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2014年映画鑑賞

1.「アンナ・ハレント」1月8日                   ***
 : 「アイヒマン裁判」を傍聴、アイヒマンを観察することによって、ナチの犯罪は人類の歴史上かってなかった新しいタイプであるという洞察にたどり着く。それは、「思考停止」により「凡人」が「大虐殺」を罪悪感なく平然と行うことを可能とするもので、それを作り出すのが全体主義である。同時に、ユダヤ人虐殺を600万人にまで増やした背景には一部ユダヤ人指導者のナチに対する協力があったと指摘した。このレポートが新聞に発表されると、アンナに対する非難が殺到、「アイヒマン擁護」「ユダヤ人に対する裏切り」との声が渦巻く。アンナは、こうした状況にもめげず、学者の使命は先入観にもとづく善悪の判断に囚われずに、真実に迫ることにあると説く。ハレントの主張を的確に捉え・表現した力作
2.「天国の門」1月7日                        **
 : 復刻版。3時間半におよぶ大作。19世紀後半のワイオミングを舞台に、牧場主たちと移民たちとの争いを描いた問題作。躍動感ある映像作りに徹する制作意図が具体的に表現された作品

3.「ビフォア・ミッドナイト」1月28日                 *
 : 会話の多さとワンカットの長さが際立つ作品。ロマンティック・ラブの壊れやすさ・持続の難しさを描きたかったが、それでは身もふたもないので、ハッピーエンドで終わらせた(振り出しに戻る)という映画
4.「小さなおうち」1月30日                      *
 : 当初観るつもりは無かったが、ベルリン映画祭に招待されたというので観た映画。日本人には、「こういう時代があったなあ」と感じさせる内容だが、外国人がどう感じるかに興味が湧いた
5.「ウルフ・オブ・ウオールストリート」2月3日          **
 : 詐欺まがいの株売買・酒・クスリ・女とハチャメチャなやり方でウオールストリートでのし上がった主人公の物語。FBIの捜査・訴追を受け服役、しぶとく反抗しまた甦るその姿はなぜか、清々しい。それは、リーマンショックは明らかな経済犯罪であるのに捜査も訴追も行われない病んだアメリカの姿と比較するからだろう。デカプリオは「偉大なるギャツピー」よりはずっといい
6.「オンリー・ゴッド」2月4日     
 : 舞台はバンコク?現役の警察官が仕置き人でもあるというストーリー
7.「アメリカン・ハッスル」2月4日                  **
 : 今年のアカデミー賞候補に全部門で挙げられた作品。詐欺師がFBIとの司法取引で囮捜査に協力させられ、絶体絶命のピンチをその天性の「詐欺能力」を発揮して脱するという良くできた娯楽映画
8.「ニシノユキヒコの恋と冒険」2月10日
 : どんなタイプの女性からも恋される主人公ニシノユキヒコの恋を描く。どんな女性からも恋されかつ振られるという主人公の姿を的確に映し出す。その魅力は、育ちの良さ、人の気持ちに対する鋭い感受性、優雅な立ち振る舞い。しかし、その魅力が自分だけに向けられたものでないと感じたとき女はーーー
9.「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」2月10日
 : 数百年の生命を保ち現代に生きる吸血鬼の物語=大人の童話
10.「鉄くず拾いの物語」2月18日         *
 : ベルリン映画祭グランプリ(銀熊賞)をダブル受賞。素人の当事者に起こったことを再現させた映画。
11.「大統領の執事の涙」2月18日        **
 : 公民権運動に参加した人々に捧げられた作品。アメリカにおける黒人差別の歴史を中心に描かれたアメリカ現代史になっている。良く練りこまれた脚本によって見ごたえのある作品になっている。
12.「ダラス・バイヤーズ・クラブ」2月24日    **
 : アカデミー賞6部門ノミネート作品。エイズに感染、余命30日と宣告された主人公が、生き延びるためにあらゆる手を使って、アメリカで入手できない薬を集め、自分と他の患者の延命を図るという物語
13.「ブッダ」2月28日                **
 : 手塚治虫の原作に忠実な映画作りに好感が持てた。
14.「ホビット」3月4日                *
 : 第二作。丁寧に作った感がよし
15.「それでも夜は明ける」3月11日       ***
 : 原題「12 years a slave」。今年のアカデミー賞作品賞有力3候補「ゼロ・グラビティ」「アメリカン・ハッスル」の中では総合的な出来栄えで一歩抜けており、妥当な受賞
16.「ネブラスカ」3月13日             ***
 : アメリカの片田舎に住む庶民の家族が主人公。100万ドルのくじに当たったと思い込んだ父親に付き添い、息子が一緒に旅をし、父と子の絆を深め、人生の意味・幸福とは何かを問いかける映画。徹底的にシャビイな田舎町での庶民の生活を描きながら人間の普遍的なテーマに迫る。総合的な作品の出来栄えは「それでも夜は明ける」を上回る
17.「少女は自転車に乗って」3月25日     *
 : イスラム世界に生きるとは、どいうことなのかを、現代のサウジアラビアを舞台に女性の視点から描いた作品。その視点と具体性が新しかった
18.「ローンサバイバー」3月25日        **
 : 事実に基づいた作品。タリバンのリーダーを捕獲するという任務を帯びた海兵隊員4名が現地の一般人の命を助けるという決断をしたためタリバンの襲撃にあい、3名が死亡、1名が命を助けた現地人に助けられ辛うじて帰還するという物語
19.「アナと雪の女王」(字幕版)3月28日   **
 : 総合的に良くできたアニメ。今年のアカデミー賞受賞は納得。唯一違和感を感じたのは、アナと姉の女王が喋る英語。アメリカの典型的な庶民の英語だというのが、あまりにもアメリカ的
20.「アナと雪の女王」(吹替え版)4月11日  ***
 : 評判どうりの素晴らしい出来栄え、オリジナル版を完全に圧倒。特に素晴らしいのは、松たか子が歌う主題歌。世界中で高評価というのも納得。基本的にはオリジナル版(字幕)派だがこの映画に関しては、吹替え版が圧勝、オリジナル版は見る必要なし
21.「そこのみにて光り輝く」4月21日      ***
 : 不思議な映画。ストーリーそのものは、悲惨な内容なので普通は見終わった後、暗いイメージが残るが、この映画は明るい希望のイメージが残る。家族である、家族になるということの意味をよく突き詰めた作品
22.「神様がくれた娘」4月21日          **
 : 6歳程度の知能を持った父親が男手で娘を育てるが、出産時に死んだ母親の父が親権を主張・娘を連れ去り、娘を取り戻すために裁判に訴えるというストーリー。親子の絆・愛情とは何かを鋭く問い詰める
23.「過去の行方」5月7日             **
 : 妻が再婚を決めたため、離婚手続のため4年ぶりにイランからパリに戻ってきた家族(夫、妻、二人の子ども)と再婚相手とその子供の関係を描いた物語。愛憎取り混ぜた複雑な人間の関係を、この種の映画としては珍しくミステリータッチでまとめた佳作
24.「プリズナーズ」5月7日             **
 : アメリカの小さな町で起きた二人の少女の誘拐事件をめぐる物語。
25.「とらわれて夏」5月9日             ***
 : 母と息子の2人暮らしの家庭に刑務所から脱獄した殺人犯が5日間とどまった間の物語。人間の絆とは、人間の本性、幸福とは何かを鋭く問いかける
26.「テルマエ・ロマエⅡ」5月9日         *
 : テルマエシリーズ第二弾。気楽に笑わせてくれる良くできた娯楽映画
27.「WOOD JOB」5月12日            *
 : 三重県奥地の林業の実態を紹介、楽しく見れる映画
28.「チョコレート・ドーナツ」5月14日      ***
 : ホモのカップルが母親が薬物使用で収監されたダウン症の少年を引き取って育てるが、ホモに対する偏見からそれをやめさせようとする当局との対立を描いた物語。少年とカップルの心の交流、生まれた強い絆、少年の幸福ではなく、自分達の形式的正義を官僚的に求める当局と司法関係者との戦いをうまく描いて、ホモに対する差別とダウン症の少年にとっての幸福を保障しない不正義を糾弾する快作
29.「家族の灯り」5月14日
 : 「チョコレート・ドーナツ」と同様、家族とは何かを問いかける作品。場面転換もなく(1部屋の内部と道路から見たその部屋)、少ない登場人物の会話のみで構成されている。単調で、工夫に乏しく、したがって訴えかけてくるものの乏しかった
30.「ブルー・ジャスミン」5月19日        **
 : 羽振りのいい実業家の妻の座を射止めた贅沢好きのジャスミン、幸福の絶頂にあるように見えたが
夫のビジネスは詐欺まがいでおまけに浮気も数知れずという環境で心を病んでいく。ついに夫が逮捕され、全財産を没収・一文無しでただ一人の身寄りの妹のもとに転がり込み、再出発を図ろうとする物語。
誇り高く・虚栄心の強い女が、思いどうりにならない人生の壁に突き当たり病んでいく姿をうまく描いている
31.「アクト・オブ・キリング」5月19日      **
 : 1965~6年インドネシアで共産主義者と見なされた人々が大量に虐殺される事件が起きた。それを実行した人間は、英雄視されその罪を問われることもなかったし、自分たちの行為に対する反省もなかった。そして、事件の記録を自分たちが出演した映画をつくることで残そうということで映画撮影が始まる。その過程を映画にしたのが本作品。この映画を作るなかで、出演者たちの心境に微妙な変化が起き始める。
世界中で数多くの賞を獲得した話題作
32.「野のなななのか」5月26日         *
 : 本来のテーマ「人は人のつながりで生き生かされる」に、芦別紹介・反戦平和(北方領土)・反原発と盛り込みすぎて、テーマに集中できないという作品に仕上がる。本来のテーマに集中すればもっとインパクトのある映画になっているのにもったいない
33.「マンデラ」5月27日              *
 : マンデラ大統領が指導力を発揮した南ア独立の歴史を描いた映画。合格レベルに達してはいるが、この映画が描くべきポイントは、非暴力路線で運動を行ってきたマンデラが、武装闘争に転換する、そして再び非暴力路線に復帰するが、その再転換を何故行ったか。そこの突込みが不十分
34.「ドラッグ・ウオー」6月2日           **
 : 囮捜査で麻薬王を追い詰める警察の活躍を描いた香港映画。娯楽映画として良くできていて、楽しめた
35.「インサイド・ルーウィン・ディヴィス」6月10日  **
 : ルーイン・ディヴィスはフォーク歌手を目指す主人公の名前。歌手としての生活の場面の合間合間に歌が入り、歌手としてはやっていけないと暗示しながら映画は終わる。大きな物語がないがしみじみとした共感を生み出す映画。カンヌ映画祭の受賞作であることに納得がいく作品
36.「ポリス・ストーリー・レジェンド」6月10日     **
 : ジャッキーの映画である以上アクション場面が多いが、本映画は趣向を変えて、ストーリーをミステリー仕立てにして、深みを出すことに成功している
37.「万能鑑定士Q」6月13日              *
 : 「モナリザ」の日本公開に伴う警備のため「万能鑑定士Q」が選ばれ、特別訓練を受けるが、そこに待ち受けていた陰謀とは?観終ってもう一ひねり欲しかったと思わせる作品
38.「グランド・ブタペスト・ホテル」6月17日      **
 : 軽妙で粋な娯楽映画。しかし、「超おススメ」というにはパンチ力不足
39.「ノア」6月17日
 : 映画化に大いに期待して観たが、結果は「ガッカリ」。その理由は、基本的な部分で大きな違和感がぬぐえなかったから。それは、1)大洪水を起こした「神の意図」の解釈、2)時代考証。1)についての本映画でのノアの解釈は、「再スタートした世界には動物たちだけがいれば良い(罪深い人間はいらない)」であり、映画は「慈悲を持った人間は地球の再生に参加できる」。2)時代考証: ノアが使用する武器・道具は鉄製で火薬も使用し、農業の真似事もしている。人類が初めて鉄を使用したのはヒッタイト人で紀元前3千年ころ、火薬の使用はそれよりずっと新しい。農業を人類が始めたのは、メソポタミアで紀元前6~7千年前。
40.「私の男」6月19日                   **
 : 津波で家族を亡くした少女を、親戚の独身の男が引き取り、娘として育てはじめる。それが、いつの間にか、親子から男と女の関係になっていくというストーリー。日本映画にはあまりない毒のあるストーリーを浅野忠信と二階堂ふみが熱演
41.「春を背負って」6月23日               **
 : 立山の山荘を遭難者を救助しようとして死んだ父親に代わって息子が次ぐというストーリーだが、立山の自然の美しさと同時に厳しさを描き、爽やかな作品に仕上がっている
42.「ヴィオレッタ」6月23日                *
 : カンヌ映画祭で、芸術か児童ポルノかで賛否両論を引き起こした作品。
43.「トランセンデンス」6月30日
 : 見終わっての印象は「時間の無駄だった」。その最大の理由は、ストーリーが上手く流れていないこと。
人工知能の成否は「人間の意識をいかに定義するかである」というセリフはあるが、定義はされないままにストーリーは展開。コンピュータの中で生き返った主人公の博士の性格が一変したのは何故か?コンピュータが再生医療(ナノテクノロジー)技術を開発、分身作成などを行うが、なぜコンピュータにその技術開発が行えたのか?最後に博士は生き返るがそれはどうして可能だったのか?などなど、あまりにも?が多すぎて映画に没入できない、シナリオのお粗末さに呆れた
44.「her/世界で一つの彼女」6月30日         ***
 : これも人工知能(AI)をテーマとした作品。こちらは今年のアカデミー賞脚本賞を獲った作品だけに実にストリーが良く練られており、抜群の完成度。そのため、ともすれば荒唐無稽な話になりかねないテーマを、ヴァーチャル・リアリティーの持つ現実性と非現実性という本質的二面性、人間の絆(愛)とは何かを画面で語りつくしている。個人的評価は、アカデミー賞作品賞受賞「それでも夜は明ける」より上
45.「超高速!参勤交代」7月2日   *
 : 1年おきの参勤交代から戻った翌日に、福島の小藩に5日以内に江戸に出仕(参勤)せよという上意が届く。時間も金もない中で、間に合わなければお家断絶の危機に直面した藩が選んだ対策は「超高速!参勤交代」。娯楽映画として、自然に楽しめ、合格レベル
46.「罪のてざわり」7月2日       *
 : 中国映画。現代中国の断面を4つのストーリーで切り取り、中国の今を描く。一つ一つのストーリーがいかにもありそうな話と感じられ、中国社会への深い洞察が感じられた作品
47.「私の息子」7月7日         ***
 : 昨年度ベルリン映画祭金熊賞受賞作品。息子と母親との関係を主軸に、母親と夫・母親と嫁・息子と嫁の関係をからませ、思いのすれ違い・理解の難しさを上手く描き、親子とは・夫婦とは何かを鋭く問いかける作品
48.「マニフィセント」7月7日       ***
 : 「アナと雪の女王」に続くディズニーの新路線第二弾。いまだに興行収入トップを走り続け、大ヒットとなっている「アナと雪の女王」のヒットの根本的理由は、デイズニーのヒロイン像のパラダイム転換にある。それは、従来は「男性中心、女性は白馬の王子様の到来を待ち続け(受動的)、最後はロマンティック・ラブ賛美のハッピーエンドで終わる」。これを「男女平等、女性も主体的(能動的)に自分の個性を主張し未来を切り開いていく」に変更した。それを象徴するのが主題歌「Let it be!」。「マニフィセント」は、「悪の立場から見た「眠れる森の美女」」とディズニーは宣伝しているが、これは「まやかし」。「呪いを解くのは、白馬の王子のキス」ではなかった、というところに、新路線の神髄がある。そして、この新しいヒロインが目指すのは「共生社会」の実現。この路線は、観客の広い支持が得られる予感。アンジェリーナ・ジョリーの圧倒的な存在感が見もの
49.「怪しい彼女」7月14日        **
 : 韓国のエンターテインメント映画。ある時70歳の老婆が20歳の娘に逆戻り、夢・恋・家族との絆がどうなったかを描く。笑いあり、涙あり、エンディングも気が利いていて楽しめた
50.「リアリティーのダンス」7月14日   *
 : チリの巨匠ホドロフスキー監督の1920年代の軍事政権下での自伝的作品。想像的自伝と言われているが、創造的作品と理解した方が妥当かもしれない。基本テーマは独裁(イデオロギー)反対、「自由」謳歌であるが、この主旋律(特に自由}の打ち出しが弱いため、表現・描写での数々の工夫は見られるものの、作品全体の出来栄えは期待外れ
51.「マダム・イン・ニューヨーク」7月22日  **
 : 脚本が良く練りこまれていて楽しめる作品。中学の初等レベルの英語力でも豊かなメッセージを伝えることが出来、人に感動を与えられるというエンディングが圧巻。インド人の家族・アメリカの英会話学校に通う様々な国から来た生徒たちも良く描けていて、期待以上の出来栄え
52.「思い出のマーニー」7月22日      *
 : 日経の映画評の四つ星につられて観てしまったが「風立ちぬ」に続く駄作。映画評論家は、何故ジブリ作品に点が甘いのかを、改めて考えさせられた作品。絵はともかく、脚本のお粗末さが目立つ。主人公とマーニーとの友情、人間観察が浅くて、共感できないし、エンディングでどんでん返しと言いたいのかもしれないが、これは途中で簡単に想像できてしまった。「マニフィセント」とこの映画のどちらに多くの観客が入るか、日本の観客のレベルも問われている
53.「複製された男」7月25日
 : 自分とうり二つの人物がいることを知った主人公は、その人間に会いに行くがーーーーー。エンディングだけで盛り上げることを狙った映画だが、そのエンディングも描写不足で納得できず、盛り上がらない駄作
54.「二つ目の窓」7月28日    ***
 : 沖縄の自然を背景に物語はゆったりしたペースで始まる。最近の映画のペースに慣れてしまった者にはそのペースに戸惑いを覚える。しかし徐々にそのペースに慣れてくると映画の世界に入り込めて、物語も動き出し、それが恒久の自然の流れと一体化した人間の生活リズムであり、「滅ぶもの」と「滅ばないもの」を峻別していくリズムでもあることが体感できる。予想以上に多くの観客が入っており、この映画に対する評価の高さを示していた
55.「闇の後の光」8月4日
 : この映画のキャッチコピーは「メキシコの若き巨匠(カルロス・レイザダス)の代表作」。観終わっての感想は「ただの駄作」。最大の欠点は「何を訴えたいのか、全く不明である」こと。映画全体の構想力に欠けているのがその原因だと思われる。たぶんいくつかの映像が思い浮かび、それをつなぎ合わせたたら、この映画ができたということなのだろう
56.「るろうに剣心ー京都大火編」8月7日    **
 : 「るろうに剣心」シリーズ第二弾。このシリーズの最大の強みは、斬新で・スピーディーな殺陣の振り付け。第一作では、衝撃的だったが、今回もそのインパクトは変わらない。全体としての出来栄えも良く、充分楽しめる作品に仕上がっている
57.「消えた画ークメールルージュの真実」8月22日  ***
 : 「地上の楽園を実現した」というポル・ポトが実際に作り上げたのはどんな社会だったのか。ポル・ポトのウソを告発する政治的意図を持った作品。映画の画面は、ポル・ポト時代に撮られたフィルムとその当時の民衆の生活を再現するために、泥人形で人間をつくり彩色、それにマッチした背景をジオラマで再現したものを撮影したフィルムで構成されている。この画面構成は大きな効果をあげ、成功している。民衆の生活を実写で再現した場合は、その悲惨さに観客は生理的拒否反応を起こし、作品の主張を素直に受け入れがたかった可能性が高い。結果的に実写を選ばなかったことにより、観客は画面に示された民衆の生活を素直に受け入れ、淡々としたナレーションと相まって、映画の主張に共感を示しやすかったのだと思われる。全ての面で良く練り上げられて、完成度の高い力作
58.「ローマ環状線ーめぐりゆく人生たち」8月29日   **
 : ローマ環状線の周りで繰り広げられる人生模様を描く。約10のローマ市民の平均からはかけ離れていると思われる人生に焦点を当て、ローマの懐の深さを描くことに成功している。
59.「収容病棟」9月1日                    *
 : 精神病院に収容(監禁)された患者の日常を撮影した中国のドキュメンタリー映画。延々と続く病院内のカットで患者の異常性・正常性が見ている観客の中で揺らいでくる。そこで、患者の大半は喧嘩が原因で違法に精神病院に強制収容された人たちであり、長期に収容されているうちに本当に精神を病んでくるという事実が明らかにされる。
60.「ケープタウン」9月4日                  ***
 : 若い女性の連続殺人事件、ストリートチルドレンの失踪を捜査するケープタウン警察が行き着いたはーーーーー。スリリングなストーリー展開で完成度の高いエンターテインメント映画に仕上がっている
61.「るろうに剣心ー伝説の最期編」9月18日       **
 : 「るろうに剣心」」三部作の最終作。映画の半分は殺陣のシーン。この映画が到達したスピードあふれる新しい殺陣を凌駕することは当分難しいだろ
62.「めぐり逢わせのお弁当」9月22日           **
 : インドではお弁当を運ぶサービス(自宅にとりに行き、職場に届けて、食後回収し、自宅に戻す)が普及しており、誤配の確立は600万分の1という信頼度を誇る。ここで起きた誤配からお弁当を作った主婦と定年まじかの男やもめの勤め人との手紙のやり取りが始まりーーー。現代インド事情を上手く織り交ぜながら人間の感情の起伏を楽しく描いている
63.「柘榴坂の仇討」9月22日                 **
 : 井伊大老の護衛役の武士が桜田門で主人を暗殺され、切腹も禁じられ、犯人の首を挙げることを命令される。事件から13年後、幕府も彦根藩も消滅し明治5年になっても、犯人を追い続ける主人公。そしてついに最後の1人にめぐり逢いーーー。時代劇というよりは、人間ドラマ。
64.「ジャージー・ボーイズ」9月29日    ***
 : クリント・イーストウッド監督作品。ストーリー(脚本)・音楽・演出全てにわたり良く練り上げられ、映画の楽しさ、醍醐味を味わわせてくれた。特に音楽好きにはたまらないだろう。
65.「猿の惑星」9月29日           ***
 : これも非常に完成度の高い作品。社会・家族のつながり、信頼とは、人間の人間たる所以とは?人間の類人猿に対する優位性という常識を揺るがし、あらためて考えさせる強いインパクトを与える。
66.「悪童日記」10月7日           ***
 : 第二次世界大戦末期のドイツの占領下にある東欧の国を背景に、母の祖母に預けられた双子の男の子の日記(世界的ベストセラー作品)を映像でたどる。悲惨な環境を生きぬくために悪行をふくめて強く生き抜こうとする二人の少年の姿を、淡々と描く。
67.「ミリオン・ダラー・アーム」10月7日  ***
 : 実話に基づく物語。LAの破産の危機に瀕した興業企画エイジェントが巨大な人口を抱える野球未開発国インドに目をつけ、1年以内に大リーグ選手を発掘・育成するという約束で資金を提供してもらいーー。シナリオが良く練られており総合的完成度の高い作品。
68.「蜩の記」10月7日            ***
 : 黒澤明監督のチームで働いた「黒澤組」の作品。ある事件の責任を取り、藩史を完成させるため10年後の切腹を命じられた武士と、あと3年で切腹という時点で監視に送り込まれた若い武士。この事件の解明に武士の家族・農民との交流をからませてストーリーは展開する。
69.「レッド・ファミリー」10月9日       **
 : 北朝鮮から韓国に潜入した工作員で構成する偽装家族(レッド・ファミリー)が隣の年がら年中喧嘩ばかりしている家族の自由さにいつしか憧れるようになりーーーー。コミック風味付けで見せる北朝鮮批判。
70.「ふしぎな岬の物語」10月17日     **
 : 一つ一つはどうでもいいともいえるエピソードを積み重ねで作られた作品。観終わった後に「温かさ」が残る映画。
71.「ウイークエンドはパリで」10月20日  ***
 : 子育ても終わり、定年間近なイギリス人の夫婦が結婚30周年記念にパリに出かけ、様々な心の揺れを描く作品。残された人生をどう過ごすか、夫婦の絆・家族の絆は?脚本が良く練りこまれており、完成度の高い作品。
72.「リスボンに誘われて」10月20日    **
 : スイス人の教師がふとしたきっかけで独裁政権下のポルトガルでレジスタンス運動に参加した若者たちに興味をもち、リスボンに行き、当事者たちに面会し、事実を突き止めていくというミステリー仕立ての作品。
73.「まほろ駅前狂騒曲」10月21日     **
 : まほろ駅前で便利屋を営む二人の若者を中心とする物語。現代の世相を上手く切り取ったエピソードを重ねて作られた作品。観終わった後に残る印象が悪くない。
74.「不機嫌なママにメルシイ」10月27日  **
 : 本人も家族も「オカマ」だと思っていた息子が、実は「オカマ」ではなかったというストーリー。フランスで大ヒットした作品。フランス人の「笑いのツボ」を研究するための好作品。
75・「祝宴!シェフ」11月7日          **
 : 台湾映画。借金返済のために料理経験のない鉄人の娘が、亡き父の料理を思い出しながら、全国宴席料理大会に出席し優勝賞金獲得を目指すという物語。3鉄人を登場させ中国料理の神髄(宴席料理と家庭料理)だけではなく、人生哲学も交えて物語にふくらみを出している。笑いが多いのも良い。
76.「マダム・マロリーと魔法のスパイス」11月7日  **
 : フランスの片田舎にあるミシェラン一つ星のレストランの前に、インドからやってきた一家がインド料理レストランを出すところから物語が始まる。映画の出来栄えは合格レベルに達しているが、物語展開がやや単調・笑いが乏しいため「祝宴!シェフ」に軍配を挙げる。
77.「イコライザー」11月10日         **
 : ワシントン演じる凄腕の元CIAエージェントが主役のアクション映画。相手を瞬殺する圧倒的な格闘力が売りのアクション場面が新鮮で楽しめる。
78.「福福荘の福ちゃん」11月14日     **
 : 女の子にもてない歴30数年の主人公福ちゃんを取り巻くほのぼのとした人間模様を描く作品。
79.「天才スピヴェット」11月17日      *
 : アメリカの片田舎の牧場で育った10歳の少年がスミソニアン協会主催の賞に応募し、永久機関の図面で見事に賞を射止めるというストーリー。少年の育った環境・貨車に無賃乗車してのワシントンDCまでの旅・受賞スピーチとその後のマスコミの過熱取材。ユーモアを進行のつなぎにしているところが良い。
80.「100歳の華麗なる冒険」11月18日  ***
 : 100歳の老人を主人公に養老院からの脱出後の冒険に100年間の人生の冒険を重ねて描いた作品。その人生が世界史になっており、ユーモアたっぷりにストーリーが展開するこじゃれた映画になっている。
81.「エクスペンダブルズ3」11月18日   **
 : シリーズ第三弾。ストーリーよりもアクションという趣旨で愉しく見れる作品に仕上がった。
82.「愛しのゴースト」11月20日
 : タイで歴代興行収入一位をあげている作品。作品としては完成度は低く、出来がいいとは言えないが、タイ人のメンタリティを理解するには良い映画。
83.「西遊記」11月25日            ***
 : ストーリーも良く練りこまれ、特撮も素晴らしく、完成度の高い娯楽映画に仕上がっている。
84.「6才のぼくが大人になるまで」11月25日  ***
 : 主人公の少年が6才から大学生になるまでの12年間をその家族をふくめて実際に12年かけて撮影したという稀有な映画。監督が脚本も担当、ストリーも良くできており、素晴らしい映画になっている。
85.「フューリー」11月28日          ***
 : 今年度アカデミー賞最有力候補と宣伝している作品。第二次大戦末期、アメリカ軍の一台の戦車がドイツ軍の大軍に立ち向かいその進軍を食い止めたというストーリー。良くできた戦争映画だが、観終わった後、作られた感が強く残った。
86.「インターステラー」11月28日      ***
 : 地球の気候変動による食糧危機により地球は滅亡の危機に直面する。人類が宇宙に移住し生き延びるために適した星を求めて最後の探索隊が派遣される。総合的な映画の出来栄えは「フューリー」より上。相対性理論・ワームホール・ブラックホール・宇宙の特異点・量子力学などの言葉が飛び交うが、監修者に宇宙物理学の権威を起用しているためか、違和感なくストーリーを楽しめた。
87.「寄生獣」12月2日             **
 : 原作漫画の実写版。原作のイメージ道理に実写化に成功しており、楽しめる。
88.「シャトーブリアンからの手紙」12月11日  **
 : ドイツ軍占領下のフランスでレジスタンスによるドイツ人将校暗殺に報復するためシャトーブリアンの収容所の政治犯27人が処刑される前に手紙を書くことを許されるのが、タイトルの由来。人間の誇りと勇気を讃えた作品。
89.「ゴーン・ガール」12月12日       ***
 : 一ひねりも二ひねりもある良く練り上げられたシナリオで上級の娯楽映画に仕上がっている。ミステリー・仮面の夫婦・マスコミの影響力を逆手に取った情報操作の三本柱で組み立てられたストーリー、日本の作家には期待できないエンターテインメント性。
90.「ホビット 決戦の行方」12月16日   **
 : 「ホビット」三部作の完結編。さすがに最終作であり、三部作の中で一番の出来。戦闘場面が多く、かつ力が入っており、見ごたえもあった。
91.「チェイス」12月17日           **
 : インドの娯楽映画であり、歌あり踊りありの基本形は変わらないが、その中身・スタイルが世界レベルに進化。
92・「物語る私たち」12月19日        ***
 : カナダの女性映画監督の作品。自分自身の家族の歴史をたどるドキュメンタリー映画を撮るうちに自分が父の子でないという真実に出会い、今は亡き母の秘密にたどり着く。この映画の魅力は、それぞれの家族(父は脚本家・俳優、母は女優、実父はプロデューサー)に自由に語らせて家族の全体像を観客にイメージさせ、家族とは何かに迫っていく点とドキュメンタリー映画における真実とは何かという点を同時に描いている点。家族の秘密がわかった後の父と娘(監督)の関係が爽やかでかつ温かく、気持ちの良いエンディングになっている。
93.「バンクーバーの朝日」12月22日    **
 : 戦前バンクーバーに実在した日本人2世の野球チームを取り上げた作品。映画の主要テーマは、体力の勝る白人チームに如何に日本人チームが立ち向かうかということと、より重要なのは日本人への差別が強まる環境下で差別にどう立ち向かうか(日本人1世と2世、日本人とカナダ人、カナダ人同士)を複眼的に描くこと。作品全体をロー・キイ(声高にならずに抑えて)で描くことによって、監督の伝えたいことを観客に受け入れさせることに成功している。
94.「郊遊(ピクニック)」12月24日
 : 観る人によって良否の評価が大きく二分される台湾映画。全体としてセリフが少ない上に、無言でかつ動きのほとんどない無意味とも思えるロング・ショットが多用され、何を伝えたいかが分からない駄作と判断する。
95.「ブリキの太鼓」12月26日   ***
 : ディレクター・カット版で3時間弱の30年以上前に制作された作品。ナチス台頭化のポーランドを背景に「差別」と「男と女」を主要モチーフに「人間の本質」に迫る。主人公に3歳で成長が止まり、常にブリキの太鼓を手放さない男の子を据え、21歳になるまでの舞台回しをさせているのも秀逸。映画全体としてのまとまりも良く、現在でも全く古い映画とは感じさせない。歴史的名作との評価が高いのもうなずける。
96.「みんなのアムステルダム国立美術館へようこそ」12月27日 ***
 : 2003年から2008年までの5年間をかけて全面改装する予定だった美術館が、改装に10年間を要してしまった顛末を描くドキュメンタリー映画。外部との関わりでは、1日に1万人以上のサイクリストが美術館内の道路を利用していたためその利便性を守るべきだとの強い主張との折り合いをどうつけるかという民主主義の問題、許認可を巡る役所の官僚主義、内部的には意思決定者の優柔不断、意思決定者・設計者・施行業者・工事管理者とのコミュニケーションの拙さを遅れの原因として取り上げる。そして当然美術館である以上、展示室のデザイン・色彩・展示方法・膨大な数の展示品から何を選んで展示するかなどの内幕も紹介。観終わっての総合的印象として残るのは、「何事も結局は人間がやることであり、何をやってもやる人間の個性・能力が出る」ということ。
97.「毛皮のヴィーナス」11月30日  **
 : 「マゾヒズム」の語源となったマゾッホの自伝的小説に着想を得て書かれた古典劇の映画化にポランスキー監督が妻である実力派女優のエマニュエル・セニエとマチュー・アマルリックを起用して挑戦する。倒錯した劇の世界と現実の世界の境界が消えていく不思議な体験を観客に突きつける。

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