« 「2017年狂言鑑賞」 | メイン | 2017年「読書目録」(1~3月) »

2017年「歌舞伎鑑賞」

1.「初春大歌舞伎」(夜の部)1月16日  ***
 : 「井伊大老」(井伊直弼)幸四郎、(仙英禅師)歌六、(長野主膳)染五郎、(水無部六臣)愛之助、(老女雲の井」)吉弥、(宇津木六之丞)錦吾、(中泉右京)高麗蔵、(昌子の方)雀右衛門、(お静の方)玉三郎、「越後獅子」(角兵衛獅子)鷹之資、「傾城」(傾城)玉三郎、「松浦の太鼓」(松浦鎮信)染五郎、(大高源吾)愛之助、(お縫)壱太郎、(宝井其角)左團次
 : 「井伊大老」「松浦の太鼓」は謡・囃子も派手な立ち回りもない、台詞だけで舞台を回していく地味な狂言。しかし、脚本の質の高さと役者の熱演で見ごたえのある二幕だった。「越後獅子」「傾城」は、愛之助・玉三郎が一人で演じる舞踊劇。

2.「初春大歌舞伎」(昼の部)1月18日  ***
 : 「将軍江戸を去る」(徳川慶喜)染五郎、(山岡鉄太郎)愛之助、(土肥庄次郎)廣太郎、(吉崎角之助)男寅、(間宮金八郎)種之介、(天野八郎)歌昇、(高橋伊勢守)又五郎、「大津絵道成寺」(藤娘・鷹匠・座頭・船頭・大津絵の鬼)愛之助、(弁慶)歌昇、(犬)種之介、(外方)吉之丞、(矢の根の五郎)染五郎、「沼津」(呉服屋十兵衛)吉右衛門、(お米)雀右衛門、(荷持安兵衛)吉之丞、(池添孫八)又五郎、(雲助平八)歌六
 : 「将軍江戸を去る」「沼津」は「沼津」は一部謡と三味線(各一名)が入るが、台詞のみで進行する狂言。夜の部と同じく、派手な立ち回りもない地味な狂言。「大津絵道成寺」は愛之助の早変わり五変化見物の舞踊劇。「初春大歌舞伎」は、昼・夜とも台詞劇二幕と舞踊劇の組み合わせで、ここ3年で一番空席が目立った。しかし、狂言はいずれも優れた脚本と役者の熱演、舞踊劇のそれぞれ観客を飽きさせないような工夫もあり見ごたえのあるものだった。派手な見せ場のある典型的な出し物を封印してどれだけ観客が集められるか、観客のレベルを試しているとも思える公演だった。
3.「猿若祭二月大歌舞伎」(昼の部)2月13日  ***
 : 「猿若江戸の初櫓」(猿若)勘九郎、(出雲の阿国)七之助、(若衆)宗之助、児太郎、橋之助、福之助、吉之丞、鶴松、(福富屋女房ふく)萬次郎、(奉行板倉重)彌十郎、(福富屋萬兵衛)鴈治郎、「大商蛭子島」(正木幸左衛門実は源頼朝)松緑、(地獄谷の清左衛門実は文覚上人)勘九郎、(おます実は政子の前)七之助、(清滝)児太郎、(熊谷直実)竹松、(畠山重忠)廣太郎、(佐々木高綱)男寅、(三浦義澄)福之助、(下男六助)亀寿、(家主弥次兵衛)團蔵、(女房おふじ実は辰姫)時蔵、「四千両小判梅葉」(野州無宿富蔵)菊五郎、(女房おきよ)時蔵、(伊丹屋徳太郎)錦之助、(浅草無宿才次郎)松緑、(寺島無宿長太郎)菊之助、(黒川隼人)松江、(頭)亀三郎、(三番役)亀寿、(下谷無宿九郎蔵)萬太郎、(ぐでんの伝次)橘太郎、(下金屋銀兵衛)松之助、(穴の隠居)由次郎、(数見役)権十郎、(石出帯刀)秀調、(生馬の眼八)團蔵、(隅の隠居)歌六、(うどん屋六兵衛)東蔵、(浜田左内)彦三郎、(牢名主松島奥五郎)左團次、(藤岡藤十郎)梅玉、「扇獅子」(鳶頭)梅玉、(芸者)雀右衛門
 : 「猿若江戸の初櫓」は、歌舞伎が江戸に進出した縁起を描いた舞踊劇。「大商蛭子島」は、伊豆で寺小屋の教師として身分を隠している頼朝のもとに、平家討伐の院宣が下り、源氏再興をかけて立ち上がるという狂言。「四千両小判梅葉」は、江戸城の金蔵を破り四千両を盗み出したという事件を河竹黙阿弥が狂言に仕立てた作品。全体としての出し物のバランスも良く、楽しめる舞台だった。
4.江戸歌舞伎三百九十年「猿若祭二月大歌舞伎」(夜の部)2月15日  ***
 : 「門出二人桃太郎」三代目中村勘太郎、二代目中村長三郎初舞台、(兄の桃太郎)勘太郎、(弟の桃太郎)長三郎、(お爺さん)時蔵、(お婆さん)芝翫、(息子勘作、鬼の総大将)勘九郎、(嫁お鶴)七之助、(犬彦)染五郎、(猿彦)松緑、(雉彦)菊之助、(村の女)児太郎、(村の男)橋之助、福之助、彌十郎(鬼)錦吾、亀蔵、(庄屋妻お京)雀右衛門、(吉備津神社巫女お春)魁春、(庄屋高砂)梅玉、(吉備津神社神主音羽)菊五郎、「絵本太功記」(武智光秀)芝翫、(操)魁春、(真柴久吉)錦之助、(佐藤正清)橋之助、(初菊)孝太郎、(武智十次郎)鴈治郎、(皐月)秀太郎、「梅ごよみ」(丹次郎)染五郎、(芸者仇吉)菊之助、(芸者米八)勘九郎、(千葉半次郎)萬太郎、(許嫁お蝶)児太郎、(本田近常)吉之丞、(芸者政次)歌女之丞、(太鼓持由次郎)松之助、(番頭松兵衛)橘三郎、(古鳥佐文太)亀鶴、(千葉藤兵衛)歌六
5.「三月大歌舞伎」(昼の部)3月15日  ***
 : 「明君行状記」(池田光政)梅玉、(青地善左衛門)亀三郎、(妻ぬい)高麗蔵、(弟大五郎)萬太郎、(若党林助)橘太郎、(木崎某)寿治郎、(吉江某)松之助、(筒井三之充)松江、(磯村甚太夫)権十郎、(山内権左衛門)團蔵、「義経千本桜」<渡海屋><大物浦>(渡海屋銀平実は新中納言知盛)仁左衛門、(女房お柳実は典待の局)時蔵、(相模五郎)巳之助、(銀平娘お安実は安徳帝)市川右近、(入江丹蔵)猿弥、(武蔵坊弁慶)彌十郎、(源義経)梅玉、「神楽諷雲井曲毬」<どんつく>(荷持どんつく)巳之助、(親方鶴太夫)松緑、(若旦那)海老蔵、(太鼓打)亀寿、(町娘)新悟、(子守)尾上右近、(太鼓持)秀調、彌十郎、(田舎侍)團蔵、(芸者)時蔵、(白酒売)魁春、(門札者)彦三郎、(大工)菊五郎
 : 「明君行状記」「義経千本桜」は、共に台詞主体で進行する演目。特に「明君行状記」は真山青果の名脚本で台詞のやり取りだけで観客が大いに沸くという珍しい舞台。「どんつく」は江戸情緒を舞踊で紹介するという趣向。演目の組み合わせが良く考えられている公演だった。
6.「三月大歌舞伎」(夜の部)3月24日  **
 : 「双蝶々曲輪日記」<引窓>(南与兵衛後に南方十次兵衛)幸四郎、(濡髪長五郎)彌十郎、(平岡丹平)錦吾、(三原伝造)廣太郎、(母お幸)右之助、(女房お早)魁春、「けいせい浜真砂」<女五右衛門>(石川屋真砂路)藤十郎、(真柴久吉)仁左衛門、「助六由縁江戸桜」(花川戸助六)海老蔵、(三浦屋揚巻)雀右衛門、(くわんべら門兵衛)歌六、(朝顔仙平)男女蔵、(通人里暁)亀三郎、(三浦屋白玉)梅枝、(福山かつぎ)巳之助、(傾城八重衣)新吾、(同浮橋)右近、(同胡蝶)廣松、(同愛染)児太郎、(男伊達山谷弥吉)宗之助、(同田甫富松)男寅、(文使い番新白菊)歌女之丞、(奴奈良平)九團次、(国侍利金太)市蔵、(遣手お辰)家橘、(三浦屋女房お京)友右衛門、(曽我満江)秀太郎、(髭の意休)左團次、(白酒売新兵衛)菊五郎、(口上)右團次
 : 演目のバランス、「引窓}は台詞中心の世話物、「助六由縁江戸桜」は目で楽しむ派手な出し物、の組み合わせが良かった。「助六由縁江戸桜}は初演の300年前から大当たりをとった市川家(成田屋)の十八番。7人の花魁の「花魁道中」を見せるという、当時の観客を魅了した派手で豪華な演出は見事。しかし、現代では、ストーリー展開の乏しい舞台を2時間見せるというのは、いかがなものか?
7.「四月大歌舞伎」(昼の部)4月19日  ***
 : 「醍醐の花見」(豊臣秀吉)鴈治郎、(豊臣秀次)松也、(大野治長)歌昇、(曽呂利新左衛門)萬太郎、(淀殿)壱太郎、(三條殿)右近、(大野治房)種之助、(前田利家室まつ)笑三郎、(松の丸殿)笑也、(石田三成)右團次、(義演)門之助、(北の政所)扇雀、「伊勢音頭恋寝刃」(福岡貢)染五郎、(仲居万野)猿之助、(料理人喜助)松也、(油屋お紺)梅枝、(油屋お岸)米吉、(奴林平)隼人、(藍玉屋治郎助)吉之丞、(桑原丈四郎)橘太郎、(杉山大蔵)橘三郎、(徳島岩次実は藍玉屋北六)桂三、(藍玉屋北六実は徳島岩次)由次郎、(油屋お鹿)萬次郎、(今田万次郎)秀太郎、「一谷ふたば軍記」<熊谷陣屋>(熊谷次郎直実)幸四郎、(源義経)染五郎、(熊谷妻相模)猿之助、(亀井六郎)宗之助、(片岡八郎)竹松、(伊勢三郎、(駿河次郎)弘太郎、(梶原平次景高)錦吾、(堤軍次)松江、(藤の方)高麗蔵、(白毫弥陀六実は弥平兵衛宗清)左團次
 : 「醍醐の花見」は舞踊劇。「伊勢音頭恋寝刃」「一谷ふたば軍記」は人気狂言ではあるが台詞中心の狂言。それぞれ役者は熱演しているが、今一つ盛り上がりに欠け、ちらほらと空席もある。今年に入ってからの共通の傾向。
8.「四月大歌舞伎」(夜の部)4月24日  ***
 : 「傾城反魂香」<土佐将監閑居の場>、(浮世又平後に土佐又平光起)吉右衛門、(女房おとく)菊之助、(狩野雅楽之助)又五郎、(土佐将監)歌六、(将監北の方)東蔵、「桂川連理柵」(帯屋長右衛門)藤十郎、(信濃屋娘お半・丁稚長吉)壱太郎、(義母おとせ)吉弥、(隠居繁斎)寿治郎、(弟儀兵衛)染五郎、(長右衛門女房お絹)扇雀、「奴道成寺」(白拍子花子実は狂言師左近)猿之助、(所化)右近、種之助、米吉、隼人、男寅、龍生
 : ここのところ定番の出し物の組み合わせ。台詞主体の人気狂言二曲と舞踊劇。今年一番の観客の反応。「奴道成寺」は、約30分の舞台を10分ごとにがらりと趣向を変えて飽きさせないような工夫もあり大いに沸いた。全体として、大いに沸いたのは、歌舞伎をよく知っている観客がこの日は多かったからではないか。
9.「團菊祭五月大歌舞伎」(昼の部)5月15日  ***
 : 「梶原平三誉石切」<鶴ヶ岡八幡社頭の場>(梶原平三)彦三郎、(俣野五郎)亀藏、(剣菱吞助)松緑、(奴菊平)菊之助、(山口十郎)巳之助、(川島八平)廣松、(岡崎将監)男寅、(森村兵衛)橘太郎、(梢)右近、(六郎太夫)團蔵、(大庭三郎)楽膳、「義経千本桜 吉野川」(佐藤忠信実は源九郎狐)海老蔵、(逸見藤太)男女蔵、(静御前)菊之助、「魚屋宗五郎」(魚屋宗五郎)菊五郎、(女房おはま)時蔵、(磯部主計之助)松緑、(召使おなぎ)梅枝、(酒屋丁稚与吉)寺嶋眞秀、(岩上典蔵)市蔵、(小奴三吉)権十郎、(菊茶屋女房おみつ)萬次郎、(父太兵衛)團蔵、(浦戸十左衛門)左團次
 : 今公演(昼夜とも)坂東家4名の襲名披露公演と寺嶋眞秀(寺嶋しのぶの長男)の初お目見えとあり、大入り満員。出し物は「梶原平三誉石切」「魚屋宗五郎」と「吉野川」。人気狂言ではあるが、台詞主体の地味。しかし、最近では一番観客が沸いた。今回は、歌舞伎をよく知り・見慣れている観客が多かったためと思われる。一番沸いたのは、寺嶋眞秀の初お目見え。台詞もはっきりし、見事に丁稚を演じ、ポテンシャルの高さとやる気を感じさせた。
10.「團菊祭五月大歌舞伎」(夜の部)5月19日  ***
 : 「壽曽我対面」(工藤佑経)菊五郎、(曽我五郎)彦三郎、(近江小藤太)亀藏、(八幡三郎)松也、(化粧坂少将)梅枝、(秦野四郎)竹松、(鬼王家臣亀丸)亀三郎、(梶原平次景高)橘太郎、(鬼王新左衛門)権十郎、(梶原平三景時)家橘、(大磯の虎)萬次郎、(曽我十郎、(小林朝比奈)楽膳「伽羅先代萩」<御殿>(乳人正岡)菊之助、(八汐)歌六、(沖の井)梅枝、(松島)右近、(栄御前)魁春<床下>(仁木弾正)海老蔵、(荒獅子男之助)松緑<対決>(細川勝元)梅玉、(山名宗全)友右衛門、(大江鬼貫)右之助、(黒沢官藏、(山中鹿之助)廣松、(渡辺外記左衛門)市蔵、(渡辺民部)右團次、(仁木弾正)海老蔵<刃傷>「弥生の花浅草祭」(竹内宿禰・悪玉・国侍・獅子の精)松緑、(神功皇后・善玉・通人・獅子の精)亀蔵
11.「六月大歌舞伎」(昼の部)6月14日  ***
 : 「名月八幡祭」(縮屋新助)松緑、(芸者美代吉)笑也、(藤岡慶十郎)亀藏、(魚惣)猿也、(魚惣女房お竹)竹三郎、(船頭三次)猿之助、「浮世風呂」(三助政吉)猿之助、(なめくじ)種之助、「御所桜堀川夜討」<弁慶上使>(武蔵坊弁慶)吉右衛門、(侍従太郎)又五郎、(卿の君・腰元しのぶ)米吉、(花の井)高麗蔵、(おわさ)雀右衛門
 : 出し物のバランスの良い公演だった。「名月八幡祭」は、新歌舞伎の名作。越後の実直な商人が、深川の人気芸者に一目ぼれし、翻弄される様を結末を描く。適度の動き、大道具の仕掛けも見事で、分かりやすさもあり、大いに沸いた。「浮世風呂」は軽妙なコミカルな動きの踊りで猿之助が熱演、飽きさせない。<弁慶上使>は、忠・孝・義理・人情を描く歌舞伎の典型。弁慶の人情を殺し、忠に徹する姿を描く。やや盛り上がりに欠けた。
12.「六月大歌舞伎」(夜の部)6月21日  ***
 : 「鎌倉三代記」<相川村閑居の場>(佐々木高綱)幸四郎、(時姫)雀右衛門、(三浦之助義村)松也、(阿波の局)吉弥、(讃岐の局)宗之助、(冨田六郎)桂三、(おくる)門之助、(長門)秀太郎、「曽我もようたてしの御所染」<御所五郎蔵>(御所五郎蔵)仁左衛門、(傾城皐月)雀右衛門、(子分梶原平平)男女蔵、(子分新貝荒蔵)歌昇、(子分秩父重助)巳之助、(子分二宮太郎次)種之助、(子分畠山次郎三)吉之丞、(花形屋吾助)松之助、(傾城逢州)米吉、(甲屋与五郎)歌六、(星影土右衛門)左團次、「一本刀土俵入」(駒形茂兵衛)幸四郎、(お蔦)猿之助、(堀下根吉)松也、(若船頭)巳之助、(船戸の弥八)猿弥、(酌婦お松)笑三郎、(お君)右近、(庄屋)寿猿、(老船頭)錦吾、(河岸山鬼一郎)桂三、(清大工)由次郎、(船印彫師辰三郎)松緑、(波一里儀十)歌六
 : 「鎌倉三代記」「一本刀土俵入」という人気狂言の上演。忠孝・義理・人情の絡み合う典型的な歌舞伎の出し物。役者は熱演で、見ごたえもあるのだが、今年一番空席が目立った。
13.「七月大歌舞伎」(昼の部)7月12日  ****
 : 「矢の根」(曽我五郎)右團次、(大薩摩文太夫)九團次、(馬土畑右衛門)弘太郎、(曽我十郎)笑也、「加賀鳶」<本郷木戸前勢揃いより赤門捕物まで>(天神町梅吉、竹垣道玄)海老蔵、(日陰町松蔵)中車、(春木町巳之助)右團次、(魁勇次)男女蔵、(虎屋竹五郎)亀鶴、(昼っ子尾之吉)巳之助、(盤石石松)廣松、(お朝)児太郎、(数珠玉房吉)男寅、(御守殿門次)九團次、(道玄女房おせつ)笑三郎、(金助町兼五郎)市蔵、(妻恋音吉)権十郎、(天狗杉松)秀調、(伊勢屋与兵衛)家橘、(御神輿弥太郎)團蔵、(女按摩お兼)齊人、(雷五郎次)左團次、「連獅子」(狂言師右近後に親獅子の精)海老蔵、(狂言師左近後に仔獅子の精)巳之助、(僧蓮念)男女蔵、(僧遍念)市蔵
 : 出し物のバランスと変化をつけ飽きさせない演出で最近では一番の盛り上がりの舞台だった。
14.「七月大歌舞伎」(夜の部)7月19日  ****
 : 「通し狂言 駄右衛門花御所異聞」(日本駄右衛門、玉島幸兵衛、秋葉大権現)海老蔵、(月本円秋)右團次、(月本祐明)男女蔵、(奴浪平)亀鶴、(月本始之助)巳之助、(傾城花月)新悟、(寺小姓采女)廣松、(奴のお才、三津姫)児太郎、(白狐)勧玄、(駄右衛門子分早飛)弘太郎、(長六)九團次、(逸当妻松ヶ枝)笑三郎、(馬淵十太夫)市蔵、(東山義政)齊人、(玉島逸当、細川勝元)中車
 : 奇想天外な脚本のストーリー展開をよく踏まえた斬新な大道具・演出、海老蔵と勧玄の宙乗りと盛りだくさんで今年一番の盛り上がり、「エビ様」ファンも大いに満足。「シネマ歌舞伎」の予感。
15.「八月納涼歌舞伎」(第一部)8月20日  ****
 : 「野田版 桜の森の満開の下」(耳男)勘九郎、(オオアマ)染五郎、(夜長姫)七之助、(早寝姫)梅枝、(ハンニャ)巳之助、(ビッコの女)児太郎、(アナマロ)新悟、(山賊)虎之介、弘太郎、(エナコ)芝のぶ、(マネマロ)梅花、(青名人)吉之丞、(マナコ)猿弥、(赤名人)亀蔵、(エンマ)彌十郎、(ヒダの王)扇雀
 : 坂口安吾の「櫻の森の満開の下」「夜長姫と耳男」下敷きに書き下ろした「野田版歌舞伎第弾」。素晴らしい舞台装置(美しい色彩の洗練された大道具・小道具)・衣装・軽やかな演出で新しい次元の歌舞伎の創出に成功している。前半は、演出の軽さが気になり、物語の世界に入り込めなかったが、終盤になり、その軽さが布石となりエンディングでメルヘンが成立したということが納得できた。幕が下りても拍手が鳴りやまず、3回のカーテンコールで応えるという歌舞伎としてはこれも異色。
16.「八月納涼歌舞伎」(第一部)8月23日  ***
 : 「刺青奇偶」(半太郎)中車、(お仲)七之助、(赤っぱの猪太郎)亀鶴、(従弟太郎吉)萬太郎、(半太郎母おさく)梅花、(半太郎の父喜兵衛)錦吾、(荒木田の熊介)猿弥、(鮫の政五郎)染五郎、「玉兎」(玉兎)勘太郎、「団子売」(お福)猿之助、(杵造)勘九郎
 : 「刺青奇偶」は良くできた世話物。8月公演は毎年三部制。二部・三部と比べると一番地味な出し物。よくできているが、盛り上がりは今一だった。
17.「秀山祭九月大歌舞伎」」(昼の部)9月15日  ***
 : 「彦山権現誓助剣」<毛谷村>(毛谷村六助)染五郎、(お園)菊之助、(仙斧右衛門)吉之丞、(お幸)吉弥、(徴塵弾正実は京極内匠)又五郎、「仮名手本忠臣蔵 道行旅路の嫁入り」(戸無瀬)藤十郎、(小浪)壱太郎、(奴可内)隼人、「極付幡随院長兵衛」<公平法問諍>(幡随院長兵衛)吉右衛門、(水野十郎左衛門)染五郎、(近藤登之助)錦之助、(子分極楽十三)松江、( ” 雷重五郎)亀鶴、、( ” 神田弥吉)歌昇、( ” 小仏小平)種之介、(御台柏の前)米吉、(伊予守頼義)児太郎、(坂田金左衛門)吉之丞、(慢容上人)橘三郎、(渡辺綱九郎)錦吾、(坂田公平、デ尻清兵衛)又五郎、(唐犬権兵衛)歌六、(長兵衛女房お時)魁春
 : 「八月納涼歌舞伎」の派手で大掛かりな舞台からみると、地味な出し物を揃えた「秀山祭」。「毛谷村」「道行旅路の嫁入り(舞踏)」は観客を飽きさせないようにコミカルな演出が工夫されていたところに努力が現れていた。「幡随院長兵衛」は吉右衛門の迫力で舞台を盛り上げていた。
18.「秀山祭九月大歌舞伎」(夜の部)、9月22日  ***
 : 「ひらかな盛衰記<逆櫓>(船頭松右衛門実は樋口次郎兼光)吉右衛門、(漁師権四郎)歌六、(お筆)雀右衛門、(船頭明神丸富蔵)又五郎、(同灘吉丸郎作)錦之助、(同日吉丸又六)松江、(松右衛門女房およし)東蔵、(畠山重忠)左團次、「再桜遇清水」<桜にまよふ破戒清玄>(清水法師清玄・奴浪平)染五郎、(桜姫)雀右衛門、(奴磯平)歌昇、(奴灘平)種之助、(妙寿)米吉、(妙喜)児太郎、(大藤内成景)吉之丞、(石塚団兵衛)橘三郎、(按摩多門)宗之助、(荏柄平太胤長)桂三、(千葉之助清玄)錦之助、(山路)魁春
 : 吉右衛門・染五郎の熱演が光った舞台。しかし、全体としては、今一つ盛り上がりに欠けた。その理由は、<逆櫓>は102分という上演時間が長すぎて、現代の観客には飽きられてしまうのだろう。30分は短くした方がいいのでは。<清玄>は、清玄が桜姫に横恋慕して、その思いを遂げられずに死に、怨霊となるというストーリーそのものにある。
19.「芸術祭十月大歌舞伎」10月16日  ****
 : 「マハーバーラタ戦記」(迦楼奈・シヴァ神)菊之助、(汲手姫)時蔵、(帝釈天)鴈治郎、(鶴妖朶王女)七之助、(百合守良王子・多門天)彦三郎、(風韋摩王子)亀三、(阿龍樹雷王子・梵天)松也、(汲手姫・森鬼飛)梅枝、(納倉王子・我斗風鬼写)萬太郎、(沙羽出葉王子)種之助、(弗機美姫)児太郎、(森鬼獏)菊市郎、(拉南)橘太郎、(道不奢早無王子)亀蔵、(修験者破流可判)権十郎、(亜照楽多)秀調、(羅陀)萬次郎、(弗機王・行者)團蔵、(大黒天)楽善、(太陽神)左團次、(那羅延天・仙人久理修奈)菊五郎
 : インドの古典「マハーバーラタ」を歌舞伎化した新作。大道具・小道具・音楽・演出にインド色と歌舞伎を上手く融合させて、楽しく観れるように様々な工夫がみられて、その努力が報われた舞台。
20.「芸術祭十月大歌舞伎」(夜の部) ****
 : 「沓手鳥孤城落月」<大阪城内奥殿><城内二の丸><城内山里糧庫階上>(淀の方)玉三郎、(豊臣秀頼)七之助、(大野修理亮)松也、(饗庭の局)、(千姫)米吉、(婢女お松実は常盤木)児太郎、(包丁頭大住与左衛門)亀蔵、(氏家内膳)彦三郎、(松栄尼)萬次郎、「漢人韓文手管始」<唐人話>(十木伝七)鴈次郎、(傾城高尾)七之助、(奴光平)松也、(傾城名山)米吉、(太鼓持長八)竹松、(同善六)廣太郎、(須藤丹平)福之助、(珍花慶)橘太郎、(呉才官)亀蔵、(相良泉之介)高麗蔵、(千歳や女房お才)友右衛門、(幸才典蔵)芝翫、「秋の色種」(女)玉三郎、梅枝、児太郎
 : (夜の部)は、時間配分が良く(それぞれの演目の時間が長すぎない)ため、テンポも早く楽しめた。今年の特徴として「世話物」が多く、テンポが遅く、退屈して途中で眠っている観客が目についたが、今回は、眠っている観客はおらず、空席もなかった。今公演は、今後の「世話物」の演じ方に大事な示唆を与えている。
21.「吉例顔見世大歌舞伎」11月22日  ***
 : (昼の部)「鯉つかみ」(滝窓志賀之介実は鯉の精、滝窓鯉之介)染五郎、(小桜姫)児太郎、(奴浮平)廣太郎、(堅田刑部)吉之丞、(篠村妻呉竹)高麗蔵、(篠村次郎公光)友右衛門、「奥州安達原」<環宮明御殿の場>(安倍貞任)吉右衛門、(袖萩)雀右衛門、(安倍宗任)又五郎、(八幡太郎義家)錦之助、(平儀仗直方)歌六、(浜夕)東蔵、「雪暮夜入谷畦道」<直侍>(片岡直次郎)菊五郎、(三千歳)時蔵、(亭主仁八)家橘、(女房おかよ)齋人、(寮番喜兵衛)秀調、(暗闇の丑松、(按摩丈賀)東蔵、(夜の部)「仮名手本忠臣蔵」<五段目><六段目>(早野勘平)仁左衛門、(女房おかる)孝太郎、(斧定九郎)染五郎、(千崎弥五郎)彦三郎、(判人源六)松之助、(母おかや)吉弥、(不破数右衛門)彌十郎、(一文字屋お才)秀太郎、「恋飛脚大和往来 新口村」(亀屋忠兵衛)藤十郎、(傾城梅川)扇雀、(孫右衛門)歌六、「元禄忠臣蔵 大石最後の一日」(大石内蔵助)幸四郎、(磯貝十郎座衛門)染五郎、(おみの)児太郎、(細川内記)金太郎、(吉田忠左衛門)錦吾、(赤垣源蔵)桂三、(片岡源五右衛門)由次郎、(久永内記)友右衛門、(堀内伝右衛門)彌十郎、(荒木十座衛門)仁左衛門
22.「十二月大歌舞伎」12月13日  ***
 : <第一部>「実盛物語」(斎藤別当実盛)愛之助、(女房小よし)吉弥、(葵御前)笑三郎、(郎党)宗之助、竹松、廣太郎、廣松、(百姓九郎助)松之助、(瀬尾十郎)亀蔵、(小万)門之助、「土蜘」(叡山の僧智纂実は蜘の精)松緑、(源頼光)彦三郎、(侍女胡蝶)梅枝、(坂田金時)萬太郎、(巫子榊)新悟、(太刀持音若)左近、(石神実は小姓四郎吾)亀三郎、(碓井貞光)橘太郎、(渡辺綱)松江、(番卒藤内)亀三、(番卒次郎)片岡亀藏、(番卒太郎)権十郎、(平井保昌)團蔵、<第二部>「らくだ」紙屑屋久六)中車、(やたけたの熊五郎)愛之助、(家主幸兵衛)橘太郎、(家主女房おさい)松之助、(らくだの宇之助)片岡亀藏、「蘭平物狂」(奴蘭平実は伴義雄)松緑、(壬生与茂作実は大江音人)亀蔵、(水無瀬御前)児太郎、(一子繫蔵)左近、(女房折句実は音人妻明石)新悟、(在原行平)愛之助、<第三部>「瞼の母」(番場の忠太郎)中車、(金町の半次郎)彦三郎、(板前善三郎)亀蔵、(娘お登勢)梅枝、(半次郎妹おぬい)児太郎、(夜鷹おとら)歌女之譲、(鳥羽田要助)市蔵、(素盲の金五郎)権十郎、(半次郎母おむら)萬次郎、(水熊のおはま)玉三郎、「楊貴妃」(楊貴妃)玉三郎、(方士)中車
 : 12月は幹部俳優が大挙京都の顔見世に出かけるため、玉三郎をはじめ少人数で留守を守る興行となっている。今年は、関西から幹部俳優が大挙東上した興行となり、良いアイディアで、公演んも盛り上がっていた。「らくだ」は今年一番の笑いを取っていた。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://yosim.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/2746