« 第四回「インド・ケーララ州の社会運動と地方分権化」 | メイン | 横浜・伊勢崎町古書店 »

第一回「カンボジアの人々が主役!シェアの国際保健協力活動」

 第一回は、シェア(国際保健協力市民の会)のカンボジアでの活動内容の紹介。
 セミナーの前半は、カンボジアの地理・歴史・人々の暮らしぶりなどが沢山の写真にくわえ、カンボジアについてのクイズなども交え分かりやすく説明された。
 後半は、シェア・カンボジア事務所の活動の現地での位置付け・役割・具体的な内容が報告された。
 活動の基本は、「カンボジアの人々が主役!」でを理念に、自立して、保健の向上のための目標・施策・それを支える組織・人材つくりを行えるようにすること。
 カンボジア事務所の活動は、プノンペンの北東約50kmの農村地帯で、病院や保健センターへの支援、学校でのエイズ教育、人材育成などを柱に展開されている。
 講師: 植木光 元シェア・カンボジア事務所プログラム・アドバイザー   2006年6月10日

 開発途上国の保健領域の共通の課題である、保健知識の欠如による高疾病率、乳児ならびに母親の出産時高死亡率、家族計画の不備から来る多産と貧困の悪循環などに着実に取り組み成果を上げつつある活動内容が報告された。
 特に印章に残った2~3の取り組みを紹介すると、1)家族計画のための性教育:歴史的・文化的背景から学校で先生がこうしたテーマに取り組むことは、当初到底不可能と思われていたが、その必要性を粘り強く説明し、広く実施されるに至った、2)HIV・エイズ教育:これは今回のセミナーで参加者も実際に経験させてもらったが、ロール・プレイで細胞・白血球・細菌・HIVウイルスの役を演じながら免疫機能とHIVを理解させるというエイズ教育を実施している。また、感心したのは、学校で子供たちに教育を行い、子供たちに家に帰って家族にその知識を伝えさせ教育の普及・徹底を図っていること。
* 独断と偏見
 ・ 国際協力の最も成功している実践例の一つとして感銘を受けた。
 ・ 報告を聞いて、このプロジェクトは「成功するべくして、成功している」と判断した。
 理念: カネだけ出す(そのカネが何に・いくら本当に使われているか把握せずに)、ヒモ付きで箱物だけ作るという多くのODAプロジェクトの悪弊の対極に立ち、「カンボジアの人々が主役!」=「自立・継続」を基本としている。
 人材育成が施策の柱: 保健向上の目標設定,施策の計画・実施ならびに教育を行うのは全て人。保健向上の鍵を握るのは「人」との的確な認識を持ち、活動の柱を人材育成に置いている。
 現地のニーズ/シーズの的確な把握と対応: 失敗するプロジェクトの一つのパターンは、現地のニーズ/シーズを無視し、たとえば日本のやり方をそのまま押し付ける。先の教育の例でも具体的なやり方はカンボジア人スタッフのアイデアを引き出している。また、医療技術の面では、近代的医療機器などない中で田舎の医療従事者にも出来ることにポイントを置き教えていることなどである。
 現地の人に受け入れられるデリカシー: 現地の人の誇りを傷つけることなく、尊重しながら、教えるべきことは教え、水準を上げている。
 自立させるということは、「現地の人だけで、魚を釣れるようにする」ということ。そのためには、「魚の釣り方を教えるために、釣ってみせる」のはいいが、「最後まで自分で魚を釣りつづけてはいけない」。この基本が徹底した取り組みになっている。
* 独り言
 ・ 講師の植木光さんは、1)国際協力の基本理念、2)保健衛生のエキスパートとしての能力(現地のニーズ/シーズを的確に把握、目標設定・施策・人材育成の計画と実施に結びつける)、3)人間力(現地の人たちの信頼を得、リーダーシップを発揮)の三拍子そろった得難いリーダーとお見受けした。
 ・ 植木光さんのような人たちが今回紹介されたようなやり方で国際協力活動を推進すれば大きな成果が上がり、対象国の人たちからも深く喜ばれるに違いない。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://yosim.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/2125

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)