« 2014年09月 | メイン | 2015年04月 »

2015年01月05日

2015年映画鑑賞

1.「天国はほんとうにある」1月5日     **
 : 事実にもとづく映画。4歳の少年が体験した「天国に行き、そこで見・逢った人たち」のことを伝える。最初は「臨死体験」の物語かと思わせるが、全く違う。4歳の少年が言うことを信じるか、信じないか、「神は死んだ」21世紀に、あらためて「天国」の存在を問う作品。少年の父親が牧師であり、舞台の大半がその教会ならびにそこに集うキリスト教の信者たちとの付き合いであるが、「天国」の存在を押しつけずに、判断を個々の信者ならびに観客に委ねるというスタンスを崩さないことによって、映画として成功している。
2.「サンバ」1月7日               **
 : フランスにおける不法移民問題をテーマとした映画。不法移民とその支援者の活動・生活を描く。公式な滞在許可を取得するための手続き、不法移民の仕事・生活、その中で育まれる人間関係をリアルに描く。暗くなりがちなテーマであるが、観終わった後には、爽快感が残るのが、監督の並々ならぬ力量の証。その秘密は、年齢・男女・人種を超えてのコミュニケーション・つながりを描けていることと、ウイットのきいた会話にあるのだろう。

3.「王の涙」1月13日   **
 : 挑戦22代王イサンの物語。イサンの物語は、テレビの連続ドラマにもなり、これは1年にわたる長期だったため、話が進まずイライラがつのったが、この映画はテンポよくダレずに進み、楽しめる娯楽映画に仕上がっている。
4.「サン・オブ・ゴット」1月13日  *
 : 映画中盤までは、聖書の記述に忠実な物語構成だったが、終盤、イエスの逮捕・処刑についての場面で疑問が生じた。逮捕・処刑についは諸説あるが、この映画ではもっとも一般的な説、すなわち、イエスを処刑したのはユダヤ人の宗教指導者と民衆の意志であり、ローマ人の意志ではない、という説を取り入れている。ローマの提督ピラトは、二人の罪人、イエスと盗賊の内1人を赦すので、どちらを死刑にするかを民衆が選ぶように命じる。そして民衆はイエスの処刑を選ぶ。しかし、それまで熱狂的にイエスを支持した民衆がなぜその決断をしたのかの説明がなく違和感が残った。また、イエスの死の意味が何だったのかについても説明もなく、観終わった後に後味の悪さ(基本的な疑問)が残る作品だった。
5.「トラッシュ」1月14日   ***
 : ブラジルの小説に手を入れて作られた作品。ブラジルのゴミ山で暮らす3人の少年を主人公とする物語。ブラジルの貧困・政治家・警察の腐敗をリアルに描くと同時にストーリー的にも思わぬ展開に観客を引き込み、エンターテインメント作品としても成功している。観た後に爽快感が残るのも良い。
6.「薄氷の殺人」1月14日  **
 : ベルリン映画祭グランプリ・主演男優賞獲得の中国のミステリー映画。ある女に近づいた男が次々と殺され、バラバラにされた遺体が離れた場所で見つかる。その謎解きが映画のストーリー。ストーリーの大筋の流れはいいが、不自然な流れが気になった部分があり、作品に没入出来なかった。
7.「96時間 レクイエム」1月15日   **
 : 良くできた娯楽作品。ストーリーの流れに無理がなく、安心して楽しめた。
8.「ミンヨン 倍音の法則」1月19日   **
 : ミンヨンという韓国人で韓・日・英の三ヵ国語に堪能で音楽好きな女の子(大学院生)を主人公とする映画。真実と歴史には夢の中でしか近づけないという信念をもつ女の子。邯鄲の夢ではないが、うたた寝の間に夢で見た、音楽(モーツァルト)と戦争の歴史を巡る日本への旅を描いた映画。評価を**(***ではない)にしたのは、場面転換で、この場面は何を言いたいのだろうか、と考えてしまうことが多く、その都度、映画への没入が途切れてしまったから。(倍音=ハーモニー)
9.「ジミー、野を駈ける伝説」1月22日  ***
 : 現在に至る北アイルランド問題の初期の時代を背景に作られた作品。イギリスの統合・支配下のアイルランドは、第一次世界大戦に合わせて独立戦争を起こす。1922年の条約により、南アイルランドは独立を果たすが、北アイルランドはイギリス統治下にとどまる。しかし、宗教的にはカトリック教会が影響力を有するという複雑な状況にあった。映画の主人公ジミーは、イギリス・カトリック教会の支配からの自由を求めて活動する場所として、集会所を開設する。この集会所の名前が「Jimmy‘s Hall」(原画の題名)。しかし、
民衆の支持が集まれば集まるほど、イギリス当局・カトリック教会・ファシストの圧力も強まり、逮捕目前で、アメリカに逃れ、10年後に戻り、集会所を再開する。集会所での活動が再開されると民衆は活気を取り戻し、これを危険視した旧勢力は、集会所を焼き討ちし、弾圧を強め、指導者のジミーを裁判もせずにアメリカに国外追放にする、というのが映画のストーリー。ジミーの人物像を鮮明にしかつ厚みを増しているのに重要な役割を果たしているのが、敵役であるカトリック司祭の存在。彼を自分の立場を離れて人間の器を評価できる人物として描くことにより、ジミーの人間的魅力を打ち出すことに成功している。この映画の狙いは二つ。1)いまだに北アイルランドを併合し続けるイギリスへの抗議、2)新自由主義が圧倒的影響力を有し、拝金主義が大手を振ってまかり通る現代の世相を批判、これに代わる選択肢として、共同体の絆を守り、金銭以外の人間の諸活動に価値を置く共生社会を提示すること。映画としても、抽象的な議論ではなく、生活を前面に押し出す描写を中心に構成することにより、逆に説得力を増し、成功している。また、こんな簡単な英語でこれだけの内容の会話が出来るのかということがわかり楽しかった。
10.「アニー」1月27日   **
 : 安心して観ていられるエンターテインメント作品に仕上がった。この種の映画にありがちなステレオタイプを避けようと、主要登場人物の人物像に幅を持たせようという試みに好感がもてた。
11.「おみおくりの作法」2月2日  ***
 : 日本語のタイトル「おみおくりの作法」は「送りびと」にあやかろうという意図で付けられたものと思われるが、原題の「Still Life」の方が断然良い。主人公は、イギリスの地方自治体の福祉関係の仕事をする身寄りの無い44歳の独身男性。具体的な仕事は、一人暮らしの人が亡くなると、家族・友人を探し出し、連絡をとり、葬儀・埋葬の段取りをすること、だが家族・友人がだれも葬儀・埋葬に参加せず、一人で見送ることが多い。主人公は、22年間誠実にこの仕事を続けており、私生活も地味にで、公私ともに判で押したような変化の無い(still)生活を送っている。その生活が大きく動き出したときーーーーーー。エンディングが感動的な作品。
12.「水の声を聞く」2月2日   **
 : 在日3世の韓国人をヒロインとする作品。「神の水」という新興宗教の巫女(教祖的役割)を取り巻く信者のニーズ(悩み・問題)、教団運営側の思惑、家族模様などを織り交ぜながら描く。ごく普通の若い女の子がちょっとしたきっかけで始めた巫女役だったが、次第に信者が増えていくに従い、自分が教祖役を果たしていていいのかと悩みだす。自分の祖母・母も巫女をやり、人々の霊を鎮めていたことをしり、その道を継ぐことを決意するがーーーーー。ヒロインが考える「神」「宗教」が明確に描き切れていないのが減点
13.「さらば、愛の言葉よ」2月4日
 : 本作品は昨年のカンヌ映画祭審査員賞を獲得し、1月30日の日経新聞映画評で今年有数の傑作との評価を得た作品。観終わっての感想を一言でいえば「駄作」。単なる男女の出会いの話を恰好をつけるために色々な思想家の言葉を散りばめたりしているが、その言葉も陳腐で必然性に欠けるため、作品を散漫にしてしまっている。難解な言葉を散りばめるならその必然性(明確な意図・目的)が求められるが、ソシュール、レヴィ=ストロース、フーコー、ラカンのような突き詰めた論理整合性を持たないため、「駄作」にしてしまった。
14.「エクソダス 神と王」2月4日  *
 : 典型的なハリウッドの娯楽映画。モーゼが王子という地位を捨てヘブライ人としての自己を自覚していく過程、神はなぜヘブライ人のエジプトでの400年にわたる奴隷生活にこの時点で終止符を打たせようとしたのか、突き詰めが弱く、深みを欠く原因となっている。
15.「さよなら、歌舞伎町」2月6日  **
 : 歌舞伎町のラブホテルを舞台に繰り広げられるそこに働く従業員と利用するカップルの人間模様を描くことを通じて、現代日本社会の世相を切り取る作品。決して勝ち組とは言えない登場人物たちの様々な関わりのあり方に寄り添い、突き放さずに温かいまなざしで描く演出が生きて、観終わって、歌舞伎町を去っていく登場人物たちの未来にいくばくかの光が感じられる。
16.「0.5ミリ」2月9日         **
 : 日本で最も伝統のある映画賞キネマ旬報ベストテンで2014年日本映画2位を獲得した作品。介護ヘルパーのヒロインが事故を起こし、ヘルパーを首になったため、生きるために老人の弱みに付け込み、押しかけヘルパーになるという物語。この映画は3時間を超える長編だが、前半と後半でトーンが大きく異なる。前半は老人の哀歓を笑わせながら鋭く描き、後半は笑いが薄れ凡庸な描写になっている。後半は、「戦争を経験した世代とそうでない世代、そのなかでもいくつにも別れる世代、世代の中でも個と個の違いがある中で人間がつながるには?」というテーマに焦点を当てる。後半も前半と同じように、シリアスなテーマであるからこそ笑い飛ばしながら話を進めるという映画作りが出来たら、この映画は間違いなく大傑作になっていただろう。
17.「百円の恋」2月9日   **
 : キネマ旬報ベストテン2014年日本映画8位獲得作品。弁当屋を営む実家で無職・家の手伝いもろくにしないで32歳ゴロゴロしている32歳独身のヒロイン。妹と取っ組み合いの大げんかをしたのを機に、家を出、アパートに部屋を借り、近くのコンビニでアルバイトをして、自立した生活を始める。そして、ボクシングを始めるがーーーー。「0.5ミリ」「百円の恋」のヒロインを演じた安藤さくらは、この2本の演技により2014年キネマ旬報主演女優賞を受賞した。なかなか味のある演技で納得のいく受賞。映画では触れられていないが、「百円の恋」は2週間で撮影したそうで、その間にブヨブヨの体を、ボクシングで試合をする体に絞り・顔つきも変わり・動きの切れが出るまでに仕上げたとのこと。演技力だけでなく、その根性も見上げたもの。
18.「はじまりのうた」2月10日   ***
 : 妻との折り合いが上手くいかず、家を出た音楽プロデューサー、新人の発掘・育成にも行き詰まり、会社も首になり、酒に溺れる。そのとき偶然出会ったのが曲を作る若い女性。その女性の才能を見込み、歌手として売り出そうとするが、デモテープを持ってくれば聞いて、契約の判断をするといわれる。金もないため、苦肉の策としてニューヨークの街角でデモテープを録音・撮影することを思いつく。その結果、素晴らしい出来栄えのアルバムが完成するがーーーーー。意外なエンディングがまた素晴らしい。
19.「おとこの一生」2月17日    **  (K)
 : 期待以上の出来栄え。祖母の死を機に、妻子ある男性との不倫に傷ついていた東京の一流IT企業に勤めていたヒロインが会社を辞めて、祖母の後を継いで草木染をやろうと故郷に戻ってくる。ところが、離れには、祖母に離れの鍵を貰ったという50歳代と思える大学教授が暮らし始めていた。人間の人情の機微、距離が縮じまったり開いたりする人間関係の微妙さを色々なエピソードを上手く積み重ねて描くことに成功している。
20.「悼む人」2月20日    *
 : 最初から最後まで不自然さ(違和感)を感じながらの鑑賞となり、いまいちの出来栄え。「悼む」よいう行為は、心(感情)領域に属する問題なのに、この映画のストーリー・場面つくりは、「悼む」ということを描くにはこうすると上手くいくのではという計算(理)が至る所で感じられ、映画に没入できなかった。脚本家・監督・役者とも「悼む」という行為を頭で考え、心と身体で自分のものにするまで突き詰めなかったのだろう。具体的には、主人公二人の人物像がクリヤーに描き切れていないため、物語が空回りして動き出さない。
21.「ナショナルギャラリー 英国の至宝」2月23日  ***
 : 3時間の長編ドキュメンタリー映画だが、充実して長さを感じさせない力作。ナショナルギャラリーの所蔵する絵画の単なる紹介にとどまらない意欲的な力作。絵画を絵画そのもの・画家・観客・美術館という切り口で分析し、「総合的に絵画とは何か」に迫る。絵画そのもの:彫刻と絵画の違い、構成、描写技術、絵の具と光の効果など。画家:絵に込める意図・物語、それを活かすための構成・技術など。観客:画家の意図とは別に、描かれた絵からどんなストーリー(メッセージ)を読み取るかなど。美術館:所蔵品を観客により印象的・効果的に見てもらうための展示方法、修復・保存、多くの絵を集めて一人の画家の展覧会を行うことの意味、チャリティー・イベントへの協力の仕方、観客のニーズをどう美術館運営に反映するか、予算(財政)運営など。最も印象的だったのは、観客に絵の解説をするスタッフの姿。その深い知識経験に裏付けられたエキスパート性・絵画に打ち込む情熱・人柄が渾然一体となった説明。またその時に使われる英語の明晰さ・訴求力も感動もの。
22.「アメリカン・スナイパー」2月24日  ***
 : クリント・イーストウッド監督の映画は見逃せない。狙撃手として4回にわたりイラクに派遣され、160人の敵を射殺し、多くのアメリカ兵の命を救い「レジェンド(伝説)」と呼ばれた主人公の姿を淡々と描く。特殊精鋭部隊に所属し、仲間の命を守るという使命に誇りをもち、狙撃手としての任務に没入していけばいくほど、心も蝕まれ、家族(妻・子ども)との溝が深まっていく人間の不条理・戦争の残虐さを、丁寧に撮影されたシーンの積み重ねにより総合的に描き出すことに成功している傑作。また、主演のブラッドリー・クーパーは、この役が決まってから18キロ体重を増やし、筋トレも集中的に行い、特殊精鋭部隊の隊員にふさわしい体作りを完了し、撮影に臨んだとのこと。その役者根性にも脱帽。
23.「滝を見に行く」2月27日    **
 : 「滝を見に行く」ツアーに参加した7人の中高年の女性が、道に迷い、一夜野宿するという物語。道に迷ったことによるストレスから様々な葛藤を生じ、次第に無事に一夜を乗り切るために力を合わせていくうちに絆が生まれ、かつそれぞれの「訳あり」の事情が語られ、程よいユーモアの味付けも利いていて、気持ちの良く観れる佳作。
24.「トレヴィの泉で2度目の恋を」3月2日   ***
 : 74歳で一人暮らしの老婆の隣部屋に、妻を亡くして7か月の80歳の老人が移ってくる。人生を謳歌するのに積極的な老婆は、全く正反対の「そこそこの人生なら死んだ方がまし」といい、部屋に引きこもる頑固な老人に近づき、人生を楽しむために初めの一歩を踏み出すことの重要さを説く。そして2歩3歩踏み出すうちにーーーー。脚本も良く練られており(物語の起伏・ウイット・皮肉)、どこまでが本当でどこからが嘘か虚実の境目のはっきりしない自由奔放に生きる老婆役をシャーリー・マックレーンが、また頑固な老人役をクリストファー・プラマーがアカデミー賞受賞役者の貫録で巧みに演じ、総合的に洒落た楽しい映画に仕上がっている。観客の入りが悪いのがもったいない。
25.「さいはてにて」3月2日   **
 : 能登半島の最果ての地に4歳の時に父と別れた娘が、8年前に行方不明となった父を待つために父の残した舟小屋に30年ぶりに帰ってくる。そして、生計を立てるために舟小屋を改造して珈琲屋(コーヒー豆の焙煎をおこない通販主体で販売)を始める。その店の向かいにある民宿にすむシングルマザーとその2人の小学生の子どもたちとの絡みが母親が金沢に泊まり込みで仕事に行くことが多いために自然に生じてくる。丁寧に作られた作品で好感が持てる。しかし、少し生真面目すぎて単調というのが残念。
26・「ヴァチカン美術館」3月3日
 : この映画の制作目的が全く理解できないし、結果的に駄作に終わっている。映画は66分の長さで、主としてミケランジェロ従としてラファエロの作品を紹介、近代絵画の作品も収蔵されていることも伝える。しかし、ヴァチカン美術館収蔵の作品を紹介する映画を作る場合、二つの切り口が当然求められる。1)キリスト教は当初偶像崇拝を禁じるという観点から彫刻・絵画でキリスト等を描くことを禁じていた、それがどのような経過でカトリックが宗教彫刻・絵画を認め、ヴァチカン美術館を作るまでに至ったのか。また、宗教改革でプロテスタントは、このようなカトリックの態度をキリストの教えに反するものとの批判に対しどう反論し、今日に至っているのか。2)膨大な収蔵品を体系立てて紹介する。しかし、この映画は、そのどちらにも真正面から取り組まずに、66分という短い作品にまとめ、おざなりな紹介にとどめている。
27.「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」3月5日  **
 : 楽しめる娯楽映画に仕上がっている。人気レストランのシェフが人気料理批評家の発信した酷評に切れて、やり返す。これがツイッターに載り、炎上、大騒ぎとなる。その原因は5年間何の変化もないそのレストランのメニュー。主人公は工夫を重ねた新メニューを用意するが、オーナーは昔ながらのメニューで多くのお客が連日押しかけ十分に儲かっているので変更は絶対に認めないといい、主人公は店を飛び出す。しかし、炎上騒ぎがたたり、雇ってくれるレストランは現れない。そこでフードトラックを始め大人気となる。これに、離婚した妻と暮らす一人息子との絆をフードトラックを手伝わせることによりj回復するというストーリーを絡み合わせる。最後にフードトラックの料理を食べに来て、その味に感激した批評家と和解しーー。
28.「戦場のピアニスト」(TV放映)3月8日    ***
 : 2002年制作のポランニー監督作品。ナチ統治下のポーランドワルシャワを舞台とする物語。ナチ・ポーランド人・ユダヤ人(ポーランド系)が1939~45年にどのように関わっていったかを描く。まず、ユダヤ人がユダヤ人であることを示す腕章をつける命令から始まり、ゲットーへの隔離、ゲットーから収容所への移送(虐殺)によるゲットーの空洞化、抵抗戦、そしてソ連軍による解放と時間を追って描くと同時に、ユダヤ人・ポーランド人・ドイツ人のなかにも色々な人がいるということを上手く織り交ぜながら描く。歴史的名作といわれるのも納得。
29.「ソロモンの偽証」(前篇事件)3月9日  ***
 : 宮部みゆきの代表作の映画化。原作の面白さをそのまま上手く映画化することに成功している。中学校で発見された生徒の死体。警察の捜査の結果自殺で処理される。しかし、これは殺人であるとして犯人を名指しする匿名の告発状が送付されてくる。警察・学校が告発状の送付者を調べるが生徒の死を再捜査するまでには至らない。すると今度はその告発状がテレビ局に送付され、大騒ぎになり、学校の対応が不適切だとして父兄が説明会の開催を要求する。しかし、警察の事件性はないという根拠に父兄は納得し騒ぎはおさまる。しかし、犯人と名指しされた生徒の主張と告発者の主張が矛盾するため、真相は不明のまま。この件でずっと真相解明が放置されているという気持ちを引きずってきた同級生が警察・学校(教師)・マスコミに任せていても真相に迫れないと判断し、自分たちで裁判を行い、真相究明を行うことを決定する。状況設定の巧みさ、人情の機微を鋭く捉える宮部みゆきのストーリーは観客を物語の世界に引き込み、目が離せない。
30.「妻への家路」3月9日  **
 : 文化革命により辺境の地へ送られた夫の帰りを待つ妻と一人娘。その夫が名誉回復を勝ち取り妻の元に帰ってきたのは20年後。しかし、妻は心因性記憶喪失のため夫を夫として認められず家から出ていくことを求める。しかし、夫からの手紙で5日に帰るとの知らせを信じ、毎月5日に駅に迎えに行くという生活を続ける。夫は放っておけず、そばに寄り添いながら何とか記憶を呼び起こさせようと様々なことを行うが、同じような生活が数十年にわたり続く。丁寧に、淡々と報われない努力を続ける夫の姿が印象的。
31.「幕が上がる」3月10日  ***
 : 高校の演劇部で活動する女子高生の成長と絆の強まりを中心に描いた作品。県大会にも行けず、地方大会で敗退するレベルの演劇部で部長になった主人公は、当初、県大会出場も本気で目指していない演劇部に漠然とした不満を持っていたが、新任の美術教師が大学時代「演劇の女王」と呼ばれていた存在であることを知り、指導を仰ぐうちに、演劇部の目標(全国大会に行けるレベルまで考えるのか)、自分が何故演劇をやるのか(動機)、どうすれば目標に近づけるのか、何も分かっていないことに気付く。しかし、新任教師のカリスマ的指導を通じ、目標・動機・達成手段を自覚し、県大会前に役者を目指し教師を辞めた新任教師の指導なしで、部をまとめ、全国大会をめざし県大会に出場するまでに成長する。この映画を単なる青春映画に終わらせず、成功させたのは、年代を超えた人間の成長(=人生の目的・目標・達成手段の明確化・実行力・マネージメント力)の物語として普遍的に観れるレベルにまで到達させたから。
32.「イミテーション・ゲーム」3月19日  ***
 : 今年度のアカデミー賞作品賞など4部門にノミネートされた。第二次世界大戦時の実話にもとづく物語。ストーリーは、ナチスの開発した「エニグマ」という人間には解読不能といわれた暗号を解読し、ドイツとの戦争に勝つ任務を与えられたチームの物語。「エニグマ」は、毎日朝6時に設定が変えられ、24時までそれが有効であるため、それを解読するためには18時間以内に行わねばならない。しかしその組み合わせの可能性は159x10の18乗という天文学的数字であるために人間には不可能と思われる挑戦である。
この6人のチームに参加した主人公チューリングは20歳代でケンブリッジ大学の数学教授を務める天才であり、人力で「エニグマ」解読は不可能、機械を打ち破れるのは機械しかないと主張し、他のメンバーから孤立しながらも諦めずに開発を続ける。スパイ疑惑・予算切れ・同性愛(この当時の英国では犯罪)などの数々の難関を突破してついに「エニグマ」の解読に成功する。しかし、その後の主人公の未来は決して明るいものではなかった。現在人工知能(AI)に対する期待がますます高まっているが、その時に機械をこえて人間の領域に達したかどうかを判断するテストがある。それは「チューリングテスト」と呼ばれ現在も使用されている。天才の孤独と時代との関わりを鋭く切り取った力作。
33.「凬に立つライオン」3月24日   ***
 : さだまさしのヒット曲を原作として製作された映画。丁寧に脚本・カットを積み重ねて作られた秀作。この映画は一番最初にエンディングの場面が構想され、その後にそこにもっていくための全体のストーリーの流れが考えられたと推測される。エンディングが良くできた印象に残る作品。
34.「イントウー・ザ・ウッズ」3月23日  *
 : ディズニーのおとぎ話の4代表作「シンデレラ」「赤ずきん」「ジャックと豆の木」「ラプンツェラ」をごちゃまぜにし、ハッピーエンドで終わったはずの物語のその後を描くパロディ作品。「アナ雪」「マニフィセント」に続くディズニーの新ヒロイン路線の第三弾にもあたる。話がごちゃごちゃし過ぎて、ストーリーが上手く流れていない。
35.「パリよ永遠に」3月26日  ***
 : 第二次大戦末期のパリを舞台とする物語。ノルマンディーに上陸した連合軍がパリ間近にまで迫り、ヒットラーはパリ防衛司令官にパリ主要施設の爆破を命じる。ヒットラーの命令に従おうとする司令官と世界的文化資産を何とか守ろうとする中立国スエーデンのフランス領事との緊迫したやり取りがこの映画の見せ場。原題は「Deplomatie」(外交)。
36.「くちびるに歌を」3月27日  ***
 : 長崎県の五島列島にある小さな島の中学校の合唱部が県大会に新任の音楽教師と共に挑戦するというストーリーの映画。一見青春映画だが、大人が観ても十分に楽しめる。この映画が成功しているのは、1)「人間が生きる意味は何か、人間は人とつながって生きているし生きていける」という普遍的テーマを扱っている、2)合唱コンクールのテーマ曲を「手紙」と設定することにより「15年後の自分への手紙」というストーリーにふくらみを持たせる仕掛けを可能としている、3)新任教師(この学校の卒業生で名前の通ったピアニストが、友達の音楽教師の産休の代理教員として赴任してくる)のいかにも訳あり(音楽教師なのに、ピアノを弾かなくても良いという条件をつけて)楓、その謎解きを含めて青春映画によくあるハイテンションではなく、ローキーでセリフも少なく、しかし緻密なストーリー構成により物語は旨く流れていくという演出の巧みさによる。
37.「エレナの惑い」3月30日  **
 : 第64回カンヌ映画祭「ある視点部門」審査員特別賞受賞のロシア映画(2011)。この映画の制作意図(何を観客に訴えたいのか)がよく理解できなかった。ストーリーは、金持ちの老人と暮らす主人公(看護師時代の10年前に知り合い2年前に正式に結婚)には一人息子夫婦と孫2人がいるが、息子は定職を持たずに母の援助に頼って暮らしている。年長の孫が高校卒業を控えて大学進学するには成績が良くないためまとまった裏金を用意する必要がある、さもないと軍隊に入るしか選択肢がない。そこでエレナは夫に孫の援助を頼むが断られる。そんな時夫が心臓発作を起こしたのを機に遺言状の作成をするという。夫の意向は全財産は唯一の身寄りである一人娘に贈り、妻であるエレナには、年金を相続する(充分以上に暮らしていける)であることを告げる。そこでエレナは心臓発作を誘発する薬を飲ませ夫を殺害する。しかし、医師は夫の過失と判断し、遺産の半分を手に入れたエレナは、夫と住んでいた豪華なアパートに息子の家族を呼び寄せ暮らし始める。
38.「神は死んだのか」3月31日  **
 : アメリカの大学で数多く起きている訴訟(無神論の哲学の教授が無神論を認めないと単位を取らせない)に触発されて製作された映画。「God is dead」派と「God's not dead」派との論争が見どころ。しかし、この作品は「God’s not dead」派に肩入れしすぎで、キリスト教の宣伝作品に堕してしまい「not fair」なのは残念。大きくは1)論争で言えることは「God is dead」「God's not dead」どちらも証明できないということ(要はどちらの仮説を信じるかの選択ししかない)、2)「God is dead」派の人間は人格的に魅力がない(問題ありの)人物として描かれ、「God's not dead」派の人間は皆魅力的な人物として描かれるという意図的なバイアスが掛けられているのが大問題。
39.「暗殺教室」4月2日  **
 : 人気漫画の実写映画化。漫画を読んだことはないが、期待以上に良くできているとの印象。ストーリー展開そのものも良く考えられているが、人気の秘密の一つが、正面から「教育問題」に取り組んでいることにあるんではないかと感じた。日本の教育の最大の欠点は、建前では「個性の尊重」を言いながら、実質的には「テストによる偏差値偏重」の単眼思考にある。生徒一人一人の個性と真剣に向き合い、それぞれの長所を見つけ、伸ばそうとする「コロ先生」の姿が共感を呼んでいるのではないか。続編に期待。
40.「エイプリルフールズ」4月7日  **
 : エイプリルフールについた嘘に混じる真実を7つ(8つ)のエピソードで綴り、最後にそのエピソードがつながるというストーリーの映画。構想は悪くないが、真実を表現する場面が「まじめ」になってしまい、せっかくの構想が生かし切れていない脚本・演出により2流の作品に堕していまった。
41.「バードマン」4月17日  ***
 : 今年度アカデミー賞作品賞獲得作品。他の候補作品よりダントツで優れた作品かというと、そうでもない。ここ数年の作品賞受賞作と毛色が変わっているのが有利だったと思われる。映画の構想は優れているのだが(昔漫画の主人公バードマン役で有名になった俳優が、最後の一花をブロードウエーの舞台で咲かそうと、演出・脚本・主演を担当して挑戦する)というストーリー。ファンタジー的要素もうまく取り入れているが、演劇批判もうなずけるが、「スーパー・リアリティ演劇が上手く表現されているとは思えず、映画全体の出来栄えが落ちている。
42.「パレードへようこそ」4月22日  ****
 : サッチャー時代の炭鉱閉鎖を背景とする映画。閉鎖に反対する炭鉱夫の組合を「同性愛の権利を認めよ」との運動を行っていたゲイとレスビアンたちが支援する運動を起こし、両者の交流が始まるというストーリー。炭鉱夫ならびにその家族の間に、同性愛者に対する反感も多く、支援受け入れ派と反対派との対立が生じることを含めて、人間関係・ストーリーが良く練り上げられており、素晴らしい作品に仕上がっている。この映画を見ることによって、「今の日本に欠けているものが何か」が見えてくる。ここ数年で最も感銘を受けた映画。
43.「女神は二度微笑む」4月22日  ***
 : インドのサスペンス映画。ロンドンに住むインド人女性(妊婦)が、インドに出張に出かけ行方不明になった夫を探すためインドを訪れ、その真相に迫っていくというストーリー。最後のどんでん返しにつぐどんでん返しが良く効いた楽しめる作品。インド映画もここまで来たかとの印象。
44.「時計仕掛けのオレンジ」4月24日 ****
 : 1971年制作のアメリカ映画。歴史的名作との評判に違わない出来栄え。ストーリーは人間個人の中に潜む悪と善、社会としての悪の抑制・矯正、政治がこれに如何に関わるかという普遍的テーマを見事な切れ味で描き出す。また映像効果を強く意識した衣装・小道具・大道具・色彩も大いに効果をあげている。この映画の一番凄いところは、この映画の持つリアリティが年を経るごとに増していること。
45.「ソロモンの偽証 後篇 裁判」4月24日  **
 : 宮部みゆきのすとーりー・テラーとしての才能を堪能する作品。後篇は裁判場面が大半であるため、映像的には単調にならざるをえないため、回想場面を多く取り入れることにより変化をつけようとする努力が見られる。観客が前篇に比較して大幅に減っているのは残念。
46.「寄生獣 完結編」4月27日  ***
 : 映画化に当り、映画の制約(原作のエピソード全部を入れるわけにはいかない)を上手く回避するために、「人間とは何か」「自然の頂点に立つ人間の役割とは何か」という本質的テーマを中心にストーリーを組み立て直したのが奏功して、CG技術の活用と相まって、すっきりした流れの作品に仕上がっている。
47.「龍三と七人の子分たち」4月27日  *
 : ほぼ満員という観客動員に驚かされた。「オレオレ詐欺の若者集団」を「年寄り元ヤクザ集団(ジジイ)」がやっつけるという設定だという番宣の上手さの成果のあらわれか?ストーリーは、「オレオレ詐欺」「高利貸」「各種商品販売(恐喝まがい)」などで荒稼ぎをする新興若手集団を、元ヤクザの仲間が久しぶりに再結集し退治するというもの。「金なし」「先なし」の「ナイナイ尽くし」の年寄り集団が、昔取った杵づかのワザと「ヤクザ魂」で若手集団をやっつけるのだが、その戦術が単調そのもの。年寄りの唯一の武器は、長い間生きた経験にもとずく「智恵」。「智恵」が無かったのは、年寄りではなく、制作者。観客の「口コミ」の影響の出る今後の観客動員数の推移が注目される作品。
48.「セッション」4月28日  **
 : 今年のアカデミー賞作品賞ノミネート作品、鬼教授役のJ・K・シモンズの助演男優賞ほか計3部門受賞。ストーリーは、世界的ドラマーをめざし著名音楽学校に入学した主人公が校内一のバンドを率いる鬼教授に認められ、鍛えられる。この教授の鍛え方は、、「good job」といってほめたら、その人間の潜在能力を出し切らないレベルで成長が止まるので、一人の天才を生み出すためには、決してほめずに、徹底的に追い込み、猛練習で鍛え、潜在能力をフルに引き出すというやり方。しかし、これまで一人の天才も育てられなかった。主人公は、教授の指導についていこうと努力するが、ある事件により、退学処分となり、ドラマーの道を諦める。しかし、あるとき教授と再会し、新しいバンドでドラムを叩くことを求められる。ここで、主人公は天才的なパフォーマンスを示したところで、映画は終わる。この映画は、助演男優賞を獲得したJ・K・シモンズの鬼気迫る演技力で引張られた映画で、エンディングのあとで、「どうして主人公が天才的パフォーマンスを学校にいたときは示せないで、ドラムの練習も碌にしていない今示せるのか、分け分からネー」という声だけが、頭の中で鳴り響いていた。
49.「王妃の館」4月30日  ***
 : 水谷豊演ずる作家が主人公。「王妃の館」(パリの超高級ホテル)を舞台に、経営に行き詰った旅行社が1部屋に2組の客を入れるという無茶なツアーを実施する。ストーリーは、部屋を巡るドタバタにツアー客のエピソードを絡めながらパリの観光名所を紹介、これに作家が執筆中のルイ16世についての物語を織り交ぜて展開する。ただのドタバタ劇に終わらせないのが原作の浅田次郎の力。
50.「愛して飲んで歌って」5月1日  ***
 : 芝居を映画で撮影したという趣向の映画。このため背景は芝居の大道具・小道具を使い、基本は三場面で演技を完結させ、場面転換はどの場面かを示すイラストを写して行うという手法を採用。登場人物は3組のカップルで、6人が知っているジョルジュを中心に物語は進行するが、ジョルジュは1回も画面には登場しない。「ゴドーを待ちながら」と同じ手法。これだけの仕掛で1本の映画を無理なく作れるのは、脚本力の勝利か?
51.「白河夜船」5月4日  **
 : 原作は吉本バナナの代表作。映画は基本的に3つの場面で構成されている。1つは、主人公(安藤さくら)だけのほとんど寝ている場面(タイトルの由来)、2つ目は、1年前の交通事故で植物状態になった妻を持つ愛人との場面、3つ目は、1年前に自殺したセックス抜きの添い寝を仕事(川端康成の「眠れる美女」にインスパイア―されたと思われる)とする親友との回想場面。別に明確な結論を期待しているわけではないが、エンディングで何を伝えたいのかのメッセージが弱く(もちろん観客に委ねるのでもいいが)訴求力が弱まったのが残念。
52.「ビり・ギャル」5月7日  ***
 : 期待以上の出来栄え。全体として不自然さがなかったのが良かった。学校と塾の教育に対するスタンスの違い、父親と母親の考え方の違い。それらが子どもに与える影響。子どもたちの付き合い。それらを上手く組み合わせてストーリーが巧みに組み立てられており、単なる受験ものに終わらせない作品に仕上がっている。
53.「ブラックハット」5月12日  ***
 : 香港の原発がサイバー攻撃により爆発させられる。この事件を中国警察とFBIが共同で、アメリカで服役中の天才ハッカーを釈放、協力させながら解決するというストーリー。話の展開にも無理がなく、良質の娯楽映画。
54.「百日紅」5月12日  ***
 : 葛飾北斎とその娘(栄)の二人の画家を中心とする物語。杉浦日向子の原作は時代考証も行き届いており、江戸の時代風物・季節の移ろいを上手く取り込みさすがに手堅く、安心して観ていられる。アニメも原作の味を損なうことなく、上手く生かした力作。
55.「ザ・トライブ」5月14日  **
 : 2014年カンヌ映画祭審査員週刊グランプリなど3賞を受賞したウクライナ映画。「トライブ」とは「部族」のこと。この映画でいえば「同じ穴のムジナ」というほどのニュアンスか?職業学校で寮生活を送る生徒たちの行動を描いた作品。いじめ(暴行・窃盗)、飲酒・喫煙、女学生の売春など荒れる若者たちの行動場面をを淡々と重ねていく。この映画の言語は「手話」のみで会話・字幕など一切ない。。これがこの映画の淡々とした展開にマッチしている。
56.「ゼロの未来」5月18日  **
 : 未来社会を舞台に、観客に「人生の目的とは何か?」を問いかける作品。未来社会では、人々は監視カメラの管理下に置かれ、「道具(歯車)」としての仕事を「マネージメント」(神ではない)に与えられ、余暇にも飲食・薬物・セックスなどにも以前ほどの愉しみを感じられずに、「人生の意味」を考えることもなく、日々を過ごしている。主人公は変わり者で、いつか「人生の意味」を教えてくれる電話がかかってくると信じて、その電話を取りそこなうことを怖れて、自宅勤務で、一歩も外に出ずに暮らしている。その主人公に「マネージメント」から与えられた仕事は「ゼロの定理」の証明。これは、未來版「シジフォスの神話」で不可能命題。「ゼロの定理」とは、「宇宙(世界)は、ビッグバンにより偶然に誕生し、いずれブラックホールに吸い込まれて無に帰する存在で、そこに意味はない」ということ。人との絆を失った主人公が唯一、安らげるのが、ヴァーチャル世界での彼女とのデート。この世界だけが、主人公にとって、生き生きとした感情が甦るリアルな世界。観終わった後、観客は「あなたにとって人生の意味とは何ですか、どんな絆がありますか」との問いに答えを迫られる。
57.「駆け込み女に、駆け出し男」5月18日  ***
 : 井上ひさし原作。さすがにストーリーの組み立ては上手い。当時(江戸時代末期)の様子が上手く取り込まれて、東慶寺(駆け込み寺)とその地域のことがよくわかり、ストーリーに違和感が生じないように工夫されている。唯一違和感があったのは、大泉洋扮する主人公の駆け出し男(医者見習い兼戯作者見習い)が、見習いどころか「出来すぎ君」であること。
58.「マミー」5月20日  ***
 : 2014年カンヌ映画祭審査員賞・セザール賞最優秀外国映画賞受賞作品。ADHD(症状: 多動性・衝動性・不注意)に悩む一人息子と母親の愛情と葛藤を描く作品。父親は多額の借金を残して死亡、母一人子一人で子どもを施設から引き取り生活を始めるが、その生活は期待どうりの面と子どもの症状がでると全てがぶち壊しになるという繰り返しの中で、仕事も失い、金も底をつきという極限状況で物語は展開する。子どもを何として守ろうという決意ともう限界という状況との間を揺れ動く母親役をアンヌ・ドルバルが熱演。
59.「サンドラの週末」5月26日   ***
 : 主人公のサンドラが病気休職から仕事に戻ろうとしたら、社長が「現在の仕事は16人の従業員でやっていけるので、サンドラが戻るか、戻らなければ一人当たり1000ユーロのボーナスを取るかをj16人の投票で決めろ。過半数がサンドラの復職に賛成したら復職を認める。」という提案を行う。金曜日にこれを聞いたサンドラは、投票が月曜日の朝に行われるため、週末に同僚たちに会いに行き、副食に投票して欲しいと依頼する。同僚たちは「サンドラの復職とボーナス支給が両立することがベスト」という点では一致するが、二者択一を迫られると「ボーナス支給がないと生活が成り立たない」派と「ボーナスは諦めてサンドラの復職に投票する」派に分かれる。投票結果は8対8。過半数でないため、復職は認められない。帰ろうとすると、社長に呼ばれ、社長は「16人以上に人は増やせないので、ボーナス支給を行う。しかし、2か月後に契約が切れる正規外社員がいるので、そこで、サンドラの復職を認める」との新提案を行う。サンドラは「それは、実質的に一人を解雇し、自分が復職するということであるから、その提案は辞退する。」と伝え、映画は終わる。この映画が訴えているのは、現在の市場原理主義の世の中での個人の判断のあり方。経営側は「雇用か賃金かの二者択一」として問題を提起し、「両立」は認めようとしない。これに対し、働く側は、「自分の賃金(この映画の場合はボーナス)を回してでも同僚の雇用を守る」のか「同僚の解雇に目をつむり、賃金(ボーナス)を貰う」かの選択を迫られている。あなたは、どちらを選びますか、選んでいますか?
60.「リピーテッド」6月4日   ***
 : イギリスのサスペンス小説界で話題を呼んだ原作の映画化。ある出来事が基になり、眠ると記憶がなくなり、朝目覚めると記憶が全くないという状態で目ざめるという女性をヒロインとする作品。医者がその日の終わりに、その日の出来事をヴィデオに残すように手配し、毎朝電話をかけて(ヒロインは覚えていないので)それを観るように促すことにより、少しずつ自分が何者であるかに迫っていくというストーリー。思わぬ真実にたどり着くエンディング。
61.「華氏451」6月8日   ****
 : 読書が禁止された未来社会を舞台とするSF映画。映画史上に残る話題作のリバイバル上映(製作1966年、フランス)。消防の役割は、火事を消すことではなく、所有禁止の本を発見し燃やすこと(焚書)。「華氏451度」とは、本が発火する温度。「本を読む習慣のない社会での暮らし」を描くことで、「読書の世界の豊かさ」を逆説的に描き出す映画。
62.「私の少女」6月10日  **
 : 韓国映画。ソウルで不祥事(同性愛)を起こし、過疎の海辺の村に左遷された女性警官(警視)がヒロイン。着任した村で、母親に捨てられ継父・継祖母に虐待を受け、同級生にも虐められる少女に出会い、見捨てられずに暫く自宅で預かることにする。これに過疎の村での労働力不足に対応するための不法移民問題を絡めて、ストーリーは展開する。緻密な物語構成で観客を引き込む力作。「かわいそうな少女」が同時に「怪物」であるという怖さを伝えることに成功している。
63.「トイレのピエタ」6月12日  ***
 : 原案は手塚治虫、松永大司監督がオリジナル・シナリオで映画化。大学卒業後バイトの窓ふきで生計を立てている元画家志望の主人公は、28歳で癌のため余命3か月と宣告される。そのとき偶然知り合った高校生のヒロインがストーリーの展開役をつとめる。あとは、病院で隣のベッドにいたリリー・フランキー演じる患者が主たる登場人物である。手塚治虫原案であるだけに、ストーリーがしっかりしており、前半は極端にセリフの少ないカットが続き、これが後半のセリフの重みに結びついている。「生きるとは」「どう死を受け入れるか」という本源的な問いに迫る力作。監督の演出、主人公役の野田洋次郎、ヒロインの杉咲花、リリー・フランキーの熱演が噛みあい、見ごたえのある作品に仕上がっている。観客が少ないのが残念
64.「ハイネケン 誘拐の代償」6月16日  ***
 : 事実にもとづく映画。ビール王のハイネケンを誘拐・身代金を支払わせた犯人グループの行動を追う。誘拐までの周到な準備・誘拐後の対応まではグループの結束も固く上手くいくが、身代金が要求した期日に支払われないあたりから、疑心暗鬼が生じ、結束が乱れ始め、身代金は手に入れるものの、グループはバラバラになり最終的には、全員警察に逮捕される。この間の人間心理の綾を巧みに描いた作品。ハイネケンの犯人たちに向けた「リッチになるには、二つの方法がある。大金を手に入れるか、大勢の友達を持つかだ。ただし、その両方はない。」という言葉の重みが響く。
65.「あん」6月16日  **
 : 基本的にはオリジナルストーリーで作る河瀬直美監督がドリアン助川の小説を映画化した作品。桜が満開の季節に長瀬正敏演じるどら焼きや店長のところに樹木希林が雇ってほしいと言ってあらわれる。いったんは断るが、試食に持ち込んだ「あん」のあまりのおいしさに惹かれて雇うことにする。この「あん」が評判を呼び、お店は繁盛しはじめるが、しだいに元ハンセン病患者という噂が広がり、客が寄り付かなくなる。四季の移ろいを背景に、たんたんとストーリーが展開する好作品であるが、「何かが足りない」という印象の残った作品。
66.「カフェ・ド・フレール」6月17日  **
 : ダウン症で現在40歳の人気DJが主人公。ティ―ンエイジャーのころから付き合い熱愛の末結婚した妻との間に2人の娘を設けたが、2年前に現れた女性と恋に落ち、妻と別居して恋人と暮らし、娘は主人公と母(妻)との間を行き来している。20年間熱愛し人生にただ1人の「運命の人」と思いこんでいる妻は、夫の新しい恋人を受け入れることが出来ずに、いずれ夫は自分のもとに戻ってくると思い込もうとする。紆余曲折を経て、妻が夫の次の結婚を受け入れられたところで、物語は終わる。ストーリー展開の分かりにくい映画。その理由は、1)(従)映像的に現在と小学校に入学した頃の回想、ティーンエィジャーの頃の回想が入り混じった画面編集、2)(主)明確にはダウン症、暗示的に「夢判断・中年危機・輪廻・性格分裂と統一・霊・霊能者」などの精神分析の概念をいじりまわしたストーリーつくりになっているため。個人的にこの映画を評価できなかったのは、中途半端に精神分析の概念を用いようとした点。主人公はダウン症とされ、現在は健常人として暮らしているが、ダウン症が治ることはないし(遺伝子の異常が原因であるため)、サヴァン症候群のように、障害はあるものの常人を超える特殊能力(写真的記憶能力)を持つわけでもない。不自然さが気になり映画に没入出来なかった。
67.「海街diary」6月19日  ***
 : 2013年「マンガ大賞」受賞作品を是枝監督が映画化、今年のカンヌ映画祭に出品。丁寧に撮られた一つ一つのカットを地道につなげて出来上がった映画。この作品の優れているところは、不自然さを全く感じさせないで物語がゆったりと、流れていく点。あとは、腹違いの四女役を演じる広瀬すずのみずみずしい演技素晴らしい。
68.「ターナー、光に愛を求めて」6月22日  ***
 : 2014年カンヌ映画祭最優秀男優賞(ティモシー・スポール)・芸術貢献賞受賞作品。謎の多いといわれる英国最大の風景画家ターナーの後半生を描く。ターナーの絵の描き方は勿論、画題を求めての旅・絵画界の内幕・パトロンとの付き合い・家族事情などを絡めてターナーの生涯を幅広く紹介、不自然さがなく、見ごたえのある作品に仕上がっている。
69.「マッドマックス」6月23日  ****
 : ほとんどのカットが爆走・戦闘場面という徹底ぶりの娯楽作品。ストーリー設定に合わせてレトロな感じの自動車・武器などを登場させ、独特の世界を創ることに成功している。予想以上に気楽に楽しめた。
70.「予告犯」6月23日  ***
 : 「ヤングジャンプ」の人気コミックの実写映画。主人公は生田斗真演じるIT会社に派遣で働き、3年たっても正規にしてもらえず、体を壊して入院、廃品処理の飯場で知り合った仲間たちとネットで「シンブンシ」と名乗り「予告犯」となる。この敵役の女主人公は戸田恵梨香演じるキャリアの警視庁・サイバー犯罪対策係長(警部)。この二人は、幼いときに給食費も払えないでいじめにあう家庭環境に育ったという設定。「環境が人間の運命を決める。」と「努力で環境は乗り越えられる。」という考えの対立。この対立を乗り越える鍵が、この映画の決め台詞、「小さなことでも人は動く。それが人のためになると思えば。」
71.「真夜中のゆりかご」6月29日  ***
 : デンマーク映画。刑事の主人公夫妻に赤ん坊が生まれ、夜泣きなどに対応しながら、慈しんで育てている。ある日その赤ん坊が死んだ。夫が救急車を呼ぶというと、妻は救急車を呼べば自殺すると言い張る。夫は悩んだ末に、たまたま事件で知った前科者とその愛人との間にできた育児放棄に近い状態の赤ん坊と入れ替えることを思いつき、実行に移す。これから事態は意外な展開を示していく。そのストーリーが良くできているし、明るいエンディングも良い。
72.「悪党に粛清を」6月30日  ***
 : 不自然さがなく、安心して観れる娯楽映画に仕上がっている。
73.「ラブ&ピース」6月30日  ***
 : コミックスとファンタジーが合わさった不思議な世界を創り上げることに成功し、新しいエンターテインメント映画が誕生した。人間の欲望と身勝手さを基本テーマにして、ストーリー展開もスムーズで期待以上に楽しめた。
74.「ストレイヤーズ・クロニクル」7月1日  **
 : コミックの実写映画化。2つの異なった方法で特殊能力を持つように育てられた子どもたち。しかしその能力の見返りに、若くして死んでしまうという宿命を背負う。子どもたちの特殊能力を利用し自分たちの野望を実現しようという大人たちと、普通に生きながらえたいという子どもたちの対立を描く。テーマに広がりがないため、今ひとつ共感しにくい。
75.「アリスのままで」7月3日   ***
 : 主人公のアリスは、3人の子育てを終え、大学で言語学を教える50歳の大学教授。仕事でも世界中を講演で飛び回り、子どもも自立し、しかも家族の絆は強いという公私共に油の乗り切った状態の時に、若年性認知症との診断を受ける。仕事を失い、記憶を失っていく恐怖、家族との絆の変化を丁寧に描く。家族が自宅で介護するという選択肢にこの映画では救いがあったが、現実には可能性の少ない選択肢だというところに若年性認知症問題の苛酷さがある。
76.「きみはいい子」7月8日  ***
 : 今年度モスクワ映画祭アジア映画賞受賞作品。物語派三つの話が並行して展開する。小学校の新米教師が経験するクラスでのいじめ・学級崩壊・父兄と教員同士の関係を描くもの、幼児虐待を経験したが自分も子どもに手を挙げてしまう母親の悩みと母親同士の付き合いを描くもの、認知症が出始めた一人暮らしの老婆の暮らしと人との関わりを描くもの。「出会い」と「気づき」の大切さを丁寧に積み重ねたカットで説く好作品。
77.「バケモノの子」7月14日  ***
 : 細田守の監督・原作・脚本のアニメ映画。父と母が離婚、一緒に暮らしていた母が急死し、母方の親戚に引き取られ洋とした9歳の主人公が、自立を決意したが、たまたまバケモノの世界に迷い込み、出会った乱暴者の孤独な武芸者の弟子になり修行を始める。8年後武道の腕を大いに上げるが、たまたま人間の世界に戻った時に、広い知識を得ることの楽しさを知り、父親とも再会する。この映画の主要テーマは、1)師弟の絆と成長(バケモノと人間を超えた)、2)人間の抱える心の闇にどう対応するか。理屈に走らないので、素直に作品の世界に没入できた。
78.「ひつじのショーン ー バック・トゥ・ザ・ホーム」7月14日  ***
 : 通常のアニメと違い、人形を使って写真を取り、それをつなげて動きを出すというやり方で制作された映画。基本的には、セリフがなく、動きで、場面・物語の進行を理解させるというやり方。これが、効果をあげているのを体感したのは、観ていた幼児(学校にまだあがっていない)も声をあげて反応していたので。表面的には、飼い主と羊たちとの愛情・つながりを描いているが、本当に言いたいのは、人間同士でも絆の大切さと、それを強くするためには、ルーティンと同時にたまにはそれを忘れ・変化をつけることの重要性。幼児から大人までそのメッセージを受け取れる映画に仕上がっている。
79.「ボヴァリー夫人とパン屋」7月20日   **
 : パリでの出版社勤務をやめて、ノルマンディーの小さな町で親のパン屋を引き継いだ主人公の家の向かいにイギリス人の夫婦がやってくる。その名はボヴァリー夫妻。あまりにもフローベルの小説「ボヴァリー婦人」とそっくりな展開に、パン屋は「人生は小説を模倣する」と信じ、悲劇的な結末(小説では自殺)を妄想する。小説とは違った展開のエンディングが、エスプリも利いていて楽しめる。
80.「チャップリンの贈りもの」7月22日  *
 : 実話にもとづく作品。スイスへの不法移民が入院した妻の医療費を払うために(医療保険に加入していない)友人とチャップリンの死体を誘拐し身代金を要求する。話の膨らみが足りない。
81.「雪の轍」7月22日  ***
 : 昨年のカンヌ映画祭パルム・ドール(最高賞)獲得作品、3時間16分の大作。日本人には絶対に作れない映画というのが率直な印象。主人公は、25年間イスタンブールで演劇界で役者として活躍し、父のカッパドキアにある遺産を受け継ぎ、ホテル・商店・貸家経営にあたりながら、文筆活動を行っている。映画の大半はこの主人公と妻・妹・友人・店子との会話で構成されている。この会話が双方とも徹底して、自己主張を行い、いかに相手を言い負かすかに全力を尽くし、その内容も基本的価値観・生き様に関わる重いもの。自分の考えを理解してもらいたいと思い、話せば話すほど理に走り、理解は遠のき・絆は薄まり・信頼は失われていき、お互いに傷ついていくという(西洋的)人間の不条理を的確に描いている。
82.「チャイルド44」7月24日  ***
 : スターリン時代のソビエトを舞台とする作品。秘密警察官の主人公がスパイ容疑の妻の調査・告発を命じられるが、無実だと上司に報告し、地方に左遷される。この当時、「楽園(共産主義国家)に殺人はない」という方針のもとに、殺人事件は事故として処理される。同僚で親友の息子が殺されるが、自己として処理される。地方に飛ばされた主人公は、その地域でも少年の殺人事件に遭遇し、猟奇的手口から同一犯の連続殺人との疑いを抱き、調査を始める。その結果44人が殺されていたことが判明し、遂に犯人にたどり着く。スターリン時代の時代背景を取りこむことにより、物語の厚みを加えることに成功している。
83.「野火」7月29日   ***
 : 大岡昇平の原作を塚本晋也監督・主演で映画化。太平洋戦争末期のフィリピンでの米軍の攻勢の前に敗走を重ねる日本軍の姿を描く。米軍との闘い以前に飢餓との闘いで疲労困憊した極限状況の人間の姿をそして戦争の悲惨さをリアルに描く。
84.「奇跡の2000マイル」8月4日  ***
 : 「英国王のスピーチ」の製作陣が実話を映画化。ラクダ3頭と犬1匹を連れて2000マイルのオーストラリアの砂漠を約160日かけて女主人公が横断するという話。
85.「ジェラッシック・ワールド」8月12日  ***
 : 筋の運びにちょっと気になるところがあるが、まあまあ楽しめる作品に仕上がっている。
86.「ミッション・インポッシブル」8月20日 ***
 : 文句なく楽しめるエンターテインメント映画。
87.「共犯」8月21日  ***
 : 台湾映画。同じ中学に通う3人の男子中学生が1年先輩の女子学生が倒れているのを発見。自殺として警察は処理するが、3人はイジメが原因ではないかと疑い調べ始める。多感な年ごろの少年少女の交友関係・家族関係・孤独感をミステリー仕立てで描いた好作品。
88.「彼は秘密の女ともだち」8月21日  **
 : ストーリーをいじり過ぎた作品。7歳で出会い、親友となった女主人公2人がそれぞれ結婚して家族同士でも親密な交際を続けている。しかし、ひとりが女の子を出産後間もなく死んでしまう。その夫が残された赤ん坊を育てるうちに女装願望に目ざめる。そこから女装した夫と主人公との女同士の付き合いが始まるがーーーというストーリー展開。
89.「この国の空」8月24日  **
 : 昭和20年戦争末期の東京郊外での暮らしを描く。当時の状況をできるだけ忠実に再現しようとする意図は感じられるが、ある意味で最も恵まれた環境下に暮らす人たちが登場してくる(父親は亡くなっているが母と娘一人が暮らしていける収入はあるし、空襲は受けるが、家は焼けない)ので何をこの映画で訴えたいのかが良く理解できなかった。「最も恵まれた娘(若者)の1回しかない青春が失われてしまい、それを取り返すことが出来ない」という薄っぺらい感傷なのか?
90.「ナイト・クローラー」8月25日  ***
 : テレビ局に事故・事件のヴィデオの現場の撮影映像を売り込むフリーランスのカメラマンを主人公とする作品。無職の主人公がたまたま通りがかりに観た交通事故現場でのフリーランスのカメラマンの仕事ぶりに興味を持ち、その世界に参入する。持ち前の勘の良さに加え、目的のためには手段を選ばず人の感情・立場も平気で無視する強引さでのし上がっていく姿が良く描けている。合わせて、視聴者の目を引く刺激的な映像を求め、視聴率を上げようと血眼になって競争しているテレビ業界の舞台裏も生々しい。
91.「さよなら、人類」8月26日   ***
 : スエーデンの巨匠ロイ・アンダーソン監督が構想15年・撮影4年かけて完成させた作品。2914年ヴェネチア映画祭金獅子賞(最高賞)獲得。観終わった後不思議な感覚が残る珍しい映画。今まで観たどの映画とも異なるとの印象を受ける。その原因を分析すると、1)画面のトーン(全巻を通して統一されている)がシンプルかつモノトーン(色)であり実写なのに実写っぽくないし、いつの時代かよくわからない、2)形式上はサムとヨナタンという2人の面白グッズのセールスマンが物語を展開させているように見えるが、場面毎のエピソード(完結)の積み重ねとも見えて、ストーリーがあるのかないのか良く分からない、3)全体として監督は何を観客にメッセージとして伝えたいのか良く分からない、「人間は同じ誤りを繰り返す、愚かな生き物だ」「一見つまらなく見える人生にも、価値がある」「意味だ価値だのに関わりなく1度きりの人生を生きるのが人間だ」、4)「この映画をあなたはどのように観ましたか」、というように仕組んでいるからではないか?
92.「サイの季節」8月31日  **
 : 実話にもとづく作品。イラン革命直後に詩人の主人公は「国家反逆罪」で逮捕・投獄される。27年後に釈放され、最愛の妻を探すが、妻は「夫は死亡した、墓はここにある」と告げられ、イスタンブールで新しい家族と暮らしていることを突き止める。水中の場面の映像に見どころはあるものの、全体として展開が単調である。
93.「S-最後の警官」9月1日  ***
 : 大量のプルトニウムを積んだ船がハイジャックされ、東京湾に突入、爆破するとの犯人からの通告が入る。首相以下政府が対応に当たるが、犯人の要求は「首相以下全閣僚の人質と30億円の身代金」。政府は犯人の要求をのむが、プルトニウム爆破のスイッチを押す。爆破阻止のため特殊部隊3チームが突入しーーーー。これをメイン・ストーリーに、数々のエピソードを挿入し、単調な画面展開にならないよう工夫されている。
94.「わたしに会うまでの1600キロ」9月2日  ***
 : 暴力をふるう父親から自分と弟を守り育て、貧しいなかでも精一杯自分の人生を楽しもうとした最愛の45歳の母を亡くし、ヘロインとセックスに走り、優しい夫とも別れ、どん底に落ち込んだ主人公が、母が「誇り」としていた娘を取り戻すために1600キロの遊歩道踏破の一人旅に出るという物語。この自然歩道はアメリカ西海岸近くを南北に縦断するPCT(パシフィック・クレスト・トレイル)。映画は主人公が自然歩道を歩き始める所からスタートし、約100日かけて1600キロをとうはするまでにそれまでの人生を回想するという場面構成で展開する。
95.「ヴィンセントが教えてくれたこと」9月8日  ***
 : 「ちょいワル爺さん」風のヴィンセントと隣に越してきた少年との交流を描く作品。ぶっきらぼうで人嫌いな嫌われ者ヴィンセントは、飼い猫だけを可愛がっているが、行きがかり上、少年のベビィシッターを引き受ける。少年はヴィンセントと付き合ううちに、一見ぶっきらぼうで「ちょいワル」にしか見えない、実は心優しい一面を見いだす。そこで、学校での「身近な聖人」発表会にヴィンセントを取り上げる。ストーリーの組み立てがしっかりしており、楽しめる作品に仕上がっている。
96.「アンフェア the end」9月8日  ***
 : 警察・検察・裁判所の闇に挑むヒロインの警部補雪平。その闇を暴く証拠を入手するが、その証拠を使って一緒に戦ってくれる信用できる味方を探すが、誰も信用できない。最後の最後まで誰が敵で誰が味方か分からない緊迫感が持続する良くできたストーリー展開。
97.「クーデター」9月11日   **
 : この映画の全体の印象を一言でいえば「cheap」。ストーリー設定・登場人物・背景など全て。どの映画も多少は、このストーリーは都合が良すぎると思わせる部分があるものだが、良くできた作品は、それを後に引きずらせない。この映画は、それが観ている間ずっと気になった。
98.「天空の蜂」9月15日   ***
 : 東野圭吾原作。完成したばかりの巨大ヘリコプターが乗っ取られ、高速増殖型原子力発電所上空で位置固定し、犯人から日本の全原子力発電所の操業停止・破壊要求が届き、要求が受け入れられなければ、ヘリコプターを発電所に落下させると脅迫される。また、そのヘリコプターには、設計者の長男(小学生)が乗っていた。この子どもの救出場面が見どころあり。
99.「黒衣の刺客」9月18日 ***
 : 2014年カンヌ映画祭監督賞受賞作品。5年間かけて制作された。唐代の中国を舞台に平和と権力の狭間で生きていく刺客(ヒロイン)の運命を描く。この映画の最大の特色は、映像の美しさ。極上の写真の一枚一枚をつなげたようなシーンの連続でこの映画は出来ており、久しぶりに映画の美しさに引き込まれた。この映画の弱点は、脚本。ストーリー展開にメリハリ・盛り上がりを欠く。またその一因は、映像美にこだわり、映像の余韻を味合わせるため、1シーンを長くして引っ張ているため、場面転換の切れが悪くなっているため。2頭を追うのは難しいということ。そこに監督賞に止まった原因があるのでは?
100.「赤い玉」9月22日   ***
 : 高橋伴明監督、奥田暎二主演。仕事でもセックスでもピークを過ぎ、衰えを感じる中で、もう一花咲かせたいと思っている映画監督で大学で映画製作を教えている主人公を描く。「人間の脳と女のあそこの恐ろしさ」「真実のような夢、嘘のような現実」をキーワードに物語は展開する。「赤い玉」とは「男の最後の一発のときに、男のモノの先端から赤い玉が出てくる」という言い伝えに由来する。
101、「お盆の弟」9月28日 ***
 : 白黒映画。人の出会いと別れ(結婚・離婚)、生と死(癌)、仕事、家族の絆という重くなりがちなテーマを、巧みにユーモアを交えながら、絶妙のバランスで取り扱う力作。男女の結婚・離婚を扱いながら、セックス場面が一度もないというのも、逆に新鮮。
102.「GONIN サーガ」9月29日  ***
 : ヤクザの抗争に巻き込まれて死んだヤクザの子ども2人と警官の子ども1人の19年後の復讐劇という単純なストーリー。エンターテインメントに徹した映画作りに好感がもてた。根津甚八の熱演が光る。
103.「キングスマン」10月2日   ***
 : 古き良き時代のスパイ映画と現代のアクション映画を上手く融合させたエンターテインメント映画。随所にいかにもイギリス映画というセリフ・場面設定があり楽しめた。
104.「岸辺の旅」10月6日   ***
 : 第68回カンヌ映画祭「ある視点」部門監督賞(日本人初)受賞作品。夫が失踪して3年の妻(深津絵里)のもとに夫(朝の忠信)が突然戻ってきたところから、物語は始まる。そして、夫は自分が死んだこと、この3年間いろいろなところを訪れ、多くの人に世話になり、綺麗な景色巡り合ったことを告げ、一緒に旅に出ようと誘う。人と人を結ぶ縁・絆とは何か、生きるとは、生と死の境界とは、をいくつかのエピソードを交えて観客に考えさせる。この映画を創るときの、一番大きなハードルは、あちらの世界から戻ってきた夫のリアリティ。ここを上手くクリアーしたことで、観客は映画の世界に没入できた。
105.「アントマン」10月6日   ***
 : 「アントマン(蟻人間)」とは、特殊スーツを着用することにより1.5CMに小さくなることのできる人間のこと。なぜそれができるのかを観客が映画に没入できないため、ここを丁寧に時間をかけて描いていること、また娯楽映画であるという点に徹して、「アヴェンジャーズ」をパロディー化するなども、楽しめた。
106.「アメリカン・ドリーマー」10月8日  **
 : 原題は「The most violent year」。日本語タイトルと原題を合わせると、この映画の描く世界が見えてくる。主人公は典型的な「アメリカン・ドリーム」の成功者。トラック・ドライバーから身をおこし、オイル業界(ガソリン・石油など)の販売・輸送業界で急激に成長する会社を経営し、さらに大きな飛躍のための計画を実行しつつある。この業界はギャング連がかんでいる会社が多く、業界の慣行は違法なものも沢山ある。そこで、主人公は仲間からねたまれ、連続的にタンクローリーを襲われオイルを盗まれおおきな打撃を受ける一方、検察からも調査を受け、起訴される。この危機を暴力と違法手段に頼らずに乗り切ろうとする姿を描く。ストーリーの展開がやや単調。
107.「マイ・インターン」10月13日  ***
 : 主人公は、現役時代はミドル・マネジメントとして活躍、定年後、旅行・数多くの趣味をやってみるが、それだけの生活に満足しきれない、仕事で必要とされることに惹かれているときに、シニア・インターンの募集を見つけて応募する。この募集を行ったのは、創業1年半のネット通販でアパレルの販売を行い急成長している会社。この会社は、ヒロインの主婦が設立、斬新なアイディアで人気を呼び、急成長を遂げているが、全ての決定をヒロインが行わねば回らず、成長に会社の体制が追いつかず、色々な歪みが目につき始めており、銀行・投資家からCEOを雇い、全体の経営バランスをとることを求められている。また私生活面でも、夫が仕事を辞め、専業主夫として家庭を支えているが、ヒロインが、毎日夜遅くまで仕事をするため、崩壊の危機にさらされている。主人公は、このヒロイン付きのインターンになるが、ヒロインが忙しすぎるため、相手されず、やることがない、という状況から物語は始まる。物語設定が自然でかつ公私にわたる目配りも行き届いており、期待以上の出来栄え。
108.「図書館戦争 The last mission」10月13日   **
 : 映画そのものの出来は悪くはない。しかし、前編があったという観点でみると、基本テーマにさらなる展開が見られず、低評価。
109.「UFO学園の秘密」10月16日   ***
 : 幸福の科学(大川隆法)のプロパガンダ映画。この映画が主張するのは、「人間はこの世と霊界の間を行き来しており、このことを理解することにより、宇宙と一体化した平和で豊かな人生を送ることができる」ということ。イントロの部分では、霊界の存在を認めるという現代人にとって高いハードルを超えるために、UFOと宇宙人は存在するかにかなりの時間が当てられる。「科学的に証明できるもののみが存在するわけではない」という点が強調され、そこでUFOの存在=霊界の存在という巧みなすり替えが行われる。映画は、実に入念な構想にもとづき緻密に製作されている。映画の目的・主張点(上位概念と下位概念を整理し、上位概念に絞り込んだ主張する)、メディアとしてのアニメの特性を生かした映像活用(イメージを伝えやすい、理ではなく情に訴えやすいなど=科学で証明できないことをわかるということは、信じるということであり、このギャップを飛び越えるためには、五感・情感を総動員しての大ジャンプが必要であり、その手段としてのアニメ)、二項対立的論理展開(善と悪、意味のある生き方と意味のない生き方など)で分かりやすく結論に誘導するなど。この二項対立には、布教活動の実践の経験を生かし、主たる反論に自分たちの主張を有利にぶつけるという構図が反映されている。最近のジブリ作品の低迷ぶりは驚くばかりだが、この作品の映画作りの姿勢・企画・構想・手法には、大いに学ぶべき点があるのではないか?
110.「フレンチアルプスで起きたこと」9月26日   ***
 : フレンチアルプスで5日間のスキーバカンスを楽しむ4人家族を描く。2日目スキー場のレストランで昼食を取っているときに、雪崩が襲ってくる。食事客は騒然とするが、その中で夫は妻と子どもを残し、1人で逃げてしまう。家族とは何か、その絆とはを、鋭く描いた作品。
111.「赤ひげ」10月30日    ****
 : デジタル版。3時間を超える長編だが一気に観れた。数多くのエピソードを散りばめて、物語に幅と奥行きを与える良く考えられた緻密な脚本、緊張感とユーモアを交えた的確な演出、それらに応える役者の熱演。黒澤・三船の鉄板コンビは、映画の楽しさを、裏切らないで与えてくれる。加山雄三の上昇志向の強い若い医師役が赤ひげに傾倒していく演技も光る。
112.「ボクは坊さん」10月30日  ***
 : 実家のお寺(四国57番札所栄福寺)を住職の祖父の急死により引き継いだ若い坊さんの物語。現代における坊さん(お寺)・仏教の役割は何かを、新米の坊さんが色々な経験をしながら、成長していく過程を通じて描いていく。淡々とした描写の中で力まずに、一つの投げかけをしており、期待以上の出来栄え。
113.「ジョン・ウィック」11月2日  **
 : アクションを楽しむエンターテインメント映画なので、アクションはそれなりに楽しめたが、いかんせん筋が単調すぎる。
114.「アデライン、100年目の恋」11月3日  ***
 : 人類の長年の夢「不老不死」に自分がなったら?ヒロインは、ある事故をきっかけに、「不老不死」を手に入れるが、その人生は、世間の注目を避けて、10年ごとに名前・住所・仕事を変えてひっそりと暮らし、恋も出来ないというものだった。「恋も恋人と「共に老いる」ということがあって続けられる」というセリフが印象的だった。「若さ」ばかりが注目される現代で、「老い」の意味を考えさせる好作品。
115.「アクトレス、女たちの舞台」11月3日  **
 : 劇作家論・役者論・演技論を交えながら役作りをスイスアルプスで行う場面を中心に展開される。このジャンルの作品としては良くできているほうかもしれない。しかし、このレベルの薄っぺらな小手先の議論は「うるさい」と感じる。演劇論を取り入れるなら、「狂言三人三様 野村萬斎の巻」で萬斎が行っているような、本質的で骨太の議論に学ぶべきだろう。
116.「ミケランジェロ・プロジェクト」11月10日  ***
 : 実話にもとづく作品。第二次大戦末期に、ヒットラーの命令でドイツ占領下の国々で、ヨーロッパの名だたる美術品が略奪され、秘匿され、ドイツに送る準備がされる。さらに、ヒットラーは、自分が死んだ場合は、全ての美術品を破壊するように命じ、一方ソ連軍も美術品の略奪に走る。こうした情勢下で、美術品の奪還を目指し、特別部隊(国をまたがる年寄りのエキスパートを集めた)が編成される。この部隊はその意義を理解しない実戦部隊の司令官を始めとする幹部の理解を得られにくいなか、犠牲者を出しながらも、その任務を完遂する。美術の価値にかける同志的絆と人間の機微を巧みに描いた、大人のエンターテインメント映画。
117.「わたしの名前は」11月10日  **
 : 失業中でいつも父親が家にいて、母親は生計費を稼ぐために長時間外で働いている、3人兄弟の11歳の長女は、料理もし兄弟の勉強の面倒も見ている。しかし、父親はこの長女を犯しはじめている。機会を捉え、家出として、長距離トラックに無断で乗り込み、このドライバーとの旅・交流が始まる。物語の筋、ドライバーがたどる行先などが、あまりにも不自然で、ストーリーが宙に浮いてしまっている。
118.「3泊4日、5時の鐘」11月10日  **
 : 人間が時間をかけて築いてきた関係が、一瞬にして壊れてしまうまでは、良く描けているが、エンディングでその関係が一瞬にして修復されてしまうというのは、あまりにもご都合主義で、人間の真実に反する。
119.「エール」11月12日  ***
 : フランスで4週連続1位12週連続10位以内という興行成績を残した作品。フランスの田舎で酪農業を営む耳の聞こえない両親と弟と暮らし、仕事を手伝い、一家の通訳としても活躍するヒロインが、学校のコーラス部に入り、その才能を認められ、パリで試験を受けて、音楽家としての道を歩むことを奨められて悩むというストーリー。フランスらしいエスプリの聞いた映画。耳が聞こえない家族と手話でコミュニケーションするという設定を実に上手く使ったウイット、最後のクライマックス創りの素晴らしさ。
120.「PAN]11月12日   **
 : 「アナと雪の女王」で新しいヒロイン像を打ち出したディズニーが、新しいヒーロー像創りに挑戦した作品。従来のヒーローは、「生まれつきの家柄・超能力などにより定められた特別に選ばれた人(エリート)」だった。それを、この「PAN(勇者)」は、「ヒーローは、普通の人間が勇気を奮い起こして思い切って飛躍した時に生まれる」という、観客に感情移入させやすいヒーロー像を打ち出している。ストーリーそのものには新機軸が見られない。
121.「犬に名前をつける日」11月16日  ***
 : 日本では飼い主がいない犬は存在できない。したがって、犬に名前をつけるということは、自分が飼い主として犬の面倒を見て、生きることを保障するというコミットをすることを意味する。現在日本では、飼い主に見捨てられ、殺処分される犬・猫が年間15万匹にのぼる。この映画は、ドキュメンタリー風に、殺処分を回避し、新たな飼い主を見つけるなどの活動をおこなうNPOの活動に焦点を当てながら、その活動により、殺処分される犬・猫は微減傾向にあるものの、飼い主から捨てられるペットが高水準にあることを指摘する。そして、その原因が、犬・猫という命を持ったものを物として扱う飼い主の存在、それをビジネスチャンスとして対応するブリーダーを生み出すことにあると指摘する。この映画の良いところは、「何かを変えるためには、全ての準備が整うまで待っていては何もできない。行動することにより準備も整ってくる」というメッセージを伝えていること。もう一歩踏み込んで欲しかったのは、抜本策の一つとして、ブリーダーの存在を認めない国もあるという情報等を伝えなど、抜本策の具体的イメージ。
122.「恋人たち」11月16日   **
 : この映画は、主に3人に焦点を当ててそのカップルのあり方を描くというもの。3年前に通り魔に妻を殺され、仕事も手につかず、犯人は責任能力なしで無罪、民事で損害賠償をしようにも弁護士5人に断られ、自殺も出来ない男、夫と姑との関係もマンネリな弁当の仕出し屋で働く中年の主婦、ホモの弁護士。それぞれのエピソードを綴るという構成だが、エンディングがあまりにもお粗末、何の工夫も見られない。
123.「コードネームUNCLE」11月17日   ***
 : アメリカとロシアのスパイが相棒として仕事をすることを命じられ、お互いに勝手が違い、意地を張りながら任務を遂行していくという、新しい趣向のエンターテインメント映画。楽しめるレベルを確保している。
124.「起終点駅」11月18日  ***
 : 地味だが、丁寧に創られた完成度の高い作品。妻と一人息子を東京に残し単身赴任で北海道で判事を務める主人公。法廷で偶然に昔の恋人と出会い、逢瀬を重ねる。恋人と小さな町で弁護士として暮らすことを決め、その町へ向かう途中で、汽車に飛び込み恋人は自殺してしまう。主人公は、判事を辞め、妻と離婚し、釧路で弁護士を始める。その二十数年後の出来事を描く。
125.「僕たちの家に帰ろう」11月20日   **
 : 中国の遊牧で暮らしてきた少数民族の物語。町の近くでは水が涸れ、草もなくなり、父母は水と草を求めてどんどん町を離れた遠くへ出かけて遊牧生活を続けている。祖父と町で暮らす小学生の兄弟が、祖父の死んだ後の夏休みに、ラクダに乗って、父母のもとに旅する、「人間と自然が一体になった暮らし」への挽歌。この映画のエンディングは物語つくりの「掟破り」。
126・「裁かれるのは善人ばかり」11月20日   ***
 : 数々の映画祭で賞を獲得したロシア映画。脚本がしっかりしており、見ごたえのある映画に仕上がっている。物語は、北海沿いの町で自宅兼自動車整備工場をもつ主人公が、市長に公的必要という名目の下に、不法に財産を収容されることを決定される。不当な決定であると裁判所に提訴するが、市長・警察・検察・裁判官はぐるになっており、訴えは棄却される。モスクワから来た親友の弁護士は市長の秘密(過去の数々の悪事)をネタに脅しをかけて要求を通そうとするが、結局は失敗する。そして、最後には最愛の妻も失う。この映画が目指すのは、現代版「ヨブ記」。この世の不条理を描くことに成功している。
127.「リトル・プリンス、星の王子様と私」11月24日    ***
 : 「大人になると仕事などの生活に追われて、人生の意味を忘れ、子ども時代には見えたものが見えなくなる」という古くて新しいテーマを、上手くまとめた、最近では一番良くできたアニメ。「一番大切なものは、目に見えない。しかし、心で見れば、その大切なもの・真実が見える。また、その見えたものを忘れないで、思い出すことによって、それはいつまでも生きている」というメッセージが的確に伝わってくる。
128.「FOUJITA」11月24日    **
 : 画家藤田嗣治の生涯を描く映画。監督の製作意図は、「美しいショットの連続で、美しい映画を創る」というところにある、のだろう。その意味ではこの映画は成功している。しかし、この映画に藤田の絵画観・作品・人生観・生き様の掘り下げを期待した観客も多いだろう。そうした観点からこの映画を観ると、ほんの上っ面をなででいるだけで、失敗作といえるのだろう。
129.「グラスホッパー」11月24日   ***
 : エンターテインメント映画としては、全体としての期待レベルをクリヤーした作品。ストーリー展開も不自然さが少なく、違和感がなかった。残念だったのは、エンディングでそれまでに触れられなかった謎解きがされるのだが、そこで破綻が生じてしまったこと。
130.「007 スペクター」11月29日  ***
 : 007シリーズらしい007。アクション場面に次ぐアクション場面。今回の特徴は、ヘリコプター・セスナ機を使ったアクションが多いこと。これが(ジェット機ではないので)地上の車との絡まりを自然なものとしている。安心して観ていられるエンターテインメント映画に仕上がっている。
131.「草原の実験」11月30日   ***
 : ソ連統治下の中央アジアの草原で二人で暮らす父と少女。その日常が描かれ、そこに少女をめぐる二人の少年の争いが加わる。ある出来事により、父親が死に、少女は父親を埋葬した後、どちらの少年を選ぶかの岐路に立たされる。少年と暮らし始めて間もなく、巨大なきのこ雲に続き、爆風と炎に見舞われ、家もろとも二人は吹き飛ばされる(核実験)というところで、映画は終わる。この映画には音(生活音・音楽)はあるが、台詞は一切ない。それは、大人になる前の少女のみがもつ可憐な美しさを際立たせるための、制作者の工夫であり、それは見事に成功している。そして、そのエンディングは、その美しさが、大人になることにより失われてしまう、ことの象徴なのだろう。
132.「黄金のアデーレ、名画の帰還」12月3日   ***
 : アメリカに亡命したオーストリア富豪の家族であるヒロインが、オーストリア政府がナチスに奪われた美術品を持主に返還するという情報に接し、「黄金のアデーレ」(クリムトに伯母を描かせた名画、時価100億円)の返還を訴えることを決意し、若手弁護士と組み、数々の難関を突破し、遂に返還を勝ち取る。この映画の優れているところは、研ぎ澄まされた言葉の力、お金より大事な人間の誇り、人間の思いやりを、見事に描くことに成功している、こと。
133.「杉原千畝」12月5日   ***
 : リトアニアでユダヤ人に命の「ヴィザ」を発給し、多くの命を救った外交官杉原千畝の活動を描いた作品。その事実に加え、杉原千畝を太平洋戦争を回避し平和を求めて外交活動を展開した人物という側面に焦点をあてた映画。ほとんどが海外のシーンであるが、不自然さが全くないし、ストーリーも良く練りこまれている。
134.「ハッピーエンドの選び方」12月8日  **
 : いろいろな映画祭で賞を獲得した作品。医者も打つ手がないと匙を投げた終末期の老人とその家族が友人に苦しまずに死ねる装置の作成とその使用を求め、友人たちも見かねて協力するというストーリー。結果として尊厳死(安楽死)賛歌となっている、このテーマを取り上げた場合、賛否両論があり、それらを踏まえながら、どちらに組するかを明らかにするという、問題の整理が最低限必要だろう。
135.「さようなら」12月14日   **
 : 主人公は、南アフリカから日本に10歳の時に難民としてやってきた白人女性とアンドロイド(人型ロボット)。未来のある日、日本で原発の連鎖的爆発により、放射能汚染により、日本は、住むことが出来なくなり、国民は海外に避難していく。しかし、主人公の女性は、避難できないうちに持病のため死んでしまう。この映画は、色々なテーマを投げかけている。人間はロボットとは違い、感情を持ち・美を感じることが出来・またすぐものを忘れる=人間とは何か。差別=人種・避難の優先順位。日本人と外国人の違い=日本人は「さみしくないことを求め」、外人は「幸福であることを求める」など。しかし、課題を提起はするものの、それをどう収斂していくかのヒントもなく、とっ散らかしたままで終わっている。
136.「わたしはマララ」12月15日   ***
 : 原題は「He named me Marara」。「He」は父親。「マララ」とは、アフガニスタンにイギリス軍が攻め込み、アフガニスタン軍が敗走しているとき、「生き延びて一生奴隷の生活を送るよりも、一日でもライオン(王者)として生きよう」と呼びかけ、士気を鼓舞し、イギリス軍に先頭に立って立ち向かい、倒されて死んだ伝説の女性の名前。父親は小さな学校を自ら開き、教育に打ち込んできた教育者。タリバン支配に、「タリバンはイスラムではない、権力に取りつかれた亡者に屈するわけにはいかない」といって、反タリバンの声を上げ、多くの友人をタリバンに殺された人物。映画は、実写とアニメを上手く織り交ぜて、マララの生まれてからの環境・成長、マララのタリバンから受けた銃撃による負傷の詳細、リハビリの様子、テイ―ンエイジャーとしての素顔を交えながら、タリバンに屈しないで世界に「教育の重要性」を訴える活動をバランスよくまとめて紹介する。
137.「海難1890」12月15日   ***
 : 1980年和歌山県串本で遭難・沈没したトルコ軍艦の乗組員を必死になって救った貧しい村人の昔から受け継がれた「海で遭難した者は、どんなことがあっても救わねばならないという真心」を丁寧に描く。そして、終盤はその85年後のテヘランが舞台。イラン・イラク戦争が始まり、イラクが4日間の猶予で外国人のテヘラン脱出を認めると通告。日本大使館は政府に救援機の派遣を要請するが、間に合わないことが判明する。外国からの最後の救援機はトルコのものとわかり、大使は藁をもつかむ気持ちで、日本人の搭乗を要請する。トルコは、この要請を受け、首相判断で「日本人救済のため追加1機の救援機覇権を決定」する。そして、救援機がテヘランに到着する。そこに待ち受けていたのは、国外脱出を希望する2機にはとても乗り切れないほどの大勢のトルコ人。日本人は「とても乗せてもらえる状況ではない」と思う、しかし、トルコ大使館員が「われわれは、困っている人たちを助けてきた国の国民ではないのか。いま、日本人を救えるのは、あなたたちだけなのだ」と呼びかける。この呼びかけに応え、人々は日本人の優先搭乗を認める。現在のような世界で、皆が思い出さねばならないのは、こうした「他人を思いやる心」なのだろう。
138.「独裁者と小さな孫」12月18日   ***
 : 数々の国際映画祭で賞を獲得した作品。ある國で革命が起こり、独裁者が小さな孫と逃亡生活を送った末についに捕まるというストーリー展開。独裁者の意外な柔軟性・したたかさを描くと同時に、独裁者の悪を描くと同時に革命側の悪をも同時に描こうとする作品。人間を見る温かく同時に厳しい公平な視点が冴える。それを象徴するのがエンディング。それがこの映画を非凡なものに高めている。
139.「スターウオーズ、フォースの覚醒」12月21日  ***
 : 先週末から世界中で公開され、アメリカでは週末の興行収入で歴代一位の新記録を達成した。安心して楽しめるエンターテインメント映画に仕上がっている。しかし、映画史上に残る名作かは疑問。
140.「母と暮らせば」12月24日   **
 : 長崎の原爆で死んだ医学生の息子と生き残った母とフィアンセを中心とする物語。3人の互いを思いやる気持ちと、戦後の暮らしを丁寧に描いた作品。
141.「ボーダレス、ぼくの船の国境線」12月25日  ***
 : 数々の国際映画祭で賞を獲得した作品。イラン・イラクの立ち入り禁止の国境地帯に放置された鉄船。ここを根城に魚や貝をとり生活を立てている主人公の少年。ある日この船に銃を持った一人の少年兵(実は少女)がやって来て住み始める。そのごこの少女は赤ん坊を連れてくる。徐々に二人は打ち解けていく。そこにアメリカ兵が一人迷い込み、二人に閉じ込められる。三人とも違う言葉を話し、言葉は厳密には通じないが、不思議な交流が生じる。直接的に戦争を描く場面はないが、戦争の悲惨さ、その中でも信頼関係が得られれば人間は付き合っていけるという不思議な明るさを感じさせる映画。少年・少女の家庭状況など一切触れず、また現地の素人の子どもを役者として起用して成功している。
142.「真珠のボタン」12月29日   ***
 : パタゴニア(チリ)のインディオ(先住民)とピノチェト独裁政権下で殺害・迫害された人々への挽歌として製作された映画。チリの高原(アタカマ砂漠)に設置された惑星探査用電波望遠鏡群のシーンから始まり、生命の存在に欠かせない水を有する惑星が数多く存在することを紹介。チリは太平洋に面した4200KMの海岸線をもち、1万年前からこの地に住み始めた先住民は、この海のもたらす豊かな恵みとともに暮らしてきたが、大航海時代以降ににやってきた植民者は海を無視し、先住民の虐殺を続け、現在純粋な先住民の子孫は20人にまで減ってしまった。初めの真珠(貝)のボタンが意味するのは、イギリス人により数個のボタンで買われ、石器時代の生活から、産業革命時代のイギリスへと連れていかれ、1年後にチリに連れ戻されたときには、元の自分に戻れなかったジェレミー・ボタンの苦悩の生涯。二つ目のボタンは、ピノチェト政権に虐殺され、30KGのレールの重りをつけて海に投棄された犠牲者のシャツに付いていたと思われるボタン。
143.「光のノスタルジア」12月30日   ***
 : 「真珠のボタン」(2015年制作)姉妹編(2010年制作)。チリのアタカマ砂漠(海抜5000M以上)は世界で最も乾燥し空気が澄んでいるため、天文学者と考古学者が集まってくる。天文学者は星の観測がしやすいため、ドイツ製の古い光学望遠鏡から世界最大の電波望遠鏡の設置された現代まで星を観察し宇宙誕生の過去に眼を向けており、考古学者は1万年前にこの地に住み始めた先住民の遺跡・遺品を調査し人間の過去に眼を向けている。しかしこの地は、ピノチェト独裁政権が強制収容所を設置し、数千人を虐殺、埋めた地でもある。しかし、チリ人はこの最も近い過去に眼を向けず、見ようともしないという事実を指摘し、この地でピノチェト政権時代に行方不明になった家族が20年以上たっても身内の遺骨を探す人の姿とその思いを紹介する。
144.「サクラダ・ファミリア」12月31日   ***
 : サクラダ・ファミリアの歴史をそもそもの発端から、二代目の建築家としてガウデイが選ばれてからの経過、そして何回もの建設中止の危機を乗り越えて、プロジェクトが存続したいきさつ、そして現在の状況とこれからに向けての展望。サクラダ・ファミリアの全体像がよく理解できた。

2015年01月09日

2015年読書目録(1~3月)

1.「保田與重郎文庫2 英雄と詩人」新学社(1999)、1月4日
2.「  ”     ”  3 戴冠詩人の第一人者」” (2000)、”  ”
3.「  ”     ”  7 文学の立場」  ” (1999)、 ”  ”
4.「  ”     ” 16 現代奇人伝」  ” ( ”  )、 ”  ”     ***
5.「  ”     ” 19 日本浪漫派の時代」” (” )、 ”  ”     *
6.「  ”     ” 21 萬葉集名歌選譯」”( ”  )、  ”  ”
7.「鉄鼠の檻」京極夏彦、講談社(1996)、1月4日         *
8.「インターセックス」帚木蓬生、集英社(2008)、1月4日
 : インターセックス=半陰陽
9.「よろしく」嵐山光三郎、集英社(2006)、1月4日
10.「断固不良中年で行こう」嵐山光三郎、朝日(2000)、1月5日 **
11.「「退歩的文化人」のススメ」 ”  ” 、新講社(2004)、” ”   *
12.「おはよう!ヨシ子さん」  ”   ” 、  ”  (2008)、” ”   *
 : ヨシ子さんは、大正6年生まれの著者の母親。62歳から俳句を習い始め、30年近い句歴を有する。その俳句を紹介しながら、ヨシ子さんの日常を綴る。
13.「お探しの本は」門井慶喜、光文社(2009)、1月5日
14.「自分の謎」赤瀬川原平、毎日(2005)、1月5日
15.「その未来はどうなの」橋本治、集英社新書(2012)、1月5日
16.「幸いは降る星のごとく」 ”  、集英社(2012)、   ”  ”
17.「生命ある限り」E・キュープラー・ロス、産業図書(1982)、1月6日  *
 : サブタイトル「生と死のドキュメント」。患者が不治の病を破壊的で無意味な暴力として見るのではなく、人生のあらしのひとつとしてーーつまり自身の内的成長を助け、何世紀にもわたり風雨にうたれてきた渓谷の如く美しく生まれ変わるのを促すあらしとしてーー見るように援助することの結果を示す本。
18.「生命尽くして」E・キュープラー・ロス、産業図書(1984)、1月6日   **
 : 「生命ある限り」の姉妹編。ロスの「生と死のワークショップ」の記録。このワークショップの目的は、セミナーでは教えることは出来るが助けることは出来ないので、直接的に人々を助けること。

19.「日本農書全集19 会津農書他」佐瀬与次右衛門、農文協(1982)、1月6日  (4)
20.「  ”    ”  20 会津歌農書他」 ”     ” 、  ”  (  ” ), ”  ”   (11)
21.「  ”    ”  21 農業自得他」田村吉茂、      ”  (1981)、 ”  ”   (5)
22.「江戸時代人づくり風土記17 石川」組本社編、農文協(1991)、1月6日
23.「   ”        ”   18 福井」   ”  、  ”  (1990)、 ” 7日  *
24.「女人・石の仏」長谷川聡子、青娥書房(1986)、1月6日
25.「大系真宗資料伝記編8 妙好人編」法蔵館(2006)、1月6日
26.「カザルスへの旅」伊勢英子、理論社、1月6日    **
27.「ふたりのゴッホ」伊勢英子、新潮社(2005)、1月6日  **
 : サブタイトル「ゴッホと賢治37年の心の軌跡」。あまりにも酷似したふたりの人生・芸術と裸の魂。彼らは生涯自分の中のもうひとりの自分と戦いつづけた。自分の一部でありながら自分の手におえない自分、もうひとりの自分とは誰なのか。そしてふたりの心の飢えとは何だったのか。
28.「画集「死の医学」への日記」伊勢英子絵・柳田邦男文、新潮社、1月6日
29.「保田與重郎文庫10 蒙亶」新学社(2000)、1月7日
30.「   ”    ”  20 日本の文学史」” ( ” )、”  ”    **
 : 古代の部分が特に秀逸
31.「ジョアンナに乾杯」1~5、比企俊太郎、生活思想社(2005)、1月7日
32.「破綻する中国、繁栄する日本」長谷川慶太郎、実業之日本社(2014)、1月7日  **
 : 中国で何が起きているのか: シャドーバンキングの危機が中国崩壊のトリガー。人民解放軍の暴走抑止が中国の行方を左右する。日本: 「アベノミクス」に肯定的・結果楽観視。「アベノミクス」は大いに問題ありでそこは共感できない。
33.「数字と踊るエリ」矢幡洋、講談社(2011)、1月7日  **
 : 自閉症と診断された4歳の女の子が両親の手探りの献身的努力で驚異的な成長を遂げるまでの9年間の記録。日本で自閉症を真正面から治療した初めての挑戦の記録。
34.「人類の星の時間」シュテファン・ツヴァイク、みすず(1996)、1月8日  *
 : 歴史の中でも崇高な忘れがたい瞬間というのは稀である。ゲーテ、ナポレオン、ドストエフスキーなどの天才が輝きを放った12の世界史の運命的な瞬間を描く。
35.「七つめの絵の具」伊勢英子、平凡社(2010)、1月8日
 : 絵描きが書いた初めての絵のない本。20年間に書いたエッセイを収録。
36.「歴史を読み替える ジェンダーから見た世界史」三成美保他編、大月書店(2014)、1月8日 *
37.「老いは楽しい」齋藤茂太、PHP(2012)、1月8日
38.「酔いがさめたら、うちへ帰ろう」鴨志田穣、講談社文庫(2010)、1月9日  *
 : アルコール依存症の男性を主人公とする笑って泣ける私小説。
39.「江戸時代人づくり風土記20 長野」組本社編、農文協(1988)、1月9日  *
40.「    ”      ”    21 岐阜」   ”  、  ”  (1992)、 ”  ”   *
41.「    ”      ”    22 静岡」   ”  、     (1990)、 ”  ”   *
42.「日本農書全集22 農家捷経抄他」小貫葛右衛門、” (1980)、 ”  ”   (4)
43.「   ”     23 農稼録他」長尾重喬、      ” (1981)、 ”   ”  (3)
44.「   ”     24 農具揃他」大坪二市、      ” (  ” )、 ”   ”   (2)
45.「日本民俗研究大系8 心意伝承」おうふう(1988)、1月9日 、  ”  ”
46.「新典社研究叢書41 近代日本の作家と作品」片岡懋、(1991)、”  ”
47.「裸のランチ」ウィリアム・バロウズ、河出(1987)、1月9日
48.「鏡の中の物理学」朝永振一郎、講談社学術文庫(1976)、1月9日
49.「日本の女は百年たっても面白い」深澤真紀、KKベストセラーズ(2014)、1月9日  *
 : 女たちを、女であることを商品とする「アキンド女」と、女を商品としたくない「サムライ女」と名付け分類する。
50.「女の本気」エメラルド倶楽部関西、オータパブリケーションズ(2014)、1月9日  **
 : サブタイトル「関西女性経営者46人からの本気のメッセージ」。いま女性に必要なものは、本気の志・信念ではないか。
51.「大人の女はどう働くか?」ロイス・P・フランクル、海と月社(2014)、1月9日
 : サブタイトル「絶対に知っておくべき考え方・ふるまい方・装い方」
52.「「女」の時代の女たち」熊谷充晃、双葉社(2014)、1月9日
53.「文、花の生涯」楠戸義昭、河出文庫(2014)、1月9日
54.「「新蔵人」絵巻の世界 室町時代の少女革命」江口啓子他編、笠間書院(2014)、1月9日
55.「江戸時代人づくり風土記23 愛知」参歩企画、農文協(1995)、1月10日
56.「   ”        ”   24 三重」組本社、    ” (1992)、 ”  ”
57.「   ”        ”   25 滋賀」参歩企画、  ” (1996)、 ”  ”
58.「   ”        ”   26 京都」組本社編、  ” (1988)。 ”  ”
59.「折口信夫全集14 恋の座・近代短歌(和歌史2)」中公(1996)、”  ”   (2)
60.「転換期の国際政治」武者小路公秀、岩波新書(1996)、1月10日  *  (4)
61.「希望」鎌田實、東京書籍(2011)、1月10日
 : サブタイトル「命のメッセージ」
62.「悪女と紳士の経済学」森永卓郎、講談社(1994)、1月10日
 : 「終身結婚制(一夫一婦制)」から「生涯恋愛制」への転換を「仕事と家庭と恋愛の三権分立」をキーワードに説く。
63.「二度目の大往生」永六輔、岩波新書(1995)、1月10日
64.「定年後のただならぬオジサン」足立紀尚、中公新書ラクレ(2006)、1月10日
65.「悪党ほど我が子をかわいがる」本橋信宏、亜紀書房、1月10日
66.「日本農書全集25 粒粒辛苦録他」農文協(1980)、1月11日   (1)
67.「折口信夫全集15 伊勢物語私記・反省の文学源氏物語(後期王朝文学論)」中公(1996)
   ***  (9)
 : 「源氏物語」が出色。いままで本居宣長の「もののあわれ」論を始め数多くの「源氏物語」論を読んできたが、ようやく納得できるものに出会えた。
68.「リバース・エッジ」岡崎京子、宝島社(2000)、1月11日
69.「男一匹ガキ大将」1・2、本宮ひろ志、集英社文庫(1995)、1月11日  *
70.「活字の人さらい」嵐山光三郎、ちくま文庫(2002)、1月12日
 : サブタイトル「愛書少年不思議譚」
71.「保田與重郎文庫5 エルテルは何故死んだか」新学社(2001)、1月12日
72.「  ”     ”  13 南山踏雲録」新学社(2000)、1月12日
73.「  ”     ”  23 戦後随想集」  ”  (2001)、 ”  ”
74.「生きかた上手」1~3、日野原重明、ユーリーグ(2008)、” ”    *
75.「運命の足音」五木寛之、幻冬舎文庫(2003)、1月12日
76.「人生を楽しむ」加藤仁、講談社文庫(2001)、 ”  ”
 : サブタイトル「50歳からがゴールを決める」
77.「明日は、いずこの空の下」上橋菜穂子、講談社(2014)、1月12日
78.「現代アジアの女性たち」吉村真太郎他編、新水社(2014)、1月13日  *
 : サブタイトル「グローバル化社会を生きる」。17か国のアジアの女性たちの今を報告。
79.「いのちをいただく」内田美智子、講談社(2013)、1月13日  **
 : サブタイトル「みいちゃんがお肉になる日」
80.「女神の聖地伊勢神宮」千草清美、小学館新書(2014)、1月13日
81.「江戸時代人づくり風土記27・49 大阪」参歩企画、農文協(2000)、1月14日  **
82.「   ”        ”   28 兵庫」     ”   、  ”  (1998)、 ”  ”
83.「   ”        ”   29 奈良」     ”   、  ”  (  ” )、 ”  ”
84.「日本農書全集26 農業図絵」土屋又三郎、農文協(1983)、1月14日   *
85.「  ”    ” 27 村松家訓」村松標左衛門、 ”  (1981)、 ”  ”    (1)
86.「  ”    ” 28 地方の農書他」大畑才蔵、 ”  (1982)、 ”  ”    (3)
87.「ざしき童子のはなし」宮沢賢治文・伊勢英子絵、講談社(1985)、”  ”
88.「日本詣で」嵐山光三郎、集英社(2001)、1月14日
 : 日本全国ブラリ旅のエッセイ
89.「不良定年」 ”   ”  、新講社(2005)、 ”  ”
 : 「不易」の確信と「流行」の自在を生きる。つまり不良となる。定年後も不良として生きるとの宣言。
90.「道楽人生・東奔西走」 ”  ”、” (2011)、”  ”   (1)
 : ぼくらは定年道楽団
91.「保田與重郎文庫8 民族と文芸」新学社(2001)、1月15日
92.「男一匹ガキ大将」3~7、本宮ひろ志、集英社文庫(1995)、1月16日
93.「呑めば都」マイク・モラスキー、筑摩(2012)、1月16日
94.「江戸時代人づくり風土記30 和歌山」参歩企画、農文協(1995)、1月16日
95.「   ”        ”   31 鳥取」     ” 、   ”  (1994)、 ”  ”
96.「   ”        ”   32 島根」     ” 、   ”  ( ”  )、 ”  ”
97.「精霊の木」上橋菜穂子、偕成社(1989)、1月16日
98.「男時・女時の文明論」木村尚三郎、PHP(1986)、1月16日  **  (9)
 : 「女時」=世界を考えるよりまず自分を考える、「男時」=理念を高く掲げ、変革を辞せず、その実現に情熱を傾ける
99.「日本農書全集29 一粒万倍 穂に穂他」河合忠蔵、農文協(1982)、1月17日  (3)
100.「 ”    ”  30 耕耘録他」細木庵常、農文協(1982)、1月17日  (3)
101.「 ”    ”  31 蝗除試仕法書他」佐藤籐右衛門、農文協(1981)、1月17日  (2)
102.「緊急問題」嵐山光三郎他、本の雑誌社(1999)、1月17日
103.「魔がさす年頃」 ”   、新潮社(2012)、1月17日
104.「隣のアポリジニ」上橋菜穂子、筑摩(2000)、1月18日  *
 : サブタイトル「小さな町に暮らす先住民」。「自分はもうアポリジニの伝統文化は知らない」と思っている町に住むアポリジニの姿を描く。
105.「明日の田園都市」E・ハワード、鹿島出版(1968)、1月18日  *  (8)
 : 1902年に出版された「明日の田園都市」の復刻版の翻訳。「Garden City」=農村にある心身の健康と活動性と都市の知識・技術的便益・政治的協同の結婚。
106.「折口信夫全集16 国文学・短歌論・国語学」中公(1996)、1月17日  **  (4)
107.「   ”    ” 17 春来る鬼・仇討のふぉおくろあ・(民俗学1)」” (”)、”  ”  (4)
108.「   ”    ” 18 女の香炉ほか(民俗学2)」 ”(1997)、 ”  ”        (2)
109.「保田與重郎文庫11 芭蕉」新学社(2001)、1月18日
110.「   ”    ”  13 南山踏雲録他」” (2000)、”  ”
111.「   ”    ”  14 鳥貝のひかり・天杖記」” (2001)、”  ”
112.「   ”    ”  15 日本に祈る」 ”   ”   ( ”  )、 ” ”
113.「   ”    ”  17 長谷寺・山の辺の道他」” ”( ” )、 ” ”
114.「おとこくらべ」嵐山光三郎、恒文社(2001)、1月18日   *
 : 作者の畏敬する5人の作家(樋口一葉・小泉八雲・森田草平・有島武郎・北原白秋)のしについて論じる
115.「お元気ですか」新井素子、廣済堂出版(2004)、1月18日
116.「今日もいい天気」”  ” 、  ”   ” ( ”  )、 ”   ”
117.「闇の守り人」上橋菜穂子、偕成社(1999)、1月19日
118.「時の旅人」アリソン・アトリー、岩波少年文庫(1998)、1月19日
119.「グリーン・ノウの子どもたち」L・M・ボストン、評論社(1972)、1月19日
120.「江戸時代人づくり風土記33 岡山」組本社編、農文協(1989)、1月19日
121.「   ”       ”    34 広島」   ”  、  ”  (1991)、 ”  ”
122.「   ”       ”    35 山口」参歩企画、  ”  (1998)、 ”  ”
123.「   ”       ”    36 徳島」   ”  、  ”  (1996)、 ” 21日
124.「   ”       ”    37 香川」   ”  、  ”  (  ” )、 ”  ”
125.「   ”       ”    38 愛媛」   ”  、  ”  (1997)、 ”  ”
126.「   ”       ”    39 高知」   ”  、  ”  (1990)、 ” 24日
127.「   ”       ”    40 福岡」   ”  、  ”        、 ”  ”
128.「   ”       ”    41 佐賀」   ”  、  ”        、 ”  ”
129.「大航海時代叢書第Ⅰ期別巻 年表・索引」岩波(1970)、1月19日
130.「日本農書全集32 老農談語・刈麦談他」陶山訥庵、農文協(1980)、1月20日  (2)
131.「   ”    ” 33 農業日用集他」渡辺綱任、     ”  (1982)、 ”  ”    (6)
132.「   ”    ” 34 農務帳他」具志頭親方他、     ”  (1983)、 ”  ”    (6)
133.「   ”    ” 35 養蚕秘録他」上垣守圀、      ”   (1981)、”  ”     (5)
134.「   ”    ” 36 地域農書1」              ”   (1994)、” 21日   (6)
135.「   ”    ” 37   ”   2」              ”   (1998)、”  ”     (3)
136.「   ”    ” 38   ”   3」              ”   (1995)、 ” ”     (3)
137.「   ”    ” 39   ”   4」              ”   (1997)、 ” ”     (9)
138.「   ”    ” 40   ”   5」              ”   (1999)、 ” 23日  (4)
139.「   ”    ” 41   ”   6」              ”   (  ”  )、”   ”   (8)
140.「   ”    ” 42 農事日誌1」              ”   (1994)、 ” 25日  (2)
141.「   ”    ” 43    ”  2」              ”   (1997)、 ”   ”   (1)
142.「   ”    ” 44    ”  3」              ”   (1999)、 ” 27日
143.「   ”    ” 45 特産1」                 ”   (1993)、 ” 28日  (7)
144.「   ”    ” 47  ” 3」                 ”   (1997)、 ”  ”    (6)
145.「   ”    ” 48  ” 4」                 ”   (1998)、 ”  ”    (10)
146.「   ”    ” 49  ” 5」                 ”   (1999)、 ”  ”
147.「   ”    ” 50 農産加工1」              ”   (1994)、”   ”    (6)
148.「   ”    ” 52    ”  3」              ”   (1998)、”  30日  (7)
149.「   ”    ” 53    ”  4」              ”   (  ” )、 ”   ”   (8)
150.「   ”    ” 54 園芸1」                 ”   (1995)、 ”  ”    (7)
151.「   ”    ” 51 農産加工2」              ”   (1996)、2月1日   (9)
152.「   ”    ” 55 園芸2」                 ”   (1999)、 ” ”     (6)
153.「   ”    ” 56 林業1」                 ”   (1995)、 ” ”     (5)
154.「   ”    ” 57  ” 2」                 ”   (1997)、 ” 3日    (4)
155.「   ”    ” 58 漁業1」                 ”   (1995)、 ” ”     (4)
156.「   ”    ” 59  ” 2」                 ”   (1997)、 ” ”      (6)
157.「   ”    ” 60 畜産・獣医」              ”   (1996)、 ” 5日    (9)
158.「   ”    ” 61 農法普及1」              ”   (1994)、 ” ”      (5)
159.「   ”    ” 62    ”  2」              ”   (1998)、 ” ”     (10)
160.「   ”    ” 63 農村振興」               ”   (1995)、2月7日    (5)
161.「ツバメ号とアマゾン号」上・下、アーサー・ランサム、岩波少年文庫(2010)、1月20日 *
 : 1930年に出版され、いまだに世界中の少年少女の心を捉え続けている冒険小説。イギリスの湖水地方を舞台に4人の子どもたちが活躍する物語。
162.「折口信夫全集19 石に出で入るもの・生活の古典としての民俗(民俗学3)」 ” 21日 (3)
163.「  ”    ”  21 日本芸能史六講(芸能史1)」中公(1996)、1月21日       (5)
164.「新井素子の?教室」1・2、徳間書店(1987)、1月21日
165.「折口信夫全集22 かぶき讃(芸能史2)」中公(1996)、1月21日
166.「  ”   ”  23 日本文学啓蒙」     ”  (1997)、”  ”    ** (35)
167.「  ”   ”  19 石に出で入るもの、生活の古典としての民俗(民俗学3)」” (1996) (17)
168.「  ”   ”  24 海やるのあひだ、春のことぶれ(短歌作品1)」” (1997)
169.「  ”   ”  25 倭をぐな(短歌作品2)」 ”  (1997)、1月24日
170.「  ”   ”  20 民族史観における他界観念・神道宗教化の意義(神道・国学論)」** (38)
171.「  ”   ”  26 古代感受集・近代悲傷論(詩)」 ” (1997)、1月24日  (1)
172.「  ”   ”  27 死者の書・身毒丸(小説・初期文集)」” ( ” )、” ”  *  (3)
173.「  ”   ”  28 花山寺縁起・東北車中三吟(戯曲・連句)」”( ” )” ”   (4)
174.「  ”   ”  29 歌の円寂するとき(短歌評論1)」 ” (1997)、1月28日  (4)
175.「  ”   ”  30 雲母集細見(短歌評論2)」    ”  ( ”  )、 ”  ”   (4)
176.「  ”   ”  31 自歌自註・短歌啓蒙(歌評)」   ”  ( ”  )、 ”  ”   (3)
177.「  ”   ”  32 山の音を聴きながら(近代文学評論)」” (1998)、2月1日
178.「  ”   ”  33 零時日記・海道の砂(随想ほか)」  ”  ( ”  )、2月3日
179.「  ”   ”  34 日記・書簡・補遺」中公(1998)、2月6日
180.「  ”   ”  35 万葉集短歌論集・手帖」” (1998)、2月7日
181.「今はもういないあなたへ」新井素子、大陸書房(1988)、1月22日
182.「パイナップルの丸かじり」東海林さだお、文春文庫(2010)、” ”
183.「おにぎりの丸かじり」東海林さだお、    ”  ” ( ”  )、 ” ”
184.「保田與重郎文庫9 近代の終焉」新学社(2002)、1月23日
185.「  ”    ”  25 やぽん、まるち」”  ( ”  )、 ”  ”
186.「  ”    ”  26 日本語録・日本女性語録」新学社(2002)、1月23日  **
187.「  ”    ”  27 校註 祝詞」新学社(2002)、1月24日  **  (20)
188.「  ”    ”  29・30 祖国正論Ⅰ・Ⅱ」” (” )、1月25日
 : 同人誌「祖国」に昭和25~29年に連載した社説的位置付けの言論活動をまとめたもの。
189.「  ”    ”  31 近畿御巡幸記」新学社(2003)、1月27日
190.「  ”    ”  32 述史新論」     ”  (  ” )、 ”  ”   **  (20)
191.「季節のお話」新井素子、徳間書店(1990、1月24日
192.「近頃気になりません?」新井素子、廣済堂出版(2004)、1月24日
193.「未知との遭遇」新井素子、講談社(1990)、1月24日
194.「グリーンノウ物語」1~6、ルーシー・M・ボストン、評論社(2008、2009)、1月26日  *
 : 60歳から創作活動を始めた著者の代表作。1962年イギリスの児童文学の最高賞であるカーネギー賞を受賞。
195.「とり散らかしておりますが」新井素子、講談社文庫(1994)、1月26日
196.「貧乏人の逆襲」松本哉、筑摩(2008)、1月26日
 : サブタイトル「タダで生きる方法」
197.「天気の素」齋藤茂太、ファラオ企画(1992)、1月26日
198.「茂太さんの快老術」齋藤茂太、黎明書房(1994)、1月26日
199.「江戸時代人づくり風土記42 長崎」組本社編、農文協(1989)、1月26日
200.「   ”        ”   43 熊本」   ”  、  ”  (1990)、 ”  ”
201.「   ”        ”   45 宮崎」   ”  、  ”  (1997)、 ” 28日
202.「   ”        ”   46 鹿児島」  ” 、  ”  (1999)、 ”   ”
203.「   ”        ”   47 沖縄」   ”  、  ”  (1993)、1月30日
204.「   ”        ”   50 近世日本の地域づくり」” 、” (2000)、”  ”
205.「日本農書全集46 特産2」農文協(1994)、1月27日
206.「もとちゃんの夢日記」新井素子、角川文庫(1995)、1月27日
207.「もとちゃんの痛い話」新井素子、   ”  (1997)、 ”  ”
208.「街場の読書論」内田樹、太田出版(2012)、1月27日   *
209.「人生の成功とは何か」田坂広志、PHP(2005),1月27日
 : サブタイトル「最後の一瞬に問われるもの」。「日常者の思想」から「達成の思想」へ、さらに「成長の思想」への深化。「永劫回帰」への到達。
210.「紫マンダラ」河合隼雄、小学館(2000)、1月22日  **
 : サブタイトル「源氏物語の構図」。「女性の眼から見た世界観」、紫式部という女性の自己実現の物語として「源氏物語」を読み解く。
211.「生と死をめぐる断層」岸本葉子、中公(2014)、1月27日  *
212.「素子の読書アラカルト」新井素子、中公(2000)、1月28日
213.「通りすがりのレイデイ」新井素子、集英社文庫(1982)、1月29日  *
214.「ラビリンス(迷宮)」新井素子、徳間書店(1982)、1月20日
215.「チグリスとユーフラテス」新井素子、集英社(1999)、1月29日
216.「延喜式祝詞」粕谷綱紀、和泉書院(2013)、1月29日   (8)
217.「日本人の死生観」五来重、角川選書(1994)、1月29日
218.「逆立ち日本論」養老孟司・内田樹、新潮選書(2007)、1月29日   *
 : 養老孟司の希望により実現した対談集。「ユダヤ人とは誰か」という内田の定義の仕方が秀逸。
219.「移行期的混乱」平川英美、筑摩(2010)、1月29日
 : サブタイトル「経済成長神話の終わり」
220.「他者と死者 ラカンによるレヴィナス」内田樹、海鳥社(2004)、1月30日  ** (2)
 : ラカンとレヴィナスの共通性はその難解さにあり、それは「何を言いたいのか?」という「子どもの問い」へと誘導することにより、「テクストの意味」ではなく「書き手の欲望」のあり方を尋ねる「追う者」のポジションに身を置かせることにあり、「テクストの語義を追う読みから、書き手の欲望を追う読みへのシフト」を起こさせることにある。
221.「翻訳夜話」村上春樹、文春新書(2001)、1月30日
222.「煙突掃除の少年」バーバラ・ヴァイン、ハヤカワミステリ(2002)、1月30日
223.「アメリカの反知性主義」R・ホーフスタッター、みすず(2003)、1月31日  *
 : 1952年の大統領選挙を画期として「アメリカ社会の知識人否認」が本格化した。その背景には、福音主義の台頭、ビジネス界の行動主義があり、それにより知識人が疎外された。知識人側の問題としては1)権力に関心が行き、技術者(専門家)として隷従、2)理念の実現よりも、理念の純粋性の維持に関心が行ったことがあげられる。社会全体として重要なのは、知識人社会の分極化が回復不能までに進むのを防ぐこと。
224.「蓮と刀」橋本治、作品社(1982)、1月31日  *
 : サブタイトル「どうして男は”男”をこわがるのか?」
225.「ユダヤ人陰謀説」グッドマン、講談社(1999)、1月31日
 : サブタイトル「日本の中の反ユダヤと親ユダヤ」
226.「風景と実感」吉川宏志、青蟻社(2008)、1月31日
 : サブタイトル「短歌評論集」。「実感とは何か」「短歌の風景論」「短歌をめぐる断章」「歌人論」の4章構成。
227.「単純な能、複雑な「私」」池谷裕二、朝日(2009)、1月31日  **  (4)
 : サブタイトル「または、自分を使い回しながら、進化した脳をめぐる4つの講義」
228.「株式会社という病」平川克美、NTT(2007),1月31日  *
229.「嘘みたいな本当の話」高橋源一郎・内田樹、イースト・プレス(2011)、2月1日
 : サブタイトル「(日本版)ナショナル・ストーリー・プロジェクト」
230.「イン・ヒズ・オウン・サイト」小田嶋隆、朝日(2005)、2月1日
 : サブタイトル「ネット巌窟王の電脳日記ワールド」
231.「愛の知恵}アラン・フィンケルクロート、法大(1995)、2月1日
232.「私家版・ユダヤ文化論」内田樹、文春新書(2006)、2月1日  ** (6)
 : 「私のユダヤ文化論の立場は「ユダヤ人問題について正しく誇れるような言語を非ユダヤ人は持っていない」。本書が「わかりにくい」大きな理由は、実はユダヤ人が読んだときにも「わかる」ように書いているせいなのである」。
233.「日出処の天子」2~5、山岸凉子、白泉社文庫(1994)、2月3日  *
234.「困難な自由」エマニュエル・レヴィナス、法大(2008)、2月3日
235.「寡黙なる巨人」多田富雄、集英社(2007)、2月3日
 : 67歳で脳梗塞を発症し、生死の境をさまよい、3日めに蘇った1年間の闘病の記録とその後の5年間のエッセイ。
236.「海馬」池谷裕二、朝日(2012)、2月3日  **  (10)
 : 脳の働きは「ものとものを結びつける」こと。海馬は「情報の選別」をおこなう。海馬は成人になっても、刺激を与え続けると増え続ける(頭が良くなる)。
237.「女は何を欲望するか?」内田樹、径書房(2002)、2月3日  *
 : アメリカ・フランスのフェミニズム運動についての考察
238.「現代思想のパフォーマンス」難波江和英、光文社新書(2004)、2月3日 ** (46)
 : いままでなかった種類の本。現代思想の概説ではなく、現代思想をツールとして使いこなす手法を実演(パフォーマンス)することを示す本。ソシュール、ロラン・バルト、フーコー、レヴィ=ストロース、ラカン、サイードの6人の思想家の理論を紹介。案内編、解説編、実践編の3部構成。
239.「わたし、ガンです ある精神科医の耐病記」頼藤和寛、文春新書(2001)、2月3日 *
 : 大腸がんが発見されたときは手術をしたものの手遅れで、治療のかいなく死亡した医師の手記。自分の病状、現在のがん治療のレベルとその功罪、死を意識する自分の精神状態などを冷静に淡々と語る。
240.「明日も元気にいきましょう」新井素子、角川文庫(2004)、2月3日
 : 「あるといいな、こんなもの」「あるとこうなる、いろんなもの」
241.「死と身体」内田樹、医学書院(2004)、2月4日  *
 : サブタイトル「コミュニケーションの磁場」
242.「枝雀落語の舞台裏」小佐田定雄、ちくま新書(2013)、2月4日  *
243.「進化しすぎた能」池谷裕二、朝日(2004)、2月4日
 : 2004年に慶應義塾ニューヨーク学院高等部で行った全4回の脳科学講義の単行本化
244.「昔ガヨカッタハズガナイ」山中桓、KKベストセラーズ(1993)、2月4日
 : サブタイトル「こんな時代だからこその新・幸福論」
245.「川の流れのように生きたい」秋元康、海竜社(1993)、2月4日
 : サブタイトル「30代からの幸福論」
246.「脱グローバル論」内田樹他、講談社(2013)、2月5日   *
 : 2012年シンポジウム「ポストグローバル社会と日本の未来」の講演に加筆修正したもの。
247.「現代霊性論」内田樹、釈徹宗、講談社(2010)、2月5日
 : 「人間には、視覚型・聴覚型・触覚型の3種類の人間がいる」
248.「スピリチュアリティの興隆」島薗進、岩波(2007)、2月5日
249.「折鶴」泡坂妻夫、文春(1988)、2月5日
250.「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」前・後篇、橋本治、北宋社(1979)、2月6日
251.「老いを楽しむ 向老学」高橋ますみ、学陽書房(2003)、2月6日
252.「紫式部のメッセージ」駒沢喜美、朝日選書(1991)、2月6日
 : 「フェミニスト」としての紫式部という切り口で「源氏物語」「紫式部日記」を分析する。本居宣長の「もののあわれ」論と同じように、そうした要素が全くないとは言えないが、それが主体であるとして主張するのは、誤りであろう。
253.「人格転移の殺人」西澤保彦、講談社文庫(2000)、2月6日  **
 : SF的設定の中で描かれる、全く新しいタイプの本格ミステリー。
254.「現代短歌美と思想」菱川善夫、桜楓社(1972)、2月7日  **
 : 巻頭の「美と思想ー現代短歌未来論または反塚本美学の道ー」が秀逸。
255.「生命と時間」広井良典、勁草書房(1994)、2月7日   *
 : サブタイトル「科学・医療・文化の接点」
256.「秘本世界生玉子」橋本治、北宋社(1980)、2月7日   *
257.「黄金色の祈り」西澤保彦、文春(1999)、2月7日     *
258.「謎亭論処」    ”  ” 、祥伝社(2001)、” ”
 : 匡千暁の事件簿
259.「夏の夜会」    ”  ” 、カッパブックス(2001)、”  ”
260.「神のロジック人間のマジック」” ” 、文春(2003)、2月7日
261.「幻想する家族」桜井陽子・厚、弘文堂(1987)、2月7日
262.「異邦人」西澤保彦、集英社(2001)、2月8日   *
263.「リトル・ロマンス」” ”、 ” (2003)、 ” ”
264.「笑う怪獣」 ”  ”、新潮社(  ” )、  ” ”
265.「パズラー」 ”  ”、集英社(2004)、 ”  ”
266.「悪と闘う」高橋源一郎、河出書房(2010)、2月8日
267.「3つの原理」ローレンス・トーブ、ダイヤモンド社(2007)、2月8日  *** (28)
 : 著者は歴史を動かすのは、1)カースト(それ自体の価値体系・世界観・行動様式を持つ社会的グループ)、2)年齢、3)セックス(性別)であると提起する。それを過去の歴史・未来予測に当てはめたのが本書。そして21世紀の中頃には、世界で最も影響力を持つようになるのは、イスラエル・インド・イスラムの宗教ベルトになると予測する。
268.「宗教の授業」大峯顕、法蔵館(2005、2月8日  *  (3)
 : 1999~2003年NHK放送大学「宗教への招待」のテキストを修正・改題
269.「ゆらぐ脳」池谷裕二、文春(2008)、2月8日   (4)
270.「風のホーキにまたがって」五木寛之・駒沢喜美、読売(1991)、2月8日  *
271.「方舟は冬の国へ」西澤保彦、光文社(2004)、2月9日  **
272.「生贄を抱く夜」西澤保彦、     ” (  ” )、 ”  ”
273.「ソフトタッチ・オペレーション」西澤保彦、光文社(2006)、2月9日
274.「マリオネット・エンジン」     ”  ” 、  ”  (2009)、2月10日
275.「腕貫探偵」西澤保彦、光文社(2005)、2月10日
276.「その「ひと言」が子どもを伸ばす」田中喜美子、PHP(2003),2月10日
277.「日本農書全集64 開発と保全1」農文協(1995)、2月10日   (4)
278.「  ”    ” 65    ”  ” 2」   ”      、2月13日
279.「黒い海賊」サルガーリ、講談社(1961)、2月10日
280.「パール街の少年たち」モルナール、講談社(1961)、2月10日
281.「盗まれた手紙」ポー、国書刊行会(1989)、2月10日   *
282.「愛するJポップ」難波江和英、冬弓舎(2004)、2月10日
283.「保守問答」西部邁・中島岳志、講談社(2008)、2月11日  **
 : 現代日本の「自称保守」の大半はアメリカニストの似非保守」であると断定、「真の保守とは何か」を論じる。
284.「いつか、ふたりは二匹」西澤保彦、講談社(2004)、2月11日  *
285.「キス」西澤保彦、徳間書店(2006)、2月11日
 : 森奈津子シリーズ第3弾
286.「夢は枯野をかけめぐる」西澤保彦、中公(2008)、2月11日
287.「幻視時代」西澤保彦、中公(2010)、2月12日        **
288.「彼女はもういない」西澤保彦、幻冬舎(2011)、2月12日  *
289.「伴侶の偏差値」深澤潮、新潮社(2014)、2月12日
290.「入浴の女王」杉浦日向子、講談社文芸文庫(2012)、2月12日
291.「折口信夫全集36 年譜・著述総目録・全集総目次」中公(2001)、2月13日
292.「  ”    ”  37 総索引」中公(2002)、2月13日
293.「幻影の明治」渡辺京二、平凡社(2014)、2月13日  **
 : サブタイトル「名もなき人びとの肖像」。巻頭の「山田風太郎の明治」の山田風太郎の人物評価=幕末明治期についての知識が第一級、「豪傑民権と博徒民権」=「初期の自由民権運動は、全国の士族に参政権を与えよという主張として始まった」との指摘は鋭い。
294.「第三の意味」ロラン・バルト、みすず(1984)、2月13日
295.「現代社会学ライブラリー8 現代宗教とスピリチュアリティ」島薗進、弘文堂(2011)、”  ” *
296.「「「無常」の構造」磯部忠正、講談社現代新書(1976)、2月13日  *
297.「殺意の集う夜」西澤保彦、講談社文庫(1999)、2月13日  *
298.「麦酒の家の冒険」”  ” 、  ”  ”  (2000)、2月14日
 : 匡千暁シリーズ第2作
299.「依存」       ”  ” 、幻冬舎(2000)、2月14日
 : 匡千暁シリーズ第5作
300.「フェティシュ」   ”  ” 、集英社(2005)、 ”  ”
301.「春の魔法のおすそわけ」” ”、中公(2006)、”  ”
302.「身代り」      ”  ” 、幻冬舎(2009)、 ”  ”
 : 匡千暁シリーズ第6作
303.「動機、そして沈黙」”  ”、中公(2009)、   ”  ”
304.「からくりがたり」  ”  ”、新潮社((2010)、 ”  ”
305.「日出処の天使」6・7、山岸凉子、白泉社文庫(1994)、2月13日
306.「日本農書全集66 災害と復興1」農文協(2004)、2月15日  (8)
307.「  ”    ”  67  ”   ” 2」  ”  (2008)、 ”  ”    (7)
308.「責任と正義」北田暁大、勁草書房(2003)、2月15日 *** (24)
 : リベラリズム(=正義に価値を見出す政治・社会思想)を社会学的・政治(哲)学的・倫理学的観点から再検討し、その可能性と限界を測定することを課題とした本。「<社会的なるもの>の肥大・<政治的なるもの>の盲点化」という言説状況に対する応答。
309.「<意味>への抗い」北田暁大、せりか書房(2004)、2月15日
 : サブタイトル「メディエーションの文化政治学」
310.「限界の思考」宮台真司・北田暁大、双風社(2005)、2月15日  **
 : サブタイトル「空虚な時代を生き抜くための社会学」。「保守とは何か?」=「自立」国家は単なる仮定とみなし、あえて「亜細亜との連帯」ならびに「パトリ護持のための革命」を推奨する本物右翼のことである。
311.「のうだま」上大岡トメ・池谷裕二、幻冬舎(2008)、2月15日  *
 : 三日坊主は脳が飽きやすいという特性がもたらすもの。したがって、継続するためには、脳をだまし続けることが有効である。具体的には、1)体を動かす、2)いつもと違うことをする、3)ごほうびを与える、4)なりきる。
312.「地雷を踏む勇気」小田嶋隆、技術評論社(2011)、2月15日
 : 「日経ビジネスオンライン」掲載コラム「ア・ピース・オブ・警句」2008年10月~2011年3月までを単行本化。
313.「シンデレラボーイ、シンデレラガール」橋本治、北宋社(1981)、2月15日
314.「なつこ、孤島に囚われる」西澤保彦、祥伝社文庫(2000)、2月15日
315.「転・送・密・室」        ”  ” 、講談社ノベルス(2000)、”17日
316.「死者は黄泉が得る」    ”  ” 、講談社文庫(2001)、  ”  ”   **
317.「ストレート・チェイサー」   ”  ” 、光文社文庫( ”  )、  ”  ”
318.「幸齢な生き方老い方」青木みか・高橋ますみ、風媒社(2010)、2月17日
 : サブタイトル「向老学実践編」
319.「インドの時代」中島岳志、新潮社(2006)、2月17日  *
 : サブタイトル「豊かさと苦悩の幕開け」
320.「中島岳志的アジア対談」毎日(2009)、2月17日
321.「<癒す知>の系譜」島薗進、吉川弘文館(2003)、2月17日  (3)
 : サブタイトル「科学と宗教のはざま」。「科学と宗教の歴史(系譜学)」「食育」「心理療法」「世界観」
322.「思想の身体 悪の巻」島薗進編著、春秋社(2006)、2月17日
323.「日本思想という病」中島岳志他、光文社新書(2010)、”  ”   *
324.「日本仏教史」末木文美士、新潮社(1992)、2月18日  *
 : サブタイトル「思想史としてのアプローチ」。全体に目配りが行き届き、バランスの取れた、良くできた通史の入門書。
325.「ユダヤ解読のキーワード」滝川義人、新潮選書(1998)、2月18日  *
326.「ポストモダンの新宗教」島薗進、東京堂(2001)、2月18日  ** (5)
 : サブタイトル「現代日本の精神状況の底流」。
327.「消費される宗教」島薗進、春秋社(1996)、2月18日
 : オウムのサリン事件の翌年に出版された。「オウム・消費・メディア」をテーマとした共同対談「宗教と消費」「情報化と宗教」。
328.「年をとったら驚いた」嵐山光三郎、新潮社((2014)、2月18日
329.「ALEX」Pierre Lemeitre,Maclehose Press、2月18日  ***
 : 英国推理作家協会賞受賞作品。どんでん返しにつぐどんでん返し。欧米の推理小説愛好家を驚愕・震撼させた話題作。
330.「「「リベラル保守」宣言」中島岳志、新潮社(2013)、2月19日  ** (15)
 : 「いかにすれば保守の源流に存在する「リベラルマインド」を活性化することができるのか」
331.「ナショナリズムという迷宮」佐藤優、朝日(2006)、2月19日  (4)
 : 魚住昭との対談形式での分析
332.「地球を斬る」佐藤優、角川学芸出版(2007)、2月19日
 : 国際政治と経済、更にインテリジェンス(情報)と絡まる面白い話題を読者に提供することを課題とした本
333.「人間の叡智」  ” 、文春新書(2012)、2月19日
334.「現代社会学ライブラリー2 社会学をいかに学ぶか」船橋晴俊、弘文堂(2012)、2月19日
335.「  ”        ”   4 書物の環境論」紫野京子、        ”  ( ”  )、 ”  ”
336.「  ”        ”   7 ライフストーリー論」桜井厚、       ”  ( ”  )、 ”  ”
337.「  ”        ”  12 <群島>の歴史社会学」石原俊、   ”  (2013)、 ”  ”
338.「  ”        ”  13 仕事と不平等の社会学」竹ノ下弘久、    ( ”  )、 ”  ”
339.「エロスとの対話」田中喜美子・本内信胤、新潮社(1992)、2月19日  *
 : サブタイトル「女は男を知らず、男は女を知らない」
340.「女、あんたが主人公」松香堂(1987)、2月19日
 : サブタイトル「小西綾大いに語る」
341.「折口信夫全集別巻2 輪講」中公(1999)、2月20日  (1)
342.「   ”     ”  3 対談」  ” ( ”  )、 ”  ”
343.「何のための<宗教>か」島薗進編著、青弓社(1994)、2月20日   *
 : サブタイトル「現代宗教の抑圧と自由」
344.「世界が決壊するまえに言葉を紡ぐ」中島岳志、金曜日(2011)、2月20日  *
 : 星野智幸・大澤信亮・重松清・関沼博との対談
345.「日本農書全集68 本草・救荒」農文協(1996)、2月21日  (5)
346.「  ”   ”  69 学者の農書1」 ”  ( ”  )、 ”  ”   (5)
347.「  ”   ”  70   ”   ” 2」 ”  ( ”  )、 ” 22日  (6)
348.「民族とナショナリズム」アーネスト・ケルトナー、岩波(2000、2月21日 * (6)
349.「現代と仏教」末木文美士編、佼成出版会(2006)、2月21日  *
350.「ナショナリズムと宗教」中島岳志、文春学芸ライブラリー(2014)、2月21日 * (3)
 : 1980年代以降インドで急激に拡大するヒンドゥーナショナリズム運動。その理論のみでなく、現場レベルでの活動も積極的に取材して紹介。
351.「悪口のすすめ」村松友視、日経(2012)、2月21日  *
352.「先生はえらい」内田樹、ちくまライブラリー新書(2005)、2月21日  **
 : 常識的考えをまず否定する=「誰もが尊敬できる先生は存在しない」「「先生運」などは存在しない」。そして、新しい先生の定義を提案する=「あなたが「えらい」と思った人、それが先生」「人間が誰かを「えらい」という場面が大事」。
353.「両生具有迷宮」西澤保彦、双葉社(2001)、2月21日
 : 森奈津子シリーズ第2弾
354.「聯愁殺」西澤保彦、原書房(2001)、2月21日  **
355.「スコッチ・ゲーム」西澤保彦、角川文庫(2002)、2月21日
356.「小田嶋隆のコラム道」ミシマ社(2012)、2月22日
357.「のうだま」2、上大岡トメ・池谷裕二、幻冬舎(2012)、2月22日
 : サブタイトル「記憶力が年齢とともに衰えるなんてウソ!」
358.「解体する言葉と世界」末木文美士、岩波(1998)、2月22日
 : サブタイトル「仏教からの挑戦」
359.「仏教VS倫理」末木文美士、ちくま新書(2006)、2月22日  *
 : 「仏教の歴史を振り返り仏教VS倫理」「倫理的世界を越えた他者の問題」「死者との交流」の3部構成
360.「宗教から読む「アメリカ」」森孝一、講談社選書(1996)、2月22日
361.「日本人の死生観を読む」島薗進、朝日(2012)、2月22日  *
 : サブタイトル「明治武士道から「おくり人」へ」
362.「ポストモダン保守主義」広岡守穂、有信堂(1988)、2月22日
363.「大人のための読書の全技術」齋藤孝、KADOKAWA(2014)、2月22日  * (6)
364.「「フクシマ」論」開沼博、青土社(2011)、2月22日  *
 : サブタイトル「原子力ムラはなぜ生まれたのか」
365.「極上の流転」村松友視、中公(2013)、2月22日  *
 : サブタイトル「堀文子への旅」
366.「オレって老人?」南伸坊、みやび出版(2013)、2月22日
367.「公共性の構造転換」ユルゲン・ハバ―マス、未来社(1973)、2月23日
368.「意識と場所Ⅱ 異界のフォノロジー」鎌田東二、河出書房(1990)、2月23日 ** (6)
 : サブタイトル「純粋国学理性批判序説」
369.「魔女の世界史」海野弘、朝日新書(2014)、2月23日  *
 : サブタイトル「女神信仰からアニメまで」
370.「荒神絵巻」宮部みゆき原作こうの文代絵文、朝日新書(2014)、2月23日  *
371.「シベリアに憑かれた人々」加藤九作、岩波新書(1974)、2月24日  *
372.「価値意識の理論」見田宗介、弘文堂(1996)、2月24日  (2)
373.「仏典を読む」末木文美士、新潮社(2009)、2月24日  ** (1)
 : サブタイトル「死からはじまる仏教史」
374.「現代仏教論」末木文美士、新潮社新書(2012)、2月24日
 : 死者の問題を大きな核としながら、ここ数年間に関連して書いた小文や講演の記録を収録
375.「ためらいの倫理学」内田樹、冬弓舎(2001)、2月24日  *** (1)
 : サブタイトル「戦争・性・物語」。あらゆる「正義」と闘う清冽な思想。
376.「保守主義的思考」カール・マンハイム、ちくま学術文庫(1997)、2月24日  *
 : マンハイムは「保守主義的思考」とは何かを対立概念、進歩主義/保守主義、啓蒙主義/
保守主義、抽象的/具体的、当為/存在顕示、伝統/保守、概念/理念、ドグマ的/汎神論、静的/動的、理論/実践で説明する。
377.「「碧巌録」を読む」末木文美士、岩波(1998)、2月25日  *
378.「日本農書全集71 絵農書1」農文協(1996)、2月25日
379.「国家の自縛」佐藤優、産経新聞(2005)、2月25日  **
 : 「正論」のインタビュー記事+α
380.「国家の崩壊」佐藤優、にんげん出版(2006)、2月25日
 : ソ連崩壊の経過を分析
381.「日米開戦の真実」佐藤優、小学館(2006)、2月25日  ** (2)
 : サブタイトル「大川周明著「米英東亜侵略史」を読み解く」
382.「現代社会学ライブラリー1 動物的・人間的」 大澤真幸、弘文堂(2012)、2月25日
383.「   ”       ”   3 共に生きる」塩原良和、弘文堂(2012)、2月25日
 : サブタイトル「他民族・多文化社会における対話」
384.「路地裏の資本主義」平川克美、角川SSC新書(2014)、2月25日
385.「死を前にした人間」フィリップ・アリエス、みすず書房(1990)、2月26日  * (2)
386.「デフレの正体」藻谷浩介、角川新書(2010)、2月26日  *  (3)
387.「ブラック企業」今野春貴、文春新書(2012)、2月26日
 : サブタイトル「日本を食いつぶす妖怪」。戦略的対応として、1)「自分が悪いと思わない」、2)「会社のいうことは疑ってかかる」、3)「簡単に諦めない」、4)「労働法を活用せよ」、5)「専門家を活用せよ」を提唱。
388.「世界がわかる理系の名著」鎌田浩毅、文春新書(2009)、2月26日
389.「大江戸エネ事情」石川英輔、講談社文庫(2009)、2月26日
390.「人形幻戯」西澤保彦、講談社ノベルス(2002)、2月26日
391.「黒の貴婦人」”  ” 、幻冬舎(2003)、2月26日
392.「スナッチ」  ”  ” 、光文社(2008)、 ”  ”
393.「赤い糸の呻き」” ” 、創元社(2011)、 ”  ”
394.「戦争を読む」加藤陽子、勁草書房(2007)、2月27日
395.「戦争の日本近現代史」加藤陽子、講談社現代新書(2002)、2月27日  *
 : 戦争を分析することで、戦争に踏み出す瞬間を支える論理がどのようなものであったか、以前は予想もつかなかった論争で正当化され、合理化されたものを明らかにする。
396.「複製症候群」西澤保彦、講談社文庫(2002)、2月27日
397.「朝日平吾の鬱屈」中島岳志、筑摩(2009)、2月27日
398.「明治農書全集1 稲作」農文協(1978)、2月28日   (9)
399.「  ”   ”  2 稲作・一般」 ” (1975)、”  ”    (12)
400.「これで日本は大丈夫」高橋源一郎、徳間書店(1995)、2月28日
 : サブタイトル「正義の見方Ⅱ」
401.「「まじめ」の崩壊」千石保、サイマル出版(1991)、2月28日  *  (1)
 : サブタイトル「平成日本の若者たち」
402.「人生2割でちょうどいい」1、岡泰道・小田嶋隆、講談社(2009)、2月28日
 : 高校の同級生の二人の時事対談(「日本ビジネスオンライン」)の単行本化
403.「   ”       ”   」2   ”      ”  、  ”  (2010)、 ”  ”
404.「俺俺」星野智幸、新潮社(2010)、2月28日  *
405.「僕を殺した女」北川歩美、新潮社(1995)、2月28日  ***
 : あっという場面転換の連続、ここまで大胆なトリックに感嘆!
406.「硝子のドレス」北川歩美、  ”  (1996)、3月1日
407.「模造人格」   ”  ” 、 幻冬舎  (  ” )、 ”  ”  *
408.「明治農書全集3 稲作」農文協(1986)、3月1日  (9)
409.「折口信夫全集別巻1 折口信夫講義」中公(1999)、3月1日 *  (3)
410.「近世の死生観」高橋文博、ぺりかん社(2006)、3月1日
 : 徳川前期儒教と仏教」。中世の儒仏一致から儒教が仏教との対抗関係から自立していく(火葬の排除)姿を描く。
411.「未完のファシズム」片山杜秀、新潮選書(2012)、3月1日
 : サブタイトル「「持たざる国」日本の運命」。第一次世界大戦から総力戦の時代に突入「持たざる国」日本の「玉砕」哲学(=正面戦争のかっこうを取りつくろう方便)誕生の歴史を分析。
412.「シベリア記」加藤九祚、潮出版(1980)、3月1日
 : 1945-50年にわたるシベリア抑留体験を30年後に総括した作品。
413.「完本 天の蛇」加藤九祚、河出書房、3月1日
 : サブタイトル「ニコライネフスキーの生涯」
414.「秋葉原事件」中島岳志、朝日、3月1日  **
 : サブタイトル「加藤智大の軌跡」。この本の凄さは、著者の「徹底した先入観を排除し、取材による事実の積み重ねにより、事実をして加藤智大とは何者であるかを語らせる」という姿勢にある。その結果、大半のマスコミ報道でなされた「人付き合いの下手なネットオタク」というステレオタイプな人物像を見事にひっくり返し、「加藤智大」の等身大の人物像を描くことに成功している。
415.「いらく生残記」勝谷誠彦、講談社(2004)、3月2日  **
416.「痴情小説」岩井志麻子、新潮社(2003)、3月2日
417.「鉄道ひとつばなし」2、原武史、講談社現代新書(2007)、3月2日
418.「精神世界の行方」島薗進、東京堂(1996)、3月2日  ** (4)
 : サブタイトル「現代世界と新霊性運動」
419.「昭和出版残侠伝」嵐山光三郎、筑摩(2006)、3月2日  *
420.「新版 映画は死んだ」内田樹・松下正己、いなほ書房(2003)、3月2日
421.「年収150万円で僕らは自由に生きていく」イケダハヤト、星海社新書(2012)、3月2日 **(5)
422.「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」加藤陽子、朝日(2009)、3月3日  **
 : 2007年年末から翌年初めにかけて栄光学園の歴史研究会の17名の中高生を対象とした5日間の講義(日清戦争~太平洋戦争)をまとめたもの。歴史本の大半は、事件列挙を中心型が多いが、この本の特色・強みは、何故それが起きたのかの説明に力を入れていること。
423.「戦中派焼け跡日記」(昭和21年)山田風太郎、小学館(2002)、3月3日
424.「 ”  闇市日記」(昭和22・23年) ”   ” 、   ” (2003)、 ”  ”
425.「 ”  動乱 ” 」( ”  24・25年) ”   ” 、  ”  (2004)、 ” ”
426.「 ”  復興 ” 」( ” 26・27年)  ”   ” 、  ”  (2005)、 ”  ”
427.「叢書現代の宗教2 現代史宗教の可能性」島薗進、岩波(1997)、3月3日
 : サブタイトル「オウム真理教と暴力」
428.「近代日本の右翼思想」片山杜秀、講談社選書メチエ((2007)、3月3日
429.「国の死に方」片山杜秀、新潮新書(2012)、3月3日
430.「知の逆転」吉成真由美、NHK新書(2012)、3月4日  **
431.「明治農書全集4 畑作」農文協、3月4日  (10)
432.「  ”    ” 5 特用作物」” (1984)、3月5日
433.「情報社会の文化4 心情の変容」島薗進他編著、東大(1998)、3月4日
434.「女が詠むとき、女が書くとき」ショシャナ・フェルマン、勁草書房(1998)、3月4日
 : サブタイトル「自伝的新フェミニズム批評」
435.「記憶/物語 思考のフロンティア」岡真理、岩波(2000)、3月4日
436.「新しい生物学の教科書」池田清彦、新潮社(2001)、3月4日  ** (21)
 : この本は「これ1冊読めば、現代生物学の諸領域がほぼわかる」ことを目的に書かれた意欲的な教科書
437.「博徒と自由民権」長谷川昇、中公新書(1977)、3月5日
 : サブタイトル「名古屋事件始末記」。初期の自由民権運動には、博徒の関わりもあったという事実を紹介。
438.「秩父事件」井上幸治、中公新書(1968)、3月5日
 : サブタイトル「自由民権期の農民蜂起」
439.「神道の生死観」安莪谷正彦、ぺりかん社(1989)、3月6日  (5)
 : サブタイトル「神道思想と「死」の問題」
440.「国家と神とマルクス」佐藤優、太陽企画出版(2007)、3月6日
 : サブタイトル「「自由主義的保守主義者」かく語りき」
441.「フェミニズムの害毒」林道義、草思社(1999)、3月6日  (2)
442.「買売春解体新書」上野千鶴子・宮台真司、つげ書房(1999)、3月6日  *
 : サブタイトル「近代の性規範からいかに抜け出すか」
443.「人はなぜ学歴にこだわるのか」小田嶋隆、メディアワークス(2000)、3月6日
444.「おせっかい教育論」内田樹他、140B(2010)、3月6日
 : 2009年10月開催「ナカノシマ大学記念セミナー」「21世紀の懐徳堂プロジェクト」の一環として
445.「インテリジェンス人間論」佐藤優、新潮社(2007)、3月6日
446.「宇宙は何でできているのか」村山斉、幻冬舎新書(2010)、3月6日 * (12)
 : サブタイトル「素粒子物理学で解く宇宙の謎」
447.「現代社会学ライブラリー10 福祉社会学の想像力」武川正吾、弘文堂(2012)、3月6日 *(5)
448.「  ”         ”  11 反コミュニケーション」奥村隆、     ”  (2013 )、 ” ”
449.「  ”         ”  15 子育てと仕事の社会学」西村純子、  ”  (2014)、 ”  ”
450.「収穫祭」上・下、西澤保彦、幻冬舎文庫(2010)、3月7日  *
451.「人間はどこまでチンパンジーか?」J・ダイアモンド、新曜社(1993)、3月7日  *
 : サブタイトル「人類進化の栄光と翳り」
452.「すばらしきアメリカ帝国」N・チョムスキー、集英社(2008)、3月7日  *
453.「現代社会学ライブラリー5 アメリカの超え方」吉見俊哉、弘文堂(2012)、3月7日
 : サブタイトル「和子・俊輔・良行の抵抗と越境」
454.「手話の世界へ」オリバー・サックス、晶文社(1996)、3月7日  *
455.「殺す」西澤保彦、幻冬舎文庫(2011)、3月7日
456.「ファンタズム」西澤保彦、講談社ノベルス(2002)、3月7日  *
457.「明治農書全集6 野菜」農文協(1984)、3月8日
458.「文明崩壊」上・下、J・ダイアモンド、草思社(2005)、3月8日 * (6)
 : サブタイトル「滅亡と存続の命運を分けるもの」。潜在的要因として、1)環境被害、2)気候変動、3)近隣の敵対集団、4)友好的な取引相手、5)環境問題への社会の対応を挙げる。
459.「セックスはなぜ楽しいか」J・ダイアモンド、草思社(1999)、3月8日
460.「インスピレーション・トレーニング」フランシス・E・ヴォ―ン、たま出版(1988)、3月8日 (5)
461.「死生学1 死生学とは何か」島薗進ほか編著、東大(2008)、3月8日 ** (5)
462.「  ” 3 ライフサイクルと死」武川正吾他編著、 ”(  ” )、 ”  9日
463.「  ” 2 死と他界が照らす生」熊野純彦、   ” (  ” )、3月17日
464.「  ” 4 死と死後をめぐるイメージと文化」小佐野重利、” (” )、3月11日
465.「  ” 5 医と法をめぐる生死の境界」高橋都他編著、 ” (” )、 ”   ”
466.「ぬいぐるみ警部の帰還」西澤保彦、創元社(2013)、3月9日
467.「イメージの博物誌12時間 過ぎ去る時と円環する時」マリー・ルクセン、平凡社(1982)、3月9日
468.「   ”    ”   13龍とドラゴン 幻獣の図象学」F・ハックスリー、平凡社(1982)、3月9日
469.「イルカの夢時間」ジム・ノルマン、工作舎(1991)、3月9日
 : サブタイトル「異種間コミュニケーションへの招待」
470.「情熱としての愛」ニクラス・ルーマン、木鐸社(2005)、3月9日
 : サブタイトル「親密さのコード化」
471.「もっと地雷を踏む勇気」小田嶋隆、技術評論社(2012)、3月10日  
 : サブタイトル「わが炎上の日々」
472.「テロリズムの罠」右巻・左巻、佐藤優、角川(2012)、3月10日
 : サブタイトル「新自由主義の行方」「忍びよるファシズムの魅力」
473.「モラトリアム・シアター」西澤保彦、実業之日本文庫(2012)、3月10日
474.「海に生くる人々」葉山嘉樹、講談社(1964)、3月10日  *
475.「世界認識のための情報術」佐藤優、金曜日(2008)、3月11日
476.「この国を動かす者へ」佐藤優、徳間(2010)、3月11日
477.「暴走する国家恐慌化する世界」佐藤優・副島隆彦、日本文芸社(2008)、3月11日 *
478.「金儲けがすべてでいいのか」N・チョムスキー、文春(2002)、3月11日 *
 : サブタイトル「グローバリズムの正体」
479.「秘密と嘘と民主主義」N・チョムスキー、成甲書房(2004)、3月11日  *
480.「新版 死とどう向き合うか」A・デーケン、NHKブックス(2011)、3月11日
481.「明治農書全集7 果樹」農文協(1983)、3月11日  (8)
482.「 ”    ”  8 畜産」   ” (1985)、 ” 21日  (7)
483.「 ”    ”  9 養蚕・養蜂・養魚」” (1983)、3月21日  (8)
484.「妻を帽子とまちがえた男」オリバー・サックス、晶文社(1992)、3月15日  *
 : 右脳・左脳の機能などの欠損・過剰により人間の行動にどんな変化がおきるかを豊富な事例で紹介。
485.「永遠の別れ」E・キュープラー・ロス、日本教文社(2007)、3月16日  *
 : サブタイトル「悲しみを癒す智慧の書」。ロスの遺作。
486.「シリーズ教育の挑戦 生と死の教育」A・デーケン、岩波(2001)、3月16日
487.「禅僧が医師をめざす理由」対本宗則、春秋社(2001)、3月17日  *
488.「イメージ・ワークブック」ウイリアム・フェズラー、VOICE(1992)、3月17日
 : 「五感すべてを使ってイメージされたものは現実となる」
489.「イメージの博物誌14 地霊」ジョン・ミッシェル、平凡社(1982)、3月17日  *
 : サブタイトル「聖なる大地との対話」
490.「   ”    ”   15 生命の樹」ロジャー・クック、” (  ” )、  ”  ”
 : サブタイトル「中心のシンボリズム」
491.「   ”    ”   16 スーフィー」ラレ・バフティヤル、”( ” )、  ”  ”
 : サブタイトル「イスラムの神秘階梯」
492.「   ”    ”   1 眼の世界劇場」F・クスリー、 ” (1992)、3月20日
493.「   ”    ”  20 天地創造」D・マクラガン、  ” (  ”  )、 ” 21日
 : サブタイトル「世間と人間の始源」
494.「   ”    ”  22 エジプトの神秘」リッシ・ラミ、 ” ( ”  )、 ”  ”
 : サブタイトル「甦る古代の叡智」
495.「   ”    ”  19 マーシャル・アーツ」P・ベイン、” ( ” )、  ” 22日
 : サブタイトル「戯術の霊的次元」
496.「   ”    ”  21 ネコの宗教」N・ソーンダース、” ( ” )、  ”  ”
 : サブタイトル「動物崇拝の原像」
497.「日本の社会参加仏教」R・ムコバティヤーヤ、東信堂(2005)、3月17日
 : サブタイトル「法音寺と立正佼成会の社会活動と社会倫理」
498.「現代社会学ライブラリー6 社会(学)を読む」若林幹夫、弘文堂(2012)、3月17日
499.「   ”       ”   9 社会問題の社会学」赤川学、  ”  (  ” )、  ”  ”
500.「人間の悲惨な状況について」ロダリオ・デイ・セニ、南雲堂(1999)、3月17日
 : ロタリオ(後の教皇インノケンティウス3世)の助祭枢機卿時代の著作
501.「0番目の事件簿」メフィスト編集部編、講談社(2012)、3月17日
 : 11人のミステリー作家がデビューする前に書いたに執筆の背景語るエッセイを添えたという異色のアンソロジー。
502.「縄文の神とユダヤの神」佐治芳彦、徳間(1989)、3月18日  *
 : 現代文明の病的症状の回復は、一神教によってではなく、縄文の神々を含むアミニズム神々の現代的復活よってなされる。
503.「神的批評」大澤信亮、新潮社(2010)、3月18日  **
 : 宮沢賢治・柄谷行人・柳田国男・北大路魯山人論。「自分を問うこと。これが私の批評原理である。「批評するとは向き合うことだ」。
504.「「ならず者国家」と新たな戦争」N・チョムスキー、荒竹出版(2002)、3月18日  **
 : サブタイトル「米国同時多発テロの深層を照らす」
505.「覇権か生存か」N・チョムスキー、集英社新書(2004)、3月18日  **
 : サブタイトル「アメリカの世界戦略と人類の未来」
506.「世界の共同主観的存在構造」廣松渉、勁草書房(1972)、3月18日  (1)
507.「宗教学の名著30」島薗進、ちくま新書(2008)、3月18日
508.「悔いあらためて」橋本治・糸井重里、光文社文庫(1974)、3月18日
509.「日本国家の神髄」佐藤優、産経(2009)、3月18日  ** (2)
 : サブタイトル「禁書「国体の本義」を読み解く」
510.「レヴィナスと愛の現象学」内田樹、文春文庫(2011)、3月18日 ** (20)
 : 秀逸なレヴィナス論
511.「戦中派虫けら日記 昭和17~19年」山田風太郎、ちくま文庫(1998)、3月19日
512.「人類の知的遺産22 イブン=ハルドゥーン」講談社(1980)、3月19日
513.「トーテムとタブー」フロイト、人文書院(1969)、3月21日
514.「存在の大いなる連鎖」A・O・ラヴジョイ、晶文全書(1975)、3月19日
515.「レナードの朝」オリバー・サックス、晶文社(1993)、3月21日
516.「エリアーデ著作集1 太陽と天空神」宗教学概論1、せりか書房(1977)、3月21日
517.「  ”     ”  2 豊饒と再生」    ”  ”  2、    ”   (1981)、”   ”
518.「  ”     ”  3 聖なる空間と時間」”  ”  3、    ”   ( ”  )、”   ”
519.「笑っておぼえる コンピュータ事典」小田嶋隆、ジャストシステム(1992)、3月21日
 : サブタイトル「いかにして私はデジタル中年になったか」
520.「日本問題外論」小田嶋隆、朝日(1993)、3月21日 *
521.「「踊り場」日本論」岡田憲治、晶文社(2014)、3月21日
522.「鉄道ひとつばなし」1・3、原武史、講談社現代新書(2003,2011)、3月21日
523.「人たらしの流儀」佐藤優、PHP(2011),3月21日
524.「野蛮人の図書室」  ” 、講談社(2011)、3月21日  *
525.「チョムスキーの「教育論」」明石書店(2006)、3月22日  * (7)
526.「「婚活」時代」山田昌弘、ディスカバー叢書(2008)、3月22日
527.「資本主義はなぜ自壊したのか」中谷巌、集英社(2008)、3月22日  *
 : サブタイトル「「日本」再生への提言」
528.「恐慌前夜」副島隆彦、祥伝社(2008)、3月22日
 : サブタイトル「アメリカと心中する日本経済」
529.「複雑化する世界単純化する欲望」N・チョムスキー、花伝社(2014)、3月22日
 : サブタイトル「核戦争と破滅に向かう環境世界」
530.「テンペスト」上・下、池上永一、角川(2008)、3月22日  **
531.「天地明察」冲方丁、角川(2009)、3月22日  **
 : 囲碁の家に生まれ、算術・天文学に興味を持った主人公が22年間の努力を経て貞享元年の改暦にこぎつけるまでを描く
532.「手塚治虫=ストーリー漫画の起源」竹内一郎、講談社(2006)、3月22日 *
533.「昨日までの世界」上・下、J・ダイアモンド、日経(2013)、3月23日  (4)
 : サブタイトル「文明の源流と人類の未来」
534.「格差はつくられた」ポール・クルーグマン、早川(2008)、3月23日  *
 : サブタイトル「保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略」
535.「宗教論」シュライエルマッヘル、岩波文庫(1949)、3月23日
 : 1799年版の翻訳
536.「宗教生活の原初形態」上・下、デュルケム、岩波文庫(1941)、3月23日 * (8)
 : 「宗教とは、社会における「聖」と「俗」の集団表象であり、社会そのものに根ざす力である。」
537.「可愛い女、犬を連れた奥さん」チェーホフ、岩波文庫(1940)、3月23日
538.「未来へ」新井素子、角川(2014)、3月23日  *
539.「女の哲学」女性哲学研究会、PHP(2014)、3月23日  *
540.「読む力が未来をひらく」脇明子、岩波(2014)、3月23日  *
 : サブタイトル「小学生への読書支援」
541.「隣居」田口佐紀子、潮出版(2014)、3月23日
 : サブタイトル「私と「あの女」が見た中国」
542.「紙の本は、滅びない」福島聡、ポプラ新書(2014)、3月23日
543.「神奈川のおきて」神奈川県地位向上委員会、アース・スター・エンターテインメント(2014)
544.「日本ミステリー小説史」堀啓子、中公新書(2014)、3月23日
 : サブタイトル「黒岩涙香から松本清張へ」
545.「身体論」湯浅泰雄、講談社学術文庫(1990)、3月23日 *** (11)
 : サブタイトル「東洋的身心論と現代」。西欧の伝統である身心二元論と東洋の身心一元論の系譜と現代の動向まで総合的かつ的確に整理されており、最良の入門書。
546.「エリアーデ著作集4 イメージとシンボル」せりか書房(1974)、3月24日  (1)
547.「  ”     ”  5 鍛冶師と錬金術師」    ”   (1981)、 ”  ”    (1)
548.「  ”     ”  6 悪魔と両性具有」      ”   (1973)、 ”  ”   (1)
549.「  ”     ”  7 神話と現実」         ”   (1974)、 ”  ”   (2)
550.「  ”     ”  8 宗教の歴史と意味」    ”    (1981)、”  ”    (2)
551.「  ”     ”  9・10 ヨーガ1・2」      ”    (1978)、 ”  ”   (8)
552.「イメージの博物誌24 神聖幾何学」ロバート・ロウラー、平凡社(1992)、3月24日
 : サブタイトル「数のコスモロジー」
553.「  ”      ”  25 聖なるチベット」フィリップ・ロウソン、”  ( ”  )、 ”  ”
 : サブタイトル「秘境の宗教文化」
554.「  ”      ”  26 シャーマン」ジョーン・ハリファックス、”  ( ”  )、 ”  ”
 : サブタイトル「異界への旅人」
555.「  ”      ”  32 死者の書」スタニフラス・グロフ、   ”  (1995)、 ”  ”
 : サブタイトル「生死の手引」
556.「意志のはたらき」R・アサジョリー、誠信書房(1989)、3月24日 * (13)
557.「いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか」R・シュタイナー、イザラ書房(1979) (1)
558.「意識の進化と神秘主義」セオドア・ローザク、紀伊國屋書店(1978)、3月24日
 : サブタイトル「意識の進化論」
559.「知識人の責任」N・チョムスキー、青弓社(2006)、3月24日
560.「リーダーになる人に知っていてほしいこと」1・2、松下幸之助、PHP(2009,2010) (6)
561.「近代文学の終わり」柄谷行人、インスクリプト(2005)、3月24日
562.「小さな山神スズナ姫」富安陽子、偕成社(1996)、3月24日  *
563.「エリコの丘から」E・L・カニグスバーグ、佑学社(1988)、3月24日
564.「ふたごの兄弟の物語」上・下、トンケ・ドラフト、岩波少年文庫(2008)、3月24日
565.「ふたりの旅職人」グリム、岩波少年文庫(1997)、3月24日  *
566.「エリアーデ著作集11・12 ザルモクシスからジンギスカンへ」せりか書房(1976)、3月25日(2)
567.「   ”     ”  13 宗教学と芸術」せりか書房(1975)、3月25日  (1)
568.「イメージの博物誌33 ブッダ」アリステラ・シアラー、平凡社(1985)、3月25日
 : サブタイトル「知恵の心」
567.「アメリカを占拠せよ」N・チョムスキー、ちくま新書、3月25日
568.「エミールはいたずらっ子」A・リンドグレーン、岩波少年文庫(2012)、3月25日
569.「明治農書全集10 土壌・肥料」農文協(1984)、3月26日  (7)
570.「  ”    ”  11 農具・耕地整理」” (1985)、”  ”   (4)
571.「  ”    ”  12 病害虫・雑草・農薬」”(1984)、3月28日  (22)
572.「  ”    ”  13 林業・林産」  ”   (  ” )、 ”  ”  (8)
573.「国家論」佐藤優、NHKブックス(2007)、3月26日
 : サブタイトル「日本社会をどう強化するか」
574.「現代社会学ライブラリー7 ライフストーリー論」桜井厚、弘文堂(2012)、3月26日
575.教育格差の真実」尾木直樹・森永卓郎、小学館新書(2008)、3月26日
 : サブタイトル「どこへ行くニッポン社会」
576.「イメージの博物誌1 占星術」ウォレン・ケントン、平凡社(1977)、3月26日
 : サブタイトル「天と地のドラマ」
577.「  ”      ”  2 神聖舞踊」M・G・ヴォ―ジーン、” ( ” )、  ” ”
 : サブタイトル「神々との出会い」
578.「  ”      ”  3 夢」デーヴィッド・ユクスヘッド、 ” ( ” )、  ” ”
 : サブタイトル「時空を超える旅路」
579.「  ”      ”  5 霊・魂・体」 ” ・タンズリー、  ” ( ” )、  ” 30日
 : サブタイトル「小宇宙としての人間」
580.「  ”      ” 31 天使」P・L・ウィルソン、平凡社(1985)、3月30日
 : サブタイトル「神々の使者」
581.「暴走する資本主義(supercapitarism)」ロバート・B・ライシュ、東洋経済、3月26日  (4)
582.「アメリカの歴史教科書問題」ジェームズ・W・ローエン、明石書店(2003)、3月27日 * (2)
 : サブタイトル「先生が教えた嘘」
583.「アメリカ型キリスト教の社会的起源」H・リチャード=バーニー、ヨルダン社(1984)、3月27日
584.「幼児期と社会」Ⅰ・Ⅱ、E・H・エリクソン、みすず書房(1977,1980)、3月27日
585.「法華経の行者日蓮」姉崎正治、講談社学術文庫(1983)、3月27日
586.「月と太陽と魔女」アイリーン・シルバーブラット、岩波(2001)、3月27日  (1)
 : サブタイトル「ジェンダーによるアンデス世界の統合と支配」。前インカ(800-1450)は女性優位時代、インカ支配(1450-1532)は男性優位時代、スペイン支配・植民地期の男性優位時代における下層農民女性の様々な抵抗運動を紹介する。
587.「新時代アメリカを知るための60章」大顕久恵他編、明石書店(2013)、3月27日
588.「沈みゆく大国アメリカ」堤未果、集英社新書、3月27日
589.「社会をつくる仏教」阿満利麿、人文書院(2003)、3月28日  *
 : サブタイトル「エンゲージド・ブッディズム」
590.「ヒューム宗教論集Ⅰ 宗教の自然史」法大(1972)、3月28日
591.「  ”      ”  Ⅱ 自然宗教に関する対話」” (1975)、3月28日
592.「  ”      ”  Ⅲ 奇蹟論・迷信論・自然論」” (1985)、 ”  ”
593.「アイヴァンホー」上・下、サー・ウォルター・スコット、講談社青い鳥文庫(1997)、3月28日 *
 : サブタイトル「愛と冒険の騎士物語」
594.「帝国の時代をどう生きるか」佐藤優、角川(2012)、3月28日  *
 : サブタイトル「知識を教養へ、教養を叡智へ」。仏教(真宗}の清沢満之、高木顕明、今村恵猛を中心に
595.「自壊する帝国」佐藤優、新潮社(2006)、3月28日  *
596.「がんばれ仏教」上田紀行、NHKブックス(2004)、3月29日  *
 : サブタイトル「お寺ルネサンスの時代」。「葬式仏教」「何もしてこなかったから、期待もされていない」状況から、色々な活動を積極的に展開し、大いに期待されているお寺(僧侶)を数多く紹介する。
597.「我と汝・対話」マルティン・ブーバー、岩波文庫(1970)、3月29日
 : 1923年出版。人間の本質を自然・人間・精神的存在との関わりにおいて捉える。
598.「新帝国主義の時代」右巻・左巻、佐藤優、中公、3月29日  **
 : サブタイトル「日本の針路編」「情勢分析編」
599.「日中はなぜわかり合えないのか」莫邦富、平凡社新書(2005)、3月29日  *
600.「母なる海から日本を読み解く」佐藤優、新潮文庫(2012)、3月29日
601.「宮尾節子アンソロジー 明日戦争がはじまる」集英社インターナショナル(2014)、3月29日
602.「まるごと、インドな男と結婚したら」鈴木成子、彩流社(2013)、3月29日  *
603.「グローバリズムの「失敗」に学ぶ15の法則」M・ゾニス他、アスペクト(2005)、3月30日 * (1)
 : サブタイトル「世界を揺るがす危機を読み解く」
604.「オルター・グローバリゼーション」J・ミッテルマン、新曜社(2008)、3月30日
 : サブタイトル「知識とイデオロギーの社会的構成」
605.「スマート・パワー」ジョセフ・S・ナイ、日経(2011)、3月30日  (1)
 : サブタイトル「21世紀を支配する新しい力」。原題「The kimchi matters」。産業界・政府が地域的な政治力学の特殊性、つまり「キムチ」に充分な注意を払いさえすれば、グローバリゼーションは順調に進展するだろう、と述べる。
606.「アメリカ後の世界」ファリード・ザカリア、徳間(2008)、3月30日
607.「グローカリゼーション」神田外大編、神田外大(2009)、3月30日
608.「日本の<現代>1 グローバル・プレイヤーとしての日本」北岡伸一、NTT(2010),㋂30日*
609.「石橋湛山外交論集 小日本主義」増田弘編、草思社(1984)、3月30日  **
610.「「本覚思想批判」袴谷憲昭、大蔵出版(1989)、3月30日  *
 : 「本覚思想」は仏教ではない、と著者は主張する。仏教は、1)縁起、)利他、3)言葉を重視する。「本覚思想」は老荘であれ禅であれ、その3点を無視している。本覚思想とは「人間はすべて本来的に仏性をそなえており、それに気づけば誰しも本来の仏性に帰着することができる」という思想。
611.「ユダヤ神秘主義」ゲルショム・ショーレム、法大(1985)、3月31日
 : デイアスポラ・ユダヤ人の中に連綿として生き続けてきた一筋の真紅の血潮のようなユダヤ的魂の核の内発的系譜をつなぎ結んで、ユダヤ民族全体真の生命力の伝統を再生させ、そこに現代から未来への新たな正しい展望を開く学問的基礎を達成した。
612.「暴力と聖なるもの」ルネ・ジラール、法大(1982)、3月31日  (4)
 : 聖なるものを消去し除外しようという傾向は、超越的な形ではなく、内在的な形で、暴力の形と、暴力についての知という形態で、聖なるものの再来を準備する。暴力的起源から無限に遠ざかった思考は再びそこに近づくのだ。知らず知らずのうちに。
613.「哲学とは何か」ヤスパース、白水社(1986)、3月31日
 : 「哲学的思考の根源は、驚異と懐疑と自分が見捨てられているという意識にある。」
614.「サバイバル宗教論」佐藤優、文春新書(2014)、3月31日
615.「リベラルじゃダメですか?」香山リカ、祥伝社新書(2014)、3月31日  **
 : 日本において「リベラル派は嫌われている」「何故嫌われるのか?どうすればよいのか?」を正面から率直に語った、好感の持てる本。
616.「メタフィジカル・パンチ」池田晶子、毎日(2014)、3月31日  **

  タイトル数 616  665冊  情報カード 981ページ

2015年01月13日

2015年狂言鑑賞

1.「1月横浜狂言堂」1月11日: 「解説」炭光太郎、「三本柱」野村万蔵、小笠原匡、野村太一郎、能村晶人、「蝸牛」野村万禄、河野裕紀、吉住講
  炭光太郎の「解説」は、初心者(約1割の狂言を初めて観る人)むけに、狂言の実際の動きを交えての説明で、分かりやすかった。「三本柱」はストーリー・動きとも単調で今ひとつ盛り上がりに欠けた。「蝸牛」は、それに比べればストーリー・動きとも複雑で楽しめた。「蝸牛」は2回目の鑑賞だったが、前回のものより、演技に工夫・切れがあり、観客の盛り上がりもあった。2曲に共通していたのは、謡・踊りのウエイトの高さ。狂言の源流が田楽にあるということを感じさせられた公演であった。
2.「萬狂言正月本公演」1月12日: 「解説」野村万蔵、「鶏聟」野村拳之助、野村萬、「鎌腹」小笠原匡、野村太一郎、山下浩一郎、「奈須与市語」野村虎之助、「三人片輪」野村萬、野村万蔵、井上松次郎、野村又三郎
 野村万蔵の解説は要点(筋と見どころ)をおさえて分かりやすくて良かった。「鶏聟」は人間国宝と孫(野村万蔵の15歳の次男)との共演が微笑ましい出し物。「鎌腹」は話の勢いで「鎌で腹を切って死ぬ」と言って納まりのつかなくなった太郎の演技が見もの。小笠原匡の公演が光った。「奈須与市語」は、野村万蔵の長男虎之助(18歳)の披き(初演)で、野村萬が後方で鋭い目つきで見つめていたのが印象的だった。「三人片輪」は、和泉流狂言の3派の役者の共演。今回の公演は傘寿を超えた野村萬の後継を育て引き継いでいくという強い意志の現れが伝わってきた。野村家の将来の屋台骨を担う孫2人を登場させ、同時に和泉流3派の共演を盛り込んだ。孫2人は、豊かなポテンシャルを示すと同時に成長の余地も大いにありと感じさせ、これからの精進が楽しみ。

3.「2月横浜狂言堂」2月8日
 : 「解説」深田博治、「隠狸」竹山悠樹、内藤連、「伊文字」深田博治、中村修一、高野和憲
  2曲に共通しているのは、謡・舞のウエイトが高いことと中入り(役者が一旦楽屋に戻り再登場する)があること。「伊文字」は野村万作の新演出で従来より最後の謡・踊りの部分を大幅に延長すると同時に繰り返しが単調にならないように謡・踊りに変化をつけて飽きさせないような工夫が見られ、深田博治も緊張感を持って演じていることが感じられ、見ごたえがあった。このような工夫は、ほとんどの曲が単調な繰り返しが多いということを考えると、狂言を現代でより楽しめるようにするための共通の切り口になると思われる。
4.「3月横浜狂言堂」3月8日  **
 : 「佐渡狐」山本則俊、山本則孝、山本則秀、「横座」山本東次郎、山本則孝、山本凛太郎、「解説」山本東次郎
  今公演で最も印象深かったのは、山本東次郎の解説。狂言の特質を上演された2曲から具体的な例を挙げて分かりやすく(徹底した省略)説明。また登場人物の人間性の機微(現代人にも通じる)を鋭く指摘。いつ聞いても、狂言の本質・面白さを的確に伝える技量に感服する。
5.「萬狂言 春公演」(酒三昧)、4月12日  ***
 : 「解説」野村万禄、「小舞」(暁)野村眞之介、(七つ子)野村拳之介、「棒縛」能村晶人、小笠原匡、
   河野佑紀、「見物左衛門」(花見)野村萬、「蜘盗人」野村万蔵、能村万禄、野村虎之助、能村晶人、
   吉住講、河野佑紀、小笠原匡
 :  「萬狂言」はいつも構成に工夫があり、そこに野村萬のこの公演にかける意気込みが感じられて、見ごたえがある。今回は、最初に小舞二曲を演じ、これは次の「棒縛」で縛られた状態で次郎冠者・太郎冠者が踊る舞を見せ、狂言の踊りの可笑しさを理解させようという趣向であると同時に、万蔵の次男・三男(孫)に演じる機会を与えている。また、「見物左衛門」は珍しい一人狂言で、役者の技量が試される演目。さすがに、野村萬は見事に演じきったが、この演目が本当に成功するかどうかは、観客がその演じられた世界に想像力を働かせて入り込めるかどうかにかかっている(この演目はこの比重が極めて高い)。今回の観客はそれが出来なかった人が多かったようで、動きが少ないため、居眠りををしている人も目立ち、野村萬には気の毒だった。
6.「5月横浜狂言堂」5月10日  ***
 : 「解説」能村晶人、「昆布売」野村万蔵、河野佑紀、「附子」能村晶人、野村万蔵、野村虎之助
 : 2曲とも演出に工夫があり、動きを大きく、コミカルな味を出すことに成功し、楽しい狂言に仕上がっていた。
7.「6月横浜狂言堂」6月14日  ***
 : 「解説」茂山正邦、「呼声」茂山あきら、茂山宗彦、井口竜也、「空腕」茂山正邦、網谷正美
 : 「解説」は「呼声」で重要なウエイトをしめる謡いの代表的な平家節・小歌節・踊節を実演を交えながらそれらの違いを教えてくれたので、狂言をより楽しむことが出来た。狂言は2曲とも観客を楽しませる演出が考えられており、これに素直に反応し、最近の狂言堂では観客のノリが一番良かった。
8.「萬狂言夏講演 祭三昧」7月26日  ***
 : 「解説」野村万蔵、「千鳥」小笠原匡、能村祐丞、能村晶人、「見物左衛門」(深草祭り)野村万禄、(小舞)「景清」野村虎之助、「御田」野村万蔵、(素囃子)佃良太郎、観世元伯、住駒充彦、藤田貴寛、「煎物」野村萬、野村万蔵、野村拳之介、能村晶人、野村虎之助、吉住講、泉愼也、河野裕紀
 : 「解説」は「簡にして要を得る」で良かった。現在和泉流全体で共有する伝統狂言は254曲とのことだが、本公演でこれに該当するのは「千鳥」のみ。他の2曲は三宅派のみに伝わり上演回数も少ないとのこと。「見物左衛門」(深草祭)は「春公演」で野村萬の演じた「花見」に続くもの。野村万禄は熱演するも、今ひとつこなれていない感があり残念。「煎物」は25年ぶりの上演とのこと。登場人物も多く、囃子物も入り賑やかな出し物。野村萬・万蔵父子の息のあった演技で楽しめた。「萬狂言」では、普段あまり演じられることのない演目を見せようという意気込みに好感が持てる。
9.「9月横浜狂言堂」9月13日  ***
 : 「解説」小笠原匡、「酢薑」(酢売り)野村万蔵、、(薑売り)炭光太郎、「茶壺」(すっぱ)小笠原匡、(中国の者)河野佑紀、(目代)炭哲男
 : 「解説」は「狂言」の入門解説に時間をかけたもの。「酢薑」「茶壺」とも定番的狂言であるが、2曲とも演
  者が力を込めて演じており、見ごたえがあった。
10.「10月横浜狂言堂」10月11日  ***
 : 「解説」石田幸雄、「因幡堂」(夫)高野和憲、(妻)岡聡史、「簸屑」(太郎冠者)石田幸雄、(主)中村
  修一、(次郎冠者)内藤連
 : 「解説」は25分と持ち時間が長かったため、珍しい趣向として、「因幡堂」の(妻)の着付けを実際に舞
  台上で行い、狂言における女役の着付けの特徴ならびにポイントを紹介。「因幡堂」「簸屑」とも良く演じ
  られる狂言だが、役者が演じこんで役を自家薬籠中の物としており、安心して楽しめた。
11.「萬狂言特別公演」(大曲二題)、10月18日  ***
 : 「解説」小笠原匡、「仕舞 班女」鵜澤光、「花子」(夫)野村万蔵、(妻)野村又三郎、(太郎冠者)井上
  松次郎、「舞囃子」(亡霊)野村四郎、(女御)鵜沢光、「枕物狂」(祖父)野村萬、(孫)野村虎之助、(孫)
  野村拳之助、(乙御前)野村又三郎
 : 「特別公演」の意味は、1)大曲(難しく、演じられることの少ない曲)を二曲同時に上演する(「花子」10
  年ぶり、「枕物狂」15年ぶり、2)能とのコラボレーション。普通の能では、特別公演にならないので、「仕
  舞」(=能の一部を、演者が衣装や面をつけずに、紋服・袴のまま、地謡にあわせて舞う)で、狂言の背
  景にある「能」二曲を紹介するという趣向になっている。また、仕舞には現在最も注目されている女流能
  楽師鵜澤光を起用
12.「11月横浜狂言堂」11月8日  ***
 : 「秀句傘」(大名)山本則秀、(太郎冠者)山本凛太郎、(新参者)山本泰太郎、「縄綯」(太郎冠者)山本
  則孝、(主)山本泰太郎、(何某)山本東次郎、「解説」山本東次郎
 : 「秀句(=しゃれなどの言葉あそび)傘」は、(新参者)の作った秀句が「ほね・かみ・え」にからむものであったというのがオチなのだが、演じられたときにそれが理解しにくく、今ひとつ盛り上がりに欠けた。「縄綯」は、主人の博奕のかたに(何某)のもとに贈られたあ(太郎冠者)の悪口雑言が見どころだが、これは分かりやすく、「狂言」を観なれた観客が多く、大いに盛り上がった。山本東次郎の「解説」はいつも的確で、今回は「秀句傘」の「秀句」の言葉遊びの解説、「縄綯」の「縄」の大蔵流(白布)と和泉流(藁で編む)の違いから、両派の狂言に対する考え方の違いを説明。
13.「12月横浜狂言堂」12月13日  ***
 : 「解説」茂山千三郎、「膏薬煉」茂山童児、「貰聟」(舅)茂山千五郎、(聟)茂山千三郎
 : 茂山千三郎の「解説」は11月の山本東次郎に続いて良かった。最近、野村万蔵・野村萬斎と共演したときの例をあげて、和泉流と大蔵流、さらにそれぞれの流派間でも微妙な演じ方の違いがあることを説明したあと、しかし、一番考えたのは、流派を超えて共通する演じ方があり、そこに狂言の本質的な演じ方があるとの指摘。「膏薬煉」は京都と鎌倉の膏薬煉の相譲らぬ歯切れの良いやりとり、演技で楽しめた。「貰聟」は、茂山千五郎(人間国宝)と茂山千三郎の息のあった掛け合いが見事だった。最近の狂言堂では一番盛り上がった舞台だった。

2015年01月21日

2015年歌舞伎鑑賞

1.「壽初春大歌舞伎」(昼の部)1月20日    **
 : 「金閣寺」染五郎、七之助男女蔵、廣太郎、笑也、門之助、勘九郎、「蜘蛛の拍子舞」(花山院空御所の場)玉三郎、勘九郎、七之助、染五郎、「一本刀土俵入」幸四郎、歌六、錦之助、由次郎、綿吾、宗之助、廣太郎、歌江、桂三、高麗蔵、友右衛門、魁春
 三幕とも力が入っており見ごたえがあった。その中での圧巻は何といっても「蜘蛛の拍子舞」の玉三郎。前半は、妖麗な美女を演じ、後半はその正体を現した女郎蜘蛛の妖怪を見事に演じ分け、大立ち回りで蜘蛛の絲をまき散らしての大熱演で歌舞伎の醍醐味を堪能させてくれた。
2.「壽初春大歌舞伎」(夜の部)1月23日    **
 : 「番町皿屋敷」吉右衛門、芝雀、桂三、吉之助、橋三郎、染五郎、東蔵、「女暫」玉三郎、歌六、錦之助、七之助、團子、弘太郎、梅丸、橘三郎、笑也、男女蔵、又五郎、吉右衛門
 : 「番町皿屋敷」は岡本綺堂作の新しいストーリー。お菊の幽霊ではなく、生きているお菊が「一枚二枚」と皿の数を数えるのが新鮮。「女暫」は玉三郎の巴御前の独壇場。ストーリーに大きな起伏がある訳ではないので、見た目の変化、登場者のグループの多様さ・衣装の豪華さと見栄え、そしてアドリブを多用しての目新しさ、そしてなによりも玉三郎の存在感で圧巻のエンターテインメントに仕上がっている。

3.「二月大歌舞伎」(昼の部)2月16日    *
 : 「吉例寿曽我」(鶴岡石段の場、大磯曲輪外の場)、又五郎、錦之助、梅枝、歌昇、萬太郎、巳之助、児太郎、国生、橘三郎、枝雀、歌六、「彦山権現誓助劔」(毛谷村)菊五郎、時蔵、團蔵、東蔵、左團次、「積恋雪関扉」幸四郎、菊之助、錦之助
 : ここ半年で一番空席が目立った舞台だった。11月、12月、1月は、演目、配役、演出、役者の演技、謡・音曲全てにわたって非常に充実していたので、一休みかなとの印象を受けたが、芝居が始まってみると、幕が進むごとに物語の世界に引き込まれていき、現在の歌舞伎界の充実度を改めて感じさせられた。
4.「三月大歌舞伎」(昼の部)菅原伝授手習鑑(序幕:賀茂堤)菊之助、梅枝、萬太郎、壱太郎、亀寿(二幕目:筆法伝授)仁左衛門、染五郎、愛之助、梅枝、橘太郎、宗之助、亀寿、亀三郎、家橘、魁春(三幕目:道明寺)仁左衛門、芝雀、菊之助、愛之助、壱太郎、松之助、彌十郎、歌六、秀太郎
 : 三月公演は「仮名手本忠臣蔵」「義経千本桜」と並ぶ歌舞伎の三代名作の一つ「菅原伝授手習鑑」を昼の部・夜の部にわたる通しで全六幕を上演するという珍しい公演。演出・役者共に力のこもった舞台だった。
5.「三月大歌舞伎」(夜の部)菅原伝授手習鑑(四幕目:車引)愛之助、染五郎、菊之助、萬太郎、彌十郎、(賀の祝)菊之助、染五郎、愛之助、新吾、梅枝、孝太郎、左團次
 : 最終幕(六幕目)「寺小屋}は昨年(10月)の公演で観ているので今回は省略。
6.「四代目中村鴈治郎襲名披露四月大歌舞伎」(昼の部)4月20日  **
 : 「碁盤太平記」(山科閑居の場)扇雀、染五郎、壱太郎、寿治郎、亀鶴、孝太郎、東蔵、「六歌仙容彩」
(僧正遍照)左團次、魁春、(文屋康秀)仁左衛門、(在原業平・小野小町)梅玉、魁春、(喜撰法師)菊五郎、芝雀、團蔵、萬次郎、権十郎、松江、歌昇、竹松、廣太郎、(大伴黒主)吉右衛門、魁春、「廓文章」(吉田屋)鴈治郎、幸四郎、又五郎、歌六、秀太郎、藤十郎
 : 一番良かったのは「碁盤太平記」。大石内蔵助の遊興と本心を描く作品で、今回は40年ぶりの上演。日本人の心情と行動を知り尽くした演出・演技で感動的な舞台に仕上がっている。「六歌仙容彩」は単調にならないように、演出・舞台装置・衣装にそれぞれ変化・工夫が見え、好感がもてた。「吉田屋」は襲名披露の鴈治郎が主役をはった舞台だが、もう少し「華」がほしいというのが、率直な印象。
7.「四代目中村鴈治郎襲名披露四月大歌舞伎」4月22日  **
 : 「梶原平三誉石切」(星合寺の場)(梶原平三)幸四郎、(俣野景久)錦之助、(梢)壱太郎、(梶原方大名)由次郎、廣太郎、松之助、(六郎太夫)錦吾、(剣菱呑助)桂三、(奴菊平)高麗蔵、(大庭景親)、「成駒屋歌舞伎賑」(木挽町芝居前の場・四代目中村鴈治郎襲名披露口上)鴈治郎、扇雀、虎之助、壱太郎、藤十郎、(木挽町座元)菊五郎、(太夫元)吉右衛門、(芝居茶屋亭主)梅玉、(茶屋女房)秀太郎、(男伊達)左團次、歌六、又五郎、錦之助、染五郎、松江、権十郎、團蔵、彦三郎、(女伊達)魁春、東蔵、芝雀、孝太郎、鶴亀、高麗蔵、萬次郎、友右衛門、(役者寿治郎)寿治郎、(二引屋倅)進之介、(二引屋主人)我當、(道頓堀座元)仁左衛門、(江戸奉行)幸四郎、「心中天綱島」(玩辞楼十二曲の内河庄)(紙屋治兵衛)鴈治郎、(紀の国屋小春)芝雀、(江戸屋太兵衛)染五郎、(五貫屋善六)壱太郎、(丁稚三五郎)虎之助、(芸妓小糸)歌女之丞、(河内屋お庄)秀太郎、(粉屋孫右衛門)梅玉
 : (夜の部)は襲名披露中心の舞台。(昼の部)では芝居の途中で口上を述べるという演出だったが、左右に花道を設け、男伊達と女伊達が次々と工場を述べるという演出。しかし、残念ながら空席が目立った舞台だった。
8.「團菊祭五月大歌舞伎」(昼の部)5月19日  **
 : 「摂州合邦辻」(合邦庵室の場)(玉手御前)菊之助、(俊徳丸)梅枝、(浅香姫)右近、(奴入平)巳之助、(合邦道心)歌六、(母おとく)東蔵、通し狂言「天一坊大岡政談」(大岡越前守)菊五郎、(池田大介)松緑、(山内伊賀亮)海老蔵、(お三)萬次郎、(赤川大膳)秀調、(平石治右衛門)権十郎、(下男久助)亀三郎、(嫡子忠右衛門)萬太郎、(お霜)米吉、(伊賀亮女房おさみ)宗之助、(吉田三五郎)市蔵、(藤井左京)右之助、(名主甚右衛門)家橘、(僧天忠)團蔵、(天一坊)菊之助、(大岡妻小沢)時蔵
 : 今回の演目の共通点は、ほとんど派手な見せ場がなく、セリフと語りで物語が進行していくという点にある。特に「摂州合邦辻}は一幕で場面転換もないため、外人の観客には気の毒だった。
9.「六月大歌舞伎」(昼の部)6月15日  ***
 : 「天保遊侠録」(小吉)橋之助、(八重次)枝雀、(茶良吉)児太郎、(松坂庄之助)国生、(唐津藤兵衛)松之助、(井上角兵衛)團蔵、(大久保上野介)友右衛門、(阿茶の局)魁春、「通し狂言 新薄雪物語」<花見>(奴妻平)菊五郎、(秋月大膳)仁左衛門、(園部左衛門)錦之助、(薄雪姫)梅枝、(花山艶之丞)由次郎、(渋川藤馬)松之助、(清水寺住職)錦吾、(来国行)家橘、(来国俊)橋之助、(腰元籬)時蔵、(団九郎)吉右衛門、<詮議>(幸崎伊賀守)幸四郎、(園部兵衛)仁左衛門、(松ヶ枝)枝雀、(園部左衛門)錦之助、(薄雪姫)児太郎、(茶道珍才)隼人、(役僧雲念)桂三、(秋月大学)彦三郎、(葛城民部)菊五郎
 : 「六月大歌舞伎」は、「通し狂言 新薄雪物語」は昼夜にまたがる公演。豪華キャストで、見せ場も多く、華のある観客サービス満点の舞台になっている。(5月公演と好対照)
10.「六月大歌舞伎」(夜の部)6月22日  ***
 : 「通し狂言 新薄雪物語」<広間・合腹>(園部兵衛)仁左衛門、(梅の方)魁春、(忽川平蔵)又五郎、(奴袖平)権十郎、(腰元呉羽)高麗蔵、(薄雪姫)米吉、(園部左衛門)錦之助、(松ヶ枝)枝雀、(幸崎伊賀守)幸四郎、<正宗内>(団九郎)吉右衛門、(おれん)枝雀、(腰元呉羽)高麗蔵、(五人組伊太郎)歌昇、(同仁助)種之助、(同与吉)隼人、(薄雪姫)米吉、(渋川藤馬)桂三、(下男吉介実は来国俊)橋之助、(五郎兵衛正宗)歌六
 : 昼の部から続く通し狂言。歌舞伎を観る楽しみは、1)江戸時代の人々と現代のわれわれの共通点を見出し共感すること、2)その反対にギャップを発見し、江戸時代とはそうゆう時代だったんだとの認識を新たにすること。今回でいえば、1)親子の愛情・友への友情、2)最終幕<正宗内>の最後は、吉右衛門扮する団九郎の大立ち回りとミエで終わる。「新薄雪物語」だから、薄雪姫と園部左衛門が結ばれる場面で終わらないととと思うのは、現代のわれわれのさかしら。派手にかっこよく終わればいいじゃないかというのが江戸っ子。
11.「七月大歌舞伎」(昼の部)7月21日   ***
 : 「南総里見八犬伝」(犬塚信乃)獅童、犬飼現八)市川右近、(犬山道節)梅玉、(犬川荘助)歌昇、(犬江親兵衛)巳之助、(犬村角太郎)種之助、(浜路)笑三郎、(犬田小文吾)猿弥、(網干左母二郎)松江、「与話情浮名横櫛」(与三郎)海老蔵、(蝙蝠安)獅童、(番頭藤八)猿弥、(お岸)歌女之丞、(鳶頭金五郎)九團次、(和泉屋多左衛門)中車、(お富)玉三郎、「蜘蛛絲梓弦」(童熨斗丸、薬売り彦作、番頭新造八重里、座頭亀市、傾城薄雲実は女郎蜘蛛の精)猿之助、(源頼光)門之助、(坂田金時)市川右近、(渡辺綱)巳之助、(碓井貞光)獅童、(平井保昌)海老蔵
 : 12日の発売と同時に全日全席完売。当日売りの幕見席もこの一年で最長の列。豪華キャストに歌舞伎らしい派手な演出・衣装・舞台装置と全てが揃った昼の部。玉三郎・海老蔵・獅童も期待どうりの華のある舞台。しかし今公演の最大の見せ場は猿之助の六変化。観客の喝采を一身に受けたのも納得の出来。
12.「七月大歌舞伎」(夜の部)7月23日   ***
 : 通し狂言「怪談 牡丹燈籠」(お峰)玉三郎、(お米)吉弥、(お六)歌女之丞、(萩原新三郎)九團次、(山本志丈)市蔵、(馬子久蔵)海老蔵、(お国)春猿、(定吉)弘太郎、(三遊亭円朝)猿之助、(伴蔵)中車
 : 昼の部に引き続いての大入り満員。一幕は怪談にふさわしく照明を落した舞台だが、それだけでは舞台が盛り上がらないので、台詞が良く練りこまれ、観客の笑いをとるように演出されている。舞台装置もハイテクを取り入れた新しい工夫もされており、また役者の気合の入った演技と相まって熱気のこもった好舞台となっている。
13.「八月納涼大歌舞伎」(第三部)8月24日  ***
 : 「芋堀長者」(芋堀籐五郎)橋之助、、(友達治六郎)巳之助、(腰元松葉)新悟、(魁兵馬)国生、(免原佐内)鶴松、(松ヶ枝屋後室)秀調、(緑御前)七之助、「祇園恋づくし」(大津屋治郎八、女房おつぎ)扇雀、(指物師留五郎)勘九郎、(芸妓染香)七之助、(手代文吉)巳之助、(おつぎ妹おその)鶴松、(持丸屋女房おげん)歌女之丞、、(岩本楼女将お筆)高麗蔵、(持丸屋太兵衛)彌十郎
 : 「祇園恋づくし」が圧巻の出来栄え。科白が磨きに磨かれており、上質の喜劇に仕上がっている。
14.「秀山祭九月大歌舞伎」(昼の部)9月16日 **
 : 「双蝶々曲輪日記」(新清水浮無瀬の場)(南与兵衛)梅玉、(藤屋吾妻)芝雀、(平岡郷左衛門)松江、(太鼓持佐渡七)宗之助、(堤藤内)隼人、(井筒屋お松)歌女之丞、(番頭権九郎)松之助、(三原有右衛門)錦吾、(山崎屋与五郎)錦之助、(藤屋都)魁春、「紅葉狩」(更科姫、実は戸隠山の鬼女)染五郎、(局田梅)高麗蔵、(侍女野菊)米吉、(山神)金太郎、(腰元岩橋)吉之助、(従者左源太)廣太郎、(従者右源太)亀寿、(平維茂)松緑、「競伊勢物語」(紀有常)吉右衛門、(絹売豆四郎、在原業平)染五郎、(娘信夫、井筒姫)菊之助、(絹売お崎)米吉、(絹売お谷)児太郎、(旅人倅春太郎)井上公春、(およね)歌女之丞、(川島典膳)橘三郎、(茶亭五作)桂三、(銅鑼の鏡八)又五郎、(母小由)東蔵
 : 全体の印象はここ数か月で最も盛り上がりを欠いた舞台だった。その最大の理由は出し物の取り合わせ。3幕とも前半はおおきな動きのない、盛り上がりにくいものを選んだこと。最も盛り上がったのは、「紅葉狩」の染五郎親子。長男金太郎(10歳)は山神を見事に演じ、大きな拍手をもらっており、役者魂とポテンシャルを見せつけ、これからの成長が楽しみな役者である。染五郎は、前半の更科姫役ではあでやかに舞い、終幕の鬼女の荒々しい振舞いと見事なコントラストを見事に演じきっていた。
15.「秀山祭九月大歌舞伎」9月25日  ***
 : 通し狂言「伽羅先代萩」<花水橋>(足利頼兼)梅玉、(絹川谷蔵)又五郎、<竹の間>(乳人政岡)玉三郎、(冲の井)菊之助、(鳶の嘉藤太)吉之助、(小槙)児太郎、(八汐)歌六、<御殿>(乳人政岡)玉三郎、(冲の井)菊之助、(小槙)児太郎、(榮御前)吉弥、(八汐)歌六、<床下>(仁木弾正)吉右衛門、(荒獅子男之助)松緑、<対決・刃傷>(仁木弾正)吉右衛門、(細川勝元)染五郎、(渡辺民部)歌昇、(山中鹿之助)種之助、(大江鬼貫)由次郎、(山名宗全)友右衛門、(渡辺外記左衛門)歌六
 : 人気歌舞伎の通し狂言。今公演で特に感じたのは2点。玉三郎の政岡。茶の湯のお点前をする場面の見事さ、いつ見ても玉三郎は「凄い」。あとは、染五郎の細川勝元。昼の部(紅葉狩)の更科姫・戸隠山の鬼女の演じ分けと合わせて、見事な舞台で、何を演じても「華」がある。
16.「芸術祭十月大歌舞伎」(夜の部)10月15日  ***
 : 「檀浦兜軍記<阿古屋>」(遊君阿古屋)玉三郎、(岩永左衛門)亀三郎、(榛沢六郎)功一、(秩父庄司重忠)菊之助、「梅雨小袖昔八丈」<髪結新三>、(髪結新三)松緑、(白子屋手代忠七)時蔵、(下剃勝奴)亀寿、(お熊)梅枝、(丁稚長松)左近、(家主女房おかく)右之助、(車力善八)秀調、(弥太五郎源七)團蔵、(後家お常)秀太郎、(家主長兵衛)左團次、(加賀屋藤兵衛)仁左衛門、(肴売新吉)菊五郎
 : <阿古屋>は芸術祭参加作品。女形の大役。琴・三味線・胡弓の三楽器を約10分ずつ演奏するのが見せ場。玉三郎はこの大役をさすがに見事にこなしていた。
17.「芸術祭十月大歌舞伎」(昼の部)10月20日   ***
 : 「音羽嶽だんまり」(音羽夜叉五郎)松也、(七綾姫)梅枝、(源頼信)萬太郎、(鬼童丸)尾上右近、(保昌娘小式部)児太郎、(将軍太郎良門)権十郎、「矢の根」(曽我五郎)松緑、(大薩摩主膳太夫)彦三郎、(馬士畑右衛門)権十郎、(曽我十郎)藤十郎、「一篠大蔵譚」(一篠大蔵長成)仁左衛門、(お京)孝太郎、(鳴瀬)家橘、(八剣勘解由)松之助、(吉岡鬼次郎)菊之助、(常盤御前)時蔵、「人情噺文七元結」(左官長兵衛)菊五郎、(女房お兼)時蔵、(鳶頭伊兵衛)松緑、(和泉屋手代文七)梅枝、(娘お久)尾上右近、(角海老手代藤助)團蔵、(和泉屋清兵衛)左團次、(角海老女将お駒)玉三郎
 : (昼の部)は出し物のバランス(荒物、世話物、踊り主体、台詞主体など)をよく考慮し、また良く演じられるものを集めた公演で楽しめた。
18.「吉例顔見世大歌舞伎」(夜の部)11月5日  ***
 : 「江戸花成田面影」(芸者お藤)藤十郎、(鳶頭梅吉)梅玉、(鳶頭染吉)染五郎、(鳶頭松吉)松緑、海老蔵、堀越勧玄、家橘、市蔵、九團次、右之助、仁左衛門、菊五郎、「元禄忠臣蔵」<仙石屋敷>(大石内蔵助)仁左衛門、(堀部安兵衛)権十郎、(間十次郎)松江、(富森助右衛門)亀寿、(大高源吾)亀鶴、(磯貝十郎左衛門)児太郎、(大石主税)千之助、(伴得介)梅丸、(谷土源七)橘太郎、(不破数右衛門)松之助、(吉田忠左衛門)市蔵、(桑名武右衛門)秀調、(鈴木源五右衛門)家橘、(仙石伯耆守)梅玉、「勧進帳」(武蔵坊弁慶)幸四郎、(源義経)松緑、(亀井六郎)友右衛門、(片岡八郎)高麗蔵、(駿河次郎)宗之助、(常陸坊海尊)錦吾、(太刀持音若)左近、(富樫左衛門)染五郎、「河内山」(河内山宗俊)海老蔵、(高木小左衛門)左團次、(宮崎数馬)久團次、(腰元浪路)梅丸、(北村大膳)市蔵、(松江出雲守)梅玉
 : 第一幕は、海老蔵の長男堀越勧玄(3歳)の初お目見得。観客の注目度も高く、幕見席にはそれだけを観て帰る人も多かった。それ以降の幕は「顔見世」にふさわしく、人気役者に十八番を心置きなく演じさせ、それぞれ見ごたえがあり、楽しめた。仁左衛門の(大石内蔵助)、幸四郎の(弁慶)と染五郎の(富樫)お家芸での親子掛け合い、海老蔵の(河内山宗俊)それぞれ力のこもった迫力ある演技が光った。
19.「吉例顔見世大歌舞伎」(昼の部)、11月18日  ***
 : 「源平布引滝 実盛物語」(斎藤実盛)染五郎、(瀬尾十郎)亀鶴、(郎党)廣太郎、(郎党)廣松、(九郎助)松之助、(葵御前)児太郎、(小万)秀太郎、「若き日の信長」(織田上総之介信長)海老蔵、(弥生)孝太郎、(五郎右衛門)亀寿、(監物)九團次、(甚左衛門)廣松、(林美作守)市蔵、(僧覚円)右之助、(木下藤吉郎)松緑、(平手中務政秀)左團次、「曽我繡侠御所染」<御所五郎蔵>(御所五郎蔵)菊五郎、(星影土右衛門)左團次、(傾城逢州)孝太郎、(梶原平蔵)松江、(新貝荒蔵)亀寿、(秩父重介)廣太郎、(二宮太郎次)宗之助、(花形屋吾助)橘太郎、(傾城皐月)魁春、(甲屋与五郎)仁左衛門
 : (昼の部)の圧巻は何といっても、大佛次郎作の新歌舞伎「若き日の信長」。脚本も良くできているし、海老蔵もはまり役を、巧みに演じており、見ごたえのある舞台だった。
20.「十二月大歌舞伎」(昼の部)12月18日  **
 : 「本朝廿四孝」<十種香>(八重垣姫)七之助、(武田勝頼)松也、(腰元濡衣)児太郎、(白須賀六郎)亀寿、(原小文治)亀三郎、(長尾謙信)市川右近、「赤い陣羽織」(お代官)中車、(お代官のこぶん)亀寿、(女房)児太郎、(お代官の女房)吉弥、(おやじ)門之助、「重戀雪関扉」(関守関兵衛実は大伴黒主)松緑、(小野小町姫)七之助、(良峯少将宗貞)松也、(傾城墨染実は小町桜の精)玉三郎
 : 例年十二月公演は、京都南座の顔見世に大半の主力役者が出かけるため、演目に苦労が見える興行になっている。「本朝廿四孝」はほとんどが台詞だけの舞台、「関の扉」は大半が謡と三味線に合わせての踊りの舞台と変化のつけにくい演目。そこでその間に「赤い陣羽織」を入れて、コミカルに笑いを取るという味付け。その狙いはわかるが、全体としてみると、今ひとつ盛り上がりに欠ける公演だった。
21・「十二月大歌舞伎」(夜の部)12月21日  **
 : 「通し狂言 妹背山婦女庭訓」<杉酒屋>(杉酒屋娘お三輪)七之助、(烏帽子折求女実は藤原淡海)松也、(入鹿妹橘姫)児太郎、(丁稚小太郎)團子、(後家お酉)歌女之丞、(家主茂儀兵衛)権十郎、<道行恋芋環>(杉酒屋お三輪)七之助、(入鹿妹橘姫)児太郎、(烏帽子折求女実は藤原淡海)松也、<三笠山御殿>(杉酒屋娘お三輪)玉三郎、(漁師鱶七実は金輪五郎今国)松緑、(宮越玄蕃)亀三郎、(荒巻弥藤次)亀寿、(入鹿妹橘姫)児太郎、(烏帽子折求女実は藤原淡海)松也、(豆腐買いおむら)中車、(曽我入鹿)歌六
 : 夜の部は通し狂言。昼の部に引き続いて全体としての盛り上がりに欠けた舞台だった。