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「2016年狂言鑑賞」

1.「横浜狂言堂1月公演」1月10日  **
 : 「解説」野村万禄、「二人大名」(大名)能村晶人、(大名)野村虎之助、(使いの者)野村万蔵、「宝の槌」(太郎冠者)野村万禄、(主)野村万蔵、(すっぱ)河野佑紀
 : 野村万禄の「解説」は粗筋に加え、分かりにくい台詞の説明をするという親切なものだったが、面白みがなかった。その理由の一つは、「芸談」的な要素がなかったからか?狂言は2曲とも良く知られた演目だが、今ひとつ盛り上がりに欠け、観客の反応もあまりよくなかった。
2.「萬狂言冬公演」1月24日  ***
 : 「解説」能村晶人、「二人袴」(聟)野村眞之介、(親)野村万禄、(舅)小笠原匡、(太郎冠者)野村虎之助、「素囃子」、「節分」(鬼)野村万蔵、(女)山本則孝、「木六駄」(太郎冠者)野村萬、(茶屋)善竹十郎、(主)能村晶人、(伯父)野村万蔵
 : 「解説」は、今回の特色である「大蔵流・和泉流異流共演」と演目の粗筋を中心としたもので、無難。「二人袴」は観客も大いに盛り上がった。その要因の大半は、野村眞之介(野村万蔵三男)を聟役に起用したこと。見るからに子どもなので、親に同行を頼む聟の心細さ・ぎこちなさ、しかし聟なので太郎冠者には主人的立場での物言いをするというギャップが演じなくても出ていた。「節分」は野村万蔵・山本則孝が力を入れて演じたが、今ひとつ盛り上がりに欠けた。「木六駄」は、野村萬の熱演に観客が素直に反応し、大いに盛り上がった。特に大雪の中12頭の牛を追って峠を越えるという設定をその姿が目に浮かぶように演じる力量は見どころがあった。和泉流・大蔵流二流交流という異色の企画も良かった。

3.「横浜狂言堂二月公演」2月14日  ***
 : 「解説」高野和憲、「痩松」(山賊)月崎晴夫、(女)岡聡史、「泣尼」(僧)野村萬斎、(施主)竹山悠樹、
   (尼)高野和憲
 : 何といっても今公演の圧巻は、「泣尼」。舞台全体を大きく使い演技を大きくみせる考え抜かれた演出、野村萬斎の切れのあるカリスマ性のあふれる演技。会場も敏感に反応し、大いに盛り上がった。
4.「萬狂言春公演」4月10日  ***
 : 「解説」小笠原匡、「入間川」(大名)野村万蔵、(太郎冠者)の村拳之介、(入間の何某)の村又三郎、「川上」(男)野村萬、(妻)野村万禄、「素囃子 獅子」、「猿聟」(猿聟)野村虎之介、(舅猿)野村万蔵、(太郎冠者猿)野村眞之介、(姫猿)野村晶人、(供猿)小笠原匡・河野佑紀・吉住講・野村万禄
 : 「川上」は、盲目の男が霊験あらたかな地蔵に願をかけ、見事それが成就し目が明くが、悪縁である妻と別れるという条件をつけられる。その条件を破ればまた盲目に戻るといわれる。男はそれを妻に伝えるが妻は納得しない。そこで、男は盲目に戻っても、今までと変わらないと考え、妻と暮らすことを選ぶという狂言。野村萬の熱演が見事だったが、筋が地味で、大半が萬の独白であるため、動きに乏しいため、寝ている観客が多く、気の毒だった。
 「猿聟」は、8人と役者を猿の面をつけて登場させ、台詞の半分は「キャアキャア」という猿の鳴き声という賑やかな狂言。ストーリー性は乏しいが、華やかさを十分に味あわせてくれた。
 「川上」と「猿聟」を組み合わせたところに、今公演の工夫が感じられた。
5.「横浜能楽堂100回記念公演」(昼の部)、4月29日  ***
 : 「素袍落」(太郎冠者)茂山千五郎、(主人)茂山正邦、(伯父)茂山千三郎、「川上」(盲目の夫)野村
万作、(妻)高野和憲
 : 今回の公演は、「横浜能楽堂普及公演」の100回を祝い、(昼の部)と(夜の部)の特別公演として企画されたもので、狂言界の人間国宝クラスの重鎮が総出演という豪華版。
6.「横浜能楽堂100回記念公演」(夜の部)4月29日  ***
 : 「入間川」(大名)野村萬、(太郎冠者)能村晶人、(入間の某)野村万蔵、「通円」(通円の霊)山本東次郎、(旅僧)山本凛太郎、(所の者)若松隆
7.「横浜狂言堂六月公演」6月12日  **
 : 「解説」深田博治、「隠狸」(太郎冠者)高野和憲、(主)中村修一、「筑紫奥」(丹波国の百姓)深田博治、(筑紫奥の百姓)月崎晴夫、(奏者)石田幸雄
 : 2曲とも熱演ではあるが、今一つ盛り上がりに欠けた。和泉流の公演にそうした印象が多いと、なぜか思える。
8.「横浜狂言堂七月公演」7月10日  ***
 : 「寝音曲」(太郎冠者)山本則俊、(主)山本則重、「蜘盗人」(盗人)山本泰太郎、(有徳人)山本東次郎、(太郎冠者)山本則秀、(次郎冠者)山本凛太郎、「解説」山本東次郎
 : 「寝音曲」はいかにも「狂言らしい」一曲。(太郎冠者)山本則俊がいい味を出して、大いに笑わせてくれた。「蜘盗人」は「連歌」の「徳」をたたえる狂言。「連歌の当番」に当たった男が、貧乏でお金がなくて、その費用を稼ぐために泥棒に入るが、蜘蛛の巣にひっかかり捕らえられる。殺されても仕方がないところだが、その盗人の連歌に感じた主人は、命を助けるだけではなく、客としてもてなすだけではなく、「連歌会」の費用も与えて返す。「解説」の山本東次郎のサービス精神にはいつも感心されられる。いろいろな人の「解説」を聞くが、一番充実している。今回の小舞は横浜市歌(森鴎外作詞)に謡(曲)をつけて踊るという大サービス。
9.「横浜狂言堂九月公演」9月11日  ***
 : 「解説」小笠原匡、「柿山伏」(山伏)野村拳之介、(畑主)野村万蔵、「蚊相撲」(大名)小笠原匡、(太郎冠者)河野佑紀、(蚊の精)炭光太郎
 : 「解説」は、「萬狂言」流に粗筋以外に触れないという内容であったが、分かりやすくユーモアも交え、最近の「萬狂言」の解説では、一番良かった。「柿山伏」「蚊相撲」とも、面白く見せようとする努力が垣間見えた。「萬狂言」の演じる狂言は、「演技技術は高いが、面白くない」という特徴が顕著だが、新しい方向を目指しているのか、今後を見守っていきたい。
10.「横浜狂言堂十月公演」10月9日  ***
 : 「解説」石田幸雄、「文荷」(太郎冠者)竹山悠樹、(主)岡聡史、(次郎冠者)高野和憲、「舟渡婿」(舅・船頭)石田幸雄、(婿)内藤連、(姑)深田博治
 : 石田幸雄の番組紹介は、分かりやすく、ポイントをついており良かった。「文荷」「舟渡婿」は有名な曲を無難に演じていた。「舟渡婿」は船に乗り込むところ、乗った後の揺れの表現に狂言独特の演技がみられるが、「京劇」の洗練された表現とはまた違い面白かった。
11.「萬狂言秋公演」10月10日  ***
 : 「解説」野村万蔵、「樋の酒」(太郎冠者)野村萬、(主人)野村拳之介)、(次郎冠者)能村晶人、「茶壷」(すっぱ)野村万蔵、(中国の者)大藏彌太郎、(目代)山本泰太郎、「奈須与市語」河野佑紀、「釣針」太郎冠者)野村万禄、(主人)野村虎之介、(奥様)野村眞之介、(腰元)能村晶人、吉住講、山下浩一郎、泉愼也、炭光太郎、(妻)小笠原匡
 : 野村万蔵の「解説」は、10分で4曲を簡潔に紹介。「茶壷」は和泉流と大蔵流の異流公演。敢えてどちらかの演じ方に統一することなく、両派の違いを見せたのは良かった。「奈須与市語」は、河野佑紀が野村万蔵に弟子入りして5年を終え、一人前の狂言師としてのデビューの初演。一人四役を演じる難しい語り。後見(野村万蔵)に出番をつくる(台詞を3回教えてもらう)という愛嬌ある舞台だった。「釣針」は台詞・演技が分かりやすい曲でこの日一番の笑いを取っていた。
12.「横浜狂言堂11月公演」11月13日  ***
 : 「解説」能村晶人、「清水」(太郎冠者)野村万蔵、(主)河野佑紀、「萩大名」(大名)野村万蔵、(太郎冠者)野村虎之助、(茶屋)能村晶人
 : 「解説」は、「萬狂言」流の粗筋中心。「清水」「萩大名」観客から若干の笑いがこぼれ、演者がほっとしている雰囲気が伝わって来た。
13.「横浜の能」11月26日  ***
 : 「放下僧」(小次郎の兄)佐々木多門、(牧野小次郎)大島輝久、(利根信俊)館田善博、(信俊の従者)石田幸雄、「猿聟」<狂言>(聟猿)野村萬斎、(舅猿)深田博治、(太郎冠者猿)月崎晴夫、(姫猿)高野和憲、(伴猿)中村修一、内藤連、飯田豪、「六浦」(里の女、楓の精)野村四郎、(旅僧)殿田謙吉、(従僧)大日方寛、梅村昌功、(里人)竹山悠樹
 : 「放下僧」「六浦」能は、観ても良く分からない。直感的にこのままでは、ダメではないかという印象のみが残る。「猿聟」は台詞が少なく、動きの大きさ・面白さを愉しむ一曲。野村萬斎の舞台は、いつも工夫がみられ、楽しみが大きい。

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