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第六回「ドイツの市民団体ADFCの挑戦」

 第六回は、「自転車で街を駆け巡る!ドイツの市民団体AFDCの挑戦がテーマだった。
 講師は、交通分野が環境問題と交通事故という社会的に深刻な問題がクロスする場であり、また温暖化の原因となるCO2のここ数年の排出量増加の最大の要因は自動車にあるとの認識から、自動車に替わるオルタナティブの一つとしての自転車に注目したと述べる。
 ・ まず、ヨーロッパの交通市民運動の取り組みが簡単に紹介された後、具体例として、ADFC=「社団法人・一般ドイツ自転車クラブ」を取り上げその活動が紹介された。
 講師: 東京歯科大学助教授 清水真哉、2006年9月5日

・ ADFCに先立ち、1975年に「緑のサイクリスト」という集まりが活動を開始した。交通専門家のヤン・テッペ氏が、連邦規模の自転車ロビーの必要性感じ、尽力を行い、1979年ブレーメンに本部を置いて
ADFCの設立にこぎつけた。
 現在は、ドイツ全16州に支部を有し、会員数11万人、3~4千人の活動家(ツアーのリーダーになったり、旅行の相談に乗ったりする)を擁している。
 ADFCの活動は、大別すると、1)ロビー活動と2)会員へのサービス活動などの独自の活動になる。
1)ロビー活動:
 行政・自治体とのかかわりの基本スタンスは中立。
 連邦レベルでは、1998年から2005年の社民党・緑の党の連立政権下で、自転車交通の国家戦略
「国家自転車交通計画2002-2012自転車に乗ろう」制定、「鉱油税・地域交通財源法からの自転車道・関連設備への支出が認められる(財源確保)」、「通勤控除距離一括制度(税制優遇)」などの成果が上げられた。また、1997年には、道路交通規則が改正され、自転車条項が追加され、自転車の安全・優遇交通政策が施行された。
 地方レベルでは、自転車走行環境改善の王道である、自動車走行量の削減・スピードの低減 ・大型車を減らすことに取り組んでいる。市街地での制限速度を30Kmとする「テンポ30」の指定区間が大きく広がった。居住地と職場をダイレクトに結ぶこと、車道上にではなく専用の歩道・自転車道の整備、自転車交通計画・駐輪場の整備なども働きかけ、成果を上げている。
 鉄道会社にもアプローチし、自転車の近郊電車への無制限持込・インターシティ(特急)への持込(90本)も実現した。
2)独自の活動:
 1981年から、「自転車にやさしい都市」を選ぶ全国プロジェクトを展開。
 1983年には「自転車で職場へ」キャンペーンを連邦環境局の助成の下に開始。
 1984年からは、自転車産業との連携を密にし、良質の自転車を入手しやすくするために、自転車見本市で「今年の自転車」を選んで発表。(1999年で終了)
 自転車ステーション(各都市・各駅の貸し自転車業・自転車修理サービス機能を兼ね備えた駐輪場)の運営への協力。
 サイクリング・ツアーの企画・運営。
 自転車道地図の作成と販売。
 ベッド&バイク:自転車旅行者にとっての好都合なサービスに基準を満たした3500の宿泊施設を冊子にして出版。
 会員(年会費個人38Euro,家族48Euro)向けサービスとして、年一回「自転車旅行」という小冊子発行、会報(世界の交通事情、交通政策かかわる記事、各地の観光情報、自転車旅行者向けの旅行情報など)の隔月配布、ツアーや自転車修理講習会への無料あるいは割引での参加、旅行計画のプランニングなど自転車に関するあらゆる問題についての窓口での相談など。
・ 最後にハンブルグでの自転車ルートの制定および建設、1982年に「もっとも自転車に優しい都市」に選ばれ、現在交通需要の自転車が30%を占めるエアランゲンの事例が紹介された。
* 独断と偏見
 第六回は、違和感の残ったプレゼンだった。その原因は二つのアンマッチにある。
 1)講師の生み出したアンマッチと2)参加者の期待とのアンマッチである。
 1)講師の生み出したアンマッチ:
 講師は冒頭で、自転車を取り上げたのは、「温暖化の原因であるCO2のここ数年の排出量増加の最大の要因である自動車に替わるオルタナティブとしての自転車の位置付け」に注目してであるとのべた。
 ところが、その後一切自転車交通政策が温暖化ならびに全体の交通政策にどう影響する課などの話ははなく、「落ちはどうなってるんだよー」という違和感。
 2)参加者の期待とのアンマッチ:
 「海の向こうのオルタナティブ」参加者の期待を集約すると、日本の閉塞状況を打破するための「政策面・実践(運動)面でのヒントを得たい」になるのであろう。
 ところが、プレゼンでは、現象面の話に終始、交通政策・環境政策面で自転車政策がどういうインパクトを与えるのか、あるいは運動面でネットワーク(人材)作り、連邦・地方政府と市民への働きかけにどういう知恵が出されたのが成果に結びつけたのかなど一切なく、期待とのアンマッチが生じた。
 --- このアンマッチを事前に調整・解消し、コースに反映するのが事務局の仕事。
* 独り言
 今回のプレゼン、特に質疑を通じて分かっちゃたのは、今回の講師に政策面(交通、環境)と運動面でのレクチャーアは、知識・経験上無理があるよなー。
 講師も参加者も、満足度を高め、ハッピーにセミナーを終えるためには、自転車オタクを集め、能書き抜きで「海外ではこんな進んでることやってるよー」という軽い乗りでやってもらう(PARC以外のところで)のが一番。
 

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