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第四回「戦場の医師ハッサン・バイエフーー戦争・平和・人権」

 第四回は「戦場の医師ハッサン・バイエフーー戦争・平和・人権」だった。
・ 今回の講師の医師ハッサン・バイエフは、第一次ならびに第二次チェチェン戦争下で六年間負傷者の外科治療にあたり、亡命を余儀なくされ現在はアメリカに在住している。
・ チェチェンとは: 北コーカサス地方に位置し、南をグルジアと接する以外は周囲をロシアに囲まれている。400年以上の歴史を有し、古代からの伝統を守リ、独自の文化・習慣・言語を持つ約100万人の人口の民族。産業は石油関連工業が発達している。
・ 第一次チェチェン戦争は、1994年12月に勃発約一年半で終結した。第二次チェチェン戦争は1999年9月に勃発泥沼化している。
・ 第四回「戦場の医師ハッサン・バイエフーー戦争・平和・人権」    2006年11月18日

・ チェチェン戦争の理由としては、1)エリツィンとプーチンの大統領選挙対策・戦争遂行による利権確保を目指す軍部・情報機関の存在、2)石油資源とカスピ海油田からのパイプラインがチェチェンを通過しているため,ロシアの石油利権確保があげられる。
・ バイエフ医師によると、第一次チェチェン戦争も悲惨だったが、このときはまだ医療・人権などの各種国際支援団体やジャーナリストが滞在を許されていたため、支援も得られたが、第二次チェチェン戦争ではこうした国際支援団体の滞在も許されず、残虐性において大幅に悪化した。
 この結果、12年間の戦争で、100万人のチェチェン人のうち25万人が死亡・行方不明となり、50万人が亡命を余儀なくされている。
 また、都市だけではなく国の全域にわたり人の居住区は破壊され、インフラもほぼ全壊状態になっている。学校・病院の八割が破壊された。このため人々の生活は困難をきわめている。
・ チェチェン戦争は、ロシアが攻撃対象はテロリストの拠点との発表を広く行っているため、そう受け止めている人が多いが、事実は、攻撃の対象になっているのは一般市民。
・ バイエフ医師は戦争が始まってからの六年間にわたり、銃撃を受ける病院で負傷者の治療にあたった。そのピークには、48時間一睡もせずに67件の手足切断手術7件の頭蓋切開手術を行った。
 あまりの負傷者の多さに、薬品・医療器具も2~3ヶ月で底をつき、毎日訪れる20=40人の負傷者の治療を知恵を絞り、日常品を活用して行った。手術用の糸の代わりに裁縫用の糸・消毒薬の代わりに食塩水・麻酔薬の代わりに鎮痛剤・手術用鋸の代わりに家庭用糸鋸を使用など。
 異常時には,人間の体は,平常時とは異なった反応を示し、生き抜く力を備えているということを学んだ。抗生物質を投与できなくても、化膿せずに傷が治る。手足の切断手術うけた患者が、歯を一本抜いたのと同じような感じで手術室を立ち去るなど。
・ 今年2月に6年ぶりに1ヶ月ほど国に戻ってきた。チェチェン人の顔は、戦争を映しており、見るのがつらかった。人々の顔は皺・白髪に覆われ、顔を見て年齢を判断するのが難しかった。6年間に改善は基本的には見られなかった。
 復興活動もロシアからの予算と石油利益の一定割合を原資として始まっているが、腐敗がひどく、お金が注ぎ込まれても、その行き先が分からず、復興に結びついていない。
 学校・病院のごく一部(全体の数パーセント)が修復されたレベルで、人手も足りず(亡命・死亡)なかなか進まない。
・ 残された最大の問題は、将来を背負う子どもたちの問題。戦争のショックによる神経症1万人以上,手足切断1万4千人、失明2千人、耳が聞こえない400人などで結核にかかっている子供も多い。
 最優先で、子供たちへの治療・教育の取り組みが必要。子供の病院を支援するため、アメリカの友人たちと「チェチェンの子供達国際委員会」を設立した。
・ 日本人への期待は、まず無関心ではいてほしくない。そして、ほんの少しの支援でもチェチェンの人々にとってはかけがいのないものであり、1)子供への支援、2)若者の教育、3)人道支援をお願いしたい。
* 独断と偏見
・ チェチェンの状況については,日本ではほとんど報道されることもなく、たまに報道されてもロシア政府の発表にそった「テロリスト拠点攻撃」という内容だった。
 今回、実際に戦争を経験し、多くの負傷者の人命を救ったバイエフ医師の話は生きた情報でインパクトも大きかった。
 チェチェン戦争は、ロシアによって仕組まれたチェチェンの植民地化、そのためのチェチェン人虐殺に他ならない。
 このことは、最近の二つの事件、「チェチェンの真実」を報道し続けたアンナ・ポリトコスカヤ記者の10月7日の暗殺、チェチェン戦争は「ロシアの自作自演」との暴露をしたイギリスに亡命中の元FSB(連邦保安局)中佐リトビネンコの11月1日の毒殺未遂事件によっても強く裏付けられた。
・ われわれに出来るのは、バイエフ医師もいうように、チェチェンに関心を持ち自分に出来る支援を行うことだろう。

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