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第八回「平和・教育国家コスタリカと反米化する南米」

 第八回は、「平和・教育国家コスタリカと反米化する南米」だった。
・ 「平和・教育国家コスタリカ」誕生のキッカケは、1948年の内戦にあった。その当時、人口100万人の国で2000人が死亡した。
 内戦終了後、その再発を防止するためにはどうすればいいかの議論が徹底して行われた。
 その結果、内戦を起こりにくくするには、「武器をなくす」そして大量の武器を所有する「軍隊をなくす」ことが有効との結論に達した。
 それを実行に移すため、1949年に自主憲法を制定、「永世非武装・積極的中立」を理念とし、具体的には「常備軍の放棄」を決定した。
 これにより、治安維持のために、警察と2000人の国境警備隊のみを有する平和国家が誕生した。
 第八回: 講師 朝日新聞記者 伊藤千尋        2006年10月3日

・ 安全保障については、自衛権は認め、集団安全保障の観点から、米州相互援助条約に加盟している。
 一時期、隣国のニカラグアがコスタリカに侵攻する動きがあったが、米州相互援助条約が機能し、50年以上戦争に一度も巻き込まれずに、平和を謳歌している。
・ コスタリカは、国内で平和維持に努めているに止まらず、積極的に平和の輸出を行っている。
 アリエス大統領は、内戦中の周辺三カ国を訪問、戦争当事者に直接会い、戦争の愚を説き、戦争終結に結びつけた。
 この実績により、アリエス大統領は、ノーベル平和賞を受賞している。
 また、人口400万人の国に,ニカラグアからの難民100万人を受け入れるという、桁違いの懐の深さを見せている。
・ 「教育国家」コスタリカの誕生は、「平和国家」コスタリカと表裏一体をなしている。
 軍隊放棄は、平和希求の理念と同時に、貧しい国が発展していくには、貴重な予算を軍事費などに使う余裕はないという現実的な判断がある。
 国家戦略としてコスタリカが選択したのは教育(人材育成)重視路線。
 軍隊放棄により浮いた軍事費(その当時の国家予算の30%相当)をそのまま教育費に充当し現在(国家予算の約20%)に至っている。
 この結果世界でも有数の教育レベルが実現、国民の10人に1人が教師免状をもち、「兵士の数だけ教師を」というスローガンを達成している。
・ コスタリカのもう一つの素晴しさは「憲法尊重」。
 小学校入学と同時に、憲法教育が始められる。この教育は、徹底的に実践的に行われ、例えば教師が生徒にある状況を設定し、「自分の立場を守るために、憲法をどう使ったらいいか考えなさい」と指示し、生徒で議論させた後、発表させるなどとなっている。
 この結果、国民は憲法違反で自分の権利が侵害されたと感じた場合憲法裁判所に申し出るだけで、弁護士を雇う必要もなく、調査から全て裁判所が処理してくれるという裁判制度の支えもあり、8歳の小学生を始めとして、年間1万2000人が違憲訴訟を起こしている。
 日本との最大の違いは、憲法が日常の生活のなかで日々活用されていること。
・ コスタリカの課題は経済。政治と教育は一流だが、経済はコーヒー・バナナなどの農業主体の経済であり、経済発展をどうやって達成するかが課題である。
 最近、中南米で初めてインテルがコスタリカに進出したが、これは「教育レベルが高く、緻密な作業が出来る労働力が確保できる」というコスタリカの強みを評価してのことである。
・ 日本がコスタリカから学べるものは何か: 国の発展レベル、規模等の違いが大きく、コスタリカの政策をそのまま日本の参考にすることは現実てきでないが、憲法を日本のように棚上げせずに、国民が日々活用していること、また国民・政府が自ら行動を起こし状況を改善・変化させようとしていることは、日本でも大いに学べるはず、と述べて講師は、プレゼンを終えた。
* 独断と偏見
・ 今回は、日ごろ感じていた日本の問題を、具体的に写す鏡を提供されたという意味で、有意義であった。
 平和の担保については、軍隊を放棄しても、自衛権保有は宣言しつつ、集団安全保障体制なしには平和は維持出来ないとの現実認識を踏まえ、米州相互援助条約に加盟した。
 軍隊放棄実施後、ニカラグアがコスタリカを侵攻する動きを見せたが、この集団安全保障条約が機能し、防衛軍派遣の動きを示したため、ニカラグアは侵攻を断念した。
 また、周辺国で戦乱が続けば、負けた側が難を逃れて自国に流入、これを追った勝利軍が国境を越えて襲来、いつ戦争に巻き込まれるか分からないとの現実認識の下に、周辺三ヶ国の内戦停止を働きかけ、これを実現させた。
 理想論と現実論のバランスの良く取り、かつそれを実現する行動力を合わせ持つ。
 日本の状況を大きく括ると、現実認識で自衛権・集団保障に必要を認めない勢力(=現実認識の欠けている)がいまだに存在し、他方自衛権・集団保障の必要性を認める勢力は、現状に甘んじ、将来のあるべき姿を描き・その実現に向けて行動を取っていくという理想を欠いている。
* 独り言
 ・ 今回の講師の話の中で、そのおおらかさに、極楽トンボが大いに感心したところが二点あった。
 ・ コスタリカの失業率について質問したところ、「調べたことがない」との回答であり、これが意味するものは、「下々にとって、政治の最重要課題の一つが雇用問題である」との認識に立っていないとの講師のスタンスを示すものと受け止められる。
 ・ 二点目は、「税金をどう使うかが、政治のフィロソフィーの問われる一番重要なところである」というおおらかな発言。
 「税金をどこから・どのくらい取り、それを何に・いくら使うかは、政治の基本的な機能である」と思うのだが?
 政治の一番大事なところは、「どんな国を目指すのかのヴィジョンを明確に示し」(安倍さんみたいに「美しい国日本」というのは、文学的抽象論にすぎず、ヴィジョンとは言えない)、それを、どんな基本的考え・理念で実現していこうとするのか、ここがフィロソフィーの問われるところなのだ。
 ・ こんな細かいことを言っていたのでは、「いい極楽トンボにはなれない」と、大いに反省した一日であった。

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