« 第二回「フランス“持たざる者”たちのネットワーク」 | メイン | 神田・神保町古書街 »

「風邪の効用」を読む

 本書は1962年に全生社より刊行されたものを、再販文庫化したものである。
 今日でもそうであるが現代医学は、風邪を病気として捉え、その症状に焦点を当て、その症状をなくすこと=回復と考え、それを医療行為の目的としている。
 これに対し、著者は全く異なった見解を述べる。著者によると、風邪の原因は、「偏り疲労、もっと元をいえば体の偏り運動習性というべきもので、その部分の弾力性が欠けてくることにある」。「風邪を引くと体の方々の偏り運動が調整されて、硬張った筋肉が弾力性を回復してくる」。「それで、私は風邪は病気というよりも、風邪自体が治療行為ではなかろうかと考えている」。
 「風邪の効用」野口晴哉、ちくま文庫、2003

 「それぞれその人なりの風邪を引くと、その偏って疲れているところがまず弾力性を回復してきて、風邪を経過した後は弾力のあるピッチリした体になる」。
 「だから風邪というものは治療するのではなくて、経過するものでなくてはならない」。「大概の人は風邪を引くような偏り疲労を潜在させる生活を改めないで、風邪を途中で中断してしまうようなことばかり繰り返しているのだから、いつまでも体が丈夫にならないのは当然である」。
 さらに「風邪を経過する治るということでも、引くことと同じように心理的分子が非常に強く働いているので、それを処理しないと(整体だけで)風邪のとっぱなを治すことは非常に難しくなるのです」。
 「一旦方向づけられたら、意志がどんなに努力してもその空想には勝てない。結局空想が方向づけられた方向に体の動きは行ってしまうということです」。
 「風邪のような場合でも、そういう心理的なものの処置の方法はいろいろあって、難しい問題がたくさんありますが、--- ともかく空想を方向づけるということを憶えて頂きたい」。
 * 独断と偏見
 ・ 著者は、整体で顕著な実績をあげている。
 その最大の理由は、本書にも示されているように、“心身一体”という人間観がもたらす、心身統合・要素還元を否定する全的アプローチであろう。
 「ガンのセルフ・コントロール」を読むでも述べたが、心身二元論・要素還元論にもとづき局部的症状のみに眼を向ける現代医学が、心身一元論にもとづく医学に大きな実績の差をつけられるのは、当然なのである。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://yosim.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/2112

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)