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「2018年映画鑑賞」

1.「キングスマン ゴールデン・サークル」1月9日  ***
 : このシリーズの愉しみは、イギリス流対アメリカ流の比較・揶揄。今回は、世界の麻薬マーケットを支配するゴールデン・サークルに英米のチームが立ち向かい、サークルを潰滅させるという物語。映画は、いきなりのカーチェイス・アクションで始まり、観客は一気に物語の世界に引き込まれるという入りも良い。
2.「ジオ・ストーム」1月23日  ***
 : 異常気象による災害が頻発する地球の気候を安定させるために、世界17か国の科学者が協力し宇宙から衛星でコントロールするシステムを確立・運営し始める。しかし、このシステムの故障に見せかけて世界18都市を破壊し権力を手に入れようとする企てが発生する。リアリティがあり、楽しめるエンターテインメント映画。

3.「ジュピターズ・ムーン」2月6日  ***
 : 空中浮遊の能力を持つ難民の少年を支える医師を中心とした物語。見どころは、空中遊泳する少年のショット。これまでの映画にないシーンが迫力。ストーリーが今一なのが残念。
4.「スリービルボード」2月13日  ****
 : 作品賞をはじめ2018年アカデミー賞6部門にノミネートされている作品。南部の田舎町で娘が強姦され・焼き殺されたが捜査が一向に進展しないのに業を煮やした母親が道路沿いの3枚の看板に広告を出すところから物語は始まる。この広告からストーリーは思いがけない展開をとげる。アメリカ南部の社会(人種問題・閉鎖的な住民関係などに)と夫婦・親子・恋人・友人などの様々な人間関係を織り交ぜ鮮やかにアメリカ社会の断面を切り取りながら物語をぐいぐい進めていく脚本は素晴らしい。作品賞・脚本賞・主演女優賞にノミネートされるのは納得。
5.「15時17分パリ行き」3月2日  ***
 : テロリストの襲撃を受けた高速列車でたまたま乗り合わせたアメリカの海兵隊員3人が犯人を制圧するという実話をイーストウッド監督が映画化。主人公の生い立ちを丹念に描くことにより、この時、この場での事件に遭遇し、制圧することが必然であることを描いている。
6.「シェイプ・オブウォーター」3月6日  ****
 : 今年度アカデミー賞作品賞等多数の賞を獲得した作品。幼いころ声を失いアメリカの宇宙研究センターで掃除婦として働くヒロイン。そこにアマゾンんで捕獲された正体不明の生き物が運び込まれてくる。孤独なヒロインが手話で話しかけるとそれを理解し、音楽にも反応する。そして、いつしかヒロインは恋に落ちる。ところがこの生き物を殺処分するとの決定が下される。そこでヒロインが取った大胆な行動は?おとぎ話的ストーリーの作品を不自然さなく楽しい娯楽作品に仕上げている。
7.「ナチュラルウーマン」3月20日  ***
 : 今年度アカデミー賞外国映画作品賞、ベルリン映画祭銀熊賞受賞作品。同棲するパートナーが心臓発作で急死したヒロインが警察・パートナーの妻をはじめとする家族などから差別嫌がらせを受けながらも毅然と自分を貫いていくという物語。このヒロインは、実はトランスジェンダーの女性であるというのが分かりずらいのが残念。
8.「バーフバリ 王の凱旋」4月2日  ***
 : インドで映画興行収入歴代一位を記録した作品。いかにもインド的な大規模エンターテインメント作品。アナログ的な大物量作戦も圧巻。気楽に楽しめるのがいい。
9.「ウインストン・チャーチル」4月10日  ****
 : 今年度アカデミー賞主演男優賞獲得作品。第二次世界大戦開始時、ナチスの怒涛の進撃により、ベルギー・フランスが陥落、イギリスの全陸軍兵士30万人がダンケルクに追い詰められ全滅の危機が迫る。戦時内閣は、徹底抗戦を訴えるチャーチルが、ヒトラーと和平交渉を進めるべきという他閣僚と対立孤立する。チャーチルの人柄に焦点を当てながらいかに国民の総意をまとめていくかを描いた力作。
10.「レディ、プレイヤー1」5月8日  ***
 : ヴァーチャルのゲーム・ワールドで熱狂する人々。この世界を作り上げたレジェンドが死に、その後継者に三つのゲームをクリヤーした者を選び全財産を譲ると告げる。この競争に勝つために激しい戦いが巻き起こる。この戦いは、バーチャル・ワールドで始まるが、次第にリアル・ワールドでの戦いも巻き広げられる。ストーリーの組み立ても良く、大いに楽しめる。
11.「万引き家族」6月3日 ****
 : 今年度カンヌ映画祭最高賞受賞作。久しぶりに、インパクトのある日本映画に出会えた。不思議なパワーをもった作品。祖母の年金に頼って夫婦と子ども3人の家族計6人が狭い家で暮らしている。それぞれの事情で仕事ができなくなった夫婦が足りない家計費を補う手段は、父親と子どもたちの万引き。しかしこの家族の絆の強さは並大抵ではない。その秘密は、家族のやさしさと思いやり。物語の後半で、3人の子どもたちは全く夫婦との血のつながりのない家族であることが明かされる。家族の絆は、何によって生まれるのか、常識に反した環境を設定することによって、是枝監督は鋭く問い、その答えを用意する。この映画の力は、ストーリー構成の確かさと主役たち、リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林の演技力が相まって生み出された稀有な作品。
12.「犬が島」6月8日 ****
 : 「桃太郎」を現代風にパロディ化、日本を知り尽くした外人による、日本の要素を前面に押し出しながら、しかも世界各国の観客に受け入れやすい(グローバル化)ということを両立させるチャレンジを見事に成功させている。
13.「空飛ぶタイヤ」6月20日 ***
 : 運送会社の大型トラックのタイヤが外れ、主婦が死亡する。トラックの製造会社は事故原因を運送会社の整備不良と断定する。納得のいかない運送会社の社長はリコール隠しを疑う。巨大企業に立ち向かう困難を鋭く描く。筋は良くできているが、重たい展開がチョット残念。
14.「パンク侍、切られて候」7月3日 ****
: 徹底したパロディ化路線。日本映画でこれをやると上っ滑りに終るケースが多いが、この映画は見事に成功させている。その二大要因は、脚本とキャスティング。特にキャスティングは登場人物のイメージを的確に把握しそれを演じきる役者を選びきっている。
15.「ミッションインポッシブル」8月12日 ****
 : シリーズ第4作。息もつかせぬアクション場面の連続。徹底したエンターテインメント映画として見事に成功。
16.「カメラを止めるな」8月21日 ***
 : 上映当初は都内で公開はわずか2館。口コミで評判が広がり、上映館が増えていったという珍しい作品。相鉄ムービル(横浜)で観たが観客の多さに驚かされた。評価が分かれる映画。
17.「散り椿」9月25日 ***
 : 夫婦の絆を藩内の不正を糺す動きと絡めた時代劇。岡田准一が熱演。殺陣が新鮮。
18.「日日是好日」10月16日 ***
 : 20歳でお茶を始めたヒロインが44歳で「日々是好日」を生きることを実感するまでの四季と人生の移ろいを丁寧に描く。茶の世界・心を描くという難題を上手くさばいている。樹木希林が茶道の師匠を演じる伊作。
19.「宇宙の法 黎明編」10月30日 **
 : 幸福の科学の教宣映画。このシリーズはダイレクトに教宣をせずに、あるストーリーの中に巧妙に言いたいことを織り込むというパターンが多く、そのすり替えに興味を追って鑑賞するのが楽しみだったが、今回はベタに来たので拍子抜け。「強者が弱者を支配するのが、宇宙の法」という主張に対し、「強者は弱者を守るのが役割(ノブレス・オブリージュ)、人間は愛によって結ばれ、切磋琢磨して成長することによりより良い地球文明をつくることができる」と主張。
20.「華氏119」11月6日 ****
 : 「119」は2年前、トランプ大統領が大統領選の勝利宣言をした日。クリントン候補が圧勝し、初の女性大統領誕生間違いなしとみんなが見ていた中で、なぜトランプ候補が勝利したのかを分析。あらゆる手段を用いて共和党の他候補を蹴落とし、傍若無人に違法行為も交えてクリントンに迫る。この勝利の背景には、オバマ前大統領をはじめとする民主党幹部たちの有権者を欺く行為があったことも指摘。今のトランプの登場はヒットラーの初期に類似、いま「NO」の声を上げないとナチスの二の前になると指摘。
21.「ア・ゴースト・ストーリー」11月20日 ***
 : 家に居ついたゴーストは理解できるが、同時に歴史をさかのぼって居ついているというのは、理解できなかった。
22.「斬」11月28日 ***
 : 塚本晋也監督の時代劇初挑戦作品。殺陣などに新しい味を出そうという意欲は感じられたものの、物語全体のふくらみが今一つだった。
23.「僕の帰る場所」12月11日 ***
 : 日本での外国人の実態をドキュメンタリー風に仕立てた作品。ミャンマーから難民として妻と男の子2人と一緒に日本にやって来た家族を中心に描く。主人は何回も難民申請を行うが、承認されないという不安定な立場で、家族を支えるため居酒屋で働き生活費を稼いでいる。この不安定な状態に妻は怯え、不眠症になり、ついには子どもを連れて帰国、兄の家に転がり込む。長男は日本に帰りたがり、次男はすぐに父親と暮らしたいと泣く。今の滞日外国人の一つの典型的な状態を知らせる作品。
24.「パッドマン」12月20日 ***
 : インドの実話にもとづいた映画。新婚の妻が生理になると汚い襤褸切れを使用していること、また多くのインド人女性がそのために感染症にかかったり、死んだりしていることを知り、妻にナプキンを買う。しかし妻はそんな高額なものは使えないと断る。それなら自分で安いナプキンを作ろうと試作品を作り、妻・医大生などに試してもらい改善を図るが上手く行かない。同時に、男が生理について話し、ナプキンを自分でも試していることが村で恥知らずだと大騒ぎになり、妻も女性家族も恥に耐え兼ね家を出る。そこで主人公は、これでは終われないと一念発起。あとは涙涙のストーリー展開。

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