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第五回「北欧のエネルギー・デモクラシー」

 第五回は、「北欧のエネルギー・デモクラシー」がテーマだった。
 ・ イントロとして、自然とエネルギーをめぐる1970年以降の時代の流れが紹介された。
 1970年代: ローマクラブ「成長の限界」で地球資源の有限性が指摘されたときに,くしくも973年に第一次石油危機が起き、石油資源依存からの脱却が叫ばれ始め、原子力論争、ユートピア的技術の自然エネルギーの模索が行われた。1979年にアメリカでスリーマイル島原発事故が発生し、原子力は政治的に選択肢とはなりえなくなった。
 1980年代: 石油代替エネルギーの追及、R&D段階の自然エネルギー。
 1990年代: 温暖化などの気候変動顕在化ーー京都議定書など新しい環境政策の登場、自然エネルギー普及の成功事例の登場。
 2000年代: エネルギー・セキュリティ: 多様な社会的価値を背景にしながら、自然エネルギーが「本流」へ。
 講師: NPO環境エネルギー政策研究所所長飯田哲也、2006年7月25日

 ・ 次に、スウェーデンにおける原発の動向が報告された。1963年に商業炉操業後,1980年国民投票で原発廃止を決定、1999年に最初の原子炉閉鎖が行われた。国民投票の意義として、「アンチ」から「ステークホルダーによる対話」へと変化したこたが報告された。
 ・ デンマークにおけるエネルギー政策の変遷として、1976年のエネルギーシナリオで政府案と政府案と市民案が提示され、以降政府案は市民案を常に意識しながら、1985年の原発導入計画放棄を含め、一人当たりエネルギー消費量を減少させながら豊かな社会を目指す取り組みが紹介された。
 ・ 自然エネルギー「本流化」の成功事例としてドイツの風力発電が取り上げられた。ドイツでは、1990年に自然エネルギー電力の固定価格制導入により風力発電が爆発的に増加、2004年末発電能力1663万KW/年(日本90万KW)と二位のスペインの約二倍とダントツの世界一位。また、雇用面でも17万人の雇用を創出し、自動車産業を上回る最大の雇用産業となり、大きな成果を上げている。
 ・ もう一つの成功事例として、スウェーデンのバイオマスエネルギーが紹介された。スウェーデンでは、石炭・石油・LPGなどの石化燃料に環境税か課せられ、自然エネルギーへの誘導策の存在、豊富な木材資源を生かした木材チップによるバイオマスエネルギーの急激な拡大、1990-2000年の間の年平均の増加量は小型原発一基分に相当している。
 ・ 最後に「エネルギー事業施策」から「生活者のためのエネルギー政策へ」ということで、日本のエネルギー政策は「エネルギー供給者施策」であり、地域や市民の視点が欠落してきたとの指摘がされた。
 家庭での暖房は、世界で例を見ない石油(の生だき)ストーブ・電気ストーブなどが主流で、エネルギー効率・環境の両面から問題の多い日本の現状と、輻射暖房中心の欧米型の比較がされ、講師がかかわる「グリーン熱ストーブ」の紹介が行われ、プレゼンが終了した。
 * 独断と偏見
 ・ 一時間半のプレゼンを聞き終わっての印象は、「見事に肩透かしをくった」。
 最初の一時間は、イントロの自然エネルギーをめぐる1970年代~2000年代の歴史。残り三十分は、上記のスウェーデン・デンマーク・ドイツのイントロ部分で終了。
 用意された資料35ページ中説明がされたのは9ページ。触れられなかった部分に「北欧のエネルギーデモクラシー」の各論の具体的部分と「日本のエネルギーに求められる方向」の資料があった。
 つまり、今回のテーマの一番興味(情報価値)のあった部分には、準備はしてあったのに触れないという、まことに不思議なセミナーであった。
 ・ マネージメントとプロ意識: 今回改めて考えさせられたのは,“マネージメント”と“プロ意識”ということ。
 + 講師側: 事務局から依頼があった時に、テーマとその狙い・持ち時間(質疑をふくめ一時間半)しらされている。-- 準備はOK.-- いざ話し始めたら、イントロで大半の時間を割き、本題を大幅にカット。
 ・ 何故そうなったかの推測:(前提)講師はプロであり、一時間でどの程度の話ができるかは経験で分かっている。(35ページの資料を用意した場合、1ページ平均約二分で話を進めなければならない。)
 (分析)最初の1ページの資料に約一時間かけて説明。-- 資料の準備はしたものの、今回のテーマでMUSTで触れなければならないことは何かの事前整理がされていないため、勢いのまましゃべり、話が流れた。-- 結果プロとしての話の優先順位付けとタイム・マネージメント能力に欠けた。
 ・ 求められたもの: 今回のテーマのMUSTの押さえどころは、石油・原子力に替わる環境にやさしく持続可能な自然エネルギーをエネルギー源の柱として育てつつある北欧(スウェーデン・デンマーク)の成功事例を紹介し、日本の進むべき方向の提言に結びつける。
 -- 成功事例の説明の中では、市場原理でやっている部分とそうでない部分、亦その取り組みの内容・運動の特徴をソフト面を含めて整理する。
 ・より具体的に: 時間が足りないなら、上記“求められたもの”に絞って話をする。1970年代~2000年代の歴史、原子力発電の動向の話は、時間がなければ、今回はカットしていいし、触れるにしても簡単でいい重要度。
 + PARC事務局: 講師のマネージメント
 ・ 専門家(学者・研究者・弁護士・建築家など)は、放っておくと、自分のやりたいことを自分のやりたいペースでやるものと心得る。
 ・ したがって専門家を自分たちの企画にそって使うには、強力なマネージメントが必要。
 ・ 資料を受け取った時点で、全部に触れる事はほぼ不可能と判断し、どこに重点を置くかの主催者サイドの意向を伝え、企画に沿った内容にガイでしていくのが、プロとしてのマネージメント。

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