平凡社東洋文庫、7月18日
 : 1873(明治6)年~1905(明治38)年までかけて書かれた日本探求、紹介の書。ABC順二項目  を掲げ「日本人の特質」を追求
346、「日本紀行」タゴール、第三文明社、7月18日
 : 1916(大正5)年平静な心をもって美を自己の魂に迎え入れる。日本のみがヨーロッパが世界制覇  した同じ力をもって逆襲できると考えた
347、「クラバート」ブロイスラー、、偕成社、7月19日  *
348、「エミールと探偵たち」エーリヒ・ケストラー、7月19日  *
349、「小さい牛追い」マリー・ハリズン、岩波少年文庫、7月19日
350、「動物と人間の世界認識」日高敏隆、筑摩書房、7月19日    (5)
 : 動物も人間もそれぞれのイルージョンを認識の枠組みとして自分を取り巻く世界を把握している
351、「戦中派の死生観」吉田満、文春、7月20日
 : 「戦艦大和の最後」の著者のエッセイ集。色々なテーマを取り上げているが,本書のタイトルとなった  「戦中派の死生観」をはじめ、戦争における「死」と「生きる」ということを問い続けたものが、読み応え  がある
352、「天からふってきたお金」アリス・ケルジー、岩波、7月22日  **
 : トルコに伝わる「ホジャ」話約600の中から16話を選りすぐった説話集
353、「ぬくもりの国トルコ」児島満子、れんが書房、7月23日    *
 : 「ホジャ」話にほれ込み、大学留学をふくめてトルコに三回の長期滞在を行った一主婦のトルコ論
354、「朴達の裁判」金達寿、東邦出版、7月23日    **
 : 「転向研究」で数々の転向のパターンを分析した鶴見俊輔をして「全く思っても見なかったパターン」  と言わしめた小説。警察に捕まるたびに「もうしません」と誓い、釈放され、またすぐに捕まり、というこ  との繰り返しにより、「転向の連続により非転向を貫く」という奇想天外・痛快な物語
355、「日本の中の朝鮮文化」1~12、金達寿、講談社、7月24日  *  (9)
 : 日本全国を訪ね各地に残る朝鮮文化の影響を報告。結論は、「古代から日本人が日本国を形成し  ある時期に朝鮮からの帰化人が先進文化を伝え、それを吸収しつつ日本文化を発展させてきた」とい  う皇国史観の無理・矛盾を指摘し、「古代には日本という概念もなく、先住民族と朝鮮からの渡来人   がそれぞれ集落(国)を作り住んでいたが、文化的には先進的な渡来人の影響が圧倒的に大きかっ  た。7世紀に日本という概念が明確になり、渡来文化も溶け込み日本文化が形成された」
356、「こどもたちこどもたち」鶴見俊輔編、近代出版、7月24日
 : 1948年、1954年の日本を精一杯生きた姉・弟の絵日記
357、「ホジャの笑い話」児島満子、れんが書房、7月24日
358、「トルコの昔話」児島満子、こぐま社、7月25日
359、「からゆきさん」森崎和江、朝日新聞、7月25日
360、「老人力」赤瀬川源平、筑摩書房、7月25日  *
 : 年をとると物忘れがひどくなる、これを「ぼける」というが、これではマイナスのイメージが強すぎる。   モット明るく・前向きのイメージで表現できないかというところから、物忘れがひどくなることを「老人力  が付いてきた」といおう。これを進化させ「宵越しの情報はもたない」という江戸っ子老人力を提案
361、「随論 日本人の精神」小田実、筑摩書房、7月26日  **  (30)
 : 随筆があるなら随論があってもいい。--随論は考えのおもむくままに自由に筆が動いて、ことを論  じる。この随論で書きたいことがひとつある。日本人の精神についてだ
362.「優柔不断術」赤瀬川源平、毎日新聞、7月28日
363.「本を読む人」片岡嘉男、大田出版、7月28日
 : 片岡嘉男の読書エッセイ。中心はペーパー・バック生涯ベスト10.
364.「国民の道徳」西部邁、産経新聞、7月29日  **  (49)
 : 「新しい歴史教科書を作る会」の「国民の歴史」に呼応する「道徳の教科書」を目指す。「道徳」のよ  りどころ、最終基準はそれぞれの国の歴史を通して生み出された伝統であるという
365.「思考論理学」橋本治、マドラ出版、7月29日 *  (4)
 : テレビで4回にわたり放送されたものの単行本化。「わからない」という思考法等、作者の実践する  思考法に基づきしなやかに考える
366.「13歳のハローワーク」村上龍、幻冬舎、7月29日
 : 「サラリーマン」「OL]を目指すことは対象外とし、「好きなことを仕事とすべし」という考えをベースと   する職業紹介。中学生に将来の進路を考えさせる情報提供を目的として出版された。仕事は自分の  持ち味・個性を生かせるものを選ぶという主張には同感だが、好きなこと=仕事でなければならない  という主張は「誤った思い込み」を刷り込む弊害があるように思える 
367.「老いの生き方」鶴見俊輔編、ちくま文庫、7月29日
368.「柳宗悦」鶴見俊輔、平凡社、7月30日
 : 柳宗悦の生い立ち・伝記にウエイトを置いた柳宗悦論
369.「神話とのつながり」鶴見俊輔編、熊本子どもの本の研究会、7月30日
 : 熊本子どもの本の研究会発行の「神話的時間」をふまえて原稿を募集、応募作175篇を単行本化
370.「山の精神史」赤坂憲雄、小学館、7月30日
 : 柳田国男の「山民」「山人」の登場の背景からそれが薄れていくまでの経過を追跡
371.「海に生きる人々」宮本常一、未来社、7月31日
 : 日本民衆史3、海に生きる人々の歴史のあらましを、古代の海人の発生、海岸伝いに新しい漁場の  開拓、海上交通の全国展開など描く
372.「戦中派不戦日記」山田風太郎、番町書房、7月31日  **
 : 医学生だった筆者の終戦の年(1945)一年間の日記。大東亜・太平洋戦争を振り返って書かれた  本は数多くあるが、読んで違和感が残るものがほとんど。その理由は、その当時自分が生きていた   ら、日本が戦争に勝ってほしいという気持ちとこのまま進んでいって本当にいいのかという両方の考   えを持っているのが自然だと思えるのだが、不自然さが強く感じられるから。そうした意味で自然な一  個人の生活・そのなかで感じたこと・考えたことが率直に書かれている貴重な資料
373.「天皇家はなぜ続いたか」今谷明、新人物往来社、7月31日  *
 : 大王・天皇・国王。「異形の王権」義満の皇位簒奪などを含め、数々の危機を乗り越え天皇家が続   いてきた歴史を描く
374.「日本神話の研究」松本信広、平凡社、8月1日 
 : 豊玉姫説話:日の神の子孫(大和)と水を支配す  る勢力(出雲)の結びつきにより、稲と関係深い  天孫の由緒を勿体ずけようという意図で作成された。骨子となった説話はユーラシア大陸に存する一  説話型が日本に入り成長複合化したもの
375.「海と列島の中世」網野善彦、日本エディタースクール、8月2日  *  (2)
 : 海を人々の交流を妨げるものとして見る発想は比較的新しいもので、古代から海は人々の交流を支  える重要な道であったと説く
376.「変革型ミドルの探求」金井壽宏、白桃書房、8月2日  **  (36)
377.「死霊」埴谷雄高、講談社、8月3日
378.「北からの日本史」1・2、北海道・東北史研究会編、三省堂、8月4日 
 : 未だに根強い「単一民族国家」観、東北・北海道はいつから日本の一部と考えられるようになったの  か。北から見た日本史
379.「紙芝居」木内武利、吉川弘文館、8月5日
 : 日本特有の「街角のメディア」紙芝居の栄枯盛衰の歴史
380.「大いなる死」羽仁進、光文社、8月5日  *
 : 一面からいえば死は個人的なものである。しかしその死が見方を変えると、地球上の全ての現象に  左右されており、したがって全く個人的とはいえない
381.「寄生獣」1~10、岩鳴均、講談社、8月6日  *
382.「期待と回想」上・下、鶴見俊輔、晶文社、8月6日
 : 重要なのは、それぞれの時代のどこに戻っても「期待の次元」と「回想の次元」で成立する法則とし  て捉え明かすこと
383.「お隣の英雄」佐々木邦、講談社、8月6日
384.「21世紀は個人主義の時代か」ロナルド・ローア、サイマル出版会、8月6日 * (20)
385.「生きることのはじまり」金満里、筑摩書房、8月7日  *
 : 重度障害者である著者が24時間介護者の支援を受けながら自立生活を続け、障害者の自立のた   めの運動を展開、さらには身障者の劇団を結成する過程を描く
386.「市民社会のデザイン」は浜口隆一、而立書房、8月7日  *  (12)
387.「子どもがみつけた本」鶴見俊輔ほか、熊本子どもの本の研究会、8月7日  *
 : 工藤直子、池澤夏樹の講演、鶴見俊輔を加えた鼎談などと応募作品113編を掲載
388.「立川文庫の英雄たち」安達巻一、文和書房、8月7日
 : 明治44年、「一休禅師」「水戸黄門」、「猿飛佐助」「霧隠才蔵」で丁稚小僧や小・中学生に絶大な人  気を博した立川文庫の歴史を紹介
389.「職人歌合」網野善彦、岩波、8月8日
 : 「職人」と呼ばれている人々の果たしてきた役割を、日本の社会・文化の歴史の中に正当に位置付  ける
390.「減失の青春」山田風太郎、大和書房、8月8日
 : 昭和17~19年、作者20~22歳の日記
391.「神話的時間」鶴見俊輔、熊本子どもの本の研究会、8月8日  **
 : 子どもが文字を知らなくても物語に没入する。新しく・愉快・心躍る散文=物語と歴史・時間をスパン  と輪切りにする=詩の二つの世界
392.「逝きし世の面影」渡辺京二、葦書房、8月15日  ***  (8)
 : 明治20年ごろに消えてしまった日本の近世の面影を幕末から維新期に来日した外国人の観察記を  材料として描く。日本人がいかに幸福に暮らし、好奇心が強く、清潔で、礼儀正しく、子どもが大事に  されかつキチンと躾けられていたかを描く。暗黒の江戸時代という従来の日本史の主流見解を180度  ひっくり返した快著
393.「苗字と名前を知る事典」奥富啓之、東京堂出版、8月18日
394.「winesburg ohio」sherwood anderson,signet classics、8月20日  **
395.「河童の三平」水木しげる、ちくま文庫、8月21日  *
396.「念ずれば花ひらく」坂村真民、柏樹社、8月21日  **
 : 「念ずれば花ひらく」という母の真言の追慕。道元・日蓮・法然・親鸞よりも一遍・一休・良寛に心惹   かれ、芭蕉・西行の心境に遊ぶ
397.「李朝残映」梶山季之、インパクト出版会、8月21日  *
398.「言語表現法講義」加藤典洋、岩波、8月22日  **
 : 「頭と牛、一対一」、文間文法・スキマ、糸屑と再結晶=ヨソから来るもの(抵抗、空室としての自    分、メモ、間違い)の重要性を説く
399.「気流の鳴る音」真木悠介、ちくま学芸文庫、8月22日  **  (30)
 : アメリカインディアンの古老ドンファンからカスタネーダが学んだ世界観・知恵。行き詰りを見せる現   代文明が捨て去り、忘れたもの。現代文明が閉塞状況を打破し、再生を遂げるヒントはどこにあるの  か
400.「明治事物起源」1~8、石井研堂、ちくま学芸文庫、8月24日  *
 : 明治維新で日本初の事物の輸入が怒涛の勢いで行われた、その歴史の総マトメ: 人事(暮らし)、  法律・政治、国威交流、美術、宗教、教育、学術、新聞、雑誌、文芸、交通、金融・商業、農業、鉱   業、軍事、病医、遊楽、暦、地理,衣裳、飲食,住居、器財、動植物を網羅
401.「ことばの射程」渡辺京二、葦書房、8月24日  *
 : 毎日新聞に1979年10月~1982年12月まで月一回掲載されたエッセイの単行本化
402.「近代をどう超えるか」渡辺京二対談集、葦書房、8月25日  *
 : 榊原英資など7人との対談集。「”江戸の平和”とグローバリズム」(榊原英資)、「江戸文明と世界   史の奇跡」(中野三敬)が出色
403.「江戸という幻景」渡辺京二、葦書房、8月25日  *
404.「日本近世の起源」渡辺京二、弓立社、8月26日  **  (12)
405.「なぜいま人類史か」渡辺京二、洋泉社、8月26日 *   (21)
 : 「知」と「信」の両立をいかにしてはかるか
406.「日本近代の逆説」渡辺京二評論集成Ⅰ、葦書房、8月27日 * (22)
 : 北一輝、天皇制、アジア共同主義、西南戦争、西郷隆盛など
407.「小さきものの死」渡辺京二評論集成Ⅱ、葦書房、8月28日  (8)
 : 60年安保と吉本隆明、谷川雁、水俣病、石牟田礼子など
408.「荒野に立つ虹」渡辺京二評論集成Ⅲ、葦書房、8月28日  * (26)
 : 「いま何がとわれているのか」、「ポストモダンの行方」など
409.「隠れた小径」渡辺京二評論集成Ⅳ、葦書房、8月29日
 : 主として歴史と文学に関するエッセイ
410.「回想の明治維新」メーチコフ、岩波文庫、8月29日
 : 維新期にロシア語として雇われた「一ロシア人革命家」の手記
411.「グアタルーペの聖母」鶴見俊輔、筑摩書房、8月29日
 : 10ヶ月のわたるメキシコ滞在記
412.「太夫才蔵伝」鶴見俊輔、平凡社、8月29日
 : 「漫才をつらぬくもの」。平安時代から始まる太夫・才蔵の歴史を受け継ぎ、新しい時代の演技の形  をつくったエンタツ・アチャコ
413.「アメノウズメ伝」鶴見俊輔、筑摩書房、8月29日
414.「新橋の狸先生」森銑三、岩波文庫、8月30日  *
 : 「私の近世奇人伝」24篇。「新橋の狸先生」成田源十郎、池大雅が記憶に焼きつく
415.「文章作法」桑原武夫、潮出版、8月30日
 : 現代風俗研究会の「文章教室」(1979年2月から10回)の記録。講師:桑原武夫・鶴見俊輔・橋本峰  雄・多田道太郎が15人の受講者の作文を添削・講評
416.「文章術」多田道太郎、潮出版、8月30日   (2)
417.「高校生のための批評入門」梅田卓夫他編、筑摩書房、8月31日  **  (2)
 : 「批評とは何か」=世界と自分をより性格に認識しようとする心のはたらきであり、日々<行き方を   みちびく力>。国語教育の教科書を補う副教材として作成された
418.「地方という鏡」渡辺京二、葦書房、8月31日
 : 1976年4月~1980年7月まで西日本新聞に連載した同人誌月評を単行本化。奈良時代以来の都と   鄙(地方)との文化格差が高度成長期に解消した現在、<地方>とは、世界・国家という抽象を解除  したときに見えてくる日常的生のことだといえる。したがって、地方で作られる作品には、世界の基底  としての日常が表出されていなければならない
419.「善人はなかなかいない」フラナリりー・オコナー、筑摩書房、9月1日
420.「江戸時代とはなにか」尾藤正英、岩波、9月1日  ***  (25)
 : 従来の江戸時代観=「反動的な封建制に基づく暗黒の時代」を180度転換させた快著。すなわち、  「人々がそれぞれの士・農・工・商という役(割)を歴史上初めて認識して社会を構成し、大衆(百姓)  が支配者(武士)を選べる時代」であったという
421.「江戸文化評判記」中野三敏、中公新書、9月2日  *  (3)
 : 「江戸の面白さ」について述べる
422.「桃太郎の母」石田英一郎、講談社、9月2日  *
 : 「月と不死」「隠された太陽」「桑原考」「桃太郎の母」「桃太郎」「一寸法師」の昔話の断片にも、ユー  ラシア旧石器時代の文化、太古の社会組織の影響が感じられる
423.「戦後日本の大衆文化史」鶴見俊輔、岩波、9月2日
424.「言葉はひろがる」鶴見俊輔、福音館、9月2日
425、「たくさんのふしぎ」鶴見俊輔、福音館、9月2日
426.「戦時期日本の精神史」鶴見俊輔、岩波、9月3日  **
 : 転向(非転向)という切り口で分析した戦時期(1931~45年)の日本精神史。国家権力の動きと   個人の選択の軌跡
427.「文章心得帖」鶴見俊輔、潮文庫、9月3日  *  (3)
428.「漫画の戦後思想」鶴見俊輔、文芸春秋、9月3日
 : 長谷川町子、手塚治虫、白戸三平、水木しげる、つげ義春の漫画に込められた思想を読み解く
429.「夢野久作ー迷宮の住人」鶴見俊輔、双葉文庫、9月4日  *
 : 前半が作家夢野久作の伝記、後半がその作品の紹介となっている
430、「新撰姓氏録」、9月4日
 : 天智天皇の時代に戸籍が作成され(670年)たが、その後氏姓の混乱が生じたため、」桓武天皇が  命じ嵯峨天皇の時に完成(815年)した氏姓の整理を行ったもの
431.「茶の湯の歴史」熊倉功夫、朝日選書、9月4日  *  (4)
 : 製茶・喫茶の文化を組み込んだ、、利休までの茶の湯の歴史
432.「アジア文化圏の時代」レオン・ヴァンデルメールシュ、大修館、9月4日
 : 経済の急発展を成し遂げたアジアの国々は、漢字・儒教という共通文化圏であると指摘
433.「ライ麦畑で熱血ポンちゃん」山田詠美、新潮社、9月4日
 : 山田詠美のエッセイ集
434.「被差別部落の伝統と生活」柴田道子、三一書房、9月5日  *
 : 「信州の部落・古老聞き書き」、「伝承と歴史」「生活と文化」、「水平社の闘い」の三部構成
435.「悪党的思考」中沢新一、平凡社、9月5日  *  (20)
 : 奈良に始まる歴代政権は、パッチワーク状に存在する「王土」と呼ばれる「仕切られた空間」を支配  してきた。そしてその支配は、自然(ピュシス)の力と結びつき流動し変化する「なめらかな空間」には  及ばなかった。この時代「自然なるもの」と直接結びつきをたもちつづけるものを「悪党」とよんだ。後   醍醐天皇はこの空間に住む人々=「悪党」を「魔術王」として組織化し古代的なるものを決定的に解   体していった。こうした歴史の捉え方を中沢新一は、言語的には「矛盾」にきこえる「歴史のボヘミアン  理論」と呼ぶ
436.「MOON DELUXE]Frederick Barthelme、Penguin、9月7日  *
 : 17の「小さい物語」で構成される。「小さい物語」を印象深く読ませるために、巧みな状況設定、衣・  食・住・車・仕事、「会話」がくっきりと書き分けられている。この小説の本当の面白さはアメリカ人にし  か和歌らいのではないかと思えた
437.「水駅」荒川洋治、思潮社、9月8日
 : 荒川洋治の1975年の詩集
438.「世間入門」荒川洋治、五柳書院、9月8日
 : 荒川洋治のエッセイ集。今の日本人には世界の情勢を知ることよりも世間を知ることが必要との考   えで書かれた。著者の経験した世間を知らない日本人が数多く登場
439.「85点の言葉」糸井重里、文芸春秋、9月8日
 : 相手に何か語りたいと思うと、「口」を大きくしようとするが、相手の声を聞く「大きな耳」を持つことが  コミュニケーションをうまくいかせるコツ。口=言葉が50点でも耳が35点で85点の言葉となる
440.「ひとが生まれる」鶴見俊輔、筑摩書房、9月8日
 : 中浜万次郎、田中正造、横田英子、金子ふみ子、林、の「五人の日本人の群像」。それぞれが置か  れた独特の状況の中で人は「いつ自分になるのか」を追い求めた本
441.「よくない文章ドク本」橋本治、徳間文庫、9月9日  **
 : 「今世紀が生んだ活字文化の最後の切り札」と本人が言う橋本治のエッセイ集。全編「橋本治ワー  ルド」のオンパレード。「えばるな文章読本」「それ風な『少女漫画のセックス』」が出色
442.「アリスの穴の中で」上野瞭、新潮社、9月9日  *
 : 男が妊娠・出産するという奇想外な物語。主人公・家族・仕事場の関係者たちの反応・心情の機微  をうまく描いている
443.「正直エビス」蛭子能収、新宿書房、9月9日
444.「谷間の底から」柴田道子、岩波少年文庫、9月9日
 : 東京空襲を避けて修善寺そして富山で集団疎開生活を送り苦難=谷間の底から立ち上がり成長し  て行く小学生たちの姿を描く
445.「やさしさの精神病理」大平健、岩波新書、9月9日  *  (4)
 : 精神科医の仕事を通じ、”やさしさ”についての理解の中身が大人と若者の間で完全に異なってい   ると指摘。相手の立場・気持ちを慮る”やさしさ”と、相手の立場・気持ちに踏み込まないのが”やさ   しさ”だとする、”ホット”と”ウオーム”の”やさしさ”の違いだという
446.「土と兵隊」火野葦平、光人社、9月10日  *
 : 13人の部下の生死を握る立場になった分隊長が、自分の指揮に部下が信頼して従ってくれるかに  不安を持つ。そして「私が兵隊と共に死の中に飛び込んで行く。兵隊に先んじて死を超える。その一   つの行為のみが一切を解決する。」という状況を描いた小説
447.「日本の村落共同体」中村吉治、日本評論社、9月10日  (7)
 : 『共同体の消滅の上に古代国家が成立した」という従来の定説を否定する
448.「信長と石山合戦」神田千里、吉川弘文館、9月10日
 : 従来の研究とは異なり、1)石山合戦以後も一揆的構造が健在、2)信長の大量虐殺は世俗の支配  者と仏教界との共存を図る狙いがあったという
449.「椿の海の記」石牟礼道子、朝日新聞、9月11日
 : 天草とそこに住む人々への賛歌
450.「わが死民」石牟礼道子、現代評論社、9月11日  **
 : 「水俣病闘争」とは何であるかを、その特異性を含めて多角的に論述した力作。この一冊で「水俣病  闘争」の多義的な意味を理解できる。この裏にはこの本の構成に力を尽くした渡辺京二の力技が透   けてみえる 
451.「相良総三とその同士たち」長谷川伸、講談社、9月11日
 : 維新期、倒幕に向かう官軍の一番隊として江戸にむかう途中で冤罪により殺された赤報隊隊長相   良総三の実像に迫る
452.「西南役伝説」石牟礼道子、朝日選書、9月12日
 : 目に一丁字なき者たちの魅力的な人柄の中から、この世の綾を紡ぐ糸のように吐き出される語りか  け。「西郷どんの戦さ」の思い出を熊本の風土に溶かし込みながら描く
453.「戦国時代論」勝俣鎮夫、岩波、9月12日  *  (11)
 : 戦国時代は近代日本につながる大転換期であると主張。「平和と秩序を担保できない者は領主たり  えない」、「年貢の村請制」(自主・独立性)など江戸時代にも引き継がれた基本が戦国時代に生じ   た。従来の封建時代認識、すなわち、「封建領主の専制的支配」という時代認識を根本的に引っくり   返す
454.「豊臣平和令と戦国社会」藤木久志、東大出版会、9月12日  (14)
455.「村と領主の戦国世界」藤木久志、東大出版会、9月13日  *  (12)
 : 徳川幕府に受けつがれる豊臣平和令の核心は、農民を中世的な自力の惨禍(自力救済の恐怖)か  ら開放するという歴史的課題にあり、それゆえに武器使用の自己規制(刀狩)に同意を与えたのであ  るとする。また「補論」として「移行期村落論」があり、中世から近世への「村」がどのように変化してい  ったかが的確に述べられている
456.「取引の社会」佐藤欣子、中公新書、9月13日  *
 : 日米の刑事司法の原理と構造が各々の社会の歴史と文化に制約され、大きく異なっていると指    摘。「実体的真実主義」=「絶対的客観的真実」にもとづくべきであるとする日本。「形式的真実」ない  し「手続的真実」主義にもとづくアメリカ。そしてアメリカの刑事司法の核心をなすのは、「有罪答弁」に  よる『「司法取引」であり、その規則的・合理的・能率的な面と司法の世界に「取引」が持ち込まれるこ  とにより生じている深刻な矛盾を豊富な実例を挙げて描く
457.「雑兵たちの戦場」藤木久志,朝日選書,9月14日   (4)
 : 華やかな戦国群雄論や合戦物語の底に、実は飢えた雑兵たちによって、生きるため食うための戦   争が戦われていたという現実を指摘する
458.「苦界浄土」石牟礼道子、講談社、9月14日   *
 : サブタイトル「わが水俣病」1969年発行。水俣とは何か、水俣病とは何かを住民の目線と独特の   感性でで捉えた古典的名著
459.「天の魚」石牟礼道子、講談社文庫、9月14日
 : 「続・苦界浄土」。水俣病闘争でのチッソ・行政との交渉・裁判に焦点を当てた著述。圧巻は裁判勝  利後の患者側とチッソ経営陣とのヤリトリ
460.「ドクトル・ジバコ」1・2、パステルナーク、時事通信社、9月14日
461.「エントロピーと工業社会の選択」河宮信郎、海鳴社、9月14日   (4)
 : 熱力学と材料工学の視点から工業文明の技術的・理論的限界を明らかにする。その代表事例とし   て高速増殖炉・核融合の不可能性をあげる
462.「生きることの意味」青春編1~3、高史明、ちくま文庫、9月16日  *
 : 在日朝鮮人二世として生まれた著者の自伝。中年になって自分の生き方を言葉で概念的に整理し  て語れるようになったことを反映して初版に大幅に手を入れたもの。「壮絶」としか形容しようのない生  き様
463.「にじみの日本文化」剣持武彦、PHP新書、9月16日
 : 行動様式と人間関係にひそむ「曖昧さ」の美学。日本人の美意識や生活感覚を日常的な感覚語を   手がかりに考察
464.「アフリカ人の生活と伝統」阿部年晴、三省堂、9月16日  *  (10)
 : サハラ以南のアフリカでは長い歳月をかけて活力のある独自の文化を生み出してきた。しかもほん  の百年前に植民地支配下に入るまで、外部世界に対して自立性を保っていたので、その文化はまだ  ある種の全体性と産出力を失っていない
465.「もう二つの日本文化」藤本強、東大出版会、9月17日  *  (2)
 : サブタイトル「北海道と南島の文化。日本単一民族・単一文化論に異議を唱える。「北の文化」「中   の文化」「南の文化」があり「新・中の文化」が大きな影響力を持つことにより自然破壊が起きている   と指摘
466.「400万年の人類史」河合信和、光文社、9月17日
467.「新世界のユートピア」増田義郎、中公文庫、9月17日
 : コロンブスが発見したエスパニョーラ、プエルトリコ、、キューバの植民地化はインデイオの奴隷化に  終わった。これに対しメキシコでは、トーマス・モアの「ユートピア」に触発されたラス・カサスとパスコ・  デ・キロガがインデイオの奴隷化からの解放を目指して行動を起した。ガサスの失敗とキロガの成功  を分けたのは、コンコミエンダ制(植民者に住民を預託)への対応だった
468.「近世日本国民史 朝鮮役」上・中・下、徳富蘇峰、時事通信社、9月18日 ** (11)
 : 世に出ている歴史書で「朝鮮役」について納得のいく記述をしているものに出会えずにこの本にたど  り着いた。日本・朝鮮・中国の膨大な資料を自在に活用、それぞれにとって「朝鮮役」とは何であった  かをクリアーに描ききった力技。ただ脱帽
469.「人権としてのデイーセント・ワーク」西谷敏、旬報社、9月18日
 : 「働きがいのある人間らしい仕事」がキーワード。デイーセント・ワークの権利・条件・保障される社会  を法律的観点で描く。法律論で物事に迫ると、いかに味気なくつまらないかの実例
470.「家庭の新風味」堺利彦、法律文化社、9月19日  *  (1)
 : 明治34年刊行。明治憲法下で当時の最も進歩した意見趣味を代表したものという。結婚・夫婦・家  族論などについて述べる。家庭の文学に日記・和歌・俳句、和楽に来客・宴会などが取り上げられ多  くのページが割かれているのが、当時の暮らしぶりが偲ばれてほほえましい
471.「『寝たきり老人』のいる国いない国」大熊由紀子、ぶどう社、9月19日  *  (1)
 : ドイツ・デンマーク・ハンガリー・スウェーデンを訪問、「寝たきり老人」という言葉が存在しないことを   発見、「寝たきり老人」は日本特有の現象であることに気づく
472.「深きいのちに目覚めて」高史明、弥生書房、9月19日  *  (2)
 : 一人息子の自殺以降茫然自失状態だった著者が、生と死の意味を見つめ、親鸞の言葉に出会い、  「深きいのち」に目覚めていく過程を述べる
473.「いのちの涙あふれ」高史明、抱撲舎文庫、9月19日
474.「死をどう生きたか」日野原重明、中公新書、9月19日
 : サブタイトル「わたしの心に残る人びと」。人間の生き方を教えられた人びと、人間の尊厳を印象つけ  られた18人の患者、両親、恩師オスラー、聖路加病院の創設者トイガー院長思い出を語る
475.「日本の地名」谷川健一、岩波新書、9月20日
476.「日本の石橋」山口祐造、戸井田道三、9月20日  *
 : 美しい写真と文章の取り合わせが絶妙
477.「胎児の世界」三木成夫、中公新書、9月20日  *  (12)
 : サブタイトル「人類の生命記憶」。地球に生命が誕生して30億年、脊椎動物5億年の歴史を胎児は   個体発生時に追体験することを具体的に記述する
478.「70年代 世直しの倫理と論理」小田実、筑摩書房、9月22日  **  (7)
 : べ平連の運動を行なう中で小田実が確立していった「世直しの倫理と論理」を中心とした評論集。従  来の運動論がともすれば、「運動」と「生活」を分離し、大学を卒業すれば終わりというような傾向だっ  たのに対し、自分で考え、自分で始める、生活の中に「生き続ける」生活と一体となり継続していく運  動の倫理と論理を提案
479.「となりの他人」秋竜山、実業之日本、9月22日
 : サブタイトル「現代住居考現学。
480.「プログラムとしての老い」日高敏高、講談社、9月22日
 : 老いは遺伝子のプログラムにモとずいて起こる。プログラムは、芝居のシナリオのようなものと考え   ればよく、具体的な細部は人それぞれに、自分らしく演じることができる。死も遺伝的プログラムの一  環である
481.「激動の現代史五十年」大森実、小学館、9月23日  *
 : 筆者のジャーナリスト生活を通して垣間見た現代史秘話を、その主役を演じた世界のトップ・リーダ   ーへの豊富な取材を交えて紹介
482.「日本人の海外不適応」稲村博、NHKブックス、9月23日
483.「中世の町」鈴木成高、東海大出版会、9月23日  (1)
 : ヨーロッパの中世の面影を残す町々の紹介
484.「武家の女性」山川菊栄、岩波文庫、9月23日
485.「知恵の落とし穴」高史明、風濤社、9月23日
 : 「我の知恵」VS「自然法爾」=人間はそもそも”自然”に生かされている。近代の代表ガリレイは、第  一性質として「数量化できるもの(客観的なもの)」をあげ、第二性質として「「感覚的なもの、直観的   なもの」をあげている。近代文明(知恵)の根源的な落とし穴は、第二性質の軽視、涙を見失ったとこ  ろにある
486.「エコロジー経済学」ホワン・マルチネス=ホアン、新評論、9月24日  * (2)
 : サブタイトル「もう一つの経済学の歴史」。エコロジー経済学は、新古典派経済学・マルキシズム経  済学と同等の一世紀余りの歴史を有している。その歴史を、独自の視点で、徹底的に発掘・再整理   したのが本書
487.「縄文杉の警鐘」三島昭男、明窓書房、9月24日  (4)
488.「へんろう宿」井伏鱒二、新潮文庫、9月24日
489.「めもらびりあ」福田定良、法大出版、9月24日  *
 : サブタイトル「戦争と哲学と私」。戦地での生活を通して考えた人間の生き方。所有することによって  ものに結びつく生きかた・人格とつくることによってものに結びつく生き方・人格
490.「古代オリエントの神話と思想」H・フランクフォート、社会思想社、9月24日  (6)
 : サブタイトル「哲学以前」。古代人たちは、人間をいつでも社会の一部分として、また社会を自然に   はまり込んで宇宙の緒力に依存しているものと見た。古代人にとって自然と人間は対立してあるもの  ではなかったし、それゆえ、異なった認識法で理解されねばならぬものでもなかった。現代人の考え  方で古代人を見ることの誤りを説く
491.「ピラミッド帽子よ、さようなら」乙骨淑子、理論社、9月25日  **
492.「史的システムとしての資本主義」I・ウォーラースティン、岩波現代選書、9月25日 * (13)
493.「歩く書物」津野海太郎、リプロポート、9月25日
494.「現代イギリス経済学の群像」根井雅弘、岩波、9月26日         (2)
495.「安藤昌益の闘い」寺尾五郎、農山漁村文化協会、9月26日  **  (6)
 : 安藤昌益の独創的な思想の特徴は、まず、認識論として、土一元論、”万物流転”という運動の観   点と、<互性4>という矛盾の観点を合わせた弁証法にある。そして、現状社会をあるまじき<貪獣ノ  世>として把握し、あるべき理想社会として<万人直耕(生産労働)>の社会を想定する。マルクス   に先駆けて、現実を階級社会として把握、無階級社会への社会革命の展望を示した。
496.「物質文明・経済・資本主義ー日常性の構造Ⅰ・Ⅱ」フェルナン・ブローデル、9月28日
 : 歴史の二潮流、<物語をないがしろにせず、偉大なる人物像、模範的な運命、国や帝国の境遇に   注意を向ける歴史>と<一切を、つまり経済・技術・生産・交換・市民社会およびそのもろもろの緊張  を捉えようとする意志>のうち、後者の立場に立つ。地球を丸ごと秤にかけようとする意欲。三極構造  のうちの日常性の構造を意味する物質文明の次元を描く
497.「生類をめぐる政治」塚本学、平凡社選書、9月28日
 : サブタイトル「元禄のフォークロア」。16世紀末の刀狩、村々から武器が無くなり、徳川政権の安定   はその上に成り立つという一般理解に疑問を投げかける。「生類憐れみ」以前の「鉄砲改め」は鳥獣   害防止のための鉄砲所有を広範にみとめており、捨て犬禁止の前に、捨て子・捨て牛馬の禁止があ  り、「生類憐れみ令」が時代背景からいうと合理的な政策であったことを指摘
498.「転換期の歴史」G・バラクラフ、社会思想社、9月28日  *  (15)
 : ヨーロッパにおいて一般的であった歴史観 - 近代世界を本質的にヨーロッパ諸民族の創造物と  みなす(日本はこの歴史観を輸入) -の誤りを指摘し、18世紀までは現実のものであった歴史を、   一つの相互関連のある全体としてみる歴史観の復活を提唱する。そして、進歩主義的歴史観、単一  の発展路線を否定し、さまざまな地域の土地から、それぞれのもつ材料を型どり、それぞれ独自の理  念や情熱を、独自の生活と意志と感情と、独自の死をもった、「数多くの力強い文化のドラマ」が豊か  に展開されるという
499.「ブラジル史」アンドウ・ゼンパチ、岩波、9月28日
500.「The Tale of Genji」Arthhur Waley(英訳)、DOVER PUBLICICATION、9月28日  *
501.「試みの岸」小川国夫、河出書房、9月29日
502.「この世の王国」アレホ・カルベンティエル、創土社、9月29日
503.「栽培植物と農耕の起源」中尾佐助、岩波新書、9月29日
504.「高校生のための文章読本」梅田卓男ほか編、筑摩、9月30日  *
 : 「自分の心を自分の言葉で語る」ことを願って編集された高校生のための文章読本。教科書に載っ   ていない文章のみを集める。文例は文章の模範としてではなく、色々な考え方・感じ方をする個人  がいるという多様な表現の世界をしめすもの。良い文章とは、「自分にしか書けないことを、  だれが読んでも分かるように書く」こと
505.「田中美知太郎全集第10巻」、9月30日  (4)
 : 1946~68年の間に月間雑誌に発表された「政治問題」に関する論文をまとめたもの。巻頭の「理想  国家について」「言論の自由について」がいい
506.「冒険と日和見」花田清輝、創樹社、9月30日
507.「ミメーシス」上・下、E・アウエルバッハ、10月Ⅰ日  **  
508.「雑貨屋通い」新井和子、未来社、10月Ⅰ日
 : 高度経済成長期以降、急激に変わっていった日本人の暮らし。変わる前の暮らしの姿を雑貨屋通   いをしながら思いおこしていく
509.「辻まことの世界」矢内原伊作編、みすず書房、10月Ⅰ日  *
 : 巻頭の「虫類図譜」が秀逸。堅いテーマを知的・冷酷なカリカチャアという言葉がこれほど生気にあ   ふれ、ヴィヴィドに感じられるこたはなかった
510.「緑のこども」ハーバード・リード、河出書房、10月2日
 : 主人公が南アメリカのロンガドール共和国の大統領と「グリーンチャイルド」の緑の国で目指したも   の、栄光と幸運、生命・肉体が魂左右されるあいだには人間の欲望は充足されることはありえない
511.「ロックアウト異聞」松浦豊敏、創樹社、10月2日
 : 宮崎の製糖会社のロックアウトを巡る労使の争いを描いた「争議屋心得」に書き残した、組合員の人  物像、カツトシ、吉ちゃん、タケシという不思議な魅力を持ったパーソナリティを伝える
512.「近世快人伝」夢野久作、葦書房、10月3日  **
 : 福岡に生まれ育った快人伝。強烈な個性を持った快人たちのド迫力に圧倒される。その中でも特に  印象に残ったのは、「博多っ子の本領」魚問屋篠崎仁三郎、玄洋社の祖、亀井道裁、女大夫高場乱  子、、玄洋社社長進藤喜平汰
513.「遊子方言」多田屋利兵衛、勉誠社、10月3日
 :文芸作品として価値を有する洒落本の最初のもの。言葉の微妙なヤリトリの中に人物の性格・性癖を  描写
514.「難波鉦」西水庵無底居士、岩波文庫、10月3日  *  (1)
 : 1680年発行の「遊女評判記」。大坂新町の廓の遊女評判記で、全百章、百通りに近い手練・手管を  収めた
515.「通気粋語伝」山東京伝、中央公論、10月4日
 : 「水滸伝」を題材に、京伝が洒落本にアレンジした
516.「繁千話」山東京伝、中央公論、10月4日
 : 「女郎のためにみえぼうすること、昔も今もたがうことなし。--この徒(半可通)多し」。半可通の代  表として馬骨(どこにでもいる馬の骨)を主人公として廓の生業を描く
517.「傾城買四十八手」山東京伝、10月4日
 : 四十八手となっているが、「しっぽりした手」「やすい手」「そはそはする手」「真の手」など五手が描   かれている
518.「緑雨警語」斉藤緑雨、富山房、10月4日
 : 明治31年から36年まで「万朝報」「読売新聞」「活文壇」「太平洋」「二六新報」の緒紙誌に連載され  たエッセイ集
519.「色道大鏡」藤本笑山、八木書店、10月5日  *
 : 17世紀末に書かれた遊里百科全書。遊里にまつわる全ての項目を網羅、驚くべき情報量
520.「物質文明・経済・資本主義ーⅡ交換のはたらき 1・2」ブローデル、みすず、10月5日 (4)
 : 家にたとえていえば、第一巻のテーマである物質生活を一階とし、第二巻の本書は、二階である経  済生活を描き、三階である第三巻の資本主義につなげる
521.「カラー・イメージ・感覚」小林重順、講談社、10月5日
 : それぞれの色とその組み合わせが人間にどんなイメージを呼び起こすのかを追求
522.「物質文明・経済・資本主義ー世界時間 1・2」ブローデル、みすず、10月6日 *  (10)
 : 市場の誕生が古代にさかのぼるように、資本主義もその起源は古く、18世紀に突然出現したもので  はない。そして資本主義はこれまでもそうであったように、これからもたびたび危機に見舞われるだろ  うが、それを乗り越えて続いていくだろうという
523.「内臓のはたらきと子どもの心」三木成夫、築地館、10月6日  *  (2)
 : 人間の体は、脳に代表される体壁系と心臓に代表される内臓系により構成されている。内臓のはた  らきは子どもの心の発達と密接に結びついており、重要である
524.「塩を食う女たち」藤本和子、晶文社、10月6日  *  (4)
 : サブタイトル「聞書・北米の黒人女性」。表題はトニ・ケイト・バーバラの「The Salt Eaters」による。  「塩食うものたち」とは、塩にたとえられるべき辛苦を経験する者たちのことであると同時に、塩を食べて 傷を癒す者たちでもある
525.「暗黒日記」清澤きよし、東洋経済新報、10月7日  *
 : 戦時中(昭和17年12月~20年5月)の日記。自由主義外交評論家清澤きよしの「真実のリベラリス  ト」としての時局に対する痛憤が伝わってくる。当時の政府・軍部・言論界の動向がヴィヴィッドに理解  できる貴重な証言
526.「ぼくは12歳」岡真史、角川文庫、10月7日
 : 「生きることの意味」の著者高史明の一人息子で、12歳で自ら命を絶った岡真史の詩・感想文・作   文集
527.「青木周蔵自伝」平凡社東洋文庫、10月7日
 : 岩倉遣欧使節団、憲法問題、条約改正問題、三国干渉など明治時代の重要課題に直接関わった   当事者ならではの情報満載
528.「大根の葉」壺井栄、筑摩書房、10月7日
 : 瀬戸内の島に住む主人公(5歳の男の子)が2歳の妹(生まれてからずっと白内障で目が見えない)の  手術のため、母が神戸に出かける前後の様子を描いたもの
529.「ナジャ」アンドレ・プルトン、白水社、10月8日
530.「やし酒のみ」エイモス・チュツオーラ、晶文社、10月8日  *
 : 作者最高の傑作。怪奇・幻想的な特異な作風で、英語圏アフリカ文学の草分け的先覚者。「恐怖」対   「モラル」がストーリーの基調
531.「土」長塚節、ほるぷ、10月8日  *
 : 明治時代の鬼怒川沿いの水飲み百姓の物語。小作農の生活、家族・地主・百姓仲間とのかかわりな   どが実に自然に描かれている
532.「砂の本」ホルヘ・ルイス・ボルヘス、集英社、10月9日
 : 分身・愛・運命・異端の歴史・不可知の物体・暗殺をめぐる短編集
533.「贅沢貧乏」森茉莉、新潮社、10月9日   *
 : この本は自伝なのかエッセイなのか小説なのか?その全てが混然一体となった不思議な読後感
534.「ユーモアの鎖国」石垣りん、講談社、10月9日
535.「包丁一本がんばったンねん」橋本憲一、晶文社、10月9日
 : 京都で「梁山泊」という居酒屋の主人の奮闘記。開店するまで魚をおろしたこともなかった男が板前を  かねて居酒屋を切り盛りした泥縄的記録
536.「木曜日はあそびの日」グリパリ、岩波少年文庫、10月9日  *
 : 12話の短編からなる。特に印象的だったのは「やさしい、子どもの悪魔」「誰やら、何やら、もしくは賢   い妻」
537.「パロディ志願」井上ひさし、中央公論、10月9日  *  (2)
 : 「笑い」「ユーモア」とは?これまで古今東西の幾多の賢人が答えを求めて苦悶したが、満足のいく答   えにたどり着いた先人はいないという。そこで、人を笑わせるためにものを書くという実践者の立場から  編み出した365のギャグパターンなどを紹介
538.「失われた時を求めて」1~10、マルセル・プルースト、筑摩書房、10月12日  **  (2)
 : 「失われた時」と「見出された時」を描く大長編。それを「私に必要だったのは、私をとりまいていたどん  な小さな表徴にも(ゲルマント、アルベルチータ、ジルベルト、サン二ルー、バルペック等)、習慣が私に   失わせてしまったそれらの表徴のもつ意味を、とりもどすことだった。」「私はすでに理解していたが、粗  雑な、あやまった知覚だけが、すべては対象の中にあると思わせる。しかし、すべては精神の中にある  のだ。」--広範な読書、美術館・史蹟の探訪、コンサート・演劇・オペラの公聴による知識・経験に裏付  けられた知識から生み出された小説
539.「魔の山」上・下、トーマス・マン、新潮文庫、10月13日  *
540.「道具つくし」別役実、大和書房、10月13日  *
 : 我々の日常的な「常識」の側からも、学者たちの学問的な「知識」の側からも見捨てられつつある「道   具」「もの」を紹介。こんな「道具」があるのかとビックリ
541.「園芸課2ヶ月」カレル・チャペック、中公文庫、10月14日  *
 : 園芸家が一年を通して毎月何をしているかをユーモアたっぷりに語る。「ほんとうの園芸家は花をつく   るのではなく、土をつくっている」という発見にうなずく
542.「いっしょにお茶を」田辺聖子、角川書店、10月14日
543.「巴里の空はあかね雲」岸恵子、新潮文庫、10月14日  *
 : 離婚話・離婚後の7年間のエッセイ。家族の強い絆とそれをもっても埋められない日仏文化のギャップ
544.「年齢の本」デスモンド・モリス、平凡社、10月14日
 : 結論:1)各年齢の典型的な特徴というものが存在する、2)反対に、「年齢ページの後半部分」に人間  集団の驚くべき多様性もまた存在する
545.「赤と黒」上・下、スタンダール、光文社文庫、10月16日  *
546.「ふんにょう博士一代記」中村浩、論創社、10月16日
 : ふんにょう研究をライフワークとした中村博士のトコトンふんにょう談義
547.「職人衆昔ばなし」斉藤隆介、文芸春秋、10月16日
548.「根無草」平賀源内、名著刊行会、10月17日
549.「放屁論」平賀源内、名著刊行会、10月17日
550.「金の生木」平賀源内、名著刊行会、10月17日
551.「金々先生栄花夢」恋川春町、臨川書店、10月17日
 : 黄表紙中最も有名。「邯鄲」を茶番化したもの。青本から黄表紙へという歴史的転換の書
552.「黄表紙・洒落本の世界」水野稔、岩波新書、10月17日  *
 : 絶好の入門書。主な黄表紙・洒落本を列挙、粗筋の紹介もしている
553.「高野長英」鶴見俊輔、朝日選書、10月18日
554.「時代の刻印」松本健一、現代書館、10月18日  *  (6)
555.「第二の維新」松本健一、国文社、10月18日       (6)
556.「共同体の論理」松本健一第三文明社、10月19日   (10)
557.「在野の精神」松本健一、現代書館、10月19日     (2)
558.「一色一生」志村ふくみ、求龍堂、10月19日  **  (2)
559.「草木虫魚の人類学」岩田慶治、淡交社、10月20日  *  (15)
560.「ナショナリズム」姜尚中、岩波、10月20日   *  (7)
561.「反ナショナリズム」姜尚中、講談社文庫、10月21日  *  (13)
562.「ナショナリズムの克服」姜尚中、集英社新書、10月21日
 : 軽妙で裏話的情報のオンパレードVS情報の質量のトレードオフという対談の具体例
563.「日本のナショナリズム」松本健一、ちくま新書、10発21日
564.「挑発する知」姜尚中・宮台真司、双風社、10月22日  **  (13)
 : 行動する人(操縦する)=宮台真司と眺める人(行動しない)=姜尚中との違いを宮台真司が鋭く突く
565.「民法風土記」中川善之助、日本評論社、10月22日
566.「東京セブンローズ」井上久、文芸春秋、10月22日
567.「歴史という闇」松本健一、第三文明社、10月22日
 : 光と闇:「歴史」にたいして抱くふたつの想念とほぼ重なる。風土が人を育む土壌、歴史は人々の死を  養分にして咲いた花
568.「歴史の精神」松本健一、柏書房、10月22日
 : 歴史批評は可能か: 歴史研究でも、歴史叙述でもない自己批評のために必要であり、可能
569.「不可能性の「日本」から可能性の「国家」へ」松本健一、河出書房、10月23日
 : 文芸評論: 現代文学における作品の独特な表情を楽しむことを心掛けた
570.「私の同時代史」松本健一、第三文明社、10月23日 
 : 同時代=私という発想をとりながら、他者との共同性を希求している。これが私自身から見た本書の   性格かもしれない
571.「挟撃される現代史」松本健一、筑摩書房、10月23日  *  (10)
 : 原理主義という思想軸: 基本的に「近代」に触発されつつ、それを全否定、超克するかたちで起こって  くる思想・イデオロギー
572.「眼の思考」松本健一、学芸書林、10月23日
 : 第一部「高島炭鉱」、第二部「「この10年眼の思考から誘われたエッセイ」、第三部「「現代にノンフィク  ションはどうあるべきかの理論」
573.「開国のかたち」松本健一、毎日新聞、10月23日  *
 : 幕末という稀なスリリングな時代ーーー 生きていた人々の必死さ、それによって日本が変わっていく   様を描く
574.「わたしが国家について語るなら」松本健一、ポプラ社、10月24日  **
 : サブタイトル「未来のおとなへ語る」。国の成立の歴史、国民国家とパトリオティズム、日本という国号、  国民国家の落とし穴、、米・中・イスラエル・日本の国家的課題を網羅、レベルを落とさずに子供にも分   かるように国家論を展開
575.「占領下日本」松本健一、筑摩書房、10月24日
 : 占領とは、日本人にとって何だったのか?何を得、何を失ったのか?こうした問いに答えるべく企画さ  れた。占領を体験しなかった若い世代にも理解できるように配慮
576.「ジャン・クリストフ」1~4、ロマン・ロラン、岩波文庫、10月25日  **  (1)
 : 1890年最初の構想、1912年完成。個人的評価は「失われた時を求めて」より上
577.「堕落論」正・続、坂口安吾、講談社、10月25日  *
 : 天皇制・武士道・耐乏の精神などの「健全なる道徳」から堕落することによって真実の人間に復帰しな  ければならぬと説く
578.「デカダン文学論」坂口安吾、講談社、10月25日  *
 : 私はデカダンス自体を文学の目的とするものではない。私はただ人間、そして人間性というものの必   然の生き方を求め、自我自らを欺くことなく生きてきた
579.「青鬼の褌を洗う女」坂口安吾、筑摩書房、10月25日  *
580.「日本人が世界史を描く時代」松本健一、PHP,10月25日
 : 「世界史のゲーム」シリーズ第三弾
581.「歴史の現場」松本健一、五柳叢書、10月26日         (2)
 : 歴史にかんする施策と感慨の文章のみを集め単行本化。私の「現在の物語」
582.「日本の失敗」松本健一、東洋経済、10月26日  **  (17)
 : 第二の開国(大東亜戦争の敗北)を迫られるに至った日本の失敗についての分析
583.「右翼・ナショナリズム伝説」松本健一、河出書房、10月26日  *  (3)
 : 「右翼はどこにゆくのか?」と問いかけ、「終わった」と断言する。右翼の定義から説きおこし、保守に右 翼の大義名分たるナショナリズムやアジア主義を引き取られ、思想的アイデンティを喪失したからと指摘
584.「民族体験としての戦争」松本健一、五月書房、10月26日       (1)
 : 「民族の歴史としての戦争を考える」対談集。吉本隆明・秦郁彦・毛利敏彦の三人が相手
585.「日本精神史への旅」松本健一、河出書房、10月26日
 : 人間は政治も文学も社会も宗教もーーーすべてをひっくるめたかたちで生きている。すべての分野をフ  ォローしている人間の精神の歴史を把握するには、精神史という方法が有効である
586.「日本文化の行方」松本健一、第三文明社、10月26日         (1)
 : 世界が政治・経済・」技術・情報の面でますますグローバル化を進めていく時代に、日本のローカルな  文化はどこへ行くのか
587.「日本のアイデンティティ・ゲーム」松本健一、徳間文庫、10月27日  (2)
 : 12人との対論集
588.「日本人よ、気概を取り戻せ」松本健一、徳間文庫、10月27日     (1)
 : 14人との対論集
589.「「日の丸・君が代」の話」松本健一、PHP新書、10月27日        (4)
 : 国旗・国家がなぜ必要とされるのか、日の丸・君が代の起源はを説明
590.「砂の文明・石の文明・泥の文明」松本健一、PHP新書、10月28日  **  (20)
 : ヨーロッパの「石の文明」、アジアの「泥の文明」、アラブの「砂の文明」。石の文明は、土壌の薄さをカ  バーするため、自然を開発=破壊し、プロダクト・イノベーション志向、個人を尊重するため民主主義をも たらし、泥の文明は、定住、豊かな自然の改良、プロセツ・イノベーション志向、共同作業重視であり、共  生社会をもたらす
591.「泥の文明」松本健一、新潮社、10月29日  *   (1)
592.「「高級な日本人」の生き方」松本健一、新潮社選書、10月29日    (2)
 : 「高級な日本人」の共通点として、大局観・志・順境にあろうと逆境にあろうと志の貫徹に邁進する行動  力をあげる
593.「アジア 新世紀の国家像」松本健一、亜細亜大学、10月29日    (2)
 : サブタイトル「転換期の針路を探る」。6人の講演、日本・統一挑戦・マレーシア・シンガポール・インド・  中国の21世紀に向けての動向と課題を分析
594:「民族と国家」松本健一、PHP新書、10月29日
 : サブタイトル「グローバル時代を見据えて」
595.「第三の開国と日米関係」松本健一、第三文明社、10月29日 
596.「近代アジア精神史の試み」松本健一、岩波現代文庫、10月29日
 : 日本・ビルマ・中国・ベトナム・インド・韓国について述べる
597.「海岸線の歴史」松本健一、ミシマ社、10月30日             (5)
 : 日本は海岸線の異常に長い国。米国の1.5倍。「白砂青松」は江戸時代に登場。現代は、海岸の松   がなくなり、テトラポットが置かれているが、効果がなく、砂浜消失が急速に進行している
598.「幕末奇人伝」松本健一、文芸春秋、10月30日
 : 遠山みどり(雲井龍雄)、松森胤保、山本覚馬を描く。ともに幕末にあっては、賊軍とされた米沢・庄内(およびその支藩松山)・会津藩の出身。著者は「奇人」の定義として、「組織に拠らず、他を頼まず、みずからの内部に発光源をもつ、一人でいて淋しくない人間」という
599.「評伝 北一輝」1~5、松本健一、岩波、10月31日  **  (31)
 : 著者が35年にわたって資料収集・執筆してきた「北一輝」についての渾身の力作。2・26事件の首謀  者として死刑に処された北一輝の分かりにくい思想・行動を豊富な資料を的確に活用しながら、生き生  きとよみがえらせる。北一輝を国家主義・民主主義者と定義し、そこに北の分かりにくさがあるとする
600.「畏るべき昭和天皇」松本健一、毎日新聞、10月31日  *
 : 昭和史のなかで、「たったひとりのたたかい」を戦わざるを得なかった昭和天皇。そのたたかいぶりによ  り「畏ルべき昭和天皇」という。具体的には、2・26事件を反乱と規定、マッカーサーを押し返した、三島  事件の無視を取り上げる
601.「日本の近代1 開国・維新」松本健一、中央公論、10月31日
 : 日本近代の通史の一巻としては画期的といえる新しい内容を盛り込んでいる。しかしその内容は、こ   れまでに著者が発表した内容をまとめたものである
602.「支那革命外史」北一輝、みすず、11月1日  *
 : 北一輝の手になる「支那(辛亥)革命史」。二つの観点で書かれている。1)北自身が支援・参画した経  験を反映した革命史、2)北がこうあってほしいと願った支那革命の姿
603.「百一新論」西周、中央公論、11月1日   *
 : 「百教一致」説。儒教・道教・仏教・回教・キリスト教など数多くの教えがあるが、その教えは基本的に   は共通しているという考え。「教え」とは、人の人たる道を教えることと定義
604.「後狩詞記」柳田国男、中央公論、11月1日
 : 日向国奈須の山村において今も行われている猪狩りの故実を記す
605.「歴史と民族の発見」石母田正、東大出版会、11月2日
 : 「民族の誇りと伝統をどうしたら一人でも多くの日本人に自覚してもらうか、日本人がもっている地盤を  どうしたらはっきりした自覚にまでもたらすかという実践をともなって初めて学問的な創造になりうる」と   いう考えのもとに書かれた本。近年こんなに読みにくく、また疲れた本はなかった。その理由は、1)この  本は1952年(サンフランシスコ講和条約)日本の独立(占領の終了)時に書かれており、後知恵で本書  の内容を判断・批判しないように心掛けた、2)執筆の目的と内容がどうつながっているかを見極めよう  と集中力を切らさないように努力したが、主たる論旨展開は、マルキシズム理論そのものであり、第三  部で唐突に民衆と女性の歴史が登場(作者の意図的には、理論の正しさを裏付ける具体事例のつもり  か)する=執筆の目的をが内容と乖離しているため
606.「続・歴史と民族の発見」石母田正、東大出版会、11月2日
 : 正編の翌年の発行だが、その間に血のメーデーがあり、正編の楽観論が遠のき、危機意識が前面に  出ている。さすがに著者も正編での目的と内容とのギャップが埋まっていないと感じたのか、マルクス主  義の成立と発展は日本の歴史とともにあったと主張。本書でもそのギャップが埋められたとは、とても思  えない
607.「「「第三の開国」の時代に」松本健一、中央公論、11月2日  *  (4)
 : 国内変革の原則を定めつつ、国連・WTOなどのルール改定をふくむ世界新秩序つくりに加わる必要性  を説く。内向きの姿勢を否定し、国際的な協調に向かわせる主張
608.「思想としての右翼」松本健一、論創社、11月2日         (10)
 : 24年前に出版されたものの改定・追加版。この本のタイトルとなった「思想としての右翼」が秀逸
609.「「世界史のゲーム」を日本が超える」松本健一、文芸春秋、11月2日  (12)
 : 近・現代の世界は二つのゲームにより動かされてきた。「近代化」と「テリトリー(領土拡張)ゲーム」で   ある。しかし、その結果深刻な問題を経験し、「近代の超克」「共存共栄」が叫ばれている。日本の歴史・  伝統にはアジア的な「共生」の思想があり、ここに「世界史のゲーム」を日本が超えるポテンシャルをみ   る
610.「日・中・韓のナショナリズム」松本健一、第三文明社、11月3日  *  (12)
 : ギクシャクする日本と中国・韓国との関係を「ナショナリズム」を切り口に分析する。日中戦争・植民地   の歴史をふまえ、靖国問題・教科書問題・領土問題など何が対立点なのかを解説、合わせて相互理解  の方向を示す
611.「明治天皇という人」松本健一、毎日新聞、11月4日   *
 : 幾多の明治天皇論が出版されているが、「明治天皇の声が聞こえてこない」ことに不満を持った著者   が、明治天皇が、どんな時にどんな「声」を発していたかを描く。明治憲法論が秀逸
612.「憲法改正大闘論」中曽根康弘・西部邁・松本健一、ビジネス社、11月4日  (9)
 : 憲法改正の必要を説く三者が具体的にどこをどのように改正すべきかを提案。集団など的自衛権・自  衛隊・海外派遣の条件などの9条関連、国民投票・首相公選制導入
613.「安東昌益」松本健一ほか、光芒社、11月4日        (10)
 : 尾藤正英「安藤昌益と本居宣長」が二人の「道」についての共通理解を整理し叙述しているのが良い
614.「評伝 佐久間象山」松本健一、中公叢書、、11月4日   (2)
 : 多角的に佐久間象山に迫る
615.「二宮尊徳」守田志郎、朝日選書、11月5日  *  
 : 従来の二宮尊徳像を大きく変えた力作。祖父が一代で築いた豪農の地位を父の代に失い、小規模農  家に戻っていたものを、村一番の豪農に戻したのに止まらず、小田原藩の幹部藩士の家を建て直し、   藩主に見込まれ、支藩の財政立て直しに成功、これを皮切りに他藩からも次々に舞い込んだ依頼に応  じ、次々に改革・再建を成功させる近代的企業家マインドをもった二宮尊徳像を伝える
616.「風土からの黙示」松本健一、大和書房、11月5日     (7)
 : 民衆のエートスのありかたがわたしに「ナショナルなアナキズム」という論理矛盾吐かせたので、本書   は必然的に「伝統的アナキズム序説」となる
617.「東北アジア共同の家をめざして」姜尚中、平凡社、11月6日  *  (16)
 : 東西冷戦体制の崩壊という新たな情勢下で、日本は安保体制による対米従属を続け、アジアに隣人   (友人)がいないという状態となっている。日本の自主性を回復し、アジアの隣人をつくるため「東北アジ  ア共同の家」の設置を提案
618.「近代日本の精神構造」神島二郎、岩波、11月6日      (4)
 : 本書は1953~7年の間に書かれた三つの論文を大幅に改定、追加・変更したもの。ファシズム期の  庶民意識、幕末以来の中間層の形成、近代化、「家」意識の変容を描く
619.「天皇制国家の支配原理」藤田省三、みすず書房、11月6日    (4)
620.「維新の精神」藤田省三、みすず書房、11月7日  *   (14)
 : 維新をもたらしたのは、「百論沸騰」と「処士横議」と「浪士横行」と「志士」の横断的団結にあった
621.「日本の近代化と民衆思想」安丸良夫、平凡社、11月7日   (10)
 : 第一章「日本の近代化と民衆思想」が中心の論集。日本近代社会形成過程における広範な民衆の自  己形成・自己鍛錬の過程と意味をその欺瞞性のカラクリを含めて、民衆的諸思想の展開のうちにとらえ  ようとするもの
622.「明治精神史」上・下、色川大吉、講談社学術文庫、11月8日  **  (30)
 : 出来上がった「思想」には興味がなく、今なお、混沌と生きていて、たえず奔流したり逆流したり、まった  く未解決な複雑な日本の「精神の歴史」に焦点をあてた「明治精神史」。戦後の歴史学に画期的な転換  をもたらした一冊。その方法は”歴史の伏流を汲むもの”あるいは”底辺の視座”からする思想研究
623.「近代の超克」竹内好、薩摩叢書、11月8日  *  (9)
 : 昭和17年に行われ好評を博した「近代の超克」座談会を取り上げた名著。好評を博した割には理論   的にもこれという成果を生み出せなかった理由を的確に指摘したことで有名。太平洋(大東亜)戦争の   二面性、アジアに対する侵略性とアメリカとの帝国主義国家間の戦いの二面性
624.「アジアからの/へのまなざし」竹内好、日本経済評論、11月9日  *  (31)
 : アジアへの関心なかんずく、中国が竹内の思想の起点。「近代の超克」との重複も多いが、秀逸は、   「Ⅲ 日本のアジア主義」。アジア主義の定義から入り、アジア主義を唱えた主要な人々とその主張を   網羅
625.「進化論講話」岡浅次郎、筑摩書房、11月9日  *
 : 1904(明治37)年出版、ベストセラーとなり、岡浅次郎を有名にした著書。いまでも、入門書として十  分に通用する高いレベル。好評を博した理由は、1)啓蒙書としてよくできている、2)文章の面白さ
626.「草莽論」村上一郎、大和書房、11月9日    (9)
 : 「草莽」とは何かの定義からはじめ、代表的な草莽の士として高山彦九郎・頼山陽・平山行蔵・近藤重  蔵・間宮林蔵・藤田東湖・吉田松陰をあげる
627.「古神道大義」筧克彦、著作刊行会、11月9日   (10)
 : 明治45年の講演に手を入れて単行本化。日露戦争後の混乱した戸惑い、自己を忘れさまよえる多く  の人々に真の心の故郷を見出させ、非常な感銘を与えた
628.「民族という名の宗教」なだいなだ、岩波新書、11月10日
 : ソ連が崩壊し、社会主義国が次々と社会主義を放棄する中で、人をまとめる原理の中に「救いを求め  た人々の心」に希望を与えた「民族という名の宗教」
629.「日本浪漫派批判序説」橋川文三、講談社文芸文庫、11月10日  (10)
 : 重要な問題: 仮説: 1)昭和の精神史を決定した基本的な経験の型として、共産主義プロレタリア運  動、次に転向、最後に日本浪漫派経験、2)有体験としての日本浪漫派は、戦後も心性として広汎に認  められる、3)ウルトラ・ナショナリズムの究明、日本浪漫派の解析が必要
630.「二千五百年史」上・下、竹越与三郎、講談社学術文庫、11月12日  (12)
 : 「国民はいかなる生活をなせしかいかなる理想を懐きしか。いかなる本姓を示したるか。しかしていか   にして理想に向かってその桎梏を脱さんとしたるか。これ歴史家が最大目的として画かざるべからざる  ものなり。」「今や余、独力古今を網羅して二千五百年間国民の生活思想を画き、前人のいまだかって   なさざるところをなさんとす。」
631.「敗北を抱きしめて」上・下、jジョン・ダワー、岩波、11月12日  **
 : サブタイトル「第二次大戦後の日本人」。太平洋戦争の敗北とそれに引続く占領。そこで現実に人生を   送った日本人自身の体験として理解することは容易ではない。天皇制・新憲法・東京裁判についての   記述が秀逸。的確な分析視覚、日本人への深い理解、アメリカの対応への冷静で公平な分析。太平洋  戦争論の画期をなす力作
632.「昭和超国家主義の諸相」橋川文三、筑摩書房、11月13日
 : 丸山真男、北一輝、高畠素之、大川周明をとりあげる
633.「サイファ 覚醒せよ!」宮台真司、速水由紀子、筑摩書房、11月13日  ** (37)
 : サブタイトル「世界の新解読バイブル」。人間が生きている意味は、第一の帰属:家族などの共同体、第二の帰属:会社などの社会、第三の帰属:アイデンティティなどの自分、第四の帰属:世界の中での位置付けをもつことにより明確になる。日本の現状は、第一、第二の帰属が弱まったり崩れてきており、第四の帰属という概念をもたない人が多いために、人生の意味を見いだせない人間が増えている。多帰属社会を目指す、特に第四の帰属をもつことのことの重要性を説く
634.「日本談義集」周作人、東洋文庫、11月13日
 : ”知日家””親日家”周作人の日本に関するエッセイを集めた「日本文化を語る」の復刊
635.「帝国以後」エマニュエル・トッド、藤原書店、11月14日  *** (21)
 : 反米か親米かというのは完全に過去の発想。アメリカは世界を必要としているが、世界はアメリカを必  要としていない、そうした中でリーダーシップの発揮を目指してアフガニスタン・イラクなどの弱小国への  戦争を仕掛けるが、他国の支持を得られなくなっているというのが、冷戦崩壊後の世界の見取り図であ  ると主張
636.「「「帝国以後」と日本の選択」エマニュエル・トッドほか、藤原書店、11月14日  (6)
637.「台湾論」小林ひさのり、小学館、11月14日  **
 : 「戦争論」に引き続記話題を呼んだゴーマニズム宣言第二弾。李登輝・陳水扁へのインタビューを含め  た台湾の歴史と現状を紹介。国民党・中国共産党が教えてきた「台湾は中国の一部」という歴史観を否  定、「鄭成功の明への反抗」から台湾の歴史を説き起こす李登輝の路線を紹介
638.「エネルギーと公正」イヴァン・イリイチ、晶文社、11月14日
639.「夜の鼓動にふれる」西谷修、東大出版会、11月14日
 : サブタイトル「戦争論講義」。東大の「現代思想」の一コマとして<戦争>というテーマを通して我々の   現在の<生存>を成り立たせている条件について、ひととおりの様相を描き出した
640.「日本及日本人の道」大川周明、全集刊行会、11月15日
 : 人格的原則てして愛人・敬天、精神生活に自由、政治生活に平等、経済生活に友愛を説く
641.「日本精神研究」大川周明、全集刊行会、11月15日  *  (2)
 : 横井小楠、佐藤信淵、石田梅巌、平野二郎國臣、宮本武蔵、織田信長、上杉鷹山、上杉謙信、源頼朝  の9人を取り上げ日本精神の神髄を描く
642.「太平洋戦争とは何だったのか」クリストファー・ソーン、草思社、11月15日  *
 : 1941~5年の太平洋戦争。日本対英国から日本対米国へ。その戦争を戦った日本及び日本人、アメ  リカを中心とする連合国、戦場となったアジア各国の人々のそれぞれの状況を描く
643.「水魂記」保田與重郎、恒文社、11月15日  *
 : 「わが(国の)文学はもともと人におしつけるものではなかった。日本の文学の本領は幽玄とか余韻と   か陰影とか、人の思いをひき出し、わが想いをおしつけるものではなかった」(戦後文学論)
644.「日本の橋」保田與重郎、角川選書、11月16日
 : 日本の橋、誰ケ袖屏風、河原操子、木曽冠者、みたらびあわれで構成
645.「アウンサン将軍と30人の志士」ボ・ミンガウン、中公新書、11月16日  *
 : サブタイトル「ビルマ独立義勇軍と日本」。イギリス植民地からの独立をめざして、日本軍の援助を求   めたアウンサンをリーダーとする30人の志士の物語
646.「明治の文化」色川大吉、岩波、11月17日  *  (11)
 : 文化・思想を民衆のレベルでとらえるという考えに基づき、「明治の精神構造の柱としての天皇制」   の成立の過程を、丸山真男の説を批判的に検討しながら、結論としてその成立に決定的役割を果たし  た日露戦争を国難として受け止め、民族存亡の危機を一身を捨てて打開しなければならないと観念し   た日本人民の意志にあったと指摘する
647.「びろう樹の下の死時計」谷川雁、学芸書林、11月17日
 : 戸数16、住人60人の臥蛇島。ぎりぎり生きていけるかどうかの環境。わたしたちの文明は前進してい  るのか後退しているのか。この島は日本の社会の祖型であり、同時に時代の流れの船首でもあること   により未来の規範でもあるのではないか
648.「政治思想論集」カール・シュミット、社会思想社、11月17日
 : シュミットは政治・哲学としての自由主義を敵とし、規範主義から決断主義を乗り越えて具体的秩序の  理論へと向かう
649.「宇宙的ナンセンスの時代」宮内勝典、新潮文庫、11月17日
 : 宇宙飛行士へのインタビューから始まり、話はいろいろな方向に飛ぶが、追記でその宇宙飛行士がシ  ャトル事故にあうのをTVで見たとの報告で終わる
650.「回教概論」大川周明、中公文庫、11月18日  *
 : マホメットの生涯、コーランの内容にとどまらず、税制や礼拝、後の各派への分裂、回教法学にまでお  よぶ豊富な情報。昭和17年に書かれたが、現在なお第一級の入門書として通用する
651.「ニカラグア密航計画」宮内勝典、教育社、11月18日  *
 : アフリカ・スリランカ・カリブ海などの普通の旅行者がまず足を踏み入れないところを描くエッセイ。圧巻  はタイトルになっているニカラグアの反政府ゲリラをまさに命がけで尋ねるレポート
652.「不死のワンダーランド」西谷修、青土社、11月18日  *  (8)
 : 存在/不在、<非ー知>、死/不死、不眠・不安・恐怖、バタイユ、ブランショ、レヴィナス、ハイデガー
653.「天降言」保田與重郎、文芸春秋、11月18日
 : 強く印象に残ったのは、壬申の乱を人麻呂が歌ったことを中心とする「慟哭の悲歌」と「明治の精神」。  40年にわたって書かれたものから選び出して単行本化
654.「眉屋私記」上野英信、潮出版、11月19日
 : 「在外五十有余年ヲ顧ミテ」という手記を縦糸に、「三味線放浪記」を横糸に、沖縄南島出身者の明治・  大正・昭和にわたる生きざまを描く
655.「出ニッポン記」上野英信、潮出版、11月19日
 : 「眉屋私記」の姉妹編。ヤマを追われた炭鉱労働者のなかには最後の希望を中南米に託し、移民した  人々がおり、その人々を現地に訪ねた記録
656.「古事記の世界」西郷信綱、岩波新書、11月19日  (2)
 : 本書の源泉として、1)本居宣長「古事記伝」、2)エヴァンス・ブリチャードを中心とする英国の社会人   類学、3)メルロ・ポンテイ「知覚の現象学」哲学をあげる
657.「長崎海軍伝習所の日々」カッテンデイーケ、東洋文庫、11月19日
 : 幕末に2年間伝習所の教師を務めたオランダ人の日本印象記。日本人の特徴を偏らずに冷静にかつ  暖かく捉えている
658.「近代日本と中国」上・下、竹内好・橋川文三扁、朝日選書、11月20日
 : 朝日ジャーナルで1972年から連載しものを三分の二に圧縮し単行本化したもの。この企画の特徴   は、一ジャンルから2~3人を選び取り上げているため、テーマに異なった視点で切り込むことを可能に  し、結果的に幅と奥行きを広げることに成功していること
659.「透明な存在の不透明な悪意」宮台真司、春秋社、11月20日  *  (4)
 : 酒鬼薔薇事件を一つの具体例に、何が原因でそうした現象が起きているかを分析、普通の子が悪意   なくこうした事件を普通に(異常ではなく)おこす時代背景があることを指摘
660.「自由な新世紀・不自由なあなた」宮台真司、メデイアファクトリー、11月20日 * (6)
 : 本書の目的は「自由な新世紀の到来にもかかわらず、不自由な実存形式を持つ人々に対して妥当な  自己像とこの新しい自由な新世紀を「生き延びる」ために必要な実存的な知恵を提供することにありま   す」という
661.「神国日本」ラフカデイオ・ハーン、東洋文庫、11月20日  *
 : 「日本とは何か」に対する著者の回答が本書。江戸時代が到達した社会のレベル・その長所ならびに   限界を公平かつ暖かい目で描く
662.「世紀末の作法」宮台真司、11月20日
 : サブタイトル「終ワリナキ日常ヲ生キル知恵」。成熟社会とはどういう社会でどう対応するかを説く
663.「私の昭和史」末松太平、みすず、11月20日
 : 2・26事件の関係者として処罰された一青年将校の参加した青年将校運動の記憶
664.「洗脳原論」苫米地真人、春秋社、11月22日  *  (22)
 : 洗脳とは何かの定義から始まり、洗脳ならびにその解除(デプログラミング)のステップ・方法の理論と  実践を主としてオウムの事例で説明
665.「精神・自我・社会」ミード、青木書店、11月22日  (6)
 : 意識は個体と環境の相互関係のなかで生じ両者をふくんでいる。自我が同じ協同的活動にふくまれて  いる他人たちの態度を採用できる社会的個体の行動の発達の中で発生する。この二つの鍵概念によっ  て、個人の内面におかれたある意識野にさかのぼる必要はなくなった。人々はどこまでも個人の行為と  その環境関係を扱えばいい
666.「ジハード対マックワールド」ベンジャミン・バーバー、三田出版会、11月22日
 : サブタイトル「市民社会の夢は終わったのか」。世界の二大トレンド「マックワールド」=国境を越えた市  場の統一と「ジハード」=民族単位の分離・対立。こうした状況のなかで失われたのは大衆の存在。対   策として、国を超えた「市民の連合」による大衆の声の反映を提案
667.「世界の多様式」エマニュエル・トッド、藤原書店、11月23日  (15)
 : 「第三惑星」と「世界の幼少期」の二冊の合冊版。家族構造が自由主義(民主主義)か共産主義(社会  主義)かのイデオロギーを決定すると主張
668.「アメリカの内戦」マイケル・リンド、アスコム、11月23日
 : ブッシュが代表するテキサスの保守主義の伝統とニューデイールと結びついているテキサス近代主義  の伝統は、数世代をへて現在も内戦を続けている
669.「世界の究極理論は存在するか」デイヴィッド・ドイッチェ、朝日新聞,11月23日 * (16)
 : サブタイトル「多宇宙理論から見た生命、進化、時間」。四本の撚糸、多宇宙の量子力学、ポパー的認  識論、ダーウィン・ドーキンスの進化論、チューリングの普遍的計算理論の強化版が統合された世界観  樹立の鍵となる
670.「新ヨーロッパ大全」Ⅰ・Ⅱ、エマニュエル・ドット、藤原書店、11月24日  (10)
 : 「第三惑星」「世界の幼少期」での主張=家族構造がイデオロギー決定するの証明の仕方が荒かった  ので、ヨーロッパに絞り証明の精度を上げたのが本書
671.「アメリカ帝国への報復」チャルマーズ・ジョンソン、集英社、11月24日
 : アメリカは冷戦終結後10年たってもその帝国主義的行動、すなわち軍事力と経済力による恫喝を続   けている。このままでは世界中で逆流(報復)がおきる
672.「世界はこう動く」ブレジンスキー、日経、11月25日  ***  (29)
 : ソ連崩壊により歴史上初めて世界覇権国家となったアメリカが、その地位を維持するために、起こりう  る重要変化を読み対応戦略を提案する
673.「形式の法則」G・スペンサー=ブラウン、朝日出版社、11月25日
 : 主題はある空間が裁断されるときに、一定の<宇宙>が存在するに至るのだ。数学がその他の芸術  的な形式と共通に、普通の実在をこえる
674.「まぼろしの郊外」宮台真司、朝日新聞、11月25日
 : サブタイトル「成熟社会を生きる若者たちの行方」
675.「これが答えだ!」宮台真司、飛鳥新社、11月25日
 : サブタイトル「新世紀を生きるための100問100答」
676.「<性の自己決定>原論」宮台真司、紀伊国屋、11月25日
 : 「援助交際・売買春・子どもの性」などについて8名が<性の自己決定>を擁護する立場で見解を述べ  る
677.「経済幻想」エマニュエル・ドット、藤原書店、11月26日  *  (10) 
 : グローバリゼーションは現実であると同時に幻想でもあり、現実を制御するためには幻想を一掃する   必要がある。危機を理解するためには、経済的レベルにとどまらない文化的・人類学的レベルでの理   解・対応が求められる。目指すべきは平等な国民的共同体の確立
678.「テレビゲームと癒し」香山リカ、岩波、11月26日
 : 「ゲーム有害論」が一般的ななかで、子どもたちの臨床の場で、「ゲーム中の症状壊滅現象、回復現象  を経験」。テレビゲーム療法試論を展開
679.「無為の共同体」ジャン・リック・ナンシー、朝日出版社、11月26日
 : <共産主義>から<近代>と<共同体>の関係、そして<合一>のシステムの脱構築としてバタイ   ユとともにそれに反して論じられた<分割>の共同体=コンミューン
680.「生命記号論」ジャスパー・ホフマイヤー、青土社、11月27日   (20)
 : サブタイトル「宇宙の意味と表象」。自然と文化の違いは質ではなく、程度の差である。その結果自然   科学と社会科学の垣根は絶対ではなくなる。記号の解釈が生命の根幹を担うことになる
681.「封印の昭和史」小室直樹、渡部昇一、徳間書店、11月27日
 : 国際法上「侵略はなかった」、「南京大虐殺説」がおかしい、「東京裁判」はメチャクチャ、「教科書報道」  のウソなどを展開
682.「宇宙最後の3分間」ポール・デイヴィス、草思社、11月27日    (6)
 : もっとも有力なのは宇宙の始まりを説明する「ビックバン」説と対称をなす「ビッククランチ」説。もう一説  は、サイクル説
683.「死産される日本語・日本人」酒井直樹、新曜社、11月29日
 : 7つの論文を掲載。もっとも印象に残ったのは「死産される日本語・日本人」。「口語あるいは国民語の  起源をめぐる歴史的問いは「日本語」そして国民的主体としての日本人が、生まれると同時に死んでい  た、あるいはあるいは喪失されたものとしてしか生まれることができなかった、という事態に必ずつきあ   たらざるをえない」
684.「弓浦市」川端康成、新潮社、11月29日
 : 九州の弓浦市出身という婦人が突然主人公を訪ねてきて、30年前に主人公に故郷であい結婚を申し  込まれたという話をする。その記憶はないような気もするし、その情景が懐かしく思い浮かぶような気も  する。しかし調べてみたら弓浦市という地名は九州には存在しないことが判明する
685.「眠れる美女」川端康成、新潮社、11月29日
686.「都鄙問答」石田梅岩、中央公論、11月29日  *
 : 石門心学の勘所を問答形式で優しく説いたもの。人の本姓・心を知り、知ったことを実行することに尽   きると説く
687.「美少女の逆襲」唐澤俊一、文春、11月29日
 : 戦後全盛の”美少女”小説。不幸・キリスト教・結核・友情=レスビアニズム・セーラー服とリボン、ハッ   ピーエンド、純情・愛と献身・自己犠牲がキーワード
688.「天皇ごっこ」見沢知康、新潮文庫、11月30日
 : 新左翼から一転右翼に走った筆者が獄中で書いたという異色作
689.「有心」蓮田善明、新学社、11月30日
 : 負傷して日本での銃後の護りにつくため中国から帰還、阿蘇に療養のため湯治に出かける主人公。   「方丈記」とリルケ「ロダン」に共感し仕事・生活との違和感をもっていたが、湯治を続けているうちに湯   治客との触れ合いを通して生きることの違和感が薄れていく様を描く
690.「日本美術史」岡倉天心、平凡社、11月30日  *  (7)
 : 上古=奈良期、中古=藤原氏時代、近世=足利氏以降という三時代区分、さらに細分すれば十八期  となす。主として中国の美術史との対比において日本美術史の特色を描く力作
691.「泰東巧藝史」岡倉天心、平凡社、11月30日
692.「日本思想という問題」酒井直樹、岩波、12月1日
 : サブタイトル「翻訳と主体」。1985~93年に書かれた五編の論文を集めて単行本化。共通の問題意  識が「翻訳と主体」。
693.「ナショナルヒストリーを学び捨てる」酒井直樹編、東大出版会、12月1日
 : 「歴史の描き方」シリーズ全三巻の第一巻。「国民主義の歴史学」や「国民国家の歴史叙述」をとりあ   げ、それを批判する。近代の歴史を再起的に再歴史化することを行っている
694.「歴史の方法」色川大吉、岩波、12月2日  *
 : 第一部「歴史叙述と歴史小説」ではその違いがどこにあるのか、第二部「歴史叙述の方法」では自作   の「近代国家の出発」をモデルに、価値意識・歴史像の構成・原風景論を、第三部で「地方史の方法」を  論ずる
695.「日本/映像/米国」酒井直樹、青土社、12月2日
 : 「国際恋愛を描いた映画はほとんど例外なく外交関係・国際政治のアレゴリーになっている」
696.「<世界史>の解体」酒井直樹・西谷修、以文社、12月2日
 : サブタイトル「翻訳・主体・歴史」。対談集
697.「希望と憲法」酒井直樹、以文社、12月3日
 : サブタイトル「日本国憲法の発話主体と応答」。本書で筆者が試みているのは、日本国憲法にまつわ   る歴史を「国際世界」から外れてしまった人々つまり「残余」の視座を排除せずに考えてみること
698.「過去の声」酒井直樹、以文社、12月3日
 : サブタイトル「十八世紀の言説ににおける言語の地位」。目指しているのは十八世紀の日本の思想的・  文学的言説の歴史である。関心として、1)歴史記述における理論的探究の歴史性とは何か、2)言語・  文化の同一性が、確実に経験的に与えられているとき、人はいかなる種類の言説編制に参加すること になるのか、3)他者に対して閉ざされることのない社会性の概念は果たして可能なのだろうか、をあげる
699.「日本のもと 海」松岡正剛監修、講談社、12月4日  *
 : 地球・海の誕生から未来においても「日本のもと」である海について語る。「日本のもと」10巻シリーズ  の1巻。こどもむけのページ数に制約がある中で絞り込みに冴えがみえる
700.「日本力」松岡正剛、エバレット・ブラウン、PARCO,12月4日  *
 : 「日本力」を「伝統的前衛力と前衛的伝統力をつなげている知覚身体に宿すべき力」と定義する。満州  事変以降戦後を通じすたれたに見えた日本力は残っていた
701.「嵐が丘」E・ブロンテ、筑摩書房、12月4日
702.「「「おかげまいり」と「ええじゃないか」」藤谷俊雄、岩波新書、12月4日
 : これまでは解放運動・階級闘争の観点から考察したものが多かったが、筆者は新たに民族形成運動   としての側面を付け加える
703.「NARASIA 東アジア共同体?いまナラ本」松岡正剛編、丸善、12月4日
 : 「NARASIA]シリーズの「「それナラ本」に続く第二巻
704.「無為の共同体」J・L・ナンシー、以文社、12月4日
 : サブタイトル「哲学を問い直す分有の志向」。われわれは自分の他性を一緒に実存させ、共同体およ   び歴史としておのれを記入させられるのかどうか、またいかにしてそうできるのか、ということを決定しな  ければならない
705.「戦後という地政学」西川裕子編、東大出版会、12月4日
 : 「歴史の描き方」シリーズ第二巻。
706.「神仏たちの秘密」松岡正剛、春秋社、12月5日  **  (10)
 : 「連塾 方法日本」シリーズ全三巻の第一巻。「方法日本」についての松岡正剛の8回の講義を3冊の  単行本にまとめたもの。強覧博紀の松岡正剛が渾身の力を込めて語る「日本」
707.「切ない言葉」松岡正剛、求龍堂、12月5日
 : セイゴウ語録第二巻。自伝・関心・感じ方・考え方・生き様ーーー
708.「多読術」松岡正剛、ちくま新書、12月5日  *
 : 柔らかい多読術のススメ。1)読書を生活体験と連動させ、2)本を「意味の市場」のなかに位置付け、   3)読書行為を知的な重層作業として捉えたから。執筆も読書も「双方向的な相互コミュニケーション」だ  と見る。「意味の交換」のためにおこなわれている編集行為
709.「戦争論」西谷修、岩波、12月5日
 : 本書の意図は、戦争を社会科学的に扱う(政治・歴史的状況)のではなく、哲学的に戦争と人間の「存  在論的」関係を手掛かりに考えること
710.「明かしえぬ共同体」モーリス・ブランショ、朝日出版、12月7日
 : 「共同体」を<コミュニケーション>と結びつけて論じるにあたって、バタイユとデュラスを取り上げる
711.「記憶が語りはじめる」富山一郎編、東大出版会、12月7日
 : 「歴史の描き方」シリーズ最終(第三)巻
712.「侘び・数寄・余白」松岡正剛、春秋社、12月7日  *
 : 「連塾 方法日本」シリーズ第二巻。サブタイトル「アートにひそむ負の想像力」。第四講「目の言葉・耳  の文学・舞の時空・音の記譜」、第五講「白紙も模様のうちなれば心にてふさぐべし」、第六講「正号負号  は極と極、いずれ劣らぬ肯定だ」
713.「辺境から眺める」テッサ・モーリス=鈴木、みすず、12月7日  *
 : サブタイトル「アイヌが経験する近代」。環オホーツク地域を取り上げる視点がほとんどが日ソの国家・  国民のでしかアイヌ問題をしか取り上げない一般的見解と異なる。境界線を分断されるはるか以前から  相互活動と相互交換が行われていた先住民族、アイヌ・ニウフ・ウィルタに焦点をあてる
714.「日本の近代化と民衆思想」安丸良夫、青木書店、12月9日
 : 「民衆の生き方、意識の仕方を歴史的にとらえなおすという方法を視点とすることにより、近代化してい  く日本社会の偽善と欺瞞の深さを、また、その際に歴史の暗闇に打ち捨てられていった人々の思いの   重さを照らし出す
715.「昭和史」遠山茂樹、岩波新書、12月9日
 : 1955年発行。階級闘争史観に基ずく昭和史。なぜ国民が戦争に巻き込まれ、おしながされたのか、  なぜ国民の力で防ぐことができまかったのかに力点をおく
716.「古代都市」F・クーランジュ、白水社、12月9日  *
 : ギリシャ・ローマ人を現代の見解や事実を通してみると、われわれ自身の姿を認めることになってしま  う。これは完全なる誤解である。古代人の精度を知るためには、その最古の信仰を研究する必要があ   る。ギリシャ・ローマ人がいかに現代人と異なるかを分かりやすく説いた名著
717.「中世の秋」ホイジンガ、中央公論、12月9日  *
 : この書物は14~5世紀をルネサンスの告知期とは見ずに、中世の終末期と見ようとする試みである。  中世文化は、このとき、その生涯の最後の時を生き、ひとつの豊かな文化が枯れしぼみ、死に硬直する
718.「新版 昭和史」遠山茂樹、岩波新書、12月9日
 : 1959年発行。1955年版に寄せられた意見・批判をふまえた改訂版。基本的視点に変更はないため、  骨子は変わっていない
719.「日本人民の歴史」羽仁五郎、岩波新書、12月10日
 : 敗戦までは皇国史観以外で歴史を書くことを禁じられていた。戦後初めての歴史書。人民史観に立    つ。古代を奴隷制、中世を農奴制と規定。この規定には若干無理があると著者も感じつつ、無理やりこ  の規定で貫徹する腕力に脱帽
720.「日本の歴史」上・中・下、井上清、岩波新書、12月11日  *
 : 1963~6年発行。羽仁史観の影響を強く受けている。歴史の発展の原動力を国民大衆に求めたいとい  う切実な願望が伝わってくると同時に、現実の歴史の展開の原動力はほかのところにあったために、チ  グハグ感が付きまとう歴史書
721.「危ない言葉」松岡正剛、求龍堂、12月11日  *
 : 松岡正剛の感じ方・考え方・仕事の手法・生き様等々の原点を語る
722.「贋金つかい」ジッド、新潮社、12月12日
723.「わたしが情報について語るなら」松岡正剛、ポプラ社、12月12日  **
 : 「未来のおとなへ語るシリーズ」の一巻。「情報をつなげれば自分と世界がつながる」「情報の順番を変  えると世界は変わる」「言葉を読みかえて情報の世界をおもしろくしよう」をヒントに、「自己編集」と「相互  編集」の実践を呼びかける
724.「日本の社会史」1~8、朝尾直弘他編、岩波、12月16日
 : 単一国家・単一民族・単一文化観への批判に立って、地域史重視、周辺世界との関連においてとらえ  る、社会を担ってきた多様な人々との諸関係を総体的にとらえることに積極的な関心を示すことを意図  する。1巻「列島内外の交通と国家」、2巻「境界領域と交通」、3巻「権威と支配」、4巻「負担と贈与」、5  巻「裁判と規範」、6巻「社会的諸集団」、7巻「社会観と世界像」、8巻「生活感覚と社会」。企画の狙い   は良いが、個々の論文は全体的に言って、狙いのレベルに到達しておらず企画倒れのシリーズ
725.「マンウオッチング」上・下、デズモンド・モリス、小学館、12月15日  *  (4)
 : 人間の表情・動作の観察・分析を通じて人間とは何かに迫る
726.「都市空間の中の文学」ちくま学芸文庫、12月16日  **  (6)
 : 「春色梅児誉美」「東京新繁昌記」「狐」「佳人之奇遇」「最暗黒の東京」「舞姫」「浮雲」「たけくらべ」「彼  岸過迄」「門」「上海」「浅草紅団」のなかに描かれた都市の面影を鋭く抽出する力作
727.「サバルタンの歴史」G・ガハ、岩波、12月16日  *
 : サブタイトル「インド史の脱構築」。これまでインド史は数多く書かれてきたが、植民地主義者・ナショナ  リスト・ガンジー主義者と立場は違っても全てエリートの視点であった。本書は「サバルタン=下位(大   衆)」の視点で「インドに、なぜ下からの民衆による、真の国民革命がおこらなかったのか」を分析する論  文集
728.「明治の東京計画」藤森照信、岩波、12月16日
 : 1)官庁集中計画、2)銀座煉瓦街化、3)防火、4)市区改正計画にバラバラに取り組んだが、共通の   テーマは封建都市江戸を超えるであった
729.「文明開化と民衆意識」ひろたまさき、青木書店、12月17日
 : 「文明開化と在来思想」、「啓蒙思想と文明開化」、「美作血税一揆にかんする若干の問題」
730.「歴史と民族の発見」正・続、石母田正、東大出版会、12月18日  *
 : 正編は再読、今回は「歴史の方法」に焦点を当てた。本書は、中国共産党が政権奪取して3年後、単   独講和により日本が独立したという時代背景のもとに書かれており、「帝国主義からの民族解放」を高ら  かに謳い、「唯物史観」の正当性をゆるぎない自信を持って主張
731.「カルチュラル・スタディーズとの対話」花田達朗他編、新曜社、12月18日  *  (8)
732.「岩波講座日本通史第16巻近代Ⅰ」安丸良夫、12月18日
733.「近代移行期の民衆像」新井勝紘編、青木書店、12月19日
 : 民衆運動史第4巻「近世から近代へ」
734.「幻の勝利者に」ハンズ・エーリック・ノサック、新潮社、12月19日  *
735.「クリオの顔」E・H・ノーマン、岩波文庫、12月19日  *
 : 本書は6篇の歴史随筆からなるが、統一テーマがあるわけではない。歴史と歴史の女神であるクリオ  に私心なくささげられた精神が共通であるのみ
736.「ミケルアンジェロ」羽仁五郎、岩波新書、12月19日  *
 : 1939年発行の力作
737.「ルイボナパルトのぶりゅーめる18日」マルクス、岩波文庫、12月20日
738.「隠された十字架」梅原猛、新潮社、12月20日  **  (18)
 : 法隆寺は謎の多い寺。一般的な理解としては、聖徳太子の徳を偲ぶ支持者が建立したとされている。  しかしあれだけ巨大な寺を権力から離れて支持者だけで建てられるものではないということから、誰が、  何のために建てたのかという問いを発し、仮説を立て謎に迫る。説得力ある仮説
739.「イタリア・ルネサンスの文化」ヤーコブ・プルクハルト、筑摩、12月20日  *
 : 「ルネサンス研究の新しい時代を拓いた」歴史的著述。国政、戦争、教皇権、古代世界の発見、人間   の発見(社会・富・階級・家の経営)、祝祭、詩歌、ルネサンスの人間(個人主義・名声・多面性・情熱・至  高の事柄・イスラム教との関係)
740.「黒船前後」服部之総、筑摩叢書、12月22日  *
 : 随筆集。「黒船前後」「福沢諭吉論」が秀逸
741.「中世的世界の形成」石母田正、東大出版会、12月22日
 : 戦時中の執筆。東大寺領伊賀国黒田荘の歴史を手掛かりとして、古代・中世史の変遷を具体的にた   どる
742.「スペインの短い夏」H・M・エンソインスベルギー、晶文選書、12月22日  *
 : 原題「アナーキーの短い夏。ブエナベントゥラ・ドゥルティの生と死。ロマン」革命と内戦初期の民衆自身  の活動が生き生きと描きだされている
743.「神々の流竄」梅原猛、集英社、12月23日  ***  (34)
 : 「古事記」「日本書紀」の作者は誰で、何を伝え、そこにはどんな意図が隠されていたのか?独創的な  仮説でその謎を解き明かす。従の歴史書をいくら読んでも、解消されなかった疑問が氷解
744.「明治大正史・世相篇」柳田国男、中央公論、12月23日
 : 従来の伝記式歴史に不満、故意に固有名詞を一つも揚げないで、明治・大正の歴史を描く
745.「経済成長なき社会発展は可能か?」セルジュ・ラトーシュ、作品社、12月24日 ** (24)
 : 「<ポスト開発>という経済思想」「<脱成長>による新たな経済発展」の二冊を一冊にして発行。「経  済成長」が先進国・途上国のすべての国民に利益をもたらすかどうかは、トリクル・ダウン理論が正しい  かどうかにかかっている。しかし、ある一時期をのぞき、事実として格差・不平等拡大が続いていること   により否定されている。過去経済成長があったと主張されているが、環境破壊・自然資源の消費分を差  し引くと実質はマイナス成長。したがって地球に負荷をかけないことを前提に、生活の質を高める経済   に切り替えていく政策を説く
746.「親鸞」服部之総、福村出版、12月24日
747.「蓮如」服部之総、福村出版、12月24日
748.「瞬間を生きる哲学」古東哲明、筑摩、12月25日  **  (14)
 : この本にこめられたメッセージは「いまこの瞬間のなかにすべてがある。少なくとも、大切なものは全部でそろっている。人生の意味も、美も生命も愛も永遠も、なんなら神さえも。だから瞬間を生きよう、先のことを思わず、今ここのかがやきのなかにいよう。」である
749.「俺たちのニッポン」エバレット・ブラウン、小学館、12月25日
 : 写真家で日本に住む著者が9人の日本で活躍する外人スポーツ選手にインタビュー、その生い立ちと  自分にとっての日本を語らせる
750.「ドイツ農民戦争」エンゲルス、岩波文庫、12月25日
751.「完本 秩父事件」井上幸治、藤原書店、12月26日
 : 明治17(1884)年11月埼玉県秩父で発生し群馬・長野の隣接地に波及し、4000人以上が裁判に   かけられた秩父事件を、その背景、自由民権運動との関係、中心人物、組織など総合的に描く
752.「太平洋戦争」家永三郎、岩波、12月26日
 : 読んでいて不愉快感を覚えた本。歴史を書くときの最低限の不文律は、「現在の後知恵で過去を裁か  ぬこと」。「民主主義」という全知全能のかつ安全な立場で「太平洋戦争」を糾弾しているが、これでは過  去から何も学べない。さらに事実とは異なる自分の主義・主張を事実として織り込んでいる。すなわち、  「太平洋戦争は、共産主義を武力で抑え込む戦争であった」と。
753.「大正デモクラシーの底流」鹿野政直、NHKブックス、12月26日
 : 大本教、青年団運動(長野)、中里介山の大衆小説という3本柱で大正デモクラシーの底流に迫る
754.「近世の庶民文化」高尾一彦、岩波、12月26日
 : 「稼いで遊ぶ」という元禄庶民の人生観は、16世紀の自由都市的な都市の発達以来の歴史的形成物  であり、また都市の庶民の経験的合理主義意識の産物であった
755.「21世紀の歴史」ジャック・アタリ、作品社、12月26日  **  (12)
 : 21世紀になると自由と民主主義も変容を迫られる。グローバル化により国家が弱体化し<超帝国>   が誕生し、さらに<超民主主義>が登場する。そして、利潤追求することなしにサービスを生み出す<   調和を重視した新たな経済>が市場と競合する形で発展していくという
756.「何かが道をやってくる」レイ・ブラッドベリ、創元推理文庫、12月28日
 : ファンタジイSFの巨匠ブラッドベリの作品
757.「名士小伝」、オーブリー、富山房、12月28日
758.「イッセイミヤケのルール」川島蓉子、12月28日
759.「死者の書」折口信夫、図書刊行会、12月28日
760、「進化するネットワーキング」林紘一郎他、NTT出版、12月29日  (16)
761.「日中2000年の不理解」王敏、朝日新聞、12月30日  (5)
 : サブタイトル「異なる文化「基層」を探る」。絶対的な倫理重視の理念型の中国・西洋と感性重視型の   日本文化の違いに「不理解」の原因があるという
762.「日本で「一番いい」学校」金子郁容、岩波、12月31日  (6)
 : 日本の各地にある「一番いい」学校を訪ね、なぜその学校が「一番いい」学校になったのかを分析・報  告。共通するのは、親だけではなく、地域の大人が子供に「関心をもっている」ことだと指摘。それぞれ   の地域の特色を反映した「日本で一番いい」学校はどこででも作ることができると結論付ける
  2011年合計  762タイトル 894冊  作成カード2879ページ

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