「藤田嗣治展」を観る
5月16日「藤田嗣治展」に行った。藤田嗣治の生誕120年を記念し、約100点の作品を集めた大規模な展示会である。
展示は作品を三期に分けて行われている。
第一期がエコール・ド・パリ時代。藤田をパリ・サロンの寵児とした「すばらしい乳白色(かってない透き通った白い肌)」特徴とする画風の時代。
第二期は中南米そして日本。鮮やかな色彩と豊かな量感の画風と戦争画の時代。
第三期が日本を脱出し再びパリに戻り、カトリックの洗礼を受けフランスに帰化した時代、画風としては20年代の「すばらしき乳白色」と30年代以降の豊かな色彩が溶け合った時代。
「藤田嗣治展」東京国立近代美術館、2006年3月28日~5月21日
* 独断と偏見
藤田の絵を見て考えさせられたのは「画家の眼」について。まず感じたのは「画家の眼の良さ」。人体・表情・色彩・陰影等々実に鋭く対象を捉えているという印象。しかし、藤田の画風は変化している。何故か?描く対象そのものがそのような変化をしているはずはない、だとしたら、変化しているのは「画家の眼」だ。つまり、画家は、「画家の眼」を先に「創り上げ」その「創り上げた眼」で見た対象をえがいているのだ。
ここまで考えたところで「アレッ!誰かそんなことを、ズット深く・鋭く言っていたなあ。」と思い出してしまったのだ。「見る脳・描く脳」という名著なのだ。是非直接読んでその醍醐味を味わっていただきたい。うろ覚えで要約すると「絵画の革新の歴史は、脳科学の発達に先立ち、脳の認識パターンを把握した画家が、その認識の眼で絵を描き新しい画風を開拓してきた歴史である」。
引き続き、その映像版といえるのが「脳内イメージと映像」であり、これも名著。
* お勧め本
「見る脳・描く脳」岩田誠、東大出版、1997
「脳内イメージと映像」吉田直哉、文春新書、1998