« 「2019年寄席鑑賞」 | メイン | 「2019年狂言鑑賞」 »

「2019年映画鑑賞」

1.「ガンジスに還る」1月15日 ***
 : インド人にとってのガンジス河の聖地(ペナレス)で死ぬことは夢。輪廻から解脱され自由になれると信じられているから。聖地で死の準備をする人とその家族、人生・家族・仕事の意味を上手く絡めており、優れた作品に仕上がっている。
2.「女王陛下のお気に入り」2月26日 **
 : 「アカデミー賞作品賞」ノミネートということで、期待が大きかったが、ちょっとがっかり。イギリスらしさは良く出ていたが、ストーリーの構えが小さく、いま一つ迫力に欠けた。
3.「グリーン・ブック」3月12日 ****
 : 今年度アカデミー賞作品賞受賞。ニューヨークの有名ナイトクラブで用心棒などを務めるイタリア系アメリカ人の主人公が店舗改装の8週間に超エリート黒人ピアニストに運転手兼用心棒として雇われて、人種差別の激しい南部を演奏旅行でまわるというストーリー。初めは二人で色々な行き違いが生じるが、次第に心が通じ合う過程が見事に描かれている。グリーン・ブックとは人種差別の強い地域で黒人が使えるホテル・レストランのガイドブック。ここ数年作品賞は、なんでこんな作品が受賞するのかということが続いていたが、今回は納得。

4・「ROMA」3月30日 ***
 : 「ヴェネツィア映画祭」金獅子賞、「アカデミー賞」監督賞受賞作品。メキシコシティのROMA地区に住む一家族を通じて時代を描く。家事・育児を家政婦として支える先住民のクレオ。4人の子どもを育てる職業婦人の主婦のソフィア。夫の浮気から離婚へ、クレオの妊娠・出産、学生デモなどを横糸に1970年前後の時代を彷彿させる。
5.「ブラック・クランズマン」4月11日 ***
 : 「アカデミー賞作品賞」ノミネート作品。時代背景は、ベトナム戦争時代、人種差別の激しいコロラドスプリングスの警察に初の黒人警官として主人公が採用される。任務は二つの潜入捜査。一つは、黒人の権利平等を目指す大学生グループ。もう一つは、KKK(白人至上主義の秘密結社)。コメディ仕立てでアメリカの歴史を振り返り、最後に現在の「トランプのアメリカ」と重ね合わせる。
6.「バイス」4月16日 ***
 : 「アカデミー賞作品賞」候補作品。ブッシュ大統領(ジュニア)の副大統領を務めたディック・チェ―ニ―を主人公とした物語。副大統領に上り詰めるまでの執念、大統領・副大統領の権限を拡大し、議会に煩わされずにやりたいことをできるようにしていった過程を描く。そしてその頂点が「大量破壊兵器」を保有するとの名目でのイラク戦争開始。トランプのやりたい放題の下地がここに作られていたことがよくわかる力作。
7.「ムトゥ踊るマハラジャ」5月12日 ****
 : 日本公開20周年記念4Kデジタルリマスター版。日本でインド映画ブームを引き起こすきっかけを作った作品。観客を楽しませるためになんでもやるインド映画。わかりやすく・楽しく・最後にどんでん返しのあるストーリー。歌・踊り・豪華衣裳。「ともかく楽しい」鉄板映画。
8.「キングダム」5月14日 ***
 : コミックの実写版。時代は、中国の戦国時代、7か国が覇権争いを続けている。その中で秦の中での兄弟の王権争いを背景に、奴隷から抜け出すためには武力を鍛え、結果をだすしかないと考え、鍛え合う二人の若者の鍛錬、そして将来は大将軍になるという夢の共有・信頼。ストーリイの面白さを実写版でも見事に可視化、楽しめる作品。
9.「アラジン」6月12日 ****
 : ディズニーの実写版。一言でこの映画を評すると「ディズニー版インド映画」。キャスティングがよく、イメージどうりで、特に主役級のアラジン、姫、ランプの魔人がピッタリ。楽しめた。
10.「天気の子」7月23日 ****
 : 新海監督3年ぶりの新作。なぜ3年の空白があったのか?この作品で伝えたかったメッセージは、人と人との出会い、一人の持つそれぞれ異なった力、人間が本気で何かをやる気になったら世界を変えられるということ。しかし、これを全て伝えようとすると、話(シナリオ)がごちゃごちゃしすぎるので、余分なものをそぎ落とし、ストーリーをスッキリさせること、ならびにそれをこれまでにない映像でどう表現するかに時間が必要だった、のでは?その努力が報われた作品。
11.「イソップの思うつぼ」8月20日 *
 : 「駄作」。何故かも説明する気になれないレベル。以上。
12.「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」9月3日 ***
 : 監督のタランティーノによると、この作品は「映画の映画である」ということになる。今回のポイントは、デカプリオとブラビという2トップを起用、二人を峠を越えて下り坂に差し掛かった役者という役を割り振り、それを生かして、アメリカ映画史をたどりながら、その中に今のストーリーが仕込まれているという工夫を織り込んだ、楽しいエンターテインメント映画。
13.「記憶にございません」9月17日 *
 : 三谷幸喜作・監督作品。史上最低の支持率2.3%の総理大臣が、投げられた石に当たり記憶喪失になったという設定から物語は始まる。その後のストーリー展開は、三谷作品の中では、スムーズに進む。しかし、基本的な発想がステレオタイプ(三谷幸喜の限界)なので全体的には観客も盛り上がりきれずに、欲求不満が残るという作品。唯一、中井貴一の好演が光った。
14.「ライオンキング」9月25日 **
 : 手塚治虫の「ジャングル大帝」のディズニー版。原作があるだけに、全体として良くできているが、評価は割引。
15.「天気の子」7月23日 ***
 : 新開監督の「君の名は」に続く作品。前作品から1年半間が空いたが、この作品の映像イメージを固めるのに時間が掛かったと思われるが、それに値する出来栄え。
16.「ホテル・ムンバイ」10月8日 ****
 : インドの5つ星ホテルがイスラム系テロリストに襲われるという事件を映画化した作品。息をつかせぬ迫力。この作品は、顧客の安全を何としても確保しようとするホテルの従業員と顧客との一体感だけではなく、テロリスト側の言い分とリーダーに使い捨てにされるテロリストの若者を両方描くことで作品に厚みを加え、人間を描くことに成功している。
17.「最高の人生の見つけ方」10月15日 **
 : 吉永小百合と天海祐希共演のロケにやたらお金をかけた娯楽作品。まあ楽しめる出来ばえ。
18.「ジョーカー」10月23日 ****
 : 今年一番の衝撃の映画。現代社会の問題点を鋭く切り取った作品。緻密なシナリオ・演出・主役の演技すべてがかみ合って、いつこういうことが、どこで起こってもおかしくないというリアリティと迫力を生み出している。アカデミー賞作品賞候補レベルの出来ばえ。
19.「ぼくらの7日間戦争」12月17日 ***
 : 宗田理原作を現代にアレンジしたアニメ。子どもは、知恵の限りを尽くして思い切りいたずらをしたり、大人に反抗したりして友情を育みながら成長していってほしいという原作者の願いを生かした作品。
20.「スターウォーズ エピソード9」12月24日 ***
 : 「スターウォーズ」完結編。二つの問いに対し、答えが出される。1)闇の帝国支配に対する反乱軍の闘いの行方、2)ヒロイン「レイ」の素性は?予期した通りの完結編の結論だった。エンターテインメントとしてよくできた作品。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://yosim.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/2764

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)