« 2016年読書目録(10~12月) | メイン | 2017年「寄席鑑賞」 »

2017年映画鑑賞

1.「ヒトラーの忘れ物」1月2日  ***
 : 原題「LAND OF MEIN」(地雷原」。第二次世界大戦時、デンマークの海岸への連合軍の上陸を恐れたヒトラーの命令により、220万個の地雷が設置された。終戦直後、デンマーク軍は、この地雷除去作業を捕虜となったドイツ兵に担当させる。この映画では、22000個の地雷が敷設された海岸の地雷除去を、デンマーク人の古参軍曹が10人のドイツ人少年兵を監督して行うというストーリー。最初の出会い時の憎しみが、様々なエピソードを通じて、人間的交流に発展していく様子を上手く描いた作品。
2.「ヒチコック/トリュフォー」1月3日  ****
 : フランス人の新鋭監督トリュフォーがヒチコックにその作品の制作意図・用いたアイディア・技術などを自ら解説するインタビューを申し入れて、ヒチコックが快諾して5日間の会見が実現。その内容を1966年出版、以後この本は映画監督たちの「映画製作のバイブル」となる。この映画は、この本の紹介に加え、10人以上の映画監督のヒチコック作品についてのコメントを紹介、素晴らしいヒチコック映画解説になっている。

3.「彷徨える河」1月10日  ***
 : 舞台はアマゾンの奥深いジャングル。重病にかかったドイツ人民俗学者が、侵略者によって滅ばされた先住民の村で一人生き残り孤立して暮らす若者を訪ねてくる。病気の回復を「ヤクルナ」という聖なる植物の発見にかけて。若者は最初は協力を断るが、最終的には同意して「ヤクルナ」探しに同行する。数十年後年老い記憶も失いかけた若者を「ヤクルナ」を求めてアメリカ人民俗学者が訪ね、協力を依頼する。映画では、この二つの「ヤクルナ」探しの旅が交錯し、アマゾン最奥のジャングル、そこに暮らす原住民の暮らしが鮮やかに描き出される。
4.「世界の果てまでヒャーハー!」1月10日  **
 : パリに住む若者たちがそのうちの一人の娘の父親の経営するブラジルのリゾートホテルを訪ねるというドタバタ映画。
5.「アイヒマンを追え」1月13日  ***
 : 戦後十数年を経過しても逃亡したナチ戦犯を追い続ける州検事長を主人公とする物語。政治的配慮・思惑から捜査に協力的でない(時に妨害)首相・連邦検察局などをものともせず、国家反逆罪にリスクを冒しても戦犯を追い、ついにアイヒマンをアルゼンチンで逮捕するに至る物語。
6.「私の少女時代」1月16日  ***
 : 台湾で爆発的大ヒット、韓国でも大ヒットした台湾の映画。青春時代をその大事な要素を上手く抑えて、優れた脚本が月並みになりがちなストーリー展開を、観客の共感を得られるレベルに高めることに成功。
6.「ネオ・デーモン」1月17日  **
 : ロスアンゼルスに田舎からモデル志望でやって来た16歳の少女を主人公とする映画。少女はそのオーラを醸し出す美貌で多くの先輩を押しのけトップ・モデルへの道を駆け上がる。中盤までは少女の美しさと・モデル界事情を凝った映像で映し出す。終盤にむけてどういうストーリー展開になるのかと見ていたら安直な猟奇物になってしまった。
7.「アイ・イン・スカイ 世界一安全な戦争」1月17日  ***
 : ケニアでのテロリストの活動を阻止するため、英米の共同軍事作戦が展開される。しかしこの軍事作戦は、英国内の軍事基地(作戦統括を担当)と米国内の軍事基地(無人スパイ機の運用を担当)とケニア軍(現地の地上からの監視・テロリストの捕獲を担当)を結び行われる。この映画のクライマックスはテロリスト集団リーダー3人とこれから自爆テロに向かう2人のテロリストが同じ隠れ家にいるのを発見するという千載一遇の機会を得、捕獲作戦を殺害に切り替えるべきか、そうした場合隠れ家の外でパン売りをする少女を巻き込む恐れが強い。このジレンマをどう決断するか、文官優位のイギリス文官はどんな判断を下すのか。現代の戦争とイギリスの文官優位の実戦でのあり方を鋭く描いた力作。
8.「沈黙」1月22日  ***
 : 遠藤周作「沈黙」の映画化。原作に忠実な映画化であり、「日本の風土にキリスト教は根を下ろせるか」という難しいテーマの映像化に成功した力作。地味な映画なのに8~9割の観客が入っているのが意外だった。
9.「ある戦争」1月24日  ***
 : アフガニスタンでタリバン掃討作戦を指揮する隊長が主人公。タリバンは民衆の間に入り込んでゲリラ的戦いをするので、そこに掃討作戦の難しさがあることを的確に描いている。そして故国で帰りを待つ妻と子どもを描き、家族にとっての父親の不在のもつ意味も併行的に描く。ある夜、タリバンのロケット砲攻撃を受け、負傷した部下を救うため、ロケット砲が発射されると思われる方向への空爆を要請する。この結果部下は助かるが、民間人12名が死亡する。これを裁くため、軍事法廷が開催されーーーー?
10.「幸せなひとりぼっち」1月24日  ***
 : 59歳で半年前に最愛の妻を亡くし、おまけに会社も首になり、頑固で人付き合いの下手な主人公。妻の後を追い、自殺を図ろうとするが、そのたびに邪魔が入る。そして、隣に越してきたイラン人家族との付き合いなどがどんどん広がり、妻のもとに逝くのが延び延びになってーーー
11.「湾生回家」1月27日  ***
 : 「湾生」とは、日本統治時代に台湾で生まれた日本人のこと。大半の湾生は終戦で日本に帰るが、一部は台湾にとどまる。彼らは日本に帰っても異邦人として違和感をもち、台湾に憧れる。こうした湾生たちと台湾の人々との交流を描くドキュメンタリー映画。こんな関係が存在するのかという、うれしい感動を与えてくれる力作。
12.「エリザのために」1月28日  ***
 : カンヌ映画祭監督賞受賞作品。ルーマニアの現在の思想を上手く物語に取り込み、リアリティと厚みを増すことに成功している。主人公は、1990年代の民主化に期待し、国外から祖国に戻って来た外科医師。一人娘のエリザを、将来の見えない母国から海外に留学させて、幸せになれる道を用意してやろうと努力している。そして、留学を決める試験の前日、エリザは強姦未遂の事件に巻き込まれる。初日は動揺のため、留学合格の点に達しない。父親はコネを頼り、事情を説明し、試験結果に手心を加えてもらう約束を取り付ける。そして、それをエリザに告げる。エリザが選んだ結論は?
13.「ドクター・ストレンジ」1月30日  ***
 : 神の手を持つ天才外科医ドクター・ストレンジ。傲慢で上から目線、しかし、自動車事故で大けがを負い、あらゆる手を尽くすが、手術ができるまでに回復しない。しかし、脊髄損傷で絶対に歩行できない患者が、奇跡的に回復した例が一つだけあると聞き、会いに行く。そこで教えられたのは、ネパールに行けということ。絶対的師に弟子入りして、時空を超えた力を修行で身に着けていったその先にあったのはーー?
時空を超えた力を上手く映像化することに成功し、上質のエンターテインメント映画に仕上がっている。しかし、意識(無意識含む)の映像化は課題。
14.「ザ・コンサルタント」1月31日  ***
 : 世界の闇世界の大物たちのマネーロンダリングを含めた金の流れを管理するコンサルタント(会計士)を追う財務省捜査官。大物たちが逮捕されても謎のコンサルタントは正体を現さない。異色の若手女性が捜査官に起用され、その正体に近づいていく。そのコンサルタントは、自閉症で軍人の父親に身を護るための数々の特殊能力を身につけさせられた会計士。主人公が異色のキャラクターのアクション映画として成功している。
15.「恋妻家宮本」1月31日  ***
 : 原作は、重松清「ファミレス」。大学生時代に「できちゃった婚」した夫婦が50歳(結婚27年)、一人息子は結婚して家を出ていき、初めての二人きりの生活が始まる。ふとしたきっかけで、本に挟まれた妻の署名入りの離婚届を発見する。二人の間の微妙な空気に、主人公(中学教師)の学校での教育問題、他の家庭の夫婦関係・嫁舅問題など多くのテーマを入れ込んでストーリーの幅と厚みを加えているのは、さすが重松清。
16.「マグニフィセント・セブン」2月1日  ***
 : 「七人の侍」「荒野の七人」を下敷きにした新作。物語のストーリーは、決まっているので、楽しみはどういう展開で話を進めていくか。楽しんでみられる映画に仕上がっている。
17.「The Net」2月4日  ***
 : 北朝鮮の韓国との国境沿いで漁業で暮らしを立てている主人公が、網がボートのエンジンに絡みつき、南に流され逮捕されて、ソウルでスパイの嫌疑で取り調べを受ける。脱北者なのか、スパイなのか、単なる偶然で韓国に流されたのか?やっとのことで、嫌疑がはれ北朝鮮に戻った主人公を待っていたのは、またもや過激な取り調べであり、家族のもとに戻ることができたもののーーーー?リアルに南北朝鮮の今を描く力作。
18.「アラビアの女王」2月6日  ***
 : 原題「The Queen of Dezert」。実在の人物をモデルとした作品。時代は、第一次世界大戦前夜。オスマン帝国の支配下にあった中東地区はアラブ諸民族が入り交じり戦いと友好関係を結ぶ複雑な政治状況下にあった。このため大戦後にこの地区の植民地化を狙う列強諸国の中にも、現地事情を熟知している人間はいなかった。主人公は、イギリスの富豪の家に育ち、オックスフォードを首席で卒業したという才色兼備だが、砂漠に憧れ、現地人を雇い、アラブ地区を調査、部族間の関係、その風俗習慣、リーダーの力量性格などを知り尽くし、アラブ世界で尊敬を集める存在になっていく。そこで、大戦後列強がいくつの国に分割し、どこに国境線を引き、誰をその国のリーダーとするのか、主人公にアドバイスを求めた。インドでの初恋の相手との出会いに時間を割きすぎとの印象はあるが、当時の列強とアラブ民族の実態をエンターテインメントとして、バランスよく見せる作品。
19.「ミス・ぺリグリンと奇妙な子どもたち」2月7日  ***
 : 奇妙な=特殊な能力を持った子供たちと彼等をを護る教師(ミス・ぺリグリン)を描く実写版物語。全体としてはかなりのレベルの完成度に達した作品なのだが、今一つ何かが足りない感が残る。
20.「ショコラ」2月9日  ***
 : フランスで大ヒットした作品。事実に脚色を加えて映画化された作品。かっては一世を風靡した道化師が、時代の流れで芸風が古くなり、今やドサ周りの境遇に甘んじている。そこで、起死回生の一手として、黒人を相棒(フランスで初めて)として新機軸の出し物を考える。その相棒に選ばれたのが「ショコラ」。黒人の肌の色=チョコレート色から名づけられた芸名。その斬新な演出で二人は大当たりをとり、ドサ周りから一躍パリの人気芸人となり、破格のギャラを得るまでになる。その人気と高収入に浮かれて数年間を過ごした「ショコラ」はある日、道化の自分の役が、白人の黒人蔑視に迎合するがゆえに受けていることに気づき、道化の道をやめ、シェイクスピアの「オセロ」に挑戦する。それに対する観衆の反応はーーー?
21.「たかが世界の終わり」2月14日  ***
 : カンヌ映画祭グランプリ受賞作品。12年前に家を出て、34歳になった主人公が初めて実家に戻る。もうすぐ死ぬと家族に伝えるために。彼を待っているのは母親、兄と初対面の妻、妹の4人。家族は御馳走を用意して歓迎する。家族は愛し合っているのだが、ちょっとした言葉のやり取りでいがみ合いが起き、気持ちが伝わらず、苛立ちと孤独感を抱くという人間関係の難しさを鋭く描く。ほとんどのカットが登場人物のアップと台詞で成り立つという構成で、台詞以外の表情にも大いに語らせるという手法が成功している。
22.「侠女」2月17日  ****
 : 1971年台湾作品。3時間を超える大作。黒沢映画を彷彿とさせる、ストーリー、演出、殺陣、効果音、カメラ・アングルなど、非常に完成度が高く、45年前の映画だが少しも古くない。
23.「素晴らしきかな、人生」2月27日  ****
 : 主人公は、カリスマ的な広告企業の創業者。会社は順調に発展していたが、2年前最愛の娘がガンで6歳で死んで以降、仕事が手につかない。このため、売り上げの約半分を占める有料顧客が、取引中止を申し入れてくる。同時に、会社を買収したいというオッファーがくる。一緒に会社を立ち上げた幹部社員が、この提案を受け入れるよう説得しようとするが、話を聞こうともしない。そして、主人公は、「愛」「時」「死」に手紙を書く始末。それを見て、同僚が打った手は、------?知的で・お洒落な作品。エンディングのひねりも良い。
24.「ラ・ラ・ランド」2月28日  ****
 : 良くできたミュージカル。今年のアカデミー賞を惜しくも逃した。ミュージカル色は最初と最後を中心に強め、中間は、主人公の恋物語を中心に展開する。この作品でアカデミー賞主演女優賞を獲得したヒロインは、ダンスの切れ、ソロの歌、全般的な演技と納得の熱演。エンディングは、賛否両論が出るだろう。
25.「バンコクナイツ」3月1日  ****
 : バンコクの日本人飲み屋街(タニヤ)を舞台に、そこで働くタイ人女性と日本人(タイに住み着いた)の事情を描いた作品。中盤でヒロインの出身地のカンボジア国境近くの町の様子を描くことで、家庭事情、タイ人の日常生活、考え方、カンボジア・ベトナム・ミャンマーの列強が入れ替わっての戦争・避難民が入り交じった複雑な東南アジアの歴史が語られる。日本人に対するタイ人ホステスの本音、タイに住み着いた日本人の実態を含め、厚みのある映画に仕上がっている。
26.「彼らが本気で編むときは」3月4日  ****
 : 離婚し女手一つで11歳の娘を育てる母親に、ネグレクトされる少女。母親の弟のところに預けられるが、そのパートナーは、心は女で見かけは男に生まれ、手術で体も女に転換した性同一障害者。その悩みと周囲の無理解・暴言・差別の実態をユーモアを交えながら鋭く描く力作。
27.「海は燃えている」3月6日  ***
 : 第66回ベルリン映画祭グランプリ獲得作品。舞台は、イタリア最南端=アフリカに最も近い小さな島ランベドゥーサ島。祖父・父もこの島で海に出て暮らしを立てる家に育つ少年とその家族を中心にこの島の平穏な生活とこの島にたどり着くアフリカ・中東からの難民の悲惨な実態を対照させることによって、難民の過酷な姿を浮かび上がらせることに成功している。
28.「皆さま、ごきげんよう」3月6日  **
 : 一般的には、いくつかの話が並行して描かれ、それが交錯していく、洒落た作品ということになるのだろうが、映画を作る側の思い入れが空回りして、観客に届かない作品だった。
29.「アシュラ」3月7日  ***
 : 悪の世界を描く韓国映画。開発ブームに沸き立つ新興都市を舞台に権力とカネの独占を狙う市長とそれに対抗する検察・警察の手段を問わない飽くなき戦い。徹底した暴力・人間の弱さをとことん抉り出す迫力ある映像に圧倒される。
30・「ラヴィング」3月9日  ***
 : 実話にもとづく物語。白人と黒人の結婚が禁じられていた時代のバージニア州で、白人のレンガ職人の主人公が、黒人のヒロインと恋に落ち、結婚を決意する。そこで、人種をまたがる結婚が認められていたワシントンDCに行き、結婚照明を手に故郷に戻る。しかし、それが、警察に知れ、逮捕・裁判になる。裁判で、二人は、刑務所に入るか、25年間の州外追放を受けるかの二者択一を迫られる。ワシントンDCで暮らし始めた二人は、3人の子供を授かるが、子供を延び延びと育てる場所がない生活に疲れ、ホームシックになる。その時、知人がケネディ司法長官に事態の解決を訴える手紙を書くことを勧める。その結果、弁護士が派遣され、裁判に訴えることを提案する。州地裁・高裁で敗訴、連邦最高裁で憲法違反の判決を勝ち取る。
31.「コクソン」3月12日  ***
 : 韓国の小さな村で起きた残虐な連続殺人事件の謎に迫るサスペンス・スリラー。その残虐さ・不可思議さで観客を物語の世界にぐいぐいと引き込む。ストーリーにも色々な工夫があり最後まで前が離せない迫力。
32.「モアナと伝説の海」3月14日  ****
 : ディズニーのアニメ動画。子供向けの作品つくりに徹底することによって、映画として成功している。しかし、シナリオが良くできているので大人も十分に楽しめる作品になっている。地球と人間の成り立ち・共生、リーダーの使命・役割、環境変化に対応する人間の知恵と勇気、恐れを乗り越えてフロンティアを切り開く挑戦、人生に大事な要素が全てメタファーとして盛り込まれている。
33.「お嬢さま」3月16日  ***
 : 「お嬢さま」の財産を狙う叔父と詐欺師入り乱れての争いを、エロティックな味付けを加えてみせる韓国映画。ストーリーが二転三転し、観客を惹きつけて離さない、完成度の高い作品。
34.「雪女」3月20日  **
 : 原作、小泉八雲「怪談」。雪女がマタギの夫と暮らし、子をなし、その成長を見守るうちに、情が移り、夫を殺せずに家を去っていくという、物語の一面は、良く描けている。しかし、そのもう一面の、何人もの人を殺した必然性が描けていないので、ストーリーとして成立していない。
35.「昼ね姫」3月21日  ***
 : 舞台は東京オリンピック直前の瀬戸内の島。ヒロインは、高校生、産まれた直後に母が死んだため、自動車の修理工場をやっている父親との二人暮らしの元気な少女。すぐに寝るのが得意というキャラで、よく夢を見る。そして、ある時、父親が警察に逮捕され、そこからストーリーが動き出す。そして、夢と現実がつながりはじめ、母親と父親の関係も明らかになってくる。ヒロインがその冒険に勇気をもって乗り出し、成長する姿を爽やかに描いている。
36.「愚行録」3月21日  ***
 : 現代社会が抱える問題、格差・虐待(親の暴力・ネグレクト・性的虐待)・他人を踏み台にして自分だけのし上がっていくという風潮。そして、そこで、被害者の立場になって人間の憎しみが生み出す事件を、緻密なストーリー展開で描いた力作。
37.「チア・ダン」3月27日  ***
 : 実話にもとづく作品。福井県の県立高校の弱小「チア・ダンス部」が舞台。県下4校の大会でも負け続ける部のコーチ(天海祐希)が、アメリカ大会制覇を宣言する。アメリカ大会には、日本大会を制覇したチームが参加できる。そして、アメリカ大会のレベルは、とてつもなく高い。この無謀とも思える目標を、3年かけて実現していく過程を描く。観客の満足度も高く、口コミでこの日は満席の大入り。
38.「ブラインド・マッサージ」3月31日  ***
 : 中国・南京にあるマッサージ施療院が舞台。マッサージ師(ほとんどが完全な盲目)の日常・希望・恋愛・盲人から見た健常者とはなど、最後には弱視者の世界の疑似体験映像までふくめて、盲人の世界を鋭く切り取った力作。
39.「ムーンライト」4月3日  ***
 : 今年度アカデミー賞作品賞受賞作。三部構成。第一部は、主人公の小学校時代。口数が少なく、チビの黒人少年がいじめに遭い、偶然麻薬の売人を仕切る黒人と出会う。母親は、麻薬中毒で、家に客を引き込み生計を立てている。第二部は、高校生時代。相変わらずひょろっとした気の弱さで、いじめにあい続けている。そして、思い切り殴られたあくる日、いじめの首謀者を椅子で殴り倒し、警察に逮捕される。第三部は、大人になった主人公。第二部までとは、正反対の外見、ムキムキのマッチョで麻薬の売人を仕切り生計を立てている。作品賞を獲得するレベルの出来ばえではないが、長年のアカデミー賞に対する批判「審査員も全員白人、白人を描いた映画にしか賞を与えない」に応えた「ポリテイカリィ・コレクト」な判断だと推察できる。
40.「パッセンジャー」4月4日  ***
 : 人口をはじめ全てが過剰になった地球から宇宙に移住する人間が増えている時代、舞台はその移住ロケット。地球から移住地につくまで120年かかるため、全員が冬眠している。しかし、装置の故障のため1人が目覚める。しかし、到着まであと90年、これは宇宙船内で人生を1人で死ぬことを意味する。1年たった時、孤独に耐えられず、一人のパートナーとして理想的な美女を目覚めさせる。そして、二人は恋に落ち幸せな時を過ごす。しかし、そのさらに1年後、彼女は彼が彼女を目覚めさせたことに気づき、自分の人生が奪われたことを知り、心を閉ざす。そして、流星との衝突により、宇宙船が大きなダメージを受け、爆発の危機に直面する。二人の協力により危機を脱し、関係を取り戻す。しかし、移住地到着まで88年。宇宙船内の装置で1人だけは冬眠に戻れる。そこで、二人の選んだのはーーー?
41.「シング」4月4日  ****
 : 子供も大人も幅広く楽しめるエンターテインメント映画。一番大切なことは夢をもつこと。そして、その実現のためには、恐れを乗り越えて一歩を踏み出すこと。そして、その実現を決めるのは、他人の評価ではなく、自分の意志であること、というメッセージを明確に伝えてくれる。
42.「キングコング」4月5日  ***
 : 単純なストーリーの楽しく観れるエンターテインメント映画。
43.「午後八時の訪問者」4月10日  ***
 : 恩師が運営する診療所で恩師の病気のため代診するヒロイン。開業時間を1時間過ぎた8時にベルが鳴るが、応答しなかった。そのあくる日、警察が訪れ、昨夜近くで少女が死亡する事件があり、参考のため玄関のセキュリティ・カメラのヴィデオを貸してほしいといわれる。そのヴィデオには死んだ少女が映っており、もし、自分が入り口を開けていれば、助けられたのではないかと自分を責める。身元が判明しないため、身元不明者の墓地に埋葬され、家族は一生それを知らずに待ち続けることは耐えられないと、身元調査に単独で乗り出す。医者の守秘義務を守りながら、少女の身元にたどり着いていく過程を、診療所医師の仕事の紹介を交えながら、サスペンス・タッチで描いた力作。
44.「T2 トランスポッティング」4月11日  ***
 : エディンバラを舞台とする映画。小さい時からの悪ガキで麻薬を手に入れるためには盗みでもなんでもした4人の仲間。仲間を裏切り金を持ち逃げした一人が、20年ぶりに故郷に戻ってくるがもう46歳。3人の仲間は相変わらずの生き方をしているが、彼への恨みはまちまち。下層階級に育ち、勉強もできない彼らにとって、選択肢はなかった。そして、現代のイギリス、「選択の自由」(キーワード「Choose Life」)といわれ、豊かといわれるその実態は薄っぺらで・中身の薄いものであることを描く文明批評にもなっている。ストーリは、「成功があると、裏切りがある」という彼らの習い性が、意外な展開を見せて終わる。
45.「はじまりへの旅」4月11日  ***
 : 原題「Captain Fantastic」。このほうが映画の内容がよくわかる。森の奥で、父親と6人の子どもたちが正に自然の中で暮らしている。子供たちは、学校には行かず、父親や年長の兄弟から教えてもらったり、指定された本を読んで勉強している。また、一人でサバイバルできるように、狩をしたり、星を見ていきたいところへ行ったり、ナイフ1本で動物を解体したり、ロッククライミングなどで、強靭な体つくり、家族で音楽を奏でたり、全人的な能力を身に着けている。母親が一緒にいないのは、3年以上前から精神を病み、良心の住む地方の病院に入院中であり、その母親が自殺したとの知らせが入る。母親の遺書には、仏教徒であるため、死後は火葬にして灰を水に流してほしい、としるしてあった。父親は、妻の両親にその旨を伝えるが、葬儀は教会でキリスト教式(土葬)で行う、もし来たら、警察に逮捕させるといわれる。子供たちは母親に会いに行くと主張するが、父親は、もし自分が逮捕されたら、子供たちだけでは暮らせないと考え、葬儀出席を断念する。しかし、それでは、「言葉より行動を!」という日頃の主張に反する、と考え全員で出発する。その後は、----。現代文明(教育)に対する痛烈な批判の映画。
46.「ゴースト・イン・ザ・シェル」4月13日  ***
 : 「攻殻機動隊」の実写版。この映画の「ゴースト」は、「人間の心・魂」、「シェル」は「殻=体で、ロボット」のこと。つまり、ヒロインが、ロボットに人間の脳を合体させた初の成功例であることを表している。実写化の難しい領域、例えば「光学迷彩」などもうまく映像化することに成功し、エンターテインメント映画としてレベルの高い完成度を達成している。
47.「ニュートン・ナイト」4月17日  ***
 : 実話の映画化。南北戦争時、南軍で戦っていたニュートン・ナイト(主人公)は、一緒に戦っていて戦死した甥を故郷で埋葬するため脱走兵(見つかれば絞首刑)になる。故郷で、百姓の育てた農産物を根こそぎ徴発する南軍に抵抗し、追われる身になる。そこで、隠れたのが、脱走兵と逃亡奴隷が一緒に暮らす沼地。そして、脱走兵と逃亡奴隷を率いて南軍に組織的に抵抗、北にも南にも属さない「自由」州を宣言する。アメリカ史で黙殺されている、真実を掘り起こした作品。
48.「華族の肖像」4月17日  ***
 : 1974年のヴィスコンティ監督作品のデジタル修復版。18世紀にイギリスで流行した<家族の肖像>と呼ばれる家族の団欒を描く絵に囲まれて、ローマの豪邸で一人暮らしをしている老教授。そこにある日、空いている部屋を貸してほしいと伯爵夫人が娘その友人などと飛び込んでくる。煩雑な人間関係を嫌う教授は、断るが、結局1年契約で貸すことに合意する。それから、シッチャカ・メッチャカの出来事の連続。騒動に巻き込まれる迷惑さと家族とのやり取りの楽しさのアンビバレントな教授の感情の揺れを上手く描いている。
49.「グレート・ウォール」4月18日  ***
 : 「グレート・ウォール」とは英語で「万里の長城」のこと。中国の巨匠イーモウ監督とハリウッドが手を組んだ娯楽巨編。宇宙から肉眼で見える唯一の人間の地上の建造物「万里の長城」が蛮族の侵入ではなく、「饕餮」という怪獣の攻撃に備えて作られたものであり、その攻防を描く映画。スケールの大きさ・3Dを意識したカット、雄大なスケールのエンターテインメントとして、成功している。
50.「灼熱」4月24日  ***
 : クロアチアを舞台にクロアチア人とセルビア人の対立を背景に作られた映画。民族紛争の勃発直前の1991年、戦闘終結直後の2001年、平和の定着した2011年に3組のクロアチア人とセルビア人の恋人を描く。それぞれの時期に民族対立が恋人同士だけではなく、家族・友人に複雑で・深刻な傷を与える様を、3組のカップルを同じ俳優が演じるという斬新な発想と、一言も思想を語らずに映像に語らせるという映画メディアの強みをフルに引き出した力作。
51.「美女と野獣」4月25日  ***
 : 定番「美女と野獣」の初の実写版。実写版ではあるが、CGを多用しているので、実写+CG版。手をかけて、丁寧に作られた安心して楽しめるエンターテインメント映画。ヒロインを演じるエマ・ワトソンはイメージにぴったりで、熱演。
52.「イップ・マン継承」4月26日  ***
 : 1950年代イギリス統治下の香港を舞台とするエンターテインメント映画。イギリス人の権力を悪用し、地元の悪徳業者と組んで小学校の土地の地上げへの阻止、格闘家としての頂点の維持という二つのストーリーを軸とした作品。圧倒的なスピードを魅せる格闘場面が圧巻。
53.「わたしは、ダニエル・ブレイク」5月2日  ***
 : カンヌ映画祭大賞受賞作品。イギリスを舞台に、社会的弱者(病気・シングルマザーなど)が支援を必要とする事情、そして、その支援を行う社会保障制度とその運用にあたるお役所の対応を鋭く描いた力作。それぞれの立場の人間が、それぞれのニーズ・役割に応じて行動していくうちに、人間にとって一番大切な「尊厳・思いやり」を忘れてしまいがちになるが、「人間の尊厳」を護るためには、勇気をもって「声を上げる」ことが大切だ、ということを伝えてくれる映画。
54.「タレンタイム」5月3日  ***
 : マレーシアの高校を舞台とする映画。この高校では、年一回「タレンタイム」と呼ぶ歌・楽器演奏などの出来ばえを競う大会が開催される。予選を勝ち抜いた7人が決勝に臨む。そして、彼等には練習の時を含めて送り迎えの生徒がつけられる。そのうちの数人に焦点を当て、その家族の事情、マレー語・中国語・ヒンドゥー語・英語の4ヵ国語が使われる複雑な人種・宗教事情を抱えるマレーシア社会をバランスよく描くことに成功している。
55.「ワイルド・スピード」5月4日  ***
 : シリーズ第8作。安心してただ楽しめる鉄板のエンターテインメント映画に仕上がっている。
56.「大人の事情」5月6日  ***
 : イタリア・アカデミー賞作品賞・脚本賞受賞作品。イタリアで大ヒット。子供のころからの仲良しの4人の男友達が、パートナーと一緒に食事会に集まる。そこで、全員がケータイをテーブルの上に出し、入って来た電話・メールは公開するというゲームを始める。いかにいろいろな隠し事をそれぞれが持っているか、それを全て知っているのはケータイという現代社会を痛烈に描く。
57.「ザ・鬼太鼓座」5月8日  ****
 : 1981年製作作品のデジタル・リマスター版。「走・楽」一体という思想にもとづく「鬼太鼓座」のパフォーマンスの記録。「鬼剣舞」「八百屋お七(文楽仕立て)」「春変奏曲(琴)」、各種「太鼓」、最後に「津軽じょんがら節(三味線)」と多彩な演奏・舞を披露。それぞれのカットは室内から室外へと展開したり、実際のパフォーマンスでは見ることのできない計算されつくしたもので、見事な映像効果を実現している。
58.「無限の住人」5月9日  **
 : キムタク演じる不死身(文字どうり)の用心棒が百人切りの連続。ストーリーが単調でつまらない。
59.「人生タクシー」5月10日  ***
 : 2015年ベルリン映画祭グランプリ獲得作品。監督自らがタクシー運転手に扮し、次から次へと変わる乗客とのやり取りを通じてイラン社会の不自由さを切り取る作品。ユーモアを忘れずにいるところが良い。
60.「マンチェスター・バイ・ザ・シー」5月16日  ****
 : ボストンでアパートの管理・保守(不具合への対処)の仕事をやっている仕事熱心だが、不愛想な主人公が車で1時間半程の故郷へ兄が倒れたという連絡を受けて戻るところから始まる。そして、自分と兄の家族の過去と残された兄の息子とのかかわりを中心に物語は展開する。淡々と人間の絆の脆さ・それが切れた時に受ける当事者の心の傷の深さ、そして新しい絆の誕生の喜びを丁寧に描いていく。地味な映画で上映館も少ないがほぼ満員。
61.「残酷ドラゴン 血闘竜門の宿」5月17日  ***
 : 1967年製作の香港映画のデジタル・リマスター版。「侠女」の姉妹編。アジアで爆発的ヒット。今見ても決して古くない出来ばえ。
62.「君のまなざし」5月20日  **
 : 幸福の科学の教宣映画。今回のメインテーマは、永遠の生命(肉体は死んでも心は永遠に生きる)、神はいつも愛を持って一人一人を常に見守っている、したがって人間は社会の発展・みんなが幸福になるように努力しなければならない。途中で、「人々を不幸が襲い、無念な死を遂げることがあるが、神は不在だからではないか」という疑問が提起されるが、その後のストーリー展開でこの問題提起は結果的に無視される。
63.「メッセージ」5月21日  ***
 : ある日、世界12か所に宇宙から未知の飛行物体が同時に現れる。「どこから、何の目的で来たのか、敵なのか見方なのか」世界中が騒然となる。アメリカでは、物理学者・言語学者の最優秀者が招集され、この疑問の答えを見出すことが期待される。ヒロインは、言語学者として、言葉(英語)を教えながら宇宙人(?)の言葉を解明しようとする。このプロセスが主軸でストーリーが展開する。そして、この宇宙人(?)を敵とみなし、武力攻撃を宣言する国があらわれーーー。ストーリー展開にもう一工夫欲しい。
64.「ぼくと魔法の言葉たち」5月22日  ***
 : 3歳の時に自閉症で言葉を失った少年が言葉を取り戻し、自立した生活を送れるようになるまでのドキュメンタリー風映画。言葉を取り戻す鍵となったのは、ディズニーのアニメ映画。少年は全部の映画を台詞をふくめてすべて記憶、そこに出てくる言葉・ストーリーで社会のフレームワークを理解して、コミュニケーションを行えるようになっていく。しかし、ディズニーのアニメは単純化して社会をとらえているため、それだけで現実の社会は動いていない。そうした困難に直面しながら温かい家族・支援者のサポートで成長していく若者の姿は感動的。
65.「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」5月23日  ***
 : 永井豪原作のアニメ「鋼鉄ジーグ」をストーリー展開の柱に使ったイタリアのエンターテインメント映画。あることをきっかけにチンピラの主人公が不死身の「鋼鉄ジーグ」に変身する。その力を最初は悪に用いて「スーパー・クリミナル」となるが、「鋼鉄ジーグ」オタクのヒロインに説かれて「スーパー・ヒーロー」に最後はなるという、肩の凝らない作品。
66.「カフェ・ソサイエティ」5月26日  ***
 : ウディ・アレン監督が「ミッドタウン・イン・パリ」に続いて送る、1930年代の「夢のハリウッド」を描く「ロマンティック・コメディ」。ニューヨークの平凡な青年が夢を求めて、エージェントとしてハリウッドで大成功した伯父を訪ねるところから物語は始まる。毎夜伯父のプール付きの豪邸でで行われるハリウッドの映画人たちの派手なパーティなどで映画界の日常を紹介しながら、この青年が伯父の秘書と恋仲になっていくストーリー展開。主人公は映画界の虚像に見切りをつけ、結婚してニューヨークに戻ることを提案するが、最終的に彼女が選んだのは、もう一人の恋人との結婚。ニューヨークに戻った青年は、この時の人脈を生かして兄と「カフェ」を経営、ニューヨークの有力者・金持ち・それに群がる美女たちが集まる人気店として大成功する。そして、ある日ーーーー。
67.「ガーディアン・オブ・ギャラクシー」5月27日  ***
 : アメリカ映画の代表的シリーズ。制作費に巨費を投じ、のんびりと観ていられる、成功したエンターテインメント映画。今回は、悪党といえども、人間には「仲間意識」「自己犠牲の精神」があるということを描いており、ラストはしんみりさせる。
68.「娘よ」5月29日  ***
 : 日本で初めて上映されるパキスタン映画。実話の映画化。部族間抗争が続き、「目には目」で殺し合いがエスカレート、その悪循環を止めるため、相手の族長が提案したのは、自分と族長の10歳の娘の結婚。いよいよ結婚式の当日、母は、娘を連れて、逃げ出す。厳しい追手の追跡をかいくぐり、結婚以来あっていない母の母親に会いに行くというストーリー。妻・娘は父親(家長)の所属物であるというパキスタンの実態を描く。
69.「家族はつらいよ!2」5月31日  ***
 : シリーズ第二弾。前半は、免許証返納、後半は孤独死を中心に、老いをめぐる家族・友人の思い・葛藤をめぐりストーリーは展開する。観客の大半は年寄り。完成度は前作より上。
70.「武曲」6月5日  ***
 : 映画冒頭で幼子の時から高校生になるまで父に厳しく剣道を鍛えられ、ついに父の頭を木刀で打ち込むというシーンが描かれる。ストーリーは、ここに至るまでの経過、植物状態になった父の現状、そうした罪悪感から剣道を忘れ、酒に溺れる日常、それにラッパーの高校生がふとしたきっかけで剣道に興味をもち、その才能を開花させていき、その主人公が剣道に立ち戻る姿が描かれていく。「剣禅一如」「父子の愛憎一体の感情」がストーリーを引っ張る。力のこもったカットが多い。
71.「光」6月6日  ***
 : 今年度カンヌ映画祭コンペ部門招待の河瀬監督の作品。ストーリーは映画の音声ガイド(目の見えない人に映画の場面の説明をする)を担当するヒロインの仕事と、視力を失っていくカメラマンの姿を軸に展開する。映画とは何か、観客はどう映画にかかわるのか、人間が生きることの意味などの重いテーマを取り上げている。この映画がラストで提示するのは、人生には、思いどうり行かないことも多いが、将来に光(希望)を見ることが重要とのメッセージ。
72.「バイオハザード・ヴェンディッド」6月6日  ***
 : 観客の大半はアニメファン・だと思われた。手堅く・丁寧に作られたエンターテインメント映画。安心して楽しめる。
73.「ミューズ・アカデミー」6月7日  ***
 : バルセロナ大学でイタリー人の教授によって開講された「ミューズ(美神)・アカデミー」には、幅広い年齢層の学生が出席している。教授の授業(問題提起)は、「美」と「詩(文学)」「愛(恋愛)」「情熱」「自然と人間」「主体性」「行動」についての関係と幅広い。それに対し、生徒たちは活発に自分の意見をのべる。冒頭でこの教室での議論のベースを観客が理解したところで、次は、教授と生徒・性と同士の個別の対話の場面中心に移行、さらに教授と生徒との恋愛関係・妻とのやり取りへと画面は映し出す。この映画のユニークなところは、最初はドキュメンタリー映画だと思ってみているうちに、あれ、そうではないみたい、「美学」の話がいつの間にか「男と女」の単なる密通の話かい、と思わせる仕掛けの面白さにある。
74.「20センチュリー・ウーマン」6月9日  ***
 : ヒロインは1924年生まれ、1964年に長男を生み、1979年時点を現在とする物語。この映画は、20世紀とはどんな時代だったのか、そしてヒロインのライフ・ステージに応じた生きざま、そして時代を超えたテーマである「恋と友情・仕事・ジェネレーションギャップ・親子のコミュニケーション」などをうまく組み合わせて肩に力を入れずに考えさせることに成功している。
75・「パトリオット・デイ」6月12日  ***
 : 2013年の起きた、ボストン・マラソン爆弾テロ事件を題材にした作品。タイトルは、ボストンマラソンが行われたのが「パトリオット・デイ(愛国者記念日)」の祭日だったことに由来。ストーリーは、事件発生後102時間で犯人が逮捕されるまでを描き、テロに打つ勝つのは、「愛」であるとのメッセージを伝える。
76.「ローガン」6月13日  ***
 : 「Xマン」シリーズ最終回。ミュータントがほとんどいなくなってきた時代に、年を取って来たローガンのもとに、殺人兵器として育てられた少女ミュータントの保護・移送を依頼する女が現れ、この少女を抹殺しようとする追手との闘いに巻き込まれ、その仕事を成し遂げて死んでいくというストーリー。
77.「花戦さ」6月13日  ***
 : 主人公の池坊専好が信長・秀吉の「茶頭」の千利休との交流を深めていき、利休が秀吉との関係が行き詰まり、ついに切腹に追い込まれていく過程を描き、エンディングで専好が利休の弔い合戦を「花戦さ」として仕掛けるというストーリー。「花戦さ」で勝利するとは「抜いた刀を収めさせる」こと。
78.「ローマ法王になる日まで」6月19日  ***
 : 2013年にローマ法王に選出されたアルゼンチン出身の現法王の若き日の物語。軍事政権下での軍による不当逮捕・虐殺などに抵抗、民主化後は開発優先で貧民街を追われる庶民と共にそれと闘ったという、常に民衆と共にあった姿を描く。感動的であると同時に、カトリック教会の聖職者の大半は体制側についていたという事実、そして現在の日本・世界で不正義がまかり通る中で、「われわれは何をしているのか」について考えさせられた作品。
79.「22年目の告白ー私が殺人犯です」6月19日  **
 : 制作側は、いくつかのどんでん返しを仕込み、受けること間違いなしとの自負、大ありとの印象。しかし今一つ切れに欠け、盛り上がらなかった。
80.「大人の恋の測り方」6月21日  ***
 : 主人公は身長136cmの建築家。ふとした縁で知り合った弁護士の女性と恋に落ちる。女性は主人公の人間性・能力・自分を理解し・伸び伸びとした自分でいられることに惹かれる。その一方で二人でいると周りからじろじろ見られ、また自分の理想の恋人像(背が高い)に合わないことに悩む。「見た目が小さいからダメという人は、心が小さいのだ。」という台詞が飛び出す。この作品が提起しているのは、「人間はいかに既成概念(偏見)に囚われ、そのことに気が付いていないし、それを変えることが難しいか」ということ。
81.「セールスマン」6月21日  ****
 : アカデミー賞外国語映画賞受賞作品。教師で妻と共に小さな劇場の舞台で「セールスマンの死」を演じる主人公。舞台初日の夜、妻が一足先に家に帰ってシャワーを浴びていたとき、家のブザーが鳴らされる。夫が帰って来たと思いドアのカギを開け、シャワーに戻るが、見知らぬ男がシャワー室に入り込み妻を襲おうとする。抵抗した妻を傷つけた犯人は、妻が騒いだため逃げ出す。この事件に深く傷ついた妻、警察に行って犯人を捕まえようと説得する夫、それを拒み亀裂の入る夫婦関係。そこで一人で犯人探しに取り組む夫。ついに犯人を突き止め、追い詰めたときーーーー。息をつかせぬ心理サスペンス。
82.「オリーブの樹は呼んでいる」6月22日   ***
 : 樹齢2000年のオリーブ油農園が舞台のスペイン映画。オリーブ油が高価で売れなくなり、オリーブ油農家は経営が成り立たなくなり、息子は一番立派な樹を3万ユーロで売り払う。これを祖父は悲しみ、その樹に思い出の深い孫娘は年を取りボケが始まり、口数も少なく、食欲も衰えた祖父を元気づけるためこの樹を取り戻そうと決意する。そして、その樹がドイツのデュセルドルフのエネルギー会社のロビーにあることを突き止め、行動を始める。祖父と孫娘のオリーブの樹を媒介とする愛情、孫娘を助ける家族・友人、環境問題に取り組む人々の支援を上手く織り込みながらストーリーは展開する。結果的にオリーブの樹は取り戻せなかったものの、得られたものの大きさを感じさせる爽やかなエンディング。
83.「怪物はささやく」6月24日  ****
 : 子供と大人の端境期にある少年期の主人公を描くイギリス映画。父と離婚して少年と二人で暮らす母が不治の病に倒れて闘病生活を送る姿、学校でのイジメにあう日々、そうした中で真夜中にきまって見る悪夢。その悪夢に怪物が登場し、三つの物語を語る。それは善と悪・愛と憎しみ・信念と行動の単純ではない組み合わせに見られる人間の真実。そして4ばんめの物語を少年が語るように迫る。人間把握の鋭い力作。
84.「ハクソーリッジ」6月26日  ****
 : 実話の映画化。キリストの7戒の筆頭の「殺すなかれ」を守り、しかし他の兵士を救うため衛生兵として働くとの決意で志願して兵役に就いた主人公。訓練中から銃を持たないと誓ったため上官・同僚から数々のいじめに遭いながら耐えるが、銃の訓練をしろという命令に背いたため軍法会議にかけられ、監獄送りになる直前で、良心的兵役拒否者は上官の命令でも武器を取ることを拒否できるというアメリカ憲法の規定により救われる。そして、太平洋戦争最大の激戦地ハクソーリッジ(沖縄)に派遣される。肉弾戦で多くの兵士が倒れる中、一人でも多くの兵士を助けると奮闘し、結果的に70名以上を救助する。そしてアメリカ史上初めて良心的兵役拒否者が最高の軍事勲章を受ける。従来の戦争映画のイメージを一新する映画。
85.「ある決闘 セント・ヘレナの掟」6月27日  **
 : 舞台は、メキシコ国境に近い西部の町。子どものころ父親が決闘に挑み、目の前で父親の死を経験する。その20年後、保安官の主人公は知事に依頼され、父の決闘相手の犯罪調査に向かう。そして、その相手の息子と決闘を行った後、銃撃戦になり、最後には仇を討つ。しかしながら、ストーリー展開が今一つ盛り上がりに欠ける。
86.「ありがとう、トニ・エルドマン」6月27日  **
 : ユーモア映画を目指すというのが、作品の狙いだと思われるが、ユーモアとも言えず、ストーリー展開もあまりにも不自然で最後まで作品に没入できなかった。ドイツ人がユーモア映画を作るとこの程度にしかならないというメッセージを伝えたかったのか?
87.「パイレーツ・オブ・カリビアン」7月3日  ***
 : 制作側の力の入れ方が十分に伝わる文句なくただ楽しむエンターテインメント映画。
88.「ディストピア、パンドラの少女」7月4日  ***
 : 新たな感染症により絶滅の危機に直面する人類。しかし、感染した母親から生まれた子供たち(第二世代)は免疫を有するようだ。この子たちを集めて教育とワクチン開発に取り組む軍隊。主人公の少女は自分で考えることができるし感情も豊か。収容所で勉強を教えてくれる女教師を慕っている。そして、ワクチン開発を完成させ、女教師を含む人類を救うために自分の命を差し出すように説得される。そして、最終的に少女がとった行動は?人間の身勝手さに対する文明批判になっている。
89.「忍びの国」7月4日  ***
 : 鍛えた忍びの技を売って生計を営む伊賀衆。信長の攻勢をうけるが、一旦は策略をもって退ける。しかし、二度目の本格攻勢でついに敗れる。この間の無門(主人公)の行動を通じて、忍びの本姓・技をみせる。カネ・カネといって自己利益の追求に忙しい現代人に対する皮肉も込められたエンターテインメント映画。
90.「草原の河」7月10日  ***
 : 日本で初めて公開されるチベット人監督の作品。遊牧と麦作で生計を立てる草原に住む夫婦と幼い娘の3人家族を中心に、遊牧民の生活と夫とその父親との関係等を描く。雄大で・厳しい自然の中での暮らしと人間関係が良く描かれている。娘役(撮影開始時6歳)が上海映画祭で最年少で主演女優賞を獲得したことでも話題になった作品。
91.「メアリと魔女の花」7月11日  ***
 : シナリオに筋が一本通っているため、ストーリーにブレがなく安心して観ていられる作品。人間はあるパワー(魔法)を手に入れると、それを使って世界を支配しようとし始めるし、それを阻止するには、勇気をもってそれに立ち向かう人間がいなければならないというメタファーが上手く描かれている。
92.「ジョン・ウィック2」7月11日  ***
 : アメリカでは、公開して1週間で第一作の興行収入を超えたと話題になった作品。アクション場面の切れがあり、それも納得。次作のストーリーの骨格が示され、期待を持たせて終わる。
93.「銀魂」7月18日  ***
 : コミックの実写版。軽妙なギャグの連発、ただただ楽しくみられるエンターテインメント映画。。
94.「カーズ」7月18日  ***
 : あらゆる意味でテイピイカルなアメリカ映画。車好き・レース好き、新人の台頭と世代交代。新人からベテランを追い越し頂点に上り詰めた後は、下り坂が待っている。その時人間はどんな行動をとるのか?レース愛と人間愛に満ちた良質のエンターテインメント映画。
95.「彼女の人生は間違いじゃない」7月22日  **
 : 福島県いわき(津波と原発事故のダブルパンチ)の現在(5年後)を仮説住宅に暮らす父娘を中心に描く。ヒロインは津波で母を失い今は地元で働きながら父と二人暮らし、時折東京に出かけ学生時代から始めたデリ・ヘルの仕事を続けている。父は放射能汚染のため農業ができず、毎日補償金でパチンコをして無為に時を過ごしている。父子の暮らしから被災地の今が切り取られる。エンディングで娘は子犬を飼い始め、父は農地の手入れを再開し、普段お暮しを予感させて映画は終わる。しかし、今でも東京に出かけてデリ・ヘルを続ける必然性が描き切れておらず、作品の出来栄えに?
96.「世界でいちばん美しい村」7月25日  ***
 : ネパールの4000人が暮らす村のドキュメンタリー的映画。2015年のネパール地震地震直後からの村の様子を「水牛の放牧で生活をたてる一家の暮らし」「村でただ一人の看護師」「村の祭りと信仰」を柱に紹介する。生き生きとした子供の可愛らしさ、貧しくても隣人と支え合う暮らし、暮らしの中に息づく神々、にほんでは失われてしまった懐かしい美しい村が心にしみる。
97.「トーキョーグール」7月30日  **
 : 他の食物を食べても体が受け付けず、人肉を食べることによってしか命をつなげない喰種(グルー)を主人公にした作品。人間は彼らを目の敵にして追い詰め、ごく少数のグルーが密やかに暮らしている。この映画は、生態系の頂点に立ち、他のすべての生き物は人間のために奉仕するためにあると考える傲慢な人間を食べることによってしか存続できない(人間の上に立つ)生きものが現れたとき人間はなぜそれを受け入れないのかという文明批評になっている。
98.「マミー」8月21日  ***
 : いかにもアメリカ映画という大型エンターテインメント映画。。
99.「ジョジョの奇妙な冒険1章ダイヤモンドは砕けない」8月22日  ***
 : 人気漫画の実写化。漫画特有の場面を上手く処理したのは見事。安定して楽しめる作品に仕上がっている。
100.「残像」8月25日  ***
 : 社会主義革命下のポーランドを背景に、画家であり美術の教授である主人公が、「芸術は革命に奉仕するべきである」という党の方針反し、自分の主義を貫く。その結果教授の職を追われ、生きるために職を見つけようとしても資格がないとして締め出され、ついには結核と栄養失調で死んでいくという作品。社会主義の硬直性を淡々と描いた力作。
101.「ワンダー・ウーマン」8月28日  ***
 : アマゾネスの女王の娘が第二次大戦末期のイギリス・ベルギーで活躍するというエンターテインメント映画。予想していたよりもストーリーにすんなり入り込めた。ストーリー展開に筆禍Kるところが少なく楽しめた。
102.「ローサは密告された」8月29日  ***
 : マニラで雑貨屋を営む主婦ローサ。ある日警察の捜査が店に入り、麻薬と顧客名簿を見つけ、連行される。フィリピンではこれは終身刑に相当する犯罪。警官たちは20万ペソ払えば見逃すという。そんな大金は無いというと、誰から仕入れたか情報を提供といわれる。現在のフィリピンの麻薬売買とその取り締まりをドキュメンタリー風に描くことにより鋭く社会を切り取ることに成功している。
103.「トトと二人の姉」8月30日  ***
 : ルーマニア映画。トトの母親は麻薬販売で7年の懲役判決を受け刑務所で4年経過(父親は不明)、叔父に引き取られ二人の姉(17歳と14歳)と一緒に暮らしている。しかし上の姉は麻薬中毒、部屋は麻薬中毒者のたまり場になっている。下の姉はこうした環境を嫌い弟を連れて孤児院に移る。母親が仮釈放になり、迎えに行った二人は母親と暮らすことに不安を抱えていることを暗示して映画は終わる。ルーマニア映画であるが、現在のどこの国にもありそうなストーリーであると考えると、暗澹とした気持ちになる。
104.「関ケ原」9月3日  ***
 : 司馬遼太郎の原作を映画化。その特色は、新しい石田三成・徳川家康像を軸にストーリー展開を図っていること。石田三成像は「晩年の秀吉に失われた正義の実現のための闘いという理を追い求める理想家」、家康像は「天下人となるためには手段を問わない権謀術策家」。大規模な戦闘場面も見せ場。
105.「禅と骨」9月4日  ***
 : 京都天龍寺の禅僧として波瀾万丈の生涯を終えたヘンリ・ミトワの生涯を描いたドキュメンタリー映画。貿易商として日本に住んでいたアメリカ人の父と芸者の母との間に三男として生まれたヘンリ。第二次大戦前に父と次兄はアメリカに帰るが、次兄とヘンリは母と共に日本に残る。世界恐慌で父は破産し仕送りが途絶える。日米開戦直前にアメリカにわたり、仕事をはじめ日本人の恋人に出会う。開戦により日本人収容所に入り、ここで恋人と結婚し子どもも生まれる。終戦後もアメリカに留まるが、母の死後急激に日本文化への興味を深め、ついに単身、日本に帰還、裏千家の仕事を手伝いながら禅僧としての修行を始める。そして、家族を日本に呼び寄せる(妻と二人の娘、長男はアメリカに残る)。禅そのものという生き方をしたヘンリだが、その裏にはピアノ教師として生活を支えた妻・アメリカに残りたかった娘の存在があったことが浮き彫りになる。
106.「新感染」9月4日  ***
 : 韓国映画。感染者に噛まれるとゾンビ状態になり、また人を襲うという感染症が供促に拡大するという設定の作品はは数多くつくられている。この映画が成功しているのは、1)人間の本姓(利己主義と利他主義の間を揺れ動く)に焦点を当てていること、2)新幹線での移動という状況設定により、自然なストーリー展開を可能としたことにある。
107.「エル」9月5日  ****
 : ミステリー仕立てのエンターテインメント映画。いかにもフランス映画らしい気の利いた作品。普通に演じるとどぎつい会話をサラッと嫌味を感じさせないように処理する感覚が洒落ている。大人が楽しめる作品。思ったより観客が入っていた。
108.「パターソン」9月5日  ***
 : ニュージャージー州のパターソンという小都市が舞台。この町の有名な出身者に詩人のパターソンがいる。主人公は本名がパターソンで職業はバスの運転手、詩が大好きで、ノートに自分の詩を書き溜めている。毎日朝6時過ぎに起きて、一人で朝食を取り、仕事に行き、仕事を終えると真っ直ぐ家に帰り、妻と二人で夕食を取り、食後愛犬の散歩を兼ねて行きつけのバーに行きビールを飲み、家に戻って寝る、という判で押したような暮らしぶりを、月曜日から始まる1週間を描く。このような生活で変化をつけるのは、詩の紹介、妻とのやり取り、バーでの出来事など。決まりきった生活の中にも様々な刺激があり、またクスっと笑えるようなユーモアが仕込まれている。ゆったりとした人生を描く大人向けの作品。
109.「甘き人生」9月6日  **
 : イタリア映画。9歳の時最愛の母を38歳で突然亡くした主人公。母が心筋梗塞で死んだとはどうしても信じられない。43歳の新聞記者になっているが、母への思いは変わらないが、やっと折り合いをつけられるようになってきた。ここで終われば区切りがすんなりつくが、エンディングで実は自殺だったことを知り、最愛の母が、自分を残して自死を選んだことにショックを受ける。ただのマザコンのつまらない話になってしまった。
110.「スキップ・トレース」9月7日  ***
 : 最近のエンターテインメント映画のトレンドはハリウッド映画に代表されるように最先端テクノロジー・ヴァーチャルリアリティーへ。この作品はそうしたトレンドの逆、すなわちレトロで実写にこだわるという意図でつくられている。ストーリー展開に難があるが、懐かしい感じの残るというテーストを出すことには成功している。
111.「ブランカとギター弾き」9月8日  ***
 : マニラでストリートチルドレンとして生きる少女ブランカと盲目のギター弾きの友情を描く作品。ヒロインの可愛らしさと、マニラ事情がよく描かれている力作。
112.「幼な子われらに生まれ」9月11日  ****
 : 子どもがいながら離婚した二人が再婚、二人の前夫との間にできた娘と暮らす家庭に新たな命が宿る。そして小学校6年生で思春期を迎えた長女が微妙な対応をし始める。連れ子結婚の親子・夫婦関係の難しさ、そしてそれぞれの離婚した配偶者との過去と現在の関係を鋭く描く。さすが重松清原作。
113.「三度目の殺人」9月12日  ****
 : 緻密に組み立てられたストーリーで最後までどういう結論になるのか予断を許さないサスペンス仕立ての裁判劇。食品工場の社長が多摩川の河川敷で惨殺されガソリンをかけられ燃やされた死体が発見される。工場を解雇された従業員が逮捕され、自白するが決定的な物証はない。検察は強殺(所持金目的の殺人)で起訴する。しかし、殺人犯の主張が転々と変わり、動機がそれに応じて変わっていくことになる。そして、裁判の終盤で、自白を撤回、殺していないと言い出す。「羅生門」(原作:芥川龍之介「藪の中」)で描かれた一つの事実が異なった出来事に見える、という観点を犯罪動機に焦点を当てて描いた力作。
114.「ダンケルク」9月12日  ****
 : ノーラン監督が脚本・制作まで担当した作品。従来は、無重力状態・脳内の意識の映像化など実写の難しいテーマを巨額の費用を投じてセットを作成し撮影するという手法で高評価を得てきた監督が、一転セットは作らず、第二次大戦初期のダンケルクに追い詰められた英仏軍の救出作戦を描く。これまでの戦争映画は主要登場人物のプロファイルを紹介した後で戦争場面に入っていくというストーリー展開が定番化しているが、実際の戦場ではいきなり戦闘に入るということを反映し、プロファイルの紹介なしに映画を始めている。ノーラン監督が描きたかったのは「イングリッシュ・スピリット」。
115.「オン・ザ・ミルキー・ロード」9月18日  ***
 : 前半は****、後半は**。前半はダラダラと続く戦争を現実離れした画面で洒落のめし快調な出足だと思っていたら、後半は失速しただの三文映画に堕してしまった。
116.「西遊記2 妖怪編」9月19日  ***
 : 徹底した娯楽映画。全編緩みなく作られた作品。大いに楽しめた。
117.「散歩する侵略者」9月19日  ***
 : SF仕立ての作品だが、人間の愚かさと一筋の希望を描いた人間ドラマになっている。松田龍平が良い味を出している。
118.「エイリアン コヴェナント」10月2日  ***
 : 良くできたSFエンターテインメント映画。成功の原因は、緊迫したクライシス・シチュエーションの連続と、人間とロボット(アンドロイド)の未来という現代的テーマを上手く噛み合わせていること。
119.「ドリーム」10月3日  ****
 : 実話にもとづく作品。人種差別・女性差別を乗り越えてNASAでアメリカの宇宙開発に貢献した3人のヒロインの活躍を描く。その当時のアメリカの法律・慣習であった差別にひるむことなく、夢をあきらめずに、その実現のために道を切り開いていったヒロインたちの生きざまが爽やかな感動を生む。観客の入りも良かった。
120.「ナミヤ雑貨店の奇蹟」10月10日  ***
 : 雑貨店を営みながら人生相談に応じる店主。困りごとがあっても、相談する相手がいない人たちのとっては、ありがたい存在。32年前と現在が通じる不思議な出来事があり、過去と現在が交錯する。エピソードの折り込み方も良く、良質の作品になっている。
121.「猿の惑星 聖戦記」10月23日  ***
 : 人間側からの攻撃により望まざる戦いに巻き込まれたシーザー。強い仲間意識・他者への思いやり・知恵・勇気・体力。これらを全て持ち合わせた猿(エぷス)が勝ち残るのは当然。本来人間が持つべきものを失ったとき、人間が滅びるのは当然というメッセージ。
122.「スターウォーズ 最後のジュダイ」12月19日  ****
 : 「スターウォーズ」というとSF映画の代表作というのが一般的な評価である。しかし、よく見てみると宇宙を舞台とした「人間ドラマ」である。シリーズの中でも今回は特にその傾向が強く、良く人間を描いている。

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