メイン

2006年06月01日

映画「ダ・ヴィンチ・コード」を観る

 この映画は、ベスト・セラーとなった原作を映画化したものである。上映前の原作者・カトリック教会・ソニー(制作・配給)の三者のやりとりでも話題をよんだ。
 多くの人が話しの筋をしっていると思われるし、たとえ知らない人がいてもここでそれを紹介するのは、マナー違反なので、以下この映画を見て考えたことを記す。
 映画の印象は、「そこそこ面白かったが、原作を読んだ人が観るほどのことはない」である。
 映画「ダ・ヴィンチ・コード」ソニー・ピクチャア制作・配給
* 独断と偏見
 ・ 宗教の本姓: まず考えさせられたのは、宗教とは何か?キリスト教(主としてカトリック教会を念頭に置く)は、キリストが説き・実践したように“愛”の宗教である。これをキリスト教の光の部分とすると、闇の部分はこの映画にも触れられているように(この映画の内容が事実であるかどうかにかかわりなく)、他宗教との宗教戦争と内部での異端狩りにより神の正義の名の下に多くの人々を殺してきた歴史にある。

続きを読む "映画「ダ・ヴィンチ・コード」を観る" »

2006年08月08日

「ゲド戦記」を観る

 映画ゲド戦記は、ル=グウィンの小説をスタジオ・ジブリが映画化した作品である。
 原作の小説は、「影との戦い」、「こわれた腕環」、「さいはての島へ」、「帰還」、「アースーシーの風」の五巻で完結しているが、映画はこれを一本にまとめたものである。
 原作の「ゲド戦記」は、「指環物語」、「ナルタニア国物語」と並ぶファンタジー小説との評価をえている。
 ル=グウィンは、第三巻を書いた後第四巻を完成させるのに十六年を、第五巻を完成させるのにさらに十一年を要している。
 「ゲド戦記」は主人公ゲドが魔法使いであり、多くの魔法使い、まじない師、王、王女、竜などが登場するなど、ファンタジー小説の形式をとった哲学小説である。
 では、映画「ゲド戦記」はこの原作を越えているのであろうか?
 映画「ゲド戦記」スタジオ・ジブリ作品、2006年8月8日

続きを読む "「ゲド戦記」を観る" »

2006年10月04日

「時をかける少女」を観る

・ この映画は、筒井康隆の原作に大幅に手を入れた物語をアニメ化したものである。原作は文庫本で約110ページの短編で、ストーリーも骨組みのみといった話であるが、映画化にあたり、ストーリーに膨らみを持たせ、アニメの絵の完成度も極めて高く、稀にみるレベルの傑作となっている。
・ 原作を生かしているのは、二人の親友の男子高校生と一人の女子高校生の友情(と恋愛)、そのうちの一人が未来から時間を飛ぶ(タイム・リープ)能力で現代にきており、その能力を少女に伝える。二人の間に友情を超えた恋心が芽生えるが、未来での再会を予感(期待)させながら、少年は未来に帰る。
・ 「時をかける少女」監督: 細田守、原作: 筒井康隆、脚本: 奥寺佐渡子、角川映画

続きを読む "「時をかける少女」を観る" »

2006年10月14日

「キンキー・ブーツ」を観る

・ 「キンキー・ブーツ」というのは、「変態ブーツ」という意味で、ゲイの人たちの履くセクシー・ブーツのことを意味している。
・ この映画は、倒産寸前の靴会社の四代目を継いだ若社長が、生き残りをかけて、「キンキー・ブーツ」というニッチ市場に参入し、見事成功するという実話に基づいて制作されたものである。
・ 監督は、ジュリアン・ジャロルド、テレビで数々のヒット作を生み、映画監督初デビゥー、主役の靴会社社長役チャーリーを演じるのは、オーストラリア生まれで舞台・映画で活躍するジョエル・エドガードン、ドラッグ・クイーンのローラ役を演じるのは、黒人で始めて舞台でロミオを演じ、映画でも大活躍の個性派俳優キウウェテル・イジョフォー。
・ 「キンキー・ブーツ」ミラマックス・フィルムズ提供、ハーバー・ピクチャーズ制作、2005年

続きを読む "「キンキー・ブーツ」を観る" »

2013年12月20日

2013年映画鑑賞

1.「ポピット」1月8日                        *
2.「リベンジ」1月15日
3.「東京家族」1月24日                      *
4.「桃さんの幸せ」1月29日                   **
 : 監督の家族に長年仕えてきた「桃さん」の晩年のドキュメンタリー。買い物・料理などの家事(仕事)に対するこだわり、可愛らしい人柄、家族の一員として「桃さん」を大事にする家族の思いやり、心温まる一作品
5.「駆ける少年」2月5日                     **
 : 全編を通じ駆けまわる少年の印象が鮮やかに残る映画
6.「ムーンライズ・キングダム」2月12日            *
7.「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」2月19日    **
 : インドならびにインド人、イギリス人の個性を的確にとらえた脚本、手堅い演技陣、全く違和感なく楽しめる一級の作品
8.「辺野古・高江・普天間」2月20日               *
9.「カラカラ」2月20日
10.「もうひとりのシェイクスピア」2月26日          **
 : シェイスクピアの手書きの原稿がのこっいないという事実に着目し、シェイクスピアは実際の作品の作者ではなく、真の作者は別の人物だったという大胆な仮説をストーリーとする映画。なかなかの説得力で大いに楽しめた

続きを読む "2013年映画鑑賞" »

2014年01月08日

2014年映画鑑賞

1.「アンナ・ハレント」1月8日                   ***
 : 「アイヒマン裁判」を傍聴、アイヒマンを観察することによって、ナチの犯罪は人類の歴史上かってなかった新しいタイプであるという洞察にたどり着く。それは、「思考停止」により「凡人」が「大虐殺」を罪悪感なく平然と行うことを可能とするもので、それを作り出すのが全体主義である。同時に、ユダヤ人虐殺を600万人にまで増やした背景には一部ユダヤ人指導者のナチに対する協力があったと指摘した。このレポートが新聞に発表されると、アンナに対する非難が殺到、「アイヒマン擁護」「ユダヤ人に対する裏切り」との声が渦巻く。アンナは、こうした状況にもめげず、学者の使命は先入観にもとづく善悪の判断に囚われずに、真実に迫ることにあると説く。ハレントの主張を的確に捉え・表現した力作
2.「天国の門」1月7日                        **
 : 復刻版。3時間半におよぶ大作。19世紀後半のワイオミングを舞台に、牧場主たちと移民たちとの争いを描いた問題作。躍動感ある映像作りに徹する制作意図が具体的に表現された作品

続きを読む "2014年映画鑑賞" »

2015年01月05日

2015年映画鑑賞

1.「天国はほんとうにある」1月5日     **
 : 事実にもとづく映画。4歳の少年が体験した「天国に行き、そこで見・逢った人たち」のことを伝える。最初は「臨死体験」の物語かと思わせるが、全く違う。4歳の少年が言うことを信じるか、信じないか、「神は死んだ」21世紀に、あらためて「天国」の存在を問う作品。少年の父親が牧師であり、舞台の大半がその教会ならびにそこに集うキリスト教の信者たちとの付き合いであるが、「天国」の存在を押しつけずに、判断を個々の信者ならびに観客に委ねるというスタンスを崩さないことによって、映画として成功している。
2.「サンバ」1月7日               **
 : フランスにおける不法移民問題をテーマとした映画。不法移民とその支援者の活動・生活を描く。公式な滞在許可を取得するための手続き、不法移民の仕事・生活、その中で育まれる人間関係をリアルに描く。暗くなりがちなテーマであるが、観終わった後には、爽快感が残るのが、監督の並々ならぬ力量の証。その秘密は、年齢・男女・人種を超えてのコミュニケーション・つながりを描けていることと、ウイットのきいた会話にあるのだろう。

続きを読む "2015年映画鑑賞" »

2016年01月02日

「2016年映画鑑賞」

1.「消えた声が、その名を呼ぶ」1月2日  ***
 : 1915年オスマン帝国はドイツと組み失われた領土回復を目指しイギリスとの戦いを始める。これにともない少数民族のアルメリア人(キリスト教徒)への迫害が強まる。主人公は喉を切られ、殺されかけるが、運よく一命をとりとめる。しかし声を失う。妻と双子の娘はキャンプに連れ去られ、そこで全員死んだと知らされる。オスマン帝国(トルコ)がイギリスに負けた後、娘は生きていると聞き、必死に娘を探す。トルコから、レバノン、キュウ―バ、ミネアポリス・ノースダコダ(アメリカ)への苦難の旅を描く。家族を思う父親の愛情と何としても再会を果たしたいという強い執念をよく描いている。
2.「マイ・ファニー・レデイ」1月2日   ***
 : 若い娼婦がちょっとしたきっかけで、俳優として成功するという、「マイ・フェアー・レデイ」をパロディー化した喜劇。なかなか入り組んだストーリー設定にしてあり、洒落たエンターテインメント映画に仕上がっている。

続きを読む "「2016年映画鑑賞」" »

2017年01月03日

2017年映画鑑賞

1.「ヒトラーの忘れ物」1月2日  ***
 : 原題「LAND OF MEIN」(地雷原」。第二次世界大戦時、デンマークの海岸への連合軍の上陸を恐れたヒトラーの命令により、220万個の地雷が設置された。終戦直後、デンマーク軍は、この地雷除去作業を捕虜となったドイツ兵に担当させる。この映画では、22000個の地雷が敷設された海岸の地雷除去を、デンマーク人の古参軍曹が10人のドイツ人少年兵を監督して行うというストーリー。最初の出会い時の憎しみが、様々なエピソードを通じて、人間的交流に発展していく様子を上手く描いた作品。
2.「ヒチコック/トリュフォー」1月3日  ****
 : フランス人の新鋭監督トリュフォーがヒチコックにその作品の制作意図・用いたアイディア・技術などを自ら解説するインタビューを申し入れて、ヒチコックが快諾して5日間の会見が実現。その内容を1966年出版、以後この本は映画監督たちの「映画製作のバイブル」となる。この映画は、この本の紹介に加え、10人以上の映画監督のヒチコック作品についてのコメントを紹介、素晴らしいヒチコック映画解説になっている。

続きを読む "2017年映画鑑賞" »

2018年01月10日

「2018年映画鑑賞」

1.「キングスマン ゴールデン・サークル」1月9日  ***
 : このシリーズの愉しみは、イギリス流対アメリカ流の比較・揶揄。今回は、世界の麻薬マーケットを支配するゴールデン・サークルに英米のチームが立ち向かい、サークルを潰滅させるという物語。映画は、いきなりのカーチェイス・アクションで始まり、観客は一気に物語の世界に引き込まれるという入りも良い。
2.「ジオ・ストーム」1月23日  ***
 : 異常気象による災害が頻発する地球の気候を安定させるために、世界17か国の科学者が協力し宇宙から衛星でコントロールするシステムを確立・運営し始める。しかし、このシステムの故障に見せかけて世界18都市を破壊し権力を手に入れようとする企てが発生する。リアリティがあり、楽しめるエンターテインメント映画。

続きを読む "「2018年映画鑑賞」" »

2019年01月16日

「2019年映画鑑賞」

1.「ガンジスに還る」1月15日 ***
 : インド人にとってのガンジス河の聖地(ペナレス)で死ぬことは夢。輪廻から解脱され自由になれると信じられているから。聖地で死の準備をする人とその家族、人生・家族・仕事の意味を上手く絡めており、優れた作品に仕上がっている。
2.「女王陛下のお気に入り」2月26日 **
 : 「アカデミー賞作品賞」ノミネートということで、期待が大きかったが、ちょっとがっかり。イギリスらしさは良く出ていたが、ストーリーの構えが小さく、いま一つ迫力に欠けた。
3.「グリーン・ブック」3月12日 ****
 : 今年度アカデミー賞作品賞受賞。ニューヨークの有名ナイトクラブで用心棒などを務めるイタリア系アメリカ人の主人公が店舗改装の8週間に超エリート黒人ピアニストに運転手兼用心棒として雇われて、人種差別の激しい南部を演奏旅行でまわるというストーリー。初めは二人で色々な行き違いが生じるが、次第に心が通じ合う過程が見事に描かれている。グリーン・ブックとは人種差別の強い地域で黒人が使えるホテル・レストランのガイドブック。ここ数年作品賞は、なんでこんな作品が受賞するのかということが続いていたが、今回は納得。

続きを読む "「2019年映画鑑賞」" »

2020年01月15日

「2020年映画鑑賞」

1.「アラビアのロレンス」(完全版)1月14日 ****
 : 4K再修復版。ストーリー、映像(4K)の見事さ、さすがに歴史的な名作と評価される作品。この作品の一番凄いところは、現在につながるアラブと先進国の本質を見事に描き切っていること。約4時間の上映時間の長さがまったく気にならない迫力だった。
2.「アイリッシュマン」1月21日 ***
 : アカデミー作品賞ノミネート作品。アイルランド系マフィアの実像を内側から丁寧に描いた力作。ふとしたことから、アイルランド系マフィアのボスと知り合った主人公が着実にしごとをこなし、信頼を深め、力をましていく過程を地道に描く。チームスター(全米運輸労組=全米最大の労組)、マフィアの縄張り争い、ケネディ兄弟などをインサイダーの眼で描くと同時に、家庭では家族思いの普通の父親の姿、一人に等サイズの人間としてマフィアを描く。

続きを読む "「2020年映画鑑賞」" »