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「9月度例会」

・ 今回は二つの活動報告が行われた。
 最初が、「ふれあいボランティアパスポートについて」で講師は、さわやか福祉財団・ふれあいボランティアパスポート・プロジェクト・リーダーの有馬正史氏、二つ目が、「横浜市との協働事業について」で講師は、NPO法人ふれあいドリーム理事長の島津禮子氏だった。
* 「ふれあいボランティアパスポート」活動
 ・ 歴史: この活動は四年前にスタートした。目的は子供たち(小・中・高生徒)にボランティア活動に取り組んでもらうこと。そして、その活動を起こすきっかけを作り、かつ活動を記録するために、パスポートサイズのボランティア手帖を作成・配布し、活動後は感想部分のみを回収している。
 「9月度例会」 2006年9月25日

 活動開始後最大の悩みとなったのは、このパスポートは学校の先生を通じて配布・実績管理・回収を行うことから、先生の協力が欠かせないこと。そして、生徒たちのモチベーションを大きく左右するするのが、先生が関心を持ってくれ、褒めてくれるかどうか。しかし、先生たちは多忙を極めており、この活動になかなか力を入れられないという現実に直面した。
 そこで、子供たちのモチベーションをアイディアがいるということで、活動終了・報告時に自分の選んだ先に寄付をスポンサー企業が出してくれる制度に変更した。
 ・ 活動状況: 2005年は約70校8500人が参加、2006年はこれまでのところ(9月スタート)40校5000人が参加している。
 生徒にとってのモチベーションは、相手から「ありがとう」と感謝の言葉をかけられること、街の清掃などは「きれいになったという達成感」が共通。
 先生の協力も深まる傾向にある。
* 「横浜市との協働事業」について
 ・ 背景: 昨年講師の住むドリーム・ハイツを含む約30箇所で横浜市戸塚地区懇話会が実施され、住民の困りごとの吸い上げが行われた。この結果、各地区共通で、1)居場所がない(定年退職後)、2)相談するところがない(育児、介護もろもろ)、3)情報がほしい(子育て支援、給食サービス、ケア・マネージャーなど)の声がそれ例外に圧倒的な差をつけて大きかった。
 ・ ふらっとステーション・ドリームの発足:
 そこで、ドリーム・ハイツの住民で話し合ったところ、市の助成が得られなくても自分たちでこれらに取り組もうという機運が盛り上がり、たまたま商店街の一角に空き家が出たところから、話が具体化した。
 活動としては、上記ニーズに応えるため、1)居場所作り(飲み物、ランチの有料提供)、2)各種相談3)情報提供(市からも来てもらい)を行うこととした。
 運営は、すでに活動を行っていた3NPO(介護・ふれあい活動、高齢者サロン・予防デイ活動、高齢者向け食事サービス活動)が協働で行うこととし、人手はボランティアでまかなっている。
 最大の問題であった費用(家賃・改装費・電気・ガス・水道代など)は、有志の出資と売り上げでまかなうこととした。
 昨年の12月に、市の助成をあてにせずに見切り発車で「ふらっとステーション・ドリーム」をオープンした。その後、市の助成を申請し、認可を受けたため、2006年4月より市との協働事業に切り替えて運営している。
 利用者は、スタート時、昨年の12月は400名台、2006年7月からは1000名を超え、増加中であり、利用者にも好評で、期待以上の利用状況である。
 このため、収支面でも、飲み物・ランチなどの売り上げで、ほぼ費用をまかなえるまでになっている。
 また、ドリーム・ハイツ内にある障害者の作業所で働く人たち週一回来てもらい、一緒にランチを食べている。そうすることにより障害者に目に見えて社会化が起こり、はっきり成長しているのがわかる。
 また、この作業場で作っている製品をこのステーションで売り、障害者の収入を増やす一助としたい。
 将来に向けての課題: 市の助成は最大2年で打ち切られるため、その後どうするか。最終結論ではないが、基本的な方向としては、事業化し、コアに人はキチンとお金を払って、やっていけるようにして行きたい。
* 独断と偏見
 ・ 「ボランティア・パスポート」:
 生徒にとって最大のモチベーションは、「先生の褒め言葉」。これ自体は当然のことであるが、日本の場合その背景を分析すると、日本特有の問題が浮かび上がる。
 日本特有の問題とは、1)学校で褒めてもらえるのは、勉強と運動の良くできる子だけ、2)先生が生徒の一人の個性・人格をしっかいりと把握・認識していない(英語でいうところのrecognitionの問題)ということ。
 これは、日本の教育の根幹の問題である。
 1)は、人間を評価する何を物差しとするか、すなわち価値観の問題である。日本の評価軸は圧倒的に勉強軸、大分差があって次が運動軸。私が実際に経験したイギリスの例でいえば、評価軸は限りなく多様で、キチンと挨拶が出来る、後片付けがうまい、親切・やさしい、歌がうまいなどなどと続き、勉強が出来ることは、それらと同等レベルの一つの評価軸に過ぎない。
 2)は、教師の仕事とは何かの基本にかかわる問題。教育の目的が生徒一人一人の個性・潜在能力を最大限に伸ばし、自立できるようにすること、にあるとするならば、教師の仕事の出発点は、生徒一人一人に暖かく・かつ鋭い目をそそぎ多面的な物差しで評価し,それを生徒とコミュニケートすることであろう。
 ・ 「横浜市との協働事業について」
 ドリーム・ハイツの活動で関心したのは、住民たちの基本スタンス。「自分たちにニーズがあるなら、行政などに頼らなくても自分たちでやろう」という自己完結型の自立精神と実践力。
 この原動力となっていると思われるのは、ハイツで新たなニーズが生じるたびに、保育所開設から始まった自分たちで解決するという活動の積み重ねの実績。
 現在10のNPOが活動し、住民6000人の内ボランティア活動に運営責任をもって参加している人130人、メンバー530人と、住民の約一割がボランティア活動を行っているというボランティア活動超先進地域なのだ。
 また、一番感銘を受けたのは、作業場で働く障害者を週に一回ランチに招き、みんなと一緒に食事をとっていること。これにより、障害者は社会化の機会を与えられ、地域の住民に暖かく見守られながら、着実にに障害者が成長している。
* 独り言
 ・ 安倍新内閣が発足し、「教育改革」を目玉とするとのアドバルーン打ち上げられている。
 「教育改革」の本筋は、生徒の一人一人の個性・潜在能力を最大限伸ばし、自立能力を付けさせること。
 生徒にとっても、日本にとっても、求められているのは、「金太郎飴」人間ではなく、個性豊かな「桃太郎軍団的」異能・異才人間なのだ。
 ・ ドリーム・ハイツの活動報告を聞いて、嬉しくかつ希望を見出せたのは、日本がこれから進むべき道が、現実になっている、ということ。
 共生社会の輪を大きく・強いものにしていくことによって、日本は活き活きとしかつ調和の取れた社会になっていくだろう。

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